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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第74話

~レヴォリューション・ブリーフィングルーム~

「あ、貴方達は”特務支援課”の……」
「それに鉄機隊のデュバリィ殿も何故この場に……」
ロイド達に気づいたアリサは驚き、ラウラは真剣な表情でデュバリィを見つめ
「フン、私はメンフィル帝国軍に所属しているのですから、むしろそのセリフは”メンフィル帝国軍にとっては部外者”である貴方達に向けられる言葉ですわよ。」
「ハハ…………俺達の場合はメンフィル軍がヴァイスハイト陛下を通して、俺達に”支援要請”を出して、俺達がその”支援要請”を請ける事にしたから、今回この場に”特務支援課”の代表としてリーダーの俺とサブリーダーのエリィ、それとティオが呼ばれているんだ。」
「何故メンフィル帝国軍が”特務支援課”に”支援要請”を出したのでしょうか……?」
ラウラの疑問に対して鼻を鳴らして反論したデュバリィに苦笑したロイドは自分達がいる理由を答え、ロイドの説明を聞いたガイウスは不思議そうな表情でレンに訊ねた。

「正確に言えばメンフィル軍が必要としているのは”特務支援課”じゃなくて、”ティオ・プラトーの演算能力”だから、ティオが所属している”特務支援課”に”支援要請”を出したのよ。」
「ティオちゃんの……?ティオちゃんがエプスタイン財団から”特務支援課”に出向している話は聞いてはいますけど、わざわざメンフィル軍が”支援要請”を出す程ティオちゃんの演算能力は高いのでしょうか?」
レンの説明が気になったトワは不思議そうな表情で訊ねた。
「当たり前じゃない。何せティオはその卓越した演算能力で”仔猫(キティ)”のレン相手に渡り合える程”ハッキング”の技術にも長けているのよ♪」
「そのわたしに”エイオンシステム”を使わせてまでヨナとの協同の”ハッキング”をする”原因”となったレンさんに言われるとか、当事者のわたしにとっては称賛ではなく皮肉な意味にしか聞こえないのですが……」
「ほほう?RF(ラインフォルトグループ)やIBC相手にハッキングできる程演算能力が長けているハッカーであるレン皇女殿下とも渡り合えるとは、さすがはトワとは別方面で”そそられる”女の子だね♪」
「一体何に感心しているの、アンちゃんは……」
レンの答えを聞いたティオがジト目で反論している中アンゼリカは興味ありげな表情をした後口元に笑みを浮かべ、アンゼリカの発言にその場にいる全員が表情を引き攣らせている中トワは呆れた表情で呟き
「つー事はメンフィル(おまえら)が”黒の工房の本拠地”に殴り込みに行く時にそこのティオとかいうガキのハッキング技術目当てで、そいつらにも手を貸させたのかよ?」
「正解♪」
「お前達はよかったのかよ?どう考えても、”警察の仕事の範囲外”なんじゃねぇのかよ、メンフィル(そいつら)が出したお前達に対する”支援要請”は。」
アッシュの推測にレンが笑顔で答えるとクロウはロイド達に訊ねた。

「それなんだが…………実はそうでもないんだよ。」
「以前”太陽の砦”でアルスターの民達を”口封じ”をする為に猟兵達と共に襲撃をした”黒の工房”――――――いえ、”地精”の長の”黒のアルベリヒ”は旧クロスベル独立国政権――――――”クロイス家”もそうだけど”D∴G教団”とも何らかの繋がりがあったと思われる発言をしたのよ。それで、その件についての事実確認を含めた黒の工房の調査の為にも、今回のメンフィル軍が出した支援要請は渡りに船だったのよ。」
「………そういえば”星杯”でも”彼”は”結社”や”教団”とやらも含めて、様々な組織と繋がりがあるような事を言っていたね……」
ロイドとエリィの話を聞いたアンゼリカはかつての出来事を思い出して呟いた。

そのために”私”は、あらゆる技術を集め、Ozにフィードバックし続けてきた…………!時にクロスベルの錬金術師から人造人間(ホムンクルス)の技術を盗みながら!時に暗黒時代の魔導師どもに魔煌兵の技術を与えて発展させながら!時に超一流の猟兵どもに武器を渡し、その戦闘データを取り込み…………!時に結社の十三工房に参画し、エプスタインの高弟にも取り入り…………!――――――時に大陸最大の重工業メーカー、ラインフォルトの力を利用しながら!

