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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga7特務六課~The 6th Extra Force~

†††Sideイリス†††

わたしたち特騎隊のオフィスは、これまでにないほどの重い空気が充満してる。それもこれも5日前の大失態の所為だ。第7管理外世界ダーハと第10管理外世界コン・フォルツァでの任務失敗。
わたしとルシルとミヤビが訪れたダーハでは、フッケバイン一家が何十人という民間人を殺害し、物資を強奪していた。わたし達がダーハに訪れる前に行われた犯行だとしても、連中と遭遇して交戦までしたのに逃がしてしまった失態。
さらにダーハで一番の文明国ネツァッハのドラゴン首長イツァムナ氏の護衛として管理外であるダーハを訪れることを許していただいたのに、肝心な時に側に居られなかった。しかも“T.C.”の目的だった“竜玉”も奪われてしまった。

(でもルミナ達まで失敗するなんて思いもしなかったよ・・・)

コン・フォルツァでの“T.C.”待ち伏せ作戦は、遭遇から交戦までは上手くいっていたけど・・・まかさの敗北。クララ先輩の転移スキルのおかげでルミナ達を救出できたけど、“T.C.”には目的の物品は盗まれちゃったし、ルミナとクラリスとセレスは件の国で指名手配食らっちゃったし。

(脅威対策室からのお達しが今日、送られてくる。T.C.とまともに戦えるのは魔術師化できるわたし達だけって思ってたけど、セレスとクラリスが負けちゃってる以上、他のメンバーでも勝てないって思われて、いろんな文句を言われたり罰が下されたりするかも)

ビクビクしながら自分の隊長席に座って待っていると、「失礼するよ」って特騎隊付の特務監査官がオフィスに入ってきた。まぁ古くからの知人だからめちゃくちゃな緊張はしないけど、沙汰を下す権限を持ってるから恐ろしいことには変わりない。

「お、お疲れ様です、ヴェロッサ・アコース特務監査官」

「お疲れ様です、イリス・ド・シャルロッテ・フライハイト特務二等陸佐」

リアンシェルトが局を辞めてから特騎隊の監査役を引き継いだのは、幼少の頃からの知人であるヴェロッサ――ロッサだ。長かった髪も今は肩までの長さに切ってる。

「今回のダーハおよびコン・フォルツァでの件、監査官として決定した沙汰を下します。まず、ダーハでの件。フッケバイン一家と交戦したにも関わらず逃亡を許し、T.C.から護るべき竜玉を護れなかった失態」

わたしとルシルとミヤビは負けたわけじゃないし、フッケバイン一家を逃がしたのも、言いたくはないけどイツァムナ首長の所為だ。でも逃がしたことも奪われたことも事実だから文句は言えない。フッケバイン一家をもっと早く潰していればよかったし、流れ弾の余波で意識を失わずに済んだ。

「その件についてはイツァムナ首長直々に、特務零課に責は無く、すべては私自身の失態が原因である。特務零課を処罰しないことを切に願う、というメッセージが届きました。対策室は氏の恩情を無下にしないため、零課への処罰は見送ることにしました」

ロッサからの第1の知らせにわたし達は「ほぅ・・・」思いっきり安堵の息を吐いた。イツァムナ首長は、フッケバイン一家が首都の近くで犯罪を起こしていたことに気付かなかったのは自身の油断と怠慢で、連中を逃したのはわたし達の邪魔をしたことが原因で、竜玉を奪われたのは“T.C.”に後れを取ったから。イツァムナ首長は本当に自分に責を集中させてた。

「で、コン・フォルツァでの件。マルスヴァローグ一等空尉、カローラ一等空尉、ヴィルシュテッター一等陸尉は、アヴァスト大博物館でT.C.と交戦するも敗北。護衛対象だった物品は奪われた失態。さらに真犯人であるT.C.ではなく、あなた達3人が強盗犯として指名手配された失態」

ルミナとセレスとクラリスは可哀想になるくらいにしょんぼりしてる。ロッサはルミナ達を一瞥した後、「T.C.に感謝する日が来ようとはね」って嘆息。どういう意味?ってわたし達が小首を傾げていると、「まずはコレを見てくれ」って言うと、わたしたち全員のデスク上にモニターが展開された。

