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おっちょこちょいのかよちゃん

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116 九州の熱血中学生

 
前書き
《前回》
 かよ子は父に見せられた新聞でも藤木の失踪が報道されている事を確認する。そして千葉にはイギリス人のハーフの女子高生にもイギリスの話の登場人物を出す魔法の本を武器として貰っていたのだった!! 

 
 クリスマスは過ぎ、新年に向けてかよ子の家では大掃除を始めていた。クリスマスツリーを片付け、自室の机を片付け、要らない物は次々と処分した。そして母に掃除機をかけて貰っただけでなく、窓拭きもやった。
(こんな時に誰かが襲ってきたら・・・)
 かよ子はふとそんな事を考えてしまう。そんな中、かよ子は母から買い物を頼まれた。商店街へ行き、年越しそばやみかんなどを買うのである。かよ子は自分の部屋の掃除を終えた為、買い物に行く事になった。その商店街にて、笹山と遭遇した。
「あ、笹山さん・・・!!」
「山田さん・・・」
 かよ子は笹山に思い切って聞いてみた。
「あ、あの・・・!藤木君の事なんだけど・・・!!」
「あ、うん・・・、私もちょっと反省してるわ」
「うん、私もあの事はもう気にしてないよ」
 「あの事」とはかよ子達が野良犬に襲われそうになった時に、藤木は笹山のみを連れて逃げ、自分を置き去りにした事である。
「うん、それに合唱コンクールの時、藤木君は歌い出しが遅れた事も皆に責められてたからそれで
もっと辛くなったんじゃないかって思ったの・・・。それに、私宛に手紙が届いてて、そしたら藤木君からだった・・・」
「え?藤木君から手紙が来てたの!?」
「うん、後で私の家に行ってみる?」
「あ、でも、私もお使いの途中だから後で行くよ」
「うん、待ってるわ」
 かよ子は買い物を済まして、家に帰った後、笹山の家へと急ぐのだった。

 九州・熊本。そこに一人の中学生の男子がいた。名前は尾藤海斗(おどうかいと)。サッカー部に属するサッカー男子である。だが、彼もまた、謎の地震のような衝撃により元の日常を失ってしまったのだった。
 それは中学二年生の時。部活の最中だった。入部してきたばかりの新入生にとっても恐ろしい事だったろう。急に空が暗くなった。サッカー部以外のグラウンドで活動中の陸上部や野球部、テニス部もその異変に驚いた。
「うおらあああ!」
 どこからか声が聞こえた。天から多くの人間が降るように現れた。
「に、逃げるぞ!」
 サッカー部の部長の命で尾藤も他の生徒と共に逃げた。人間達は暴れるように生徒達を襲い始めた。その様子を見た尾藤は震えると共に怒りを表した。
「や、やめろーーー!!!」
 尾藤は叫んだ。その時、襲撃して来た人間達の動きが止まった。尾藤は近くにあるサッカーボールを見ると、すぐさまそれを蹴って人間に当てようとした。
「ぐわああ!!」
 尾藤の蹴ったボールは一人の襲撃者に命中した。普通のシュートではありえないダメージだった。襲撃者の体を貫通してその襲撃者は光となって消滅した。尾藤地震にも何なのか分からなかった。
(兎に角、そこらのボールを蹴ってみるか!)
 尾藤は転がっているボールを蹴って他の襲撃者に当てた。顔に当たれば首が跳ぶ。その他の部位なら貫通する。どちらにしても光となって消えていく。
(一体、何なんだ、ありゃ?)
 その時、別の声が聞こえた。
「皆の衆、撤退せよ」
 残った襲撃者は姿を消した。暗くなった空は元に戻った。多くの生徒達が怪我を負った。教師達も今の恐怖で呆然としていた。どの部も再開できるような状況ではなかったので教員側は生徒達をすぐに帰らせた。
(許せねえ、何なんだ、あいつらは!!)
 尾藤は自分の学校の生徒を無差別に攻撃してきた連中への憎悪が収まっていなかった。そして帰った。そしてテレビのニュースではとんでもない情報を耳にした。熊本市内の神社・藤崎八幡宮や阿蘇の阿蘇神社の門が破壊されたという。
(これも、きっと奴等の仕業なんか!!)
 これはどう考えても尋常ではない。翌日も同じ事が起こった。今度は市街地が襲われたという。そしてまた次の日、また空が暗くなった。
(また奴等か!!)
 人間が降って来た。三人の人間が尾藤を取り囲んだ。
(俺を殺す気か・・・!!)
 尾藤はそう思い、先手必勝と考え、その人間を蹴り飛ばした。そして後の二人もやられる前にやった。その時だった。
「そこまでだ!」
 別の誰かが現れ、三人を一気に斬った。
「そこの者、大丈夫であったか?」
「あ、はい、あんたは?」
「私は清正とでも呼んでくれ。今、この地は大変な事になっておる。まあ、説明している暇はなかろう。また後で話をしよう。では」
 清正は消えた。
(今の清正とは、敵か、味方か?)
 尾藤はまず学校へと急いだ。