「あ……………………」
「アリサさん……」
アンゼリカ同様”星杯”での出来事を思い返したアリサは呆けた声を出して辛そうな表情をし、その様子をエマは心配そうな表情で見つめた。
「え、えっと………そちらのお二方はカレル離宮の時にもお会いしましたが、もしかしてお二方がセレーネちゃんのお姉さんと、そのお姉さんが仕えていてレン皇女殿下の姉君でもあられる……」
アリサの様子を見たトワは話を逸らす為にプリネ達に視線を向けて声をかけた。
「ええ。――――――こうして実際に会って話すのはこれが初めてになりますね。セレーネの双子の姉、ツーヤ・A・ルクセンベールです。セレーネがトールズに編入してから皆さんには随分とお世話になった話も聞いています。あの子の姉として、異世界に迷い込んできたばかりで右も左もわからなかったあの子の世話をして頂いた事……心より感謝しています。」
「ツーヤの”主”にしてメンフィル帝国皇女のプリネ・カリン・マーシルンと申します。今回の戦争では私のせいで皆さんに辛い思いをさせてしまった事、大変申し訳ないと今でも思っています。本当に申し訳ございませんでした……」
「どうか頭をお上げください……!今回の戦争の非はどう考えても我が国なのですから、殿下が自分達に謝罪する必要はございません……!」
「それに殿下は私達の為にレーヴェ殿とエヴリーヌ殿という自分達にとってはとても心強い戦力を派遣してくださったのですから、その事に心より感謝しております。」
トワの言葉に頷いたツーヤは自己紹介をし、ツーヤに続くように自己紹介をしたプリネはアリサ達に謝罪し、それを見たユーシスとラウラは謙遜した様子で答えた。

「………お気遣いありがとうございます。」
「さてと。一通り話は終わったようだし、そろそろ”本題”に入りませんか?」
「それもそうね。ロゼと”紅き翼”の”代表者”として”艦長代理”のトワお姉さんと”Ⅶ組担当教官”のサラお姉さんは空いている席に座って。他の人達は壁側に並べている椅子に座ってちょうだい。」
二人の気遣いにプリネが会釈をすると、クロードが提案し、クロードの提案に頷いたレンはトワ達を見回して指示をした。
「うむ。」
「わかりました。」
「………その前に一つだけ確かめたい事があるわ。以前トワ達がラマールで”新生軍”と出会った際に新生軍に協力しつつ情報収集をしている”蒼の深淵”の話だと、”リィン達の部隊は近々先行部隊として既に到着していたメンフィル本国からの援軍の部隊と合流して本隊とは別の軍事作戦が行われることになっている”との事だったけど……その”先行部隊”とやらは灰獅子隊(あんたたち)の事で、”本隊とは別の軍事作戦”とやらは”ノーザンブリアの侵略”の事だったのかしら?」
レンの指示にローゼリアとトワが頷いたその時サラは厳しい表情でレン達に訊ねた。
「――――――正解♪最後の”特異点”を探す為に帝都(ヘイムダル)、クロスベルでそれぞれのメンバーが活動しているその日にメンフィル軍並びに新生軍による”ノーザンブリア侵略”が行われ……侵略したその日にノーザンブリアの首都である”ハリアスク”は両軍によって占領、当然故郷(ノーザンブリア)を守る為にハリアスクでメンフィル軍と新生軍を迎撃していた”北の猟兵”達は一人残らず皆殺しにされて、敗色濃厚を悟って国外へと脱出しようとした”北の猟兵”達も皆殺しにしたから、実質猟兵団”北の猟兵”は崩壊―――いえ、”消滅”したと言っても過言ではないでしょうね。」
「な――――――」
「「「……………………」」」
「き、”北の猟兵達を皆殺しにした”って……!」
「それも戦意が折られた事で国外へと逃亡しようとした者達の命も奪っていたとは、何と惨い事を……」
不敵な笑みを浮かべて答えたレンの話を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中サラは絶句し、ロイド達は複雑そうな表情で黙り込み、エリオットは信じられない表情をし、ローゼリアは重々しい様子を纏って呟いた。

