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曇天に哭く修羅

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第三部
  主義主張 2

 
前書き
毎回タイトル考えるのめんどくさい。
_〆(。。) 

 
紫闇が【音隼(おとはや)双式(ふたしき)】を発動。

初っ端からギアを上げる。

背部から噴き出す黄金に輝く魔晄の粒子で出来た二対四枚の翼に加えて蹴足での踏み込みが刹那で瞬崩の間合いへと導いた。

蒼穹の槍が動く。

紫闇は首を振って穂先を回避。

更に相手の懐を狙う。

対して槍の柄がしなった。

紫闇の体に叩き付けられる。

盾梟(たてさら)】で防御しようにも柄が触れる方が早かったので体が吹き飛ぶ。


(盾梟でなくとも普通の防壁は張っていたのにこれだけの衝撃とは。大した威力だ)


瞬崩は金色の穂先を向けて追撃。

紫闇の喉を目掛けて突き込む。

紫闇は咄嗟に音隼を使うと推進力を逆噴射に利用して飛行し距離を取る。

初めて紫闇と戦った時の瞬崩。

彼がまだ《佐々木青獅/ささきあおし》であり、小学生みたいな体で弱かった頃。

青獅は決められた縛りでも有るかのように突きしか出していなかった。

狂ったように攻めのみの一点突破。

そんな彼が技を身に付けて練磨し、今や紫闇と同等以上の高みに居る。

どれ程の地獄を味わえばたった二ヶ月ほどでここまで至れるのか。

紫闇は瞬崩を尊敬せざるを得ない。

紫闇が彼の周囲を回りながら探しても瞬崩に隙らしい隙は無いほど完成されている。


「近付かないなら此方(こちら)から行く」


瞬崩が間を詰めてきた。

しかし槍は振るわれない。


「上がれ。炎幕」


紫闇の足下から炎。

熱さと痛みが足を捕らえる。

紫闇は転がって足を抱えた。


「ぼくが強くなったのは体と槍の技だけじゃない。魔術師の【異能】もだ」


紫闇は瞬崩の言葉を聞きながら痛みに耐えて立ち上がり瞬崩と睨み合う。


(前の佐々木は槍先から炎を出すだけで操ることが出来ないレベルが低いものだったよな。範囲も威力も大したことは無かったはず……)

「今のぼくは自分を中心にした半径20メートル以内なら何処でも炎を出すことが可能。けどそれだけじゃないのは解ってるだろう?」


初対決した時の炎は防壁を張っていたとは言え貧弱だった頃の紫闇にも大したダメージを与えることが出来なかった。

しかし今の炎は強くなった紫闇が防壁を張っても苦痛を覚えるほど。


「今のぼくはかなり早く岩を溶かせる。マグマが1000℃から1200℃くらいらしいから、ぼくの炎は少なくとも倍の温度が出てるんだろう。まあきちんと炎の温度を計測したことは無いから勘になるんだけどね」


ただの物理的な炎ならば魔晄防壁が物理に強い特性で殆ど無視できる。

しかし異能の炎は防げない。

少なくとも今の紫闇には。

瞬崩の顔は無機質。

事実を言ったのみであり、誇りや驕り、傲慢さも感じられなかった


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(ちょっとは油断しろ! もう一人の俺に代わるわけにはいかないし……)


もう一人の紫闇ならば流れを掴んでくれるだろうことは解っている。

しかし彼は『人との繋がり』など考慮しないし間違っていた頃の紫闇より酷い。

紫闇が瞬崩に自分の信念が正しいと証明するなら力を借りるわけにはいかなかった。


「レイアさんが言ってた力は感じるけどまだ使えないっぽいし『あれ』しかないか」


焔には止められている。

紫闇自身も嫌な予感がする。

だが使わせてもらう。


七門ノ一(ヴィルス=ヨグ)

混沌の解放(ナル・シュタン)

我は虚無の貌に名を刻む(ヴォルグン・ナル・ガシャンナ)

大気よ唸れ(ヴオ・ゾルディス)

時よ止まれ(イルイス・カルラ)

刻む我が名は(ウルグルイ・ゼェム)

風に乗りて、歩む者(イタクァ・ザ・ウェンディゴ)


周囲の時が凍結する。

珀刹怖凍(びゃくせつふとう)】の力だ。

全てが不動。

音が(こだま)することも無い。

ただひたすら静寂の世界。

そんな世界で紫闇は瞬崩に向かう。
 
 

 
後書き
_〆(。。) 
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