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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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036話 衛宮士郎の久々の休日(?)

 
前書き
更新します。 

 


ネギ君とアスナが喧嘩をしてから数日か経過した頃のこと、ネギ君達は雪広に南国リゾートに誘われたらしく今頃は南の島でバカンスをくつろいでいるだろう。
俺もネギ君達に誘われたがあいにくと学園長から呼び出しを受けていたのであえなく断った。姉さんだけちゃっかり着いていったのは別にくやしくはないぞ?
だがこれもいい機会だし二人が仲直りできるように祈っておこう。
それより仕事をしなければな。

「それで学園長。呼び出した理由は本国とやらに送った俺の作製した武具の件でしょうか?」
「ふむ、そうじゃのぉ。正直、評判が良すぎて依頼が何通か束で来ていたから困っておったんじゃ」
「そのわりに顔がにやけているのはどういったことでしょうかね~?」
「ふぉ!? いかんいかん! いやの、種類を指定してその手の腕が立つ鍛冶師にも何人か見せたが…皆お手上げらしいんじゃ」
「お手上げとは…?」
「いや、鍛冶師全員がどうやってこれほどの魔力と切れ味を秘めた武器や防具を作れるのか興味を持ってしまったそうじゃ。それで本国も軍にぜひ配備したいと豪語しての。なんでも資金と材料を提供するから指定した数分を作ってほしいそうなんじゃ」
「まさか、了解してしまっているわけではありませんよね…?」
「それはさすがに士郎君のことも考えるとまずいと思ったのでまだ返事は出しておらんよ」
「それを聞いて安心しました。さすがにそう何本も作る時間はないですから。エヴァの別荘を借りれれば話は別ですが…」

だがちょうど良くエヴァが学園長室にやってきてそれくらいならいいぞと言ってきた。

「…いつから聞いていたんだ?」
「そう目を尖らせるな。さっきの会話くらいだから安心しろ」
「ほぼすべてではないか…」
「それより別荘の件だが私は別に構わんぞ。ちょうどもう使っていなかった工房があるからな」
「そんなものもあそこにはあったのか…?」
「まぁな。主にチャチャゼロや姉妹達の武器を作るためのものだったのだが今は学園を出られんし使う機会もない。だから今頃は埃をかぶってるだろうな?」
「お前のことだからただで、とは言わないだろう?」
「わかっているじゃないか。なに、別に無理なものは注文しない。ただお前の血が吸えればそれだけで満足だ」

その一言で俺は冷や汗を掻きながら一歩後ずさりをした。
学園長はなにごとかと目をぱちくりとさせている。

「…のう、エヴァ? お主は男性の血はまずいから飲まないとかいっておらんかったかの?」
「その件だがな。ぼーやもそうだが士郎の血はそれはとても美味でな。ぼーやの血が少し値の張る赤ワインだとするなら士郎の血はまさに極上のそれだ。しかも魔力の回復量が伊達ではない…病み付きになりそうでならんな」
「ほうほう…エヴァがそこまで気に入るとはの?」
「その話は今はやめて頂きたい。背筋が寒くなる…で、だが献血程度で構わないのなら別に良いぞ」
「申し分ない。初めてお前の血を吸ったときの喉を潤す感度を思い出せばそれでも十分だ」
「……ちぃっ!? 地雷を踏んだか! それならば数滴「もう交渉はお互い成立しただろう?」…ぐぅっ!?」

しかたなく俺はそれで手を打つ以外手段はなかった。
姉さんが俺達の世界の等価交換の意味を教えなければこんなことには…。
いや、今更言っても手遅れか。

「それよりそんなに俺が作った武器達は好評がよかったのですか?」
「ふぉふぉふぉ、まぁの。魔法世界で人種が多く住む北の首都・メガロメセンブリアではそれはもう好評で『せめて名前だけでも!』と言われて苗字だけ教えてやったらたちまち『鍛冶師エミヤ』の名が知れ渡ってしまったんじゃ」
「そ、そこまで…」
「当然だな。宝具などという規格外のものを投影できる士郎が作るものなのだから妥当な反応だろう。ちなみに試作はどんなものを送ったんだ?」
「実はワシもそれは気になっておったんじゃよ」
「そうだな…? まずは出だしが肝心だから対実戦用と対魔法使い及び従者用の概念を組み込んだ大型と小型タイプの剣や槍、盾などを送ったな」
「なに…? 前者はともかく後者のほうはなにを参考にしたんだ?」
「なに…ここだけの話だけにするなら話すが?」
「いいだろう。じじぃも構わんな?」
「いいじゃろう。他人に話すのは実質士郎君の魔術の異常性をばらすからのぅ」
「ありがとうございます。で、モデルにした武器だがケルト神話に語り継がれるフィオナ騎士団の英雄『ディルムッド・オディナ』が使用したといわれる宝具。
真名を『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』…瞬間的に魔力による防御を無効化する槍のことです。よって実質的に物理防御でしか防ぐ手段しかなくなるというまさに魔法使いや従者には天敵の宝具だな」
「………」
「………」
「「なんだと(じゃと)!!?」」