「コン・フォルツァに潜入していた査察官からデータで、新聞だね。内容は、アヴァスト大博物館より盗まれた天恵の首飾りが、監視を掻い潜り元に戻されていた、と」

「鑑定した結果、偽物じゃなくて本物と断定・・・」

「さらに、コン・フォルツァの古代遺跡にて、遺跡が崩落したことで失われたとされる宝物、杖、王冠、鎧が置かれていた」

「急いで遺跡を調査した結果、崩落していた遺跡が掘り起こされているが判明。現代の技術では遺跡を傷つけずに掘削することは不可能とされていたが、どういう方法か遺跡は綺麗に掘り起こされており、宝物も難なく持ち出されたものと断定。考古学者や鑑定士などが3つの宝物の調査に入った」

「天恵の首飾りを奪い、そして3つの宝物と共にアヴァスト大博物館に返却した女性3人に対し警察は指名手配を取り下げ、国は遺跡を無傷で掘り起こした技術について尋ね、技術提供をお願いしたい、か」

モニターに表示される新聞の記事の内容を口々に読み上げるみんな。記事を見る限りロッサの言うように“T.C.”のおかげで、ルミナ達は奇跡的に犯罪者じゃなくなったけど・・・。わたしの不安そうな視線を受けてることに気付いたロッサは、「ただし」って付け加えた。

「あのさ、ロッサ」

「ん? なにかな、フライハイト二佐?」

「あ・・・うぅ・・・なんでもありません、続けてくださいアコース監査官」

良い知らせから悪い知らせにするのをやめて、って言おうとしたけどやめた。溜息を吐くわたしから視線を逸らしたロッサは、「天恵の首飾りに込められていた魔力は、完全に消失していたと査察官から報告された」って嘆息。

「T.C.には負けて、標的は奪われて、犯人に間違われて、指名手配を受けて・・・」

「それをフォローするかのようにT.C.は首飾りをオマケと一緒に返却した・・・」

「完全に私たち負け」

「しかし、これはかなりマズイ問題だぞ。セレスの魔術でも勝てないとなるとかなり厄介だ。

ルミナとセレスとクラリスのテンションが最底辺にまで急落しているところに、ルシルがそう言った。魔術の強弱は神秘って呼ばれるレベルによって変わってくる。真正の魔術師であるルシルからして、その神秘の強い序列はユニゾンルシル>ルシル≧セレス=わたし>クラリスになるみたい。

「ルシル、どうする? T.C.がここまでヤバい連中だったなんて想定外なんだけど。・・・あ、ねぇ、ルシル。ベッキー先輩が居てくれたらどうだろう?」

ベッキー・ペイロード。元特別技能捜査課に所属してた先輩だった人だ。超がいくつも付くくらいに強い召喚獣(ルシルや先輩やシャルロッテ様が言うには精霊)を何体も従えていた。
ベッキー先輩が局員となったのは、故郷を滅ぼした連中に罪を償わせたい、復興費用を稼ぐため、という理由から。犯人はロストロギア蒐集組織リンドヴルムで、自分たちの手で壊滅させたことでベッキー先輩が局に残る理由もなくなったけど、それでも局員を続けながら復興活動を続けていた。で、3年前に復興隊の男性局員とめでたく結婚して、そのまま寿退職した。

「それはまぁ、途轍もなく心強いが・・・。でも確かベッキー先輩は臨月間近だろ? 妊婦を危険な前線に出すわけにもいかない。それに彼女の精霊は確かに強大だが、その世界に適応させる時間が必要だ。その時間でT.C.は事を済ませるだろう」

「そうだったね・・・」

「とりあえずチームを分けるのは悪手だってことは確かだ。特騎隊総出で次の標的が在る世界でT.C.を迎え撃つ。アイリ、次はお前も参戦だ。俺とユニゾンして、確実に連中を潰す」

