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おっちょこちょいのかよちゃん

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90 広島の土産

 
前書き
《前回》
 杉山の姉は森の石松と出会い、不思議な玉を渡され、石松に何かあったら共闘して欲しいと頼まれる。そして三河口は修学旅行のプログラムの一環として広島市内の高校と交流し、そこで出会ったスケバンのような女子・鯉沢輝愛と出会う。彼女から夏休みに近所のとある家が火事になり、その家の親族も全員急死したという情報を耳にするのであった!! 

 
 北の大地・北海道に住む煮雪あり(旧姓羽柴)は、買い物の帰りにある人物に出会った。
「お主、イマヌエルと出会い、戦いの事を知っている和人(シサム)であるな?」
「ええ、貴方は?」
「我はシャクシャイン。かつてこの地の首長だった。今、この国の首都にて悲劇な事が起きている」
「東京の連続企業爆破事件の事?」
「ああ、それらは一部の者に我らの子孫なる者が関わっていると向こうから聞いている。確かに私もこの世の人間だった頃は和人(シサム)と争い、騙し討ちに遭った身ではあるが、今の世にて我が民族の人権を尊重した事を認められて平和を司る世界の者もなった。だというのに我が末裔どもがあのような非道な事を行えばアイヌの誇りを汚す事になる」
「ああ、わかるわ。確かに主人もアイヌの子孫だし、アイヌの差別も確かに私も酷いと思うわ。でも、確かにそれでアイヌの人権が守られるって訳じゃないのよね。でも、私達にできる事ってあるの?」
「勿論だ、イマヌエルと交渉している身ならば信用できる。奴等を止めて欲しいのだ。もしかしたら日本赤軍という奴等と同盟を組む可能性があると聞いているからな」
「日本赤軍・・・!!」
 ありはその名を聞いてぞっとした。
「今すぐとは言わん。主人と相談するとよい」

 学校でかよ子はまる子にたまえ、とし子を呼んだ。
「隣のお兄ちゃんがこの前、修学旅行から帰って来たんだ。お土産渡すから今日私の家においでよ」
「うわあ〜、ありがとお〜」
 その時、猛スピードで食い意地の張った男子・小杉太が来た。
「何、お土産だって、何か美味いもんか!?」
「こ、小杉・・・」
 かよ子は小杉の悪食には十分熟知していた。いや、かよ子どころか全ての皆が小杉の頭の中は全て食欲に支配されている事はご存知の事である。
「ち、違うよ、綺麗なアクセサリーを貰ったからまるちゃん達にあげるんだよ!」
 かよ子は嘘をついた。
「そ、そうだよ。食べ物じゃないよ」
 たまえもかよ子に同調する。
「ちぇ・・・。今度食いもんだったら俺を呼んでくれよ!」
 小杉は残念がってその場を離れた。
(ふう、もしここで本当の事言ったらお土産全部小杉に食べられちゃうとこだったよ・・・)
 かよ子はそう思った。そして放課後、かよ子は思い切って杉山に声を駆ける。
「あ、あの、す、杉山君・・・」
「山田あ?何だ?」
「実は隣のお兄ちゃんが修学旅行のお土産くれたんだ。杉山君にも分けてあげるから私の家に来てくれるかな?」
「え?おう、いいぜ。サンキューな!」
「うん!」
 かよ子は嬉しくなった。

 かよ子の家にまる子、たまえ、とし子、そして杉山が来た。
「あれ、杉山君も来たんだ」
 とし子が少し驚いた。
「ああ、あいつに誘われてな」
 かよ子の母が出迎えた。
「あら、中に入って。今、うちの子呼ぶわね」
 まき子は二階に行き、娘を呼ぶ。
「かよ子、まるちゃん達が来たわよ」
「あ、うん」
 かよ子は降りて来て皆と居間に集合した。
「ねえ、ねえ、かよちゃん、お土産って何~?」
 まる子が聞いた。
「これだよ」
 かよ子は三河口から貰った土産を出した。
紅葉(もみじ)の形してるね」
「これ、もみじ饅頭って言うんだよ。広島で一番有名なお菓子なんだって」
「へえ、美味しいね」
「やっぱり小杉呼ばなくて良かったねえ~」
「ちょっと可哀想かもしれなかったけど・・・」
「え、小杉がどうかしたのか?」
 杉山が質問する。
「実は小杉が私達の話を聞いてて物凄いスピードで来たんだ。『食いもんなら食わせろよ!』って。でも私嘘ついたんだけど・・・」
「ま、いいんじゃねえか。あいつが来ると全部食われて俺達は結局食えなくなっちまうだけだし・・・」
「うん、そうだよね」
 皆は笑い合った。
「これで大野君がいたら仲直りできたかもね・・・」
 とし子はそう思ったが、杉山は断言する。
「それはねえよ。あいつ、甘いもん好きじゃねえし・・・」
「あ、そうか・・・」
 そして皆はゲームして楽しんだ後、帰って行った。
「はあ、宿題するか・・・」
 かよ子は宿題を始めるのであった。

 三河口は帰宅後、叔母から札幌に住む従姉・ありから電話があった事を聞いた。
「ありちゃんが東京へ行くんですか?」
「うん、連続企業爆破事件の犯人のグループを抑えようって事で行くって言ってたんよ」
「しかし、ありちゃん一人で大丈夫でしょうか?」
「うん、まあ、ありも異世界の人に言われて行くからね」
「俺も援軍に言った方がいいでしょうか?東京(あそこ)には杯の所有者もいるし、何かの事があったらその子が危ないかもしれません」
「それは嬉しいけどね、ここはありに任せるべきだと思うよ。それに健ちゃんも学校あるでしょ?」
「なら、名古屋のさりちゃんに援護を頼むべきでは?」
「いや、私がさりに護符を渡したのは敵に護符の場所を撹乱させる意味もあるんよ。さりに下手に動かれてもいかんよ。もし必要ならありが自分から呼ぶでしょうね」
「分かりました。ありちゃんを信じます」
「それに現に隣のかよちゃんだって小学生だけど異世界の敵を倒せてるんだから、ありだって簡単にへまはしないよ」
「そうですよね」
 三河口は従姉の健闘を祈るしか今はできなかった。

 ありはシャクシャインと出会った事を夫と相談する。
「そうか、わかった俺も行こう。何かあると大変だからな」
「ありがとう」
 そしてありは自分の姉と妹、そして実家の両親と居候している従弟の事も考える。
(絶対に抑えないと・・・)

 かよ子はどうか杉山と大野が仲直りして欲しいと願い続けていた。
(お願いします、どうか杉山君と大野君が仲直りできるようにしてください・・・)
 今後の戦いで仲間割れなど本当はあってはならない。あの二人の中が修復しない限り元の日常は戻ってこないだろうと思うかよ子であった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「東アジア反日武装戦線の暗躍」
 東京で連続企業爆破事件を起こす組織・東アジア反日武装戦線。そんな組織の元にに日本赤軍の一人が交渉をしに現れる。その一方、羽柴家の次女・ありは夫と共に東京へ渡り、かよ子は来月、合唱コンクールがある事を思い出す・・・。 
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