「”惨い”?北の猟兵――――――いえ、”猟兵という存在は畜生にも劣るゴミ共”なのですから、俺達は”ゴミ掃除”をしただけですよ。」
「そうだな。むしろこの世界に存在する大規模な猟兵団が一つなくなったのだから、猟兵団”北の猟兵”の消滅はこの世界の為にもなっただろうね。」
「まあ、今までは”故郷への仕送りの為という大義名分”で好き勝手していたようだが、メンフィル(ぼくたち)に手を出したのが北の猟兵(かれら)にとって運の尽きだったという訳さ。」
「りょ、”猟兵という存在は畜生にも劣るゴミ共”で、しかも”北の猟兵”を皆殺しにした事を”ゴミ掃除”って………」
「……………………」
「……………………リィン達も、彼らと共に”北の猟兵”を皆殺しにしたのか?」
苦笑しながら答えたディミトリの指摘、ディミトリの指摘にそれぞれ同意したフェルディナントとローレンツの話を聞いたアリサ達が再び血相を変えている中トワは信じられない表情をし、フィーは複雑そうな表情で黙り込み、ガイウスは複雑そうな表情でリィンに訊ねた。

「……………………――――――ああ。俺達の部隊もハリアスクに侵攻した際に多くの”北の猟兵”達を討ち取っている。」
「シュバルツァー…………」
ガイウスの質問に対して少しの間黙り込んだ後肯定の答えを口にしたリィンをデュバリィは複雑そうな表情で見つめた。
「……ッ!どうして…………どうしてあいつらに対して”そこまで”したのよ!?ノーザンブリアの滅亡はユミルと内戦の件があるからどの道ノーザンブリアが”詰んでいた事”には気づいていたから、諦めがついているわよ!だけど…………今までノーザンブリアを支えていたあいつらに猟兵を止めさせて別の道で生きてもらう道はあったはずよ……!ユミルの件であいつらに”報復”するのだったら、ユミルを襲撃した連中――――――いえ、アルバレア公に雇われていた連中だけを殺せばよかったじゃない!なのにどうして、あいつらを皆殺しにしたのよ……ッ!」
「サラ教官……」
するとその時サラはリィンの胸ぐらを掴んで涙を流しながらリィンを睨んで声を上げ、その様子をエマは辛そうな表情で見つめ
「……サラ教官はもし”北の猟兵”達を生かした場合、彼らに故郷を滅ぼしたメンフィルへの復讐心が芽生えないと思っているのですか。――――――かつてオズボーン宰相の政策によって生まれたクロウ達――――――”帝国解放戦線”のように。」
「!!」
「そ、それってつまり………」
故郷(ノーザンブリア)を滅ぼしたメンフィルに対する復讐心で”北の猟兵”達が第二、第三の”帝国解放戦線”にならない為にも、リィン君は”北の猟兵”を殲滅したという事か……まあ、”本来の歴史”でもノーザンブリアがエレボニア帝国に吸収された後は”北の猟兵”の一部がラマールで結社の協力を得て新型の”列車砲”まで利用したテロ未遂を起こしたという話があった事を考えると、その可能性は十分に考えられただろうね……」
リィンの指摘にサラが目を見開いている中リィンの指摘を聞いてある事を察したトワは不安そうな表情をし、アンゼリカは重々しい様子を纏って推測を呟いた。