「ヤー! くぅー! 前回は留守番くらってたからね! 今度こそルシルやみんなのため、融合騎として頑張るよ!」

こういう時は本当にルシルとアイリのペアが心強い。完全武装のルシルに加えて、わたし達が全員で事に当たってしまえば、“T.C.”なんて一網打尽だよ。

「よしっ! アコース監査官。次にT.C.の出現する世界はどこか、その情報をください! 今すぐにでも出撃します!」

「この4日の間、本局で確認できたのは第11管理外世界ジュエリアから第15管理外世界ゴールドウルでの活動です。民間人への危害、警察組織との衝突はないようです。で、T.C.の移動と行動の早さからして15番から22番までは捨てます。万全の状態で待ち伏せするために、次の護衛対象は第25管理外世界ヴォルキスの魔力結晶にします」

ロッサがコン・フォルツァの新聞記事からヴォルキスの魔力結晶の画像を表示させた。虹色に輝く8面体の巨大宝石。危険性は無いからロストロギア専門の古代遺物管理部も回収はしてないみたい。ちなみにヴォルキスには魔法文化は無いからコン・フォルツァと同じく、すごい魔力を有した結晶もただの宝石と判断されてる。

「了解。では、特務零課! 出撃!」

わたしの号令にみんなは椅子から立ち上がって「了解!」敬礼して、“シャーリーン”の停泊するドックに向かい始めた。わたしもルシルとアイリ、ルミナとセレスとクラリスとミヤビを伴ってオフィスを出ようとしたとき、ロッサが「あぁそうだ、イリス」って、ファーストネームでわたしを呼び止めた。

「なに、ロッサ?」

「1週間ほど前になるけど、対策室がはやてに特務の6番を与えて部隊編成の指令を出していたよ。今日あたり部隊メンバーの顔合わせがあるって聞いてる」

ロッサの話を聞いたルシル達が立ち止まって、アイリが「なんのために?」って聞くと、ロッサは「フッケバイン一家の逮捕のためさ」って答えた。

†††Sideイリス⇒はやて†††

脅威対策室から私に届いた指令は、管理外世界で好き勝手してる犯罪組織フッケバイン一家の逮捕。与えられた部隊番号は何の縁か6番。特務六課や。かつての機動六課を思い起こさせて、嬉しいやらなんやらやな。ただ問題は、設立の理由であるフッケバイン一家や。連中は民間人も局員も平気で殺害する。その危険性はとんでもない。

「八神二佐。来ましたよ」

「おおきにな、アインス」

特務機動隊用の空きオフィスを特務六課の専用オフィスとして借りたこの1室で、私とアインスとリインの3人は待ってた。特務六課へのスカウトメールを受けて、原隊から六課への出向をしてくれたメンバーが来るのを。

「アリシア・テスタロッサ・ハラオウン」

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」

「「入ります!」」

最初に来てくれたのはアリシアちゃんとフェイトちゃんの2人で、私は椅子から立ち上って「よく来てくれました」と敬礼すると、2人も敬礼してくれた。リインが「お2人のデスクはこちらです」って案内。2人がリインにお礼を言いながら座ってるところで・・・

「八神ヴィータ」

「八神シグナム」

「八神アギト」

「八神ザフィーラ」

「「「「入ります!」」」」

我が八神家の家族がやって来てくれた。シャマルは六課の医療班となる他の医務官と一緒に来るって言うてたから、ちょう遅れるかな。ヴィータ達もリインの案内でそれぞれデスクに着いて、他のメンバーが来るのを待つ。

「エリオ・モンディアル」

「キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ」

「「入ります!」」「きゅくるー!」

次はもうすっかり男の子らしく成長したエリオと、どうゆうわけか機動六課の頃からあんま成長してへんキャロ、そのパートナーの飛竜フリードリヒがやって来てくれた。顔を合わせるたびに大きくなってくエリオには驚きやし、キャロの成長の無さにも驚きや。

「ティアナ・ランスター」

「ウェンディ・ナカジマ!」

「入ります!」「入るっス!」

次にやって来てくれたのは執務官のティアナと、驚くべきことにティアナの補佐を務める執務官補佐になったウェンディや。一昨年までは局関連でバイトをしてたらしいんやけど、今や立派な執務官補佐。判らんもんやね~、って家族みんなで驚いたもんや。

