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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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054話 文化祭編・開催2日目(01) まほら武道会・本選開始 その1

 
前書き
更新します。 

 



学園祭二日目の朝、俺達はまほら武道会に向かう為にそれぞれ下準備をしていた。
とうの俺はすでに会場内の選手控え室で待機中である。
姉さんとランサーはこのか達と観客席で見学だそうだ。
ちなみに今の俺の姿はただの…という訳ではないが娯楽も含まれているので聖骸布の外套は羽織らずにボディーアーマーだけの姿である。それでも十分抗魔力は備わっているが。
あの姿は異様に目立ってしかたがないからな。場違いにも程がある。
俺以外のメンバーといえば…
まず3-Aの武闘派集団である楓、古菲、龍宮。
刹那も後から来るのだから四天王はすべて出場するわけで俺の視線に気づいたのか三人はそれぞれ思っていることは違うとも不敵に微笑んでいる。
お次は端のほうでバレないようにしている黒いローブを羽織っている佐倉と高音。
昨日倒した田中さんと同型機のβ版。
エヴァはこの場にいないから後から来るのだろう。
そしてタカミチ。まだネギ君がいないというのに実に楽しそうに爽やかな笑みを零している。
だが、極めつけはやはりクーネル・サンダース…奴が何を目的にこの大会に参加したのか真意は分からない以上油断できない。
…また俺の方を見て神経を逆なでするような微笑を浮かべているので非常に殴り倒したい。
…この際、一般人であろう大豪院ポチと中村達也は思慮外にしておこう。一回戦目の相手が実に悪すぎて哀れだから。
そして最後らしくネギ君達が入ってきた。
それでフードで正体を隠している高音と佐倉は一瞬反応したがそれきりだった。

「おはようネギ君」

タカミチはネギ君が来たことに気づいて開口一番に話しかけた。
予想通りなので実におかしい。
だが茶化しはしない。タカミチも心待ちにしていた相手なのだから。

「タカミチ……」
「あっ、おはようございます!」

ネギ君が言葉を返すと同時に、アスナも便乗して挨拶している。

「昨日とは顔つきが違うね。嬉しいよ、今日ようやく君があれからどれだけ成長したかを見れるんだね」

タカミチがそう話しかけるが少し気圧されたのかごくりと唾を飲み込む音がネギ君の喉から聞こえる。
だがネギ君も怯んでいるだけでなく勇気を出して、

「……タカミチ、僕、今日はがんばるよ。父さんに負けないために。だからタカミチ、手加減はしないでね」

見事言い切った。それにタカミチが驚きの表情をして次に頬を緩ませて、

「ふふ……ネギ君『男の子』になったなぁ……でも、そんなに気負うことないぞ。君は君、お父さんはお父さんなんだからね。それに――結局、ちょっとは手加減しちゃうことになると思うよ。あんまり本気を出して魔法がバレたらこまるだろ? 君も気をつけろよ」
「あ、そっか」

それを見ていた俺の隣に小太郎がやってきて、

「そんなん気にせんでえーってのに。そうは思わんか? 士郎の兄ちゃん?」
「…ん。しかしやはり人の目もある。だから小太郎、間違っても獣化はするなよ?」
「わかってるって。にしても士郎の兄ちゃんはいつもの赤い格好はせんのやな」
「あれは一種の自己暗示…心構えの問題だ。このような表向きの場に戦場のものを持ち込むわけにはいかないだろう? そしておそらく分かるものには気づかれるほどの魔力が籠もっているから表沙汰に出すものでもない。だからこれだけで十分だ」
「ま、それでもいいけどなぁ。戦う時は手加減せぇへんでな!? ネギもいいきったんやから!」
「極力努力はしよう。俺の本来の戦いは剣術だからな。あまり期待はしないことだ」

それでアスナとタカミチがなにか会話をしていたのでなにかと思ったがそこで朝倉の声が響いてきた。
そこには朝倉とともに超鈴音もいて一緒にこの大会の説明をしている。
俺は方耳でそれを聞きながらもタカミチに話しかけた。
どうやら刹那も先に話しかけていたようだ。

(タカミチ、刹那…超鈴音についてはどうだ?)
(いや、今のところは動機や目的が分からない以上は様子見だね)
(そうですね。現状は偵察が限界でしょうね…)
(それよりタカミチ、やはり今はネギ君の方が気になるようだな? 顔を見れば分かるぞ?)
(ん? そうかい? まぁ、確かに今はネギ君との試合に気持ちが行っちゃっているかもしれないね)
(そうか…………まさか、アレは使わないよな?)
(さて、どうだろうね? どの道はネギ君次第だね)
(はぁ…たまにタカミチは童心に戻る時があるな…加減はしておくことだな)

