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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第110話

2月11日、同日AM7:30――――――



翌朝、朝食を終えたリィン達はシュバルツァー男爵夫妻に出発を見送られようとしていた。



~ユミル~



「――――――それでは行ってきます、父さん、母さん。次に帰ってくるのはいつになるかわかりませんが……この戦争が終わって状況が落ち着いた後に、エリゼ達と共に里帰りをしたいとは思っています。」

「ああ……お前達も今回の戦争、全員で生き抜いて再びユミルに無事なその姿を見せに来てくれる日が必ず来ると信じて待っているぞ。」

「はい、父様。必ず誰一人欠けることなく兄様達と共にこのユミルに帰ってくる事をお約束します。」

「私達がユミルに帰ってくるまでどうかご無事でいてください、父様、母様。」

「……どうか気を付けて。みなさんに女神達のご加護がありますように。」

リィンの言葉に頷いたシュバルツァー男爵はリィン達を見回して言葉を口にし、シュバルツァー男爵の言葉にエリゼは頷き、エリスは両親の無事を祈り、ルシア夫人はリィン達を見回してリィン達の無事を祈った。



「アルフィン皇女殿下……今回の戦争の件に関して色々とお辛い想いを抱えていらっしゃているでしょうが、どうかご無理だけはされないでください。例え殿下がどのような立場になろうとも、ユーゲント陛下達は殿下の幸せを願っていると私達は信じています。」

「それに皇女殿下はいつかはエリゼ達と共にリィンと結ばれるとの事。ユーゲント陛下達に対して恐れ多くはありますが、殿下にとってもう一つの両親になる私達でよければ、相談したい事があればいつでも相談してください。」

「おじさま……おばさま……はい……必ずリィンさんやエリス達と一緒に無事な姿で帰ってきますので、お二人ともどうかお元気で。」

男爵夫妻に気遣われたアルフィンは驚いた後夫妻に微笑み

「リィン達の事、これからもよろしくお願いする、セレーネ嬢。だが、決して無理だけはしないでくれ。」

「お気遣いありがとうございます、テオ様。お兄様達の事はどうかお任せください。」

「アルティナさんも昨日主人も言ったように内戦での件はもう私達は気にしていませんから、リィン達を守る為だからと言って自分を犠牲にするような事は考えず、リィン達と一緒に無事にこの戦争を乗り越えて再び私達に無事な姿を見せてくれることを考えてください。貴女も私達にとっては家族同然の存在なのですから……」

「ルシア様………はい……!必ずリィンさん達と一緒に無事にこの戦争を乗り越えます……!」

男爵夫妻にそれぞれ声をかけられたセレーネは感謝の言葉を述べ、アルティナは驚いた後力強く頷いて微笑んだ。



「……父さん。オリヴァルト殿下や俺が父さん達に拾われる少し前のオズボーン宰相の状況を偶然知る事ができた知人から父さんとオズボーン宰相の関係、そして俺が父さん達に拾われた経緯は聞きました。心から信頼していた父さん達に俺を引き取ってもらう事を決めたオズボーン宰相は父さんが信じていたかつてのオズボーン宰相だったでしょうし、今も心の奥底はかつてのままかもしれません。――――――ですが過去の経緯はどうあれ、今の俺にとっての”本当の家族”は父さんと母さん、エリゼとエリス―――”シュバルツァー家”ですし、大陸全土を戦乱に導こうとするオズボーン宰相のやり方は一人の人として決して許せません。過去の因縁を断つ為……オズボーン宰相の野望を未然に防ぐ為……そして俺達の未来の為にも俺はオズボーン宰相を必ず討ちます。」

「「兄様………」」

「リィン………」

「シュバルツァー…」

リィンの決意を聞いたエリゼとエリス、ルシア夫人はそれぞれ心配そうな表情で、デュバリィは真剣な表情でリィンを見つめ

「―――その意気だ、リィン。ギリアス兄さんは相当手強いが……それでもお前達ならば、取り返しのつかない事をしようとする彼を止めてくれると信じている。お前達の武運を祈っているぞ。」

