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妖しきハーレム

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第一章

               妖しきハーレム
 エウロパ中央政府副首相メジュジーヌ=ド=アランソは名門貴族の家の主であるが異性との結婚はしていない。何故なら彼女は同性愛者だからだ。
 妻のコンスタンツェは女性であり家にいる者達も全て女性だ。彼女の家はそのまま彼女のハーレムとなっている。
 その彼女についてだ、ある新聞記者がインタヴューをした。
「副首相はお家のことは」
「もう決めているわ」
 アランソは記者に冷静な声で答えた。
「一族から養子を入れているわね」
「ではその方が」
「そう、彼が継ぐわ」
 そうなるというのだ。
「だから何の心配もいらないわ」
「そうですか」
「私は異性には興味はないわ」
 一切という返事だった。
「だから子供は為せないから」
「だからですね」
「もうそこはわかっているから」
「アランソ家のご当主としてですか」
「そう、私はね」
 まさにとだ、アランソは記者にまた答えた。
「アランソ家の主だから」
「そのことはですね」
「忘れたことはないわ」
 決してという言葉だった。
「だからよ」
「もうお家のことはですね」
「決めていたわ」
「あの」 
 記者は若い男性である、黒髪を奇麗に後ろに撫で付けており黒い瞳には理知を感じさせる。面長で彫の深い顔をしている。背はエウロパ成人男性よりやや高い。
「貴族の、それも爵位のある方ですと」
「同性愛者でもね」
「はい、異性の方を伴侶に選ばれ」
 そうしてというのだ。
「お子をもうけられますが」
「それは少しでも異性に興味がある場合ね」
 アランソはまたしても冷静に答えた。
「若し私もそうであったなら」
「それならですか」
「そう、私も殿方を伴侶に迎えて」
「お子をですね」
「そうしていたわ、けれどね」
 自分はというのだ。
「私は全くだから」
「異性に興味がおありでないので」
「それでね」
 その為にというのだ。
「私はね」
「最初から女性を伴侶に選ばれ」
「そしてね」
「養子の方を選ばれたのですね」
「そうよ」
 その通りだというのだ。
「最初からね」
「そうでしたか」
「とかくね」
 アランソは記者に今度は自分から話した。
「私は女性を愛するわ」
「同性愛ですね」
「言うならそれが私の愛だから」
 それ故にというのだ。
「これからもね」
「女性を愛されて」
「そうして生きていくわ」
 こう言ってだ、アランソはインタヴューを終えた。そうして実際にだった。 
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