「ギンガ・ナカジマ」

「スバル・ナカジマ」

「チンク・ナカジマ」

「ディエチ・ナカジマ」

「「「「入ります!」」」」

ティアナとウェンディが入ってきてすぐやって来たのは、ナカジマ家姉妹。ノーヴェ以外の姉妹が局員になったんやね。ちなみにノーヴェはナカジマジムってゆうスポーツジムの会長を務めてる。去年になるけど、フォルセティやヴィヴィオ達に、フーカ、リンネってゆう新しい友達が出来たのも、ナカジマジムのおかげみたいやね。

「アリサ・バニングス」

「月村すずか」

「ウーノ・スカリエッティ」

「ドゥーエ・スカリエッティ」

「トーレ・スカリエッティ」

「クアットロ・スカリエッティ」

「「「「「「入ります!」」」」」」

次は首都防衛隊のバニングス隊の隊長を努めるアリサちゃん、本局第零技術部――スカラボのすずかちゃんとスカリエッティ姉妹。機動六課の時はアリサちゃんもすずかちゃんも途中参加やったけど、今回は始めから参加してもらう。少しでも戦力は欲しいし、対フッケバインとゆうかエクリプスウィルス感染者用の兵装開発を行ってくれてるすずかちゃん達も常に一緒なら心強い。

「高町なのは、入ります!」

次にやって来てくれたのは我らチーム海鳴のリーダーのなのはちゃん。なのはちゃんは自分よりもっとリーダーに相応しい子がおるって言うけど、なのはちゃんはチーム最古参やし、海鳴市最初の魔導師やし、同じ最古参のすずかちゃんとアリサちゃんからも、なのはちゃんがリーダーで決定、って話やからな。

「お待たせしてすみません! 八神シャマル、以下医療チーム入ります!」

「大丈夫や、シャマル医務官、それに他の医務官の皆さんも」

「医療班のデスク区画はこちらです」

シャマルを始めとした医療チームに続いて、ヴォルフラム操舵手のルキノを始めとしたヴォルフラムスタッフ、ヘリパイロットのヴァイスとアルトを始めとした外部から出向してもらってるスタッフが続々と到着。

「八神二佐。特務六課、総員揃いました」

アインスの報告に「了解」って答えた私は部隊長デスクの前にまで移動。アインスは「起立」とみんなに促して、私はビシッと佇むみんなを見回した。

「今回、私たちは脅威対策室から、管理外世界で無法を働いてるフッケバイン一家の逮捕を任命されました。相手は民間人、局員と関係なく殺害するような連中で、脅すような事は言いたくありませんが危険な任務になると思います。そんな任務であってもスカウトを受けてくれたみんなには感謝しかありません」

この前も、無人世界での開墾地区で住人と局員が殺害された。皆殺しやった。シグナムとアギトが何度か訪れてたし、殺害された局員の中にはシグナムの部下もおった。あれほど殺気立ったシグナムを見たのは初めやった・・・。

「管理世界だけでなく管理外世界の平和のためにも、ここに居る仲間が誰ひとりとして欠けることなく、必ずフッケバイン一家を逮捕しましょう! よろしくお願いします!」

そう挨拶してから敬礼をして、みんなも「お願いします!」と敬礼。部隊設立の挨拶はこれまでにして、早速フッケバイン一家についての情報を共有するために会議や。リインが各自のデスク上に展開されてるモニターに、判明してる情報を表示させる。
判明してるのは、古代ベルカの戦乱時代には確認されてたエクリプスウィルスなるものに感染してること。これは当時を何百年と生きたアインス達から提供された情報や。まぁ“夜天の書”関連は今なお秘匿情報やから、今ここで提供者はアインス達やと言えへんけどな。
それからフッケバイン一家の情報を確認し終えて、アインスが「続いて、これで最後になります」って手元のモニターを操作。

「先日、特務零課がフッケバイン一家と交戦したとのことで、対策室からその戦闘映像が提供されました。フッケバイン一家の構成員の名前や武装、病化によって得たと思われる能力が映っています」

対策室からフッケバイン一家の逮捕を任命された時、ルシル君とシャルちゃんとミヤビがフッケバイン一家と戦ってたことを知ってホンマに驚いた。日々の習慣である、おはよう・おやすみの通信で毎日顔は見てるけど、仕事の話は基本的にせぇへんからなぁ。