「はい……っ!」

シュバルツァー男爵はリィンの言葉に頷いてリィンに応援の言葉をかけ、応援の言葉をかけられたリィンは力強く頷いた。

「灰獅子隊の皆様方……息子達がこの戦争を無事乗り越えられるように、支えてやってください。」

「リィン達の事……よろしくお願いします。」

シュバルツァー男爵は灰獅子隊の面々を見回して頭を深く下げてリィン達の事を頼み、ルシア夫人もシュバルツァー男爵に続くように頭を深く下げてリィン達の事を頼んだ。

「イエス・サー!!イエス・マム!!」

シュバルツァー男爵夫妻の頼みに対し、リィン、エリゼ、エリスを除いた灰獅子隊の全員はそれぞれ敬礼して力強い答えを口にした。



「―――では行きましょうか、レン皇女殿下。」

「ええ。――――――こちら、レン・H・マーシルン。レヴォリューション、レン達を回収してちょうだい。」

そしてリィンに声をかけられたレンは頷いて通信機を取り出してレヴォリューションに連絡するとリィン達の足元に魔法陣が展開され、リィン達は転位魔術によって上空に滞空していたレヴォリューションへと帰還し、リィン達の回収を終えたレヴォリューションはユミルから飛び去った。





同日、AM8:00―――



リィン達連合軍がルーレ侵攻の為の戦闘準備をしている一方、クロチルダからの通信による連絡により、連合軍によるルーレ侵攻の情報を伝えられたトワは紅き翼の面々を招集して連合軍によるルーレ侵攻の話を伝えた。



~カレイジャス・ブリーフィングルーム~



「そんな……連合軍が……灰獅子隊(リィン達)が今日ルーレに侵攻するなんて……!」

「ルーレはノルティアの中心部にして、エレボニアにとっての”屋台骨”であるザクセン鉄鉱山や正規軍・領邦軍双方の兵器の量産を一手に引き受けているRF(ラインフォルトグループ)の軍需工場がある事でエレボニアの戦力・物資共に大きな影響を与える事から、いずれ連合軍がルーレに侵攻する事は予想はしていたが………」

「周辺の領土を攻略せず、いきなりルーレを攻めるとはね………」

「……ルーレの場合、”百日戦役”でメンフィル帝国の領土になったユミルが隣接していますから、ノルティアの掌握を早期に行う為にノルティア州の中心部であるルーレの早期攻略を元々計画していたのでしょうね……」

ルーレ侵攻の情報を知ったアリサは悲痛そうな表情を浮かべ、ミュラー少佐とオリヴァルト皇子、セドリックはそれぞれ重々しい様子を纏って呟いた。

「しっかし、幾ら”上”からの要請(オーダー)とはいえトリスタに続いてルーレ――――――”Ⅶ組”に縁がある場所の侵攻ばかりに手を貸すとか、リィン達もご苦労な事だぜ……」

「大方その要請(オーダー)を出しているのはあの女将軍がリィン達とⅦ組(あたし達)の関係を断たせる為でしょうね……!」

「ん……セシリア将軍はメンフィル軍の”総参謀”だから、リィン達の加勢の件には間違いなく関わっているだろうね。」

「リィン達はトリスタもそうだけど、ルーレを占領する事に協力させられる事について何も思わなかったのかな……」

疲れた表情で溜息を吐いたクロウの言葉に続くように呟いた怒りの表情を浮かべたサラの推測にフィーは真剣な表情で頷き、エリオットは複雑そうな表情を浮かべて呟いた。



「それで?トリスタの件は介入しなかったが、今回の件はどうするんだ?」

「勿論介入する。今回の件には”紅き翼”が介入する名目である”身内の保護”が発生するのだからな。」

「ああ……アリサの母さんであり、ラインフォルトグループ会長―――イリーナ・ラインフォルト会長とアンゼリカ先輩の父さん―――ログナー侯爵閣下だな。」

「恐らくだけど連合は非戦闘員の上、ルーレ占領後―――いえ、今回の戦争後に利用価値があるラインフォルトグループのトップのイリーナ会長を戦場のどさくさに紛れて殺すような事はしないと思うわ。ただ、問題は……」

「ノルティア州の統括領主のログナー侯爵閣下は間違いなく”討つ”つもりでしょうね……」

「そうだな……連合にとってログナー侯爵はノルティア州を纏める”大将”だから、ノルティアの連中の”戦意”を”折る”為にもログナー侯爵を殺る予定だろうな。」

アッシュの問いかけに答えたラウラは真剣な表情を浮かべ、ラウラの言葉にガイウスは頷き、シェラザードとアネラスは複雑そうな表情で、アガットは厳しい表情を浮かべてアンゼリカに視線を向け