「ええ。それにノーザンブリア滅亡の件で”北の猟兵”達の憎悪の矛先はメンフィルがノーザンブリアの侵略をすることを決めた要因――――――”ユミル襲撃”の地である”ユミル”に向けられる事は目に見えています。父さん達を……郷のみんなを守る為にも、”北の猟兵を滅ぼすしかなかったんです。”」
「まあ、さっきアンゼリカお姉さんも言っていたように”本来の歴史”でもノーザンブリアをエレボニアに占領された事で”北の猟兵”達の一部が、エレボニアにせめてもの一矢を報いる為にノーザンブリアを直接占領した領邦軍の本拠地である”ジュノー海上要塞”を襲撃したって話があるから、リィンお兄さんのその推測は間違いなく当たっていたでしょうねぇ。」
「ッ!!」
「リ……ィ……ン…………」
「両親を……領民達を守る為に遭えて心を”鬼”にして”ユミルにとって後の災厄の芽となる可能性が高い北の猟兵”達を殲滅したのか……一見すれば非情な行為ではあるがそれもまた、一種の貴族の義務(ノブレスオブリージュ)かもしれんな……」
「……どうやら今のアンタは完全にメンフィルにいた頃に呼ばれていた異名――――――”剣鬼”に戻っているようね……」
リィンの答えとレンの推測を聞いたサラは辛そうな表情で唇を噛み締めた後リィンを掴んでいた両手を離して肩を落とし、アリサは呆然とした表情でリィンを見つめ、ユーシスは重々しい様子を纏って呟き、セリーヌは目を細めてリィンを見つめて呟いた。

「あんたはメンフィルの”北の猟兵”に対する仕打ちに関して何も思うところはないのかよ、”神速”。あんたは”結社”の連中の中でも妙に正義感や良心があったように見えたんだが。」
「貴方は私をそんな風に見ていたのですか………――――――それはともかく、北の猟兵達もユミルの件に限らず故郷の為とは言え、様々な地での”猟兵”としての活動で民間人にも危害を加えた事もあるのですから、その”報い”を受ける事になってしまったとしか思っていませんわ。――――――既に連合によって滅亡寸前まで追いやられた”結社”のように。」
「デュバリィ殿………」
クロウの問いかけに対して顔に青筋を立てた後静かな表情でかつて自分が所属していた組織も例に挙げてメンフィルの所業を肯定している様子のデュバリィをラウラは複雑そうな表情で見つめ
「それと私はこれでもかつてはシュバルツァー達のような”辺境の貴族だった身”です。故郷を野盗達によって滅ぼされた身としては、都から離れている辺境に危機が訪れた際には助けがすぐに来ない事はその身で味わっていますから、戦後”ユミル襲撃”の件で北の猟兵達が故郷(ノーザンブリア)が滅ぼされた事でその滅ぼされる事になった要因である”ユミル”を逆恨みして北の猟兵達がユミルを滅ぼす事を危惧し、そうなる前に北の猟兵達を皆殺しにした事についても理解できますわ。」
「なっ!?し、”神速”が元貴族だって!?」
「今の話は俺達も初耳だな…………」
「そうね……そういえば”鉄機隊”の中でもデュバリィさんが一番サンドロット卿を慕っているように見えますけど………もしかして、デュバリィさんが”鉄機隊”の一員になる事になったきっかけはその件が関係しているのですか?」
デュバリィが口にした驚愕の事実にアリサ達がそれぞれ血相を変えている中マキアスは驚きの声を上げ、驚きの表情でデュバリィを見つめるロイドの言葉に頷いたエリィはデュバリィに訊ねた。