それでタカミチとの話は終わりまた監視の目を向けていた。
そこに話についていけていなかったのか刹那が話しかけてきた。

(士郎さん、“アレ”とは一体…?)
(俺からは話せない。だがそれを使えばそれこそただの一般人なら余波だけで吹き飛ぶ…)
(はぁ…?)
(まぁどうせタカミチの事だ。本気ではないにしろ使うだろうからその目で見ておくのもいい経験だぞ)
(わかりました)

そしてやっとのことすべての説明が終わり俺達選手全員(エヴァは未だにいない)は闘技場控え席に通された。
だが覚悟はしていたがやはり観客が大勢いるこの場でほぼ全てといってもいい裏の世界の関係者が試合をすると考えるとまた頭痛がしてくる。
ほんとうに温すぎるのではないか!? と叫びたい衝動をなんとか抑えつつ俺は控え席に座る事にした。

『ご来場の皆様、お待たせ致しました!!只今よりまほら武道会・第一試合に入らせて頂きます』

そこに選手及び観客すべてに語りかけるようにマイクを持った朝倉が大声を上げた。
同時に能舞台の上に小太郎と佐倉が姿を現した。
だがやはり見た目ただの学生である二人に観客は野次を飛ばしてきている。
しかしそんなものは知らないといった感じに朝倉がうまく話を進行していく。
おまけで控え席にいたアスナとネギ君が声を上げた。
それに反応してようやく高音が頭だけローブを取って正体を明かした。

「おはようございます、ネギ先生。それに衛宮先生」
「ああ、おはよう高音。やっとローブを取ったな」
「ええ、いずれは取ることになるのですから別段問題はないだろうと思いましたので…」
「そうか」

俺が高音と普通に会話をしている中、ネギ君とアスナから声が上がった。

「あんたは……」
「昨日の魔法生徒の……なんでこんな所に!?」
「なんだ、知らなかったのか? トーナメント表の名前でもう知っていると思っていたが…」
「え、あ…確かにそうだけど。っていうか士郎さん知ってたの!?」
「ああ。昨日は同じグループだったからな。そういえば大会の出場の理由を聞いていなかったがなにやらネギ君を懲らしめるとか何とか言っていたが…」
「はい。衛宮先生は別の区域担当で知らなかったようですが昨日の一回だけ告白生徒が出てしまったのは知っていますでしょ?」
「そうだな。理由は知らないが未遂に終わったと聞いた」
「ええ、ええ…確かに未遂で終わりましたとも。ですが―――……」

高音の言葉は次の瞬間には紡がれる事はなく変わりにアスナと刹那が高速の勢いで高音を掴んで舞台裏に連れて行きネギ君も俺にお辞儀をしながら着いていった。
そしてしばらくして帰ってくると高音はなにかを言い遂げたのか満足そうに席に着いたが代わりに三人はアワアワしていた。

「結局なんだったんだ…?」
「いえ、私とした事が神楽坂さんとの約束を破るとこでした…とりあえず恨みはないですがネギ先生と戦う際は私も本気で行かせて頂くと伝えておきました」
「まぁ、それはいいんだが本気でなにがあったんだ?」
「衛宮先生はお気になさらず…これは私とネギ先生との問題ですから」
「そうか。なにか釈然としないがとりあえず頑張れとだけエールを送っておく」
「ありがとうございます」

(あっぶなかったわね~…思わずタイムマシンのことを知らない士郎さんにばれるとこだったわ)
(そうですね。確かに危なかったですから先ほどの行動はよかったと思われます)
(まったくよー…士郎さんにばれるって事はもしかしたら仲がいい高畑先生にあの痴態が耳に入っちゃうところだったんだから。士郎さんはそんな事はしないと思うけど…)
(本当に僕のせいですみません…)
(まったくよ!)


士郎と高音が会話をしている間、昨日の珍事件での話が再発してネギはアスナにこってり怒られていた。
そんなこんなで時間が経過して朝倉の『第一試合、Fight!!』という声で全員目を向けた。


開始の合図とともに二人とも構えを取った。佐倉のほうはなにやら箒型のアーティファクトを出現させたようだ。
一応武器としてカテゴリーされるものか。…ああ、某名家のマジカルアンバーを思い出すと寒気がする。
とりあえず解析して効果も分かったがあまり戦闘向きの武器ではないな。それはそれとして丘には登録したが…。
あれで仕込み刀が入っていたら面白かったのだがな…、見た目どおりの箒だとは。

「高音、一つ聞くが佐倉はあまり戦闘に向いていないのではないか? できても後方支援型だと読んだが…」
「ええ。愛衣は性格も大人しいほうですから確かにそうですね。ですがあの歳で無詠唱呪文も使えますからあの少年にも太刀打ちはできるでしょう」
「いや、小太郎を外見で判断しないほうがいいぞ? 最近は俺とランサー…―――世界樹広場で一緒にいた青い髪の男―――とで徹底的に鍛えているからな」
「なっ…」
「ま、見ていればわかる。小太郎が先に動くぞ」