「で、でもでも……レンちゃん達はヴァイスラント新生軍――――――エレボニアの人達とも協力関係なんですから、その人達がアンゼリカさんのお父さんを殺さないようにお願いしたりしているんじゃないでしょうか?」

「それが………ヴァイスラント新生軍を率いている”総主宰”であるミュゼさんにとってはログナー侯爵閣下は後に自分の”政敵”になりうる存在である為、今回の戦争を利用してログナー侯爵閣下を排除するような事を口にしていましたから、その可能性はないと思います……」

「一応連合―――いや、灰獅子隊(リィン達)の下にはアルフィン皇女殿下がいるから”第三機甲師団”の時のようにアルフィン皇女殿下でログナー侯爵を説得させて降伏させる可能性も考えられなくはないが………」

アンゼリカを心配そうな表情で見つめながら呟いたティータの推測を聞いたエマは複雑そうな表情で否定し、マキアスは不安そうな表情を浮かべてアンゼリカに視線を向けた。



「いや…………ユーゲント皇帝陛下自身に対する忠誠が篤い父上の事だから、恐らくアルフィン殿下の説得にも応じないだろう。ましてや内戦の件でユーゲント陛下に対して負い目を感じているだろうから、間違いなくアルフィン殿下の説得に耳を貸さず、全力で抵抗するだろうね。」

「アンちゃん………」

重々しい様子を纏って答えたアンゼリカの答えを聞いたトワは心配そうな表情でアンゼリカを見つめ

「それで”蒼の深淵”はリィン達はどんな段取りでログナー侯爵を討ってルーレを占領するつもりかもヴァイスラント新生軍から教えてもらえたの~?」

「幾らユミルがルーレと隣接しているとはいえ、ルーレの近郊にはノルティア領邦軍の本拠地である”黒竜関”もあるのだから、無策で攻めるような事はないと思うが……」

「そうね。あの皇女もそうだけど、メンフィル・クロスベル連合は”参謀”が一人しかいなかった貴族連合軍の時と違って、”参謀”を務めている人物は複数いるのだから、今後の戦いに備えて戦力の低下を最小限に抑える為にも正面衝突するような事はしないでしょうね。」

ミリアムはトワにある事を訊ね、考え込みながら呟いたユーシスの推測にセリーヌは静かな表情で頷いて肯定した。



「うん、クロチルダさんがヴァイスラント新生軍――――――ミュゼちゃんから直接聞く事ができた話によると――――――」

そしてトワはその場にいる全員に連合のルーレ侵攻に関する大筋の流れを説明した。

「黒竜関からの援軍はメンフィル軍が抑え、ルーレへの直接侵攻はクロスベルと灰獅子隊の主力部隊が受け持ち、更にはクロイツェン州での”焦土作戦”の時による領邦軍によるザクセン鉄鉱山の崩壊を防ぐ為に別働隊にザクセン鉄鉱山を占領させ、そしてルーレの防衛部隊がクロスベルと灰獅子隊に惹きつけられている間にリィン達精鋭部隊がルーレに潜入し、ログナー侯爵家に攻め入り、ログナー侯を討ち取る……か。まさに非の打ち所がない作戦内容だな。」

「ああ……ノルティア領邦軍は四州の領邦軍の中でも精強な事で有名だけど……残念ながらメンフィル帝国軍には劣るだろう。しかもよりにもよって、黒竜関からの援軍を抑えるメンフィル帝国軍を率いている人物はエフラム皇子とエイリーク皇女との事だからね……黒竜関からの援軍はルーレに駆けつける事ができない所か、最悪殲滅されるかもしれないね……」

トワの説明を聞き終えたミュラー少佐とオリヴァルト皇子はそれぞれ重々しい様子を纏って呟き

「殿下はそのお二人の事についてご存じなのですか?」

オリヴァルト皇子の言葉が気になったユーシスはオリヴァルト皇子に質問した。



「ああ。その二人はエステル君とも少なからず縁がある人物達でね……二人はメンフィル皇家の分家の一つ――――――”ファラ・サウリン公爵家”の人物達なんだ。」

「ええっ!?”ファラ・サウリン”って確かエステルちゃんの……!」

「あの娘がメンフィルから貰った”貴族としての家名”ね。」

「そ、そう言えばエステルお姉ちゃんがシルヴァン陛下に貴族の爵位をもらった時にお姉ちゃんと同じ貴族の家名の人達が出てきてお姉ちゃんにマントと髪飾りをあげましたよね?」