「ええ。私はとある国の辺境を収める小貴族の娘でしたが、突如故郷を襲った野盗によって家族を、領民の命を奪われ、私自身も野盗によって命を奪われようとしたところにマスターが助太刀し、せめて私が家族の命を奪った仇である野盗と一対一で戦えるよう、他の野盗達をマスター一人で”間引き”し……その後は仇を討った私を引き取り、今の私へと鍛えてくれたのですわ。」
「そういう事に関してはリアンヌらしいの……」
「そうですね…………それにその件に関しては今のリアンヌさん――――――軍神(マーズテリア)の聖騎士としての誇りを持つシルフィアさんも同じことをしたでしょうね……」
デュバリィの答えを聞いたローゼリアは静かな表情で呟き、ローゼリアの言葉に頷いたティオはシルフィアを思い浮かべた。
「ふふっ、だからこそご自身と境遇がいくつか似ているエリスさんの”師”となってくれたのですよね?」
「べ、別にその件と私個人の事情とは関係ありませんわよ!エリスの件はあくまで、マスターの頼みだから仕方なく鍛えているだけですわ!」
(そう言いつつも、”鉄機隊も灰獅子隊メンバーに加わることになっている”のですから、個人的にもエリスさんの事を気にしているとしか思えないのですが……)
微笑みながら指摘したプリネに対して頬を赤らめて反論したデュバリィに対してツーヤは内心苦笑していた。

「ハアッ!?そこのポンコツ女がそこの”灰色の騎士”サマの妹の師匠って一体何があってそんなことになってんだよ!?」
「誰がポンコツ女ですか、この金茶頭!」
驚きの声を上げたアッシュに対してデュバリィは声を上げてアッシュを睨み
「今の話は本当なのか、リィン?」
「ああ。黒の工房にとって想定外過ぎる起動者(ライザー)となったエリスが黒の工房に狙われている事を心配したサンドロット卿がデュバリィさんにエリスの”師匠”になる事を頼んでくれて、そのお陰でエリスは時間がある時にデュバリィさんに鍛えてもらっているんだ。」
「エ、エリスちゃんがデュバリィさんの”弟子”になったって事は……」
「当然生身もそうだが、”金の騎神”を使った戦闘能力もかなり向上しているんじゃねぇのか?」
「ほう……?騎神の件はともかく、エリスが剣士として飛躍的に成長している事は興味深い話だな。」
ガイウスの疑問に答えたリィンの答えを聞いてある事に気づいたエリオットは複雑そうな表情をし、クロウは疲れた表情で溜息を吐き、ラウラは興味ありげな表情をした。

「それよりもリィン。団長達ともノーザンブリアで戦ったって言っていたけど、どうして団長達はノーザンブリアに現れたの?」
「……………フィーは猟兵王が猟兵団”北の猟兵を立ち上げた人物”に恩がある事は知っていたか?」
フィーの疑問を聞いたリィンは静かな表情でフィーに訊ね
「ん……”その話”も団長達から聞いたことはあるけど、どうしてその話をリィンが……――――――!”そういう事か。”」
「俺達にとっても気になる話を聞くだけ聞いて、自分一人だけ納得すんじゃねぇっつーの。」
「フィーちゃんは猟兵王がメンフィル帝国軍とヴァイスラント新生軍によるノーザンブリア侵略時にノーザンブリアに現れた理由がわかるのですか?」
リィンの問いかけを聞いてすぐに察しがついたフィーに仲間達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アッシュは呆れた表情で指摘し、エマはフィーに訊ねた。

