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おっちょこちょいのかよちゃん

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118 年の終わりと始まり

 
前書き
《前回》
 かよ子は買い物を済ませた後、笹山の家へと向かう。彼女から見せて貰った藤木からという手紙には、「君の事は忘れる」という別れの文章が記されていた。赤軍や異世界の人間も動き出す中、1974年は終わりに近づくのだった!!

 今回からは今まで以上の大きく、かつ激しさを増す展開となるでしょう・・・。

 オリジナルキャラ紹介・その1
 三河口健 (みかわぐち けん)
 かよちゃんの家の隣に住むおばさんの甥。初登場第1話。神奈川県横浜市出身。武装・見聞・威圧と三つの異能の能力(ちから)を全て有する高校二年生。小学生の頃にその能力(ちから)を乱発して周囲は勿論、家族からも恐れられ、少年院生活も経験している。父の姉である叔母の羽柴家に居候後は一般人に対して無闇に能力を行使する事はなくなった。異能の能力(ちから)は強力だが、それで十分とされているのか現時点で異世界の道具は授けられていない。その為、赤軍相手には互角以上に戦えるが、異世界の敵には勝つ事はできても留めはさせない。好きな食べ物は麵類、刺身。 

 
 日本赤軍の一人、丸岡修は東京の中心部にいた。自身の認識術で周囲には見えない、いわば透明人間のような感じで歩いているのだ。その為、誰にも気づかれる事はなかった。

 大晦日。年越しそばを食べながら紅白歌合戦を見ていた山田家は食器の後片付けをしていた。
「もうすぐ1974年も終わるな」
「うん・・・」
「除夜の鐘を聞きに初詣行こうか」
「そうだね」
 かよ子はその為か夜更かしをしていたのだ。山田家はいつも御穂神社まで行って初詣をしていた。今年もその予定である。出かける準備を終え、丁度家を出ると、隣の羽柴家の姿も見えた。奈美子と利治の娘のさりも帰省していた。
「お、山田さんとこもいつもの御穂神社に?」
「はい、そうです」
「一緒に行きましょうか」
「はい」
 かよ子達は羽柴家と共に御穂神社へと行くのだった。この日はバスは初詣対策として終夜運転を実施していたので、その為か夜中の清水の街は賑やかだった。
「あれ、車使わないの?」
「旦那も私も酒飲んじゃったからね」
「そうなんですね・・・」
 やっぱり大人達にとっては酒を飲む事は楽しいものであろう。実はかよ子の父もそばを食べながら飲酒をしていたのだ。
「ねえ、かよちゃん」
 さりがかよ子にある質問をする。
「かよちゃんの学校の男の子が行方不明だって聞いたわ」
 かよ子はあの卑怯者の別名で知られている男子の事だとすぐに分かった。
「うん、その男子の親から電話がウチに来たんだ・・・。まだはっきりとは決まってないけど、もしかしたら異世界の敵か、赤軍が関わっているかもしれないって思って・・・」
「そうね・・・。なんかそんな気がするわね」
 皆は歩いている途中、除夜の鐘が聞こえた。もう1974年は終わった、と皆は改めて思う。
「もう、終わったんだね」
「ええ、今年も宜しくね、かよちゃん」
「うん・・・」
 皆は御穂神社に辿り着いた。神社にはすでに行列となっていた。
「起きてる人、多いね」
「ああ、新年だからな」
 そんな時、かよ子はある人物から呼ばれた。
「おう、山田じゃねえか」
「す、杉山君・・・!?」
 かよ子は好きな男子の登場に驚いた。
「お前も家族で来たのか?」
「うん・・・」
「俺もだぜ」
 よく見ると杉山の両親や姉もいた。
「あ、明けましておめでとうございます・・・」
「明けましておめでとうございます」
 お互い新年の挨拶をした。
「やあ、明けましておめでとう、杉山君」
「ああ、三河口さん」
「君もここに来るという事はもしかして大野君とも待ち合わせているんじゃないのか?」
「はは、バレたか。実はそうなんだ」
 そして杉山君を呼ぶ声がした。
「おーい、杉山、お、山田もいたのか」
 大野が両親と共に現れた。
「どうも、明けましておめでとうございます」
 山田家と杉山家、そして大野家はお互いに挨拶をする。
「では、お参りを始めますか」
 皆は列に並ぶ。そしてようやく自分達の番が来た。かよ子達は例をして10円玉を賽銭に投げ入れ、鐘を鳴らし、手を合わせる。そこでかよ子は考えた。
(私は何を願えばいいのかな・・・?おっちょこちょいが治る事?杉山君と一緒にいられる事?それとも・・・)
 かよ子ははっと思った。そうだ。もっと願わなければならない事がある。
(元の日常を取り戻せますように・・・。それを願わなきゃ・・・!!)
 さらに思い出せば母も隣のおばさんもこの地で異世界の杖と護符を貰ったという。その二つの能力(ちから)で二人は戦後の苦しみを生き抜いてきた。だが、今度は自分達が元の日常を取り戻さなければとかよ子は改めて気づいた。

 三穂津姫はあの杖の所有者と護符の所有者が先代・当代揃って御穂神社に来た事を嬉しく思っていた。
(きっと、この戦い、終わらせましょう。皆様方・・・)