「ああ……そんで”影の国”で会った二人の王女さん達の息子と娘でもあったな。」

オリヴァルト皇子の答えを聞いてある事に気づいたアネラスは驚き、シェラザードは真剣な表情で呟き、戸惑いの表情で呟いたティータの言葉にアガットは頷いた。

「エフラム皇子とエイリーク皇女は夫妻でもあるその二人の息子と娘――――――つまり、ラピス王女とリン王女にとっては”孫”に当たる人物だよ。話を続けるが、エフラム皇子は数多くいるメンフィル皇家の人物の中でも相当な武闘派の人物で、戦場では多くの武勲を立て続け、それらの事から戦場での活躍ぶりはまるで若い頃のリウイ陛下のようだと称されている程との事だ。」

「ええっ!?」

「戦場での活躍ぶりが若い頃のリウイ陛下のようだって…………」

「またとんでもない皇子が出てきたものね……」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたエリオットは驚き、アリサは表情を引き攣らせ、セリーヌは疲れた表情で溜息を吐いた。



「という事は皇女の方も凄い強いの?」

「いや……エイリーク皇女の方はエフラム皇子のような話は聞いた事はない。――――――ただ、プリネ皇女から聞いた話によると少なくても戦闘能力は間違いなくエイリーク皇女の方がプリネ皇女よりは上だとの事だ。」

「”黒のアルベリヒ”達と互角以上に戦ったあのプリネ皇女殿下より上とは……」

「何でメンフィルの皇族ってみんな、そんなに滅茶苦茶強いんだ……!?」

ミリアムの疑問に答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたラウラは真剣な表情を浮かべ、マキアスは疲れた表情で呟いた。

「更に二人を守護する親衛隊は数多く存在するメンフィル皇家の各人物の親衛隊の中でも相当な精鋭揃いで、リフィア殿下を守護する親衛隊に迫る程との事だ。」

「メンフィル皇帝の跡継ぎの皇女の親衛隊がどんなとんでもない連中かはわからねぇが、少なくてもノルティアの連中じゃ荷が重すぎる連中なんだろうな。」

「残念ながらそうなるだろうね。リフィア殿下の親衛隊の部隊長であるステラ君達であのレベルなのだから、そのリフィア殿下の親衛隊に迫る程の強さの親衛隊はノルティアの領邦軍でも厳しすぎる相手だよ。」

オリヴァルト皇子の更なる説明を聞いたクロウは真剣な表情で推測し、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐いて同意した後複雑そうな表情を浮かべた。



「それにしてもオリヴァルト殿下は随分とその二人に関して詳しいですよね?」

「ハハ……何と言ってもエステル君と少なからず縁がある人物達だからね。他のメンフィル皇家の分家の人達の中でも一番気になっていた人達だから、”影の国”に巻き込まれた時にプリネ皇女殿下達から色々と聞いていたんだ。しかも、その二人は双子の兄妹との事だから、同じ双子の弟と妹がいる私にとっても色々と気になる人物達でもあったんだよ。」

「え……そのお二人は双子なんですか!?」

アネラスの疑問に苦笑しながら答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたセドリックは驚きの表情で訊ねた。

「ああ。エフラム皇子が兄、エイリーク皇女が妹との事だから弟のセドリックと姉のアルフィンの逆の双子の兄妹になるね。」

「そうなんですか……」

オリヴァルト皇子の話を聞いたセドリックは興味ありげな表情を浮かべていた。



「話を戻すが……肝心のリィン達は一体どういうルートでルーレに潜入することになっているんだ?」

「それが………ザクセン鉄鉱山を攻撃する別働隊と共にザクセン鉄鉱山に突入した後ザクセン鉄鉱山にあるルーレと直通しているラインフォルトグループの非常用の連絡通路を利用してルーレに潜入するそうなんです……」