(今朝もルシル君やアイリと通信で、おはよう、今日も頑張ろう、って挨拶しただけや)

「うひゃ。シャルりんもルシルっチもミャーも容赦ないっスね。火の槍で地面に縫い付けたり、下あごや腕や足を斬り飛ばしたり、いろいろとおっそろしいっス」

「ウェンディ、しーっ。あと、シャルりんとかルシルっチとか失礼すぎ。絶対に本人の前で使わないでよ? あとミャーってミヤビ三尉のこと? 面識ないのに何考えてんの」

ウェンディの言うようにルシル君たちの容赦のなさに背筋がゾッとする。とはいえ、女剣士と半裸の男はダメージを瞬時に再生させてて、その様にアリシアちゃんが「病化による肉体高速再生」って引いた。たとえ運よくダメージを与えても瞬時に再生できる。ただでさえ魔力結合を分断されて魔法が通用せぇへんのに、あの再生能力もあって局は被害を被る一向や。

「ディバイダーの真の姿、リアクト状態か。通常でも面倒くせぇのにさらに強化されんのかよ」

「半裸の斧持ちはショートジャンプの使い手か。おそらく私かフェイト執務官でないと対処できないな」

「そうですね。トーレ一尉のライドインパルスや私の高速移動魔法で押し切った方が確実かもです」

半裸の斧持ちはリアクトするとゴツイ甲冑を身に纏って、片手斧も両手でやっとって大きさの戦斧に変わってる。それやのにあの鈍重そうな姿でも高速移動を行ってる。フェイトちゃんかトーレ一尉が相手するのが一番やろ。

「あの女剣士、結構な腕をしてるじゃない。魔力分断っていう能力を得たってだけで粋がってる連中って思ってたけど」

「ああ。だが、シャルの相手にはならなかったな。それも仕方がない気もするが」

「あたしの見たところアンタでも勝てるわよ、あの女剣士」

フッケバイン一家とルシル君たちの戦いは、ルシル君たちの一方的有利で進んでた。けど、ここで新手の登場や。ガトリングやロケットなどの重火器を使う女の子、双子っぽい兄弟、ドラゴン、腕をたくさん生やした男性、そして、銀十字の書物を持った女性。
これまであんまし名前も顔も武装も詳しくは判らへんかったけど、この映像でいろいろと判明したことは六課にとって最大の収穫や。

『待って、ルシル。じゃあ1つだけ。7年前、ヴァイゼンはユヴェーレン地区の遺跡鉱山で、あなた達フッケバイン一家の特徴である刺青を彫った男女2人組によって街の民間人が殺戮されるという事件があったの。それについて簡単に教えてもらえる?』

「「シャルさん・・・」」

「これ、トーマの故郷のことだよね」

「っス」

『・・・信じてもらえるか判らないけど、私たちの名前を騙ったり、刺青を真似たりして、半端な殺しをしてる偽者がいるのよ。私たちもそいつらを追ってるの』

リーダーと認めたカレンってゆう女性が口にした、フッケバイン一家の偽者がおるって話。カレンがルシル君に対して色目を使ってることに若干苛立ちながらも私は「とりあえず、偽者についても捜査が必要やな」って独り言つ。
そんで映像は、どこからともなく飛んできた砲撃が着弾した際に起きた爆発で、ルシル君たちとフッケバイン一家が吹き飛ばされたのを最後として終了した。オフィス内が一斉にざわつき始める中、アインスが「予め言っておきます」って言うてから、ルシル君たちが無事であることをみんなに伝えた。

「今朝、私はセインテスト一尉と通信で話してるので、無事なのは確かです」

私もそう伝えておく。みんながホッと安堵したのを見てから、「各自、フッケバイン一家メンバーの名前と顔、武装、戦い方をしっかり頭に入れたな?」って確認すると、みんなは「はい!」って力強く応えてくれた。

「よしっ! では本日よりフッケバイン一家の捜査を始めます!」

特務六課、フッケバイン一家の逮捕に向けて活動開始や。 
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