 そして大野の家族と杉山の家族もまた参拝する。杉山は「今年も大野と一緒に元気でやっていけますように」と願い、大野もまた「今年も杉山と仲良くやっていけますように」と頼んだ。
「お兄ちゃんやお姉さんは何てお願いしたの?」
 かよ子は護符の所有者とその従弟に聞く。
「俺は『今年もこの清水で楽しく暮らせますように』ってね」
「私は『今年で奴等を倒せますように』ってお願いしたわ」
「そっか・・・。私は迷ったんだ・・・。『おっちょこちょいを治せますように』とか、『杉山君と仲良くやっていけますように』とか考えたけど、『元の日常を取り戻せますように』って頼んだよ」
「そうか、それが一番いい願いだね。実は俺、欲張りにももう一つ頼み事をしたんだ」
「え?」
「健ちゃんったら、欲張りね」
「ま、お二人と同じものですよ。『必ず赤軍や異世界の敵の思い通りになりませんように』ってね」
「そ、そうだよね」
「あ、杉山君、大野君・・・」
 かよ子は杉山と大野が戻って来たところを呼んだ。
「二人は何てお願いしたの?」
「俺は勿論『今年も大野と一緒に元気でやっていけますように』だ」
「俺も『今年も杉山と仲良くやっていけますように』だぜ」
「うん、私も二人のコンビいつでも応援するよ」
「ありがとな」
 かよ子は杉山にそう言われて嬉しく思った。一時運動会の騎馬戦で喧嘩した二人だったが、今年こそはそんな事がないようにとかよ子も願っていた。

 一方、別の神社。笹山はそこで初詣に来ていた。そこには近所に住む奏子も家族ぐるみで一緒に参拝していた。
(お願いします。藤木君が戻って来てくれますように・・・)
 笹山はクリスマス・イブ以降、行方不明となっている男子が非常に心配でたまらなかった。あの野良犬に襲われそうになった時、自分を助けてかよ子を見捨てた件で怒り、クリスマス合唱コンクールの後でも皆に責められた事が原因でいなくなったんだという自分への責任感でいっぱいだった。だが、あれから一週間以上、更には年が明けても未だに見つからない。今、どうしているのだろうか。
「かず子ちゃん、藤木君が心配?」
「う、うん」
「大丈夫よ。きっと見つかるわ」
「そうよね・・・」
(藤木君、今、どこにいるのかしら・・・?)
 笹山は不安のまま、神社を後にした。

 新年最初の朝。かよ子は起きるのが遅くなってしまったが、9時前だった。
「お母さん、ごめんなさい。寝坊しちゃって」
「いいのよ。気にしないで。私も起きたばかりだから。お父さんなんてまだ寝てるのよ。昨日お酒飲んでたからかしら」
「う、うん・・・」
 9時過ぎ、ようやく父が起き、山田家の朝の食事が始まった。もちろん元日の為、おせち料理である。改めて「いただきます」ではなく、「明けましておめでとうございます」と言ってから食べた。

 また、朝に初詣に行く者もいた。すみ子は家族で近くの神社に初詣に出かけた。今の所自分の胸の中に異常な感触はない。すみ子は安心して参拝をする。
(今年こそ、皆と楽しく過ごせますように・・・。そして、元の日常を取り戻せますように・・・)
 すみ子は切実な願いを祈願した。
「すみ子」
 すみ子は兄に呼ばれる。
「こんな事言っちゃ癪に障るかもしれないが、絶対に『あいつら』を倒そうな」
「お兄ちゃん・・・。うん・・・!!」

 また別の場所では、長山が家族で付近の神社に参拝していた。
(小春が元気になれますように・・・。そして、元の日常に戻れますように・・・)
 長山は妹の身体の心配と共に、これから始まるであろう大きな戦いへの心の準備をするのであった。

 冬田は祖父と共に初詣に行く。そして鈴を鳴らしながら祈る。
(今年も大野君と一緒にいられますように・・・)
 冬田は好きな男子の事を考える。もしかしたら大野と両想いになれるかもと思うと急に頭が舞い上がるのであった。

 ブー太郎もまた家族で初詣を行う。
(お願いしますブー・・・。今年も大野君と杉山君の役に立てるように頑張りたいですブー・・・)
 ブー太郎は石松から貰った「水の石」の所有者として、そして大野と杉山の子分として役に立ちたいと思うのであった。

 丸岡はレバノンへと戻る。そして長時間の空旅の後、本部へと戻った。
「総長、只今帰りました」
「お帰り」
「日本の正月ってあんなに賑やかだと改めて思いましたよ。政府も賑やかになりますかね・・・」
「ええ、要求に応じなければ痛い目見るでしょうからね」
 重信房子が統率し、軍事政権があった大日本帝国の復活を目指す日本赤軍。そしてその組織と組む争いを正義とする世界。彼らはこれから一体日本国をどう揺るがすのだろうか・・・。 
 

 
後書き
次回は・・・
「届いた年賀状」
 元旦、かよ子はクラスメイトからの年賀状を貰う。そんな中、かよ子は自身が好きな男子・杉山からの年賀状がないかどうかを確認する。そしてその中には東京に住む杯の所有者からも年賀状があり・・・。 
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