「!!」

「ええっ!?ザ、ザクセン鉄鉱山とルーレが直通しているラインフォルトグループの非常用の連絡通路ってもしかして……!」

「内戦前の特別実習時にザクセン鉄鉱山が”帝国解放戦線”に占拠された時に僕達が使ったあの通路か……!」

「なるほどね。あの通路を使えば、ノルティア領邦軍に見つかることなく割とあっさりルーレに潜入できるだろうね。」

「そのノルティア領邦軍もルーレやザクセン鉄鉱山を攻撃する連合軍の対処に当たるでしょうから、リィン達を気にしているような余裕はないでしょうね。」

ミュラー少佐の質問に辛そうな表情を浮かべてアリサを気にしながら答えたトワの答えを聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中アリサは目を見開き、エリオットとマキアスは驚きの表情で声を上げ、フィーとセリーヌは真剣な表情で推測した。



「ハッ…………察するにパイセン達を含めた限られた人物達しか知らない秘密の通路のようだな。トリスタの件といい、その通路を戦争の為に利用する事といい、ホント容赦ねぇな、”灰色の騎士”サマ達は。」

「それは……………………」

「ま、その辺りは”殲滅天使”の入知恵なんじゃねぇのか?”殲滅天使”の事だから大方ルーレを攻略する上で利用できそうな隠し通路の類を特別実習や内戦でルーレに訪れたリィン達なら知っていると推測して、それをリィン達に聞いたんだと思うぜ。」

「同感だ……腹黒い事をする時に関する準備も結社の連中並みに完璧だからな、あのクソガキは……」

「そうね……実際、3年前の”お茶会”の件でもエステル達とあたし達が合流する事まで計算した上で、様々な暗躍をしていたものね、あの娘は……」

「あ、あはは………」

鼻を鳴らして呟いたアッシュの意見を聞いたラウラは複雑そうな表情で答えを濁し、クロウの推測を聞いて呟いたアガットの話を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中シェラザードは疲れた表情で同意し、ティータは苦笑していた。



「でもそうなると、今回のルーレの件でボク達の介入する事を”殲滅天使”もそうだけどリィン達も予想してその対策をしているだろうから、その対策を超える事を考えないとダメなんじゃない?」

「”オレ達の介入を予想した上での対策”という事は……」

「……ログナー侯を保護しようとする俺達を阻む部隊をどこかに配置している事はほぼ確実だろうな。」

ミリアムの意見を聞いてある事を推測したガイウスは真剣な表情を浮かべ、ユーシスは目を細めて推測を口にした。

「うん……その可能性も考えた作戦――――――”レン皇女殿下達連合軍の想定を超える作戦”も既に思いついてはいるんだけど……」

「ふええっ!?レ、レンちゃんの想定を超える作戦を既に思いついていたんですか……!?」

「おいおい、マジかよ……」

「驚いたわね……今年のトールズの生徒会長は相当優秀という話は聞いてはいたけど、まさか相手の行動を先読みできるあの娘の想定を上回る作戦を思いつけるなんて……」

「フフン、あたし達を見下していたあの皇女や連合の思惑を外す作戦をすぐに思いつくなんて、さすがトールズ始まって以来の”才女”とも言われているトワね。思惑を外されて屈辱を味わされる”殲滅天使”達が見物(みもの)ね。」

「サラ、大人げなさすぎ。」

トワが口にした驚愕の答えを聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中ティータは驚きの声を上げ、アガットは困惑し、自慢げな表情を浮かべているサラの様子にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中フィーはジト目で指摘した。

「……だけどトワ。その表情から察するに、私達にとってもそうだが、君にとっても正直実行したくない内容なんじゃないのかい?」

「ゼリカの言う通りだな。いつものお前なら、自信を持って堂々とした表情を浮かべているぜ。」

一方トワの様子を見て何かを感じ取っていたアンゼリカとクロウは真剣な表情でトワに指摘した。



「アハハ……さすがアンちゃんとクロウ君だね。今言ったわたしが考えたログナー侯爵閣下を保護する作戦はログナー侯爵閣下自身を陥れて侯爵閣下の立場を奪う上今回の戦争が終結した後にアンちゃんやオリヴァルト殿下と皇太子殿下――――――ううん、”アルノール皇家”の方達がノルティア州の領邦軍もそうだけど貴族の人達に対する”しこり”を残す事になる可能性が高いし、相当分が悪い”賭け”にもなるんだ……」

