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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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絶対的な責任

<浅瀬の祠>

長年、海中に沈んでいた祠は辺り一面水浸し。
そんな空間の中央に、奉られるかの様に台の上へ置いてある最後の鍵。
「これが『最後の鍵』かぁ………」
リュカが徐に手に取り、頭上へ翳し眺めている。
すると奥から1体のガイコツが現れた!
アルル達は即座に身構える………が、
「何か用ッスか?」
リュカが振り返り、緊張感無くガイコツへ話しかける。

「………何で驚かないの!?」
ガイコツなので表情は分からないが、リュカの反応に驚いている。
「何でって…此処に入った時から、居るの見えてたし…」
「いやいやいや!でも普通は驚くでしょ!?だってガイコツが動いたんだよ!?」
納得のいかないガイコツは、驚かないリュカに食って掛かる。

「う~ん…でも『腐った死体』とか、中身が空の『彷徨う鎧』とか、そんなのも居るし…ガイコツが動いたって…ねぇ?」
「ねぇ…って言われても……じゃぁさ、モンスターと思って見構えたりしないの?」
最初はアルル達にとって、恐ろしいガイコツに見えていたが、段々コミカルな愛らしい存在に見えてきたガイコツ。

「モンスターってさ、敵意があるから……アンタには敵意が無いし…」
「敵意って………何年前から此処で、みんなを驚かせるのを楽しみにしてたと思ってるんだよ!」
ガックリ項垂れるガイコツは、とっても可愛らしい。

「ごめんねぇ。台無しにしちゃったみたいだね!次の機会に頑張ってよ!」
「次なんかねぇーよ!最後の鍵を持って行ったら、こんな所に来る奴なんか居るわけないだろ!」
「そっかー…ごめんねぇ~」
ティミーなどはガイコツに近親感を持っている様だ。

「もういい…俺は役目を果たして、成仏するよ…」
「役目!?一体それは何ですか?」
疲れ切ったガイコツが、やっと本題へ入りかけた為、アルルが慌てて食いついた。
「え?あ、あぁ………ゴホン!では言うぞ!…その鍵は、世界に存在する全ての扉を開く事が出来る唯一の鍵!悪しき事に使わぬよう、心清き者が責任を持って所持する様心がけよ!」

「「「…………………………」」」
皆が静まり、ガイコツの行動を注視する。

「…………………………あの…以上ですが……何か?」
「何だよ!?それだけなのかよ!それだけの為に、長い年月こんな所に居たのかよ!?」
あまりの内容に、リュカが思わず文句を言う!
「そ、それだけって……重要な事だろう!その鍵があれば、お城の宝庫物庫からだって盗めるんだぞ!悪い事に使おうと思えば、幾らでも悪い事が出来るんだ!」

「あー、悪い悪い!その通りだね…大丈夫!絶対そんな事には使わないし、使わせないよ!だから安心して成仏してよ」
「うむ…頼んだぞ…」
そして役目(?)を終えたガイコツは、その場に崩れ去った…渋々。


ガイコツが消え去り、微妙な空気が漂う中、リュカが真面目な口調で語りかけてきた。
「みんな…さっきのガイコツだけど………頭は悪そうだけど言っている事は重要だ!そこで、この鍵の管理の仕方について、今此処で決めたい!」
「管理…ですか?」

「そうだティミー…重要な事だ!この鍵があれば、色々な悪事が出来る…だから今後、鍵を所持する人間を決める事にする。その人以外が鍵に触れたら、誰であれ罰を与える!」
『罰』の言葉に皆が真剣な表情になる。
「責任者には守ってもらう事がある!例え親しい人…親・兄弟・友人・知人…等、信頼出来る人の頼みでも、鍵を渡してはいけない!見せるのもダメ!」
「それじゃ、このパーティー内でも信じてはいけないって事ですか!?」
ティミーが憤慨混じりでリュカに突っかかる!

「そうじゃない…僕は自分の仲間を信用している………でも、僕等に化けて近付かれたらどうする?お前は100%見抜く事が出来るのか?」
「………分かりません……」
「うん。だから最初からみんなを疑うんだ。…この件に関してだけだからね!」
「なるほど…それは納得しましたが、誰が責任者なんですか?父さんですか?」
「僕じゃ無いよ。アルルだよ」

「……え!?私!?何で!?」
「だってこの世界の勇者じゃん!このパーティーのリーダーじゃん!」
「勇者って…ティミーだって勇者じゃないですか!しかも既に偉業を達成した…実績のある勇者じゃないですか!!それにリュカさんはその父親ですよ!しかも一国の王様の!責任者としてこれ以上ないじゃないですか!!」
「ティミーは…ダメだよ!コイツ直ぐ騙されるから…きっとリュリュに化けた魔族に、色仕掛けで騙されて鍵を盗まれるね!」
「ぐっ!…反論したいが…」
ティミーが唇を噛み、拳を振るわせてリュカを睨むが、反論出来ない…

「じゃぁリュカさんが年長者として、鍵の責任者になって下さいよ!」
「やだぁ!もし僕に鍵を託したら………僕は鍵を此処に置いて帰るね!他人に悪用されるくらいなら、自分も使えなくていい!此処に鍵を置き、水位を元に戻し、乾きの壺を叩き割る!永遠に海の底で燻ってもらうね!」
「な!こ、この鍵がないと今後の旅に支障が出るじゃないですか!どうするんですか!?」
「そんな事、僕には関係ないね!この世界の…アルルの世界の問題だろ!この世界を平和にしたいのはアルルだろ!?つまり、この鍵がどうしても必要なのはアルルだ!それなのに関係ない責任を押し付けるのは止めてくれ!」
リュカの正論に何も言えなくなる…

「ま、そんなわけで責任もって管理してくれ!」
軽い口調で言い、アルルの胸元からブラの中へ最後の鍵を滑り込ませるリュカ。
「ちょ、何でココに仕舞うんですか!?」
「………下の方が良かった?」
ゲラゲラ笑いながら祠から出て行くリュカ…

鍵の厳重管理に異議は無いし、管理責任者になる事にも不満は無い…ただ、責任を押し付けられた感がある事に、納得しきれないアルル。
そんなアルルを見つめ、申し訳ない気持ちでいっぱいのティミー…
リュカの血がもっと濃ければ、ドサマギでアルルを口説くのだろうが、この少年に期待するのはムリだろう…
もっと親密になりたいのに、その方法が分からないティミー。
父には剣術よりも、ナンパ術を教わった方が良いのでは?
妹に、そう溜息を吐かれる少年の前途は多難である…



 
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