「ん……多分団長は”西風の旅団”を立ち上げた際に世話になった人物――――――元ノーザンブリア公国軍所属にして北の猟兵を立ち上げた人物でもある”バレスタイン大佐”への”義理”を果たす為に北の猟兵達を逃がそうと思って、ノーザンブリアに現れたんだと思う。」
「バ、”バレスタイン大佐”って事はもしかしてその人はサラ教官の……」
「ええ……あたしを養子にしてくれたあたしにとって誰よりも大切だったパパよ。」
複雑そうな表情で答えたフィーの答えを聞いてある事を察したマキアスは驚きの表情でサラに視線を向け、視線を向けられたサラは静かな表情で答えた。
「……待てよ?先程ノーザンブリア侵略の際に”北の猟兵”達は”皆殺し”にされたとの事だから、まさかリィン君はサラ教官の父君の命まで――――――」
「それは”絶対にありえない”から心配無用よ。そもそもパパは随分前の”仕事”で”戦死”しているもの。」
ある仮説に気づいたアンゼリカが複雑そうな表情でリィンを見つめて推測を口にしかけたその時サラは苦笑しながら否定の答えを口にし、それを聞いたアリサ達はそれぞれ血相を変えた。

「…………すみません、辛い事を思い出させるような事を口にしてしまって。」
「いいのよ、もう随分前の事だもの。――――――それよりもリィン。もしかしてメンフィルがノーザンブリアをこちらの予想を遥かに超えた速さで侵略した理由はパパと”猟兵王”の関係を知った上で、この状況でノーザンブリアが滅亡の危機に陥れば”猟兵王”がノーザンブリアに現れると踏んで”あまりにも速すぎるノーザンブリア侵略”を実行したのかしら?」
アンゼリカの謝罪に対して静かな表情で答えたサラは真剣な表情を浮かべてリィンに訊ねた。
「ええ。それとフィー。ノーザンブリアでの戦いの時に猟兵王が少しだけ口を滑らしてわかった事なんだが……猟兵王は3年前の”リベールの異変”の件がなくても、元々機会があればフィーを”西風の旅団”から抜けさせるつもりである事を猟兵王自身が言っていた。」
「!団長が…………他にも何か言った?」
サラの問いかけに答えた後に口にしたリィンの話を聞いて驚いたフィーは複雑そうな表情をした後真剣な表情になってリィンに訊ねた。
「いや……俺が知る事ができたのはそのくらいだ。その話の”続き”はフィーが猟兵王達に届いた時にするとは言っていたが。」
「そっか……ありがと。」
「―――いい加減”本題”に移りたいから、”もう終わった話であるノーザンブリアの話”はそのくらいにして、みんな席に座ってくれないかしら?」
リィンとフィーの会話が途切れるとレンが手を叩いてアリサ達に着席を促した。
「も、”もう終わった話”って、僕達にとってはそんな簡単にすませるような話ではありませんよ……!?」
レンの言葉を聞いたエリオットは反論したが
「フウ………貴方達は仮にも”士官学生”なのだから、”今の自分達の立場”をまだ理解できないのかしら?」
「……それは一体どういう意味だ。」
エーデルガルトが呆れた表情で溜息を吐いて指摘し、エーデルガルトの指摘を聞いたユーシスは真剣な表情で問い返した。

「一応今回の作戦は名目上俺達とお前達の”共闘”って形だが、実質”紅き(おまえたち)はメンフィル(おれたち)の作戦に便乗させてもらう立場”って意味だよ。」
「お前達は自分達の目的や安全の為に、レン皇女殿下にメンフィル軍の黒の工房の本拠地に対する軍事作戦の”共闘”を申し出たと聞いている。ならば、例え”共闘”という言葉を使っていようとも”どちらの立場が上”かは明白だろう。」
「それは…………」
「……ま、確かにそれに関しては反論できないね。そっちの作戦内容は知らないけど、黒の工房の本拠地に突入した際にかかる負担の比率は間違いなくそっちが圧倒的に大きいだろうね。」
クロードとドゥドゥーの指摘に反論できないラウラは複雑そうな表情で答えを濁し、フィーは静かな表情で呟き
「……ご指摘ありがとうございます。みんな、レン皇女殿下の仰る通り、着席して。」
「トワ……」
クロード達に会釈をしたトワはアリサ達に着席を促し、その様子をクロウは複雑そうな表情で見つめた後アリサ達と共に着席した。

その後アリサ達が着席すると、ブリーフィングが始まった――――――
 
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