「ロ、ログナー侯爵閣下を陥れて立場を奪った上、アンゼリカさんや殿下達がノルティアの州の領邦軍や貴族に対する”しこり”を残す可能性が高い上、相当分が悪い”賭け”にもなるって……」

「………トワ君、その作戦内容とはどういう内容なんだい?」

二人の指摘に苦笑した後複雑そうな表情で答えたトワの答えを聞いたアリサが不安そうな表情を浮かべている中、オリヴァルト皇子は表情を引き締めてトワに作戦の詳細な内容を促し

「わかりました。まずは――――――」

オリヴァルト皇子に促されたトワは自分が思いついた作戦内容を説明した。



トワが考えた作戦内容とは以下の内容であった。





1、ログナー侯爵は内戦に加担した事に対する”処罰”として”ログナー侯爵家当主としての立場の剥奪”並びに、剥奪後のログナー侯爵家の当主はアンゼリカである事をアルノール皇家が決定しており、また”アンゼリカ自身は連合との和解を望むアルノール皇家の意向に応じてメンフィル・クロスベル連合に一端ルーレを含めたノルティア州の統治を預ける事を承諾していた為、連合に対する抵抗を決めてノルティア領邦軍に連合への抵抗を指示したログナー前侯爵のノルティア領邦軍への指示は不当のものであるという理由”で、オリヴァルト皇子がカレイジャスでルーレの領邦軍に、セドリックはメルカバで黒竜関からの援軍とメンフィル軍がぶつかり合っている街道に向かい、到着後はテスタ=ロッサに乗って街道にいる領邦軍にそれぞれ戦闘の停止を”勅命”する事。



2、トワ達Ⅶ組の面々やシェラザード達遊撃士達はログナー侯爵の保護の為にエマとセリーヌの転位でザクセン鉄鉱山のコントロールルームに侵入した後、鉱山内にあるルーレと直通しているラインフォルトグループの非常連絡通路でルーレに潜入、そしてログナー侯爵家に突入する事。



3.ログナー侯爵家に突入して屋敷内を探索し、ログナー侯爵を発見した後はログナー侯爵を捕縛し、アンゼリカがログナー侯爵から爵位を簒奪する事。



4、ログナー侯爵から爵位を簒奪したアンゼリカはログナー侯爵討伐の為にログナー侯爵家に突入しているリィン達にログナー侯爵家当主の権限によりノルティア州は連合に降伏する事を申し出てノルティア領邦軍に戦闘の停止を”新ログナー侯爵家当主”として”勅命”する事。





「た、確かにその作戦内容が成功すれば連合とノルティア領邦軍、双方の被害を最小限に抑えられる上、私達の動きを察知してその対策を練っていると思われるレン皇女殿下の想定を上回って侯爵閣下を保護できる可能性は高まりますが……」

「………戦後、ノルティアの領邦軍や貴族がアンゼリカ先輩もそうだが、アルノール皇家の方達に対する”しこり”を残す可能性が非常に高くなるだろうな。」

「しかも”黄昏による呪い”でノルティア領邦軍が闘争に駆り立てられる事で殿下達の”勅命”を無視する所か、殿下達に危害を加える可能性も十分に考えられるな……」

「なるほどね……確かにあの皇女なら、そんなあまりにも分が悪い”賭け”で”相手の立場を奪って皇族の威光を利用するなんてやり方”をアンタ達が実行するなんて考えは今までのアンタ達の事を知っていたら、アンタ達がそんな事をするなんて想定は”アンタ達に対する対策を考える時点で最初から捨てる”でしょうから、あの皇女の想定を上回る事は確実にできるでしょうね。」

トワが説明した作戦内容を聞いたエマは不安そうな表情を浮かべ、ラウラとユーシスは重々しい様子を纏って呟き、セリーヌは静かな表情で推測し

「だ、だけどそんなあまりにも強引かつ相手を陥れるようなやり方は紅き(ぼくたち)のやり方じゃないし……」

「何よりも、アンゼリカ先輩もそうだが殿下達が後にログナー侯達に相当恨まれる事になるかもしれないからな……」

「ま、だからこそ”殲滅天使”の”紅き翼(ボク達)がそんな方法は絶対に実行しないって考え”を覆して”殲滅天使”や連合の思惑を上回る事はできるんだけどね~。」

エリオットと共に複雑そうな表情を浮かべたマキアスはアンゼリカやオリヴァルト皇子、セドリックを順番に見回し、ミリアムは疲れた表情で呟いた。



「私の事は気にする必要はないよ。内戦に加担した父上に対する”処罰”が必要なのは事実だし、それでノルティア領邦軍の犠牲を最小限に抑える事ができるのだったら、ログナー侯爵家の娘――――――いや、”ログナー侯爵家当主として本望だ。”」