そういった矢先に小太郎は瞬動…いや、もう縮地レベルの動きで一瞬にして佐倉との間合いをゼロにして下から掌底を繰り出した。
当然そんなものを今の小太郎の力でまともに受ければ致命傷だろう。
だが敢えてそれを空振りにして思いっきり腕を振った衝撃で起きた風圧により観客席まで響くがごとくブオンッ! という轟音とともに気づいた時には佐倉は空中10メートルはあるだろう空まで吹き飛ばされ器用にも手足をじたばたさせていたが抵抗は無駄に終わり舞台外の池にそのまま落ちていった。

『こ、これは―――? 小太郎選手、信じられないスピードで間合いを詰め……!? い、今のは掌底アッパーでしょうか!? 少女の体が10メートルは吹き飛んだーーっ!? これはエグい!?』

小太郎はその朝倉の言葉に「アホ、ただの風圧や」とぼやいていたが素人目にはさぞぶっ飛ばしたように見えただろう。
そして朝倉のテンカウントによって小太郎の勝利が決定した。
だがそこで終わればよかったのだが佐倉はカナヅチらしく溺れていてしょうがないといった感じで小太郎が飛び込んで助けに入っていた。
その際に、

『勝者の小太郎選手が手を差しのべます。微笑ましい光景に会場からも暖かい拍手が!』

と、朝倉がアナウンスしていた。
ふと隣を見れば高音は口をパクパクさせて呆然としている。
まぁ言葉を失う気持ちもわかる。
それをよそにネギ君は勝者の小太郎に手を振っていた。
そこで刹那が話しかけてきた。

「士郎さん、彼の動きは瞬動を通り越して縮地レベルになっていませんでしたか?」
「その疑問はもっともだ。最近は俺とランサーの動きに着いてこようと必死になっていたから自分でも気づかないうちに達していたのだろう…いや、本当に才能があって羨ましいことだな」
「それに伸び盛りですからさらに強くなりますね」
「ああ。いつかは追い抜かれてしまうだろうな…」

そうしみじみ俺は言った後、

「…さて、次はクーネル・サンダースの試合だな」
「士郎さんはあの方の正体が知りたくて参加したのでしたね」
「ああ。まぁもう正体は知っているからしいていうなら参加した真意といったところか?」
「正体を知っているのですか?」
「知っている。ああ…そういえば話していなかったな。奴は図書館島の時に現れた奴のことだ。本当の名は―――…」



―――まだ秘密にしておいてくれませんか?



気配も感じさせずに奴は俺達の後ろに現れた。
刹那はすぐに戦闘体勢を取ろうとしたが俺が手でそれを止めて、

「相変わらず神出鬼没だな。クーネル・サンダース…」
「ふふふ…さすがは衛宮さん。まったく動じないとは驚きました」
「殺気がないのだから一々反応してもしかたがないだろう? それで…? 俺をこの大会に焚きつけた理由を聞かせてもらえないか?」
「たんに面白そうでした、からという理由はダメでしょうか?」
「…捻り殺すぞ貴様…?」
「怖いですねー…それでは私は次の試合ですので退散します」

すると奴はまたしても一瞬で姿を消した。
まったく…いちいち神経を逆撫でしてくるな。本気で殺意が沸きそうだ。
気づくと刹那はとても引き攣った顔をしていた。
理由を聞くと俺と奴の間で火花が散っていて話しかけられなかったそうだ…。
なんでさ?と呟きながらも奴の戦いを観戦することにした。

…結果から言わせてもらおう。二回戦目。奴…クーネル・サンダースはある意味反則だ。
大豪院ポチという一般人の格闘家も勢いはよかったが所詮は表の世界の人間。
奴に敵う道理もなく最初はラッシュの嵐をお見舞いしていたが涼しい風が吹いたがごとくただのカウンター掌底一発で地に沈められた。
ただそれだけなら目を瞑ろう。だがやはりあの分身体は卑怯以外の何者でもないだろう?
攻撃しても通用するどころかすり抜けてしまうのでは話にならない。
最後にネギ君に向けて視線を向けるところやはりなにかを企んでいるように感じる。
…まぁそれはそれとして今はまだ戦わないのだから流しておこう。

お次は第三試合、楓と中村達也という武道家との試合。
ここで噂になり始めている『遠当て』―――いわゆる気弾を中村達也は放ち周囲は「本物か!?」とか「どうせCGだろ?」とかで盛り上がっていた。
だが楓は縮地を使いまたあっけなく第三試合も終了した。
ここまでは順当に進んできたところだろう…。
だがお次は古菲と龍宮との戦いだからまた騒ぐことだろうな。


 
 

 
後書き
まずはここまで。 
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