 授業中、尾藤は授業に集中できなかった。それどころか、殆どの生徒もあの攻撃のせいで授業に身に入らず、教師側もまたぎこちない授業の仕方であった。皆いつ襲撃されるかおかしくない状況だと見ているのか、と落ち着かないのである。その午後の授業中、また空が暗くなった。グラウンドにまたあの人間が現れた。体育の授業をグラウンドで行っている生徒や教員を中心に狙われる。
(あ、あいつらだ!!)
 尾藤は怒りに震える。そして緊急事態として放送が流れる。
『全校生徒、全教員の皆様、何者かが襲撃に参りました。直ちにお逃げください』
 皆は教室を出た。ごった返す。廊下が生徒だの教員だのでごった返す。尾藤もまた逃げた。
(くそ、逃げるだけしかできんとか・・・!!)
 尾藤はグラウンドに出た。襲撃者たちが何人もいる。部活動の時よりも数が多い。
「尾藤海斗!」
 尾藤は見回す。そこに清正がいた。
「き、清正!?」
「奴等はこの地に現れおった!これを使うが良い!」
 清正はボールのような物を渡した。
「お主は球を蹴る運動が得意であるな?それを蹴れば更なる破壊力を生み出す!蹴ってみよ!」
「え?あ、ああ!!」
 尾藤は躊躇わず清正の言う通りにその球を蹴った。球は風のように素早く飛ぶ。襲撃者の体を貫通し、首をはねた。それも一人だけではない。球は更に回転を増し、次々と襲撃者を攻撃した。
「す、すげえ・・・」
「あれは我が魂を込めた球だ。己の攻撃による武装の能力(ちから)と合わさって更なる威力が出ておる!」
 そして他の生徒達も尾藤の凄さに驚かされていた。球は尾藤の所に戻って来た。その時、別の声が聞こえる。
「貴様・・・。よくもわが軍の兵を次々と葬ってくれたな!」
「だ、誰だ!?」
 声の主が現れた。
「お主だな!こやつらを操っていた者は!」
「誰だ、お前は!?」
「我が名はバフティヤール。仏教とかいう穢れた宗教を成敗させた英雄だ!」
「ふざけんな!仏教のどこが穢れてんだ!そもそもなぜこんな事をする!?」 
「この腐った国をより良くする為だ」
「何だと!そうやって人を無差別する事が良き事だと思っとんのか!?」
「尾藤海斗。口で分かる奴ではない。その球を使うのだ!」
「あ、ああ!!」
「我も行くぞ!」
 清正もバフティヤールに飛び込んだ。
「愚かな奴らめ、イスラームの素晴らしさを教えてくれる!アッラーよ、我にこの聖戦(ジハード)に勝利を!」
 バフティヤールは叫んだ。次々と新しい兵が現れる。
「この二つの槍で殲滅させてくれる!」
 清正は腕を伸ばすとどこからか二本の槍が出現した。
「この時間の槍と空間の槍で貴様を葬らせて貰う!」
 清正はまず右手にある時間の槍を地に叩きつけた。バフティヤールの兵が消えた。
「お主が兵を召喚する前の状態に戻させてもらった。そしてお主にはこの空間の槍を喰らえ!」
 清正はバフティヤールに空間の槍を投げる。だが、バフティヤールは持っている剣でその槍を弾いた。
「はは、槍など対した事ないな」
 だが、その時、バフティヤールが持っていた剣が、いや、バフティヤール自身もまた地に落ちた。
「な、何だ、立てない・・・!?」
「この空間の槍でお前もまたこの地面に吸い付くようになる。暫くは立てん。今だ、尾藤海斗!」
「おう!」
 尾藤は清正から貰った球をバフティヤールに蹴る。
「き、貴様ら・・・!!」
 バフティヤールに球が命中した。それも勢いは止まらない。更に球から炎が出た。バフティヤールが燃えて行く。
「あああ!!」
 バフティヤールは燃え尽き、光となって消滅した。球は炎を消し、尾藤の足元に戻って来た。
「清正、ありがとう、すげえ役に立ったよ」
 尾藤は球を清正に返そうとした。
「いや、礼を言うのは我の方だ。それからその球はお主の武器として持っておけ。今、この世はとんでもない歪みが生じておる。命を懸けた危険な戦いが待っておるかもしれん。一緒に戦ってくれるか?」
「ああ、絶対に元の日常を取り戻すと!」
 尾藤は清正に誓った。そして彼もまた、大いなる戦いに関わっていく事になる。 
 

 
後書き
次回は・・・
「残された手紙」
 かよ子は笹山の家に行き、藤木からの手紙を見せて貰う。そして平和を司る世界、戦争を司る世界、そして日本赤軍、かよ子達が住む世界の人間、それぞれが大いなる戦いへの移行に備えて行く・・・。 
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