「私達アルノール皇家も大丈夫だ。どの道内戦もそうだが、今回の戦争の件でノルティアに限らずエレボニア全土の民達の信頼は地の底まで落ちている上エレボニアが敗戦すれば私達アルノール皇家の地位を剥奪されることも十分に考えられるのだから、”今更さ。”」

「僕も兄上と同じ意見です。連合に限らず、大陸全土を戦乱の地にして”終焉”へと導こうとしているオズボーン宰相を重用した父上の息子として……”巨イナル黄昏”を発動させた元凶としての責任を果たす為にも、僕の威光でよければ存分に活用してください。」

「アンゼリカさん………」

「オリビエ…………」

「……………………」

アンゼリカとオリヴァルト皇子、セドリック皇太子の覚悟を知ったアリサとシェラザードは辛そうな表情でアンゼリカ達を見つめ、ミュラー少佐は重々しい様子を纏って黙り込んだ。

「ハッ……当事者達が”覚悟”を決めた以上、俺達も”覚悟”を決めるしかねぇんじゃねぇか?」

「ああ………”エレボニアの第三の風”として、この戦争に介入して双方の犠牲を抑えるためにも。」

アッシュが呟いた言葉にガイウスが頷くと紅き翼の面々は互いの顔を見合わせて力強く頷いた。



「それじゃあ一応確認しておくけど、トワがさっき言った作戦内容を実行する事でいいわね?」

「おおっ!!」

そしてサラの確認に紅き翼の面々は力強く答え

「フフ、貴女達が決めたのだったら、あたし達も”遊撃士”として協力させてもらうわ。」

「私達も全力でサポートさせてもらうね!」

「”民間人の保護”は遊撃士(おれたち)の”役目”でもあるから、今回の介入に本部の連中も文句は言えねぇから、存分に暴れてやろうじゃねぇか!」

「わ、わたしはアガットさん達みたいに直接皆さんと一緒に戦って協力する事はできませんが、カレイジャスのブリッジ内でできるサポートを全力でさせて頂きます……!」

紅き翼の面々の様子を見たシェラザード達もそれぞれ紅き翼にとっての心強い答えを口にした。



そしてメンフィル・クロスベル連合によるルーレ侵攻作戦の開始時刻が近づくとアルフィンはログナー侯爵に直接繋がる通信でログナー侯爵に降伏を呼びかけたがログナー侯爵はノルティア州統括領主として……ユーゲント三世に忠誠を誓う貴族として、アルフィンによる降伏勧告を拒否して連合の侵攻に対して全力で抵抗する意思を示した為、メンフィル・クロスベル連合は”ルーレ侵攻作戦”を開始した――――――!





 
 

 
後書き
次回の話で恐らく皆さんお待ちかね(?)の灰獅子隊とⅦ組がぶつかり合うイベントが発生すると思います(ガタガタブルブル)



後ふと思いましたけど、この物語を創の軌跡のように主人公が複数いてそれぞれのルートが存在していた場合、それぞれのルートを名付けるとしたらリィン達側は英雄ルート、Ⅶ組側は抵抗者ルート、そして戦争の裏で霊脈の切断の為に動いているエイドス達側は隠者ルートもしくは女神ルートになるでしょうね(オイッ!)まあ、その場合エイドスのルートは当然主人公はエイドスという事になりますから、戦闘は戦女神シリーズのセリカみたいに主人公であるエイドス一人で十分じゃね?状況になる気がしますwwしかもパーティーの総合戦闘能力も他のルートよりも上になってしまう可能性がww何せエイドス側のパーティーはエイドス以外だと那由他陣営、イース陣営、そしてエステル陣営という女神の一族なのですから守護騎士二人に千の腕すらも”おまけ”扱いのようなものになるでしょうし(コラッ!)

 
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