学園長とエヴァは同時に声を上げた。
まぁ、確かにそうだよなぁ。そんなまたアンチな宝具をモデルにしたんだからな。

「まぁ落ち着いてください。さすがに試作だけあり切れ味と使いやすさを重点に置きましたからそれはオマケ程度の効果しかありませんから安心してください」
「それを聞いて安心したんじゃが…士郎君、本当になんでも持っておるんじゃな?」
「全部というわけではありませんよ。俺自身まだ知らない宝具はやまほどありますから…それに欠片でも残っていれば複製可能ですが今の時代、そんなものはほとんどが塵芥と化しているでしょう」
「宝具よりも、欠片からだけでも複製できるお前の方が異常すぎるだけなのでは…?」
「否定はしない…だが対吸血鬼や不死者専用を作らないだけでもありがたいと思ってもらいたいものだ」
「私達専用だと? それは前にお前が指に挟んでいた黒鍵のことか?」
「それもある、が…もう一つ強力なものがある。なぁエヴァ。ここで一つ質問だがゴルゴン三姉妹の逸話は知っているか?」
「ゴルゴンというと有名な話ならメドゥーサのことか? それが―――……まさか士郎。お前はあれまで投影できるとか言うのではないよな?」
「アレというとやはりアレのことかの…?」
「そう。アレですよ――投影開始(トレース・オン)

投影を開始して手に顕現させたものを見て二人は開いた口が塞がらないでいた。
そう、今俺の手には多様な宝具を使用した英雄『ペルセウス』が不死であるメドゥーサを退治した不死殺しの概念を持つ『ハルペー』が握られている。

「よせ! 私にそれを見せるな!? なぜかは知らんがそれを見ているだけで怖気が走る!!」
「むぅ…これほどとは! 凄すぎじゃぞ!!」
「ま、所詮は贋作だ…だからせいぜい斬られたら当分治癒魔法も受け付けず傷が残る程度かと」
「それだけでも末恐ろしいわ!いいからそれを早く消さんか!?」

さすがのエヴァもハルペーから伝わってくる魔力に寒そうな感じで体を震わせていた。
だから俺もさっさと魔力に返した。

「…ふぅ、しかし士郎君が味方で本当によかったと今は心底思っておるよ」
「同感だな。まさか私をも滅ぼせる宝具を持っていたとは…」
「そこは安心していいぞ。俺は私欲でこんなものを使う気はさらさらないからな」
「それは安心じゃな。む、そうじゃった。作る場所が確保できたのならちょうどよい。この用紙に書かれている分をもしよかったら頼みたいんじゃが…」

学園長から一枚の紙を受け取るとそれにはセットで同じものを何本とか色々記入されていて材料や資材もすぐに送ってくれるそうだ。
内容を確認しているとふと腕に痛みを感じたのでその方へ向くとエヴァが俺の腕を噛んでいた。
………なんでさ!?

「おい、エヴァ! 了解くらいはしろ!」
「うるさい! 私にあんな不吉なものを見せたお前が悪いのだから今回は別荘を提供する前金として十分堪能させてもらうぞ!」
「うおおおおっ!? なぜか凄い勢いで吸われている!? が、学園長―――ッ!!」
「すまん…」

即効で見捨てられた!?
それでまたしても糸で縛られ抵抗もできず俺はかなりの量を吸われて、代わりにエヴァは十分堪能したのか肌が艶々になっていた…。

「ふむ、やはりこれは美味だな。今後も頼むぞ、士郎」
「限度を、知れ!」

俺はヘロヘロになりながらも放った拳はたやすく交わされた。
わかってはいたがそれでもやらなければ気がすまないものがある。
だが血と一緒に魔力まで吸いやがったエヴァに俺は対抗する手段も思いつかないのでしかたなくあきらめた。
いずれは…! という決意を決めて今日は姉さんや刹那達もいない為、学園都市を散歩することにした。
まず向かった場所は学園の近くのコンビニ。
そこに着くといつも通りというか本当に存在感薄いなぁ…というウチの生徒であり幽霊でもある『相坂さよ』が一人で地面に座っていた。
………今更だがやはり目を酷使しすぎたか? まさか幽霊まで見えるようになるとは。それとも相坂が特別なのか…?
だから俺はまず駐車場に堂々とたむろっている不良生徒達を指導という名の強制排除にかかった。



……数分後、



「「「「すみまっせんしたー!」」」」

不良生徒たちは俺になぜか敬礼をしてその場を立ち去っていった。
だが去り際に、

死の鷹(デスホーク)…初めてみたけどこえぇぇ…」
「ばっか! あの人は漢の中の漢だぞ!?」
「やっぱ理想だよな…あの背中には俺、着いていきてぇ…」

など等、内容は定かではないが小声が聞こえてきたが別にさして気にすることでもないので聞き流していた。
それでコンビニの店員に感謝されながらも横目で相坂に挨拶したら嬉しそうな顔をしていた。
そして少し人気がない場所に移動、周囲に誰もいないことを確認後、

「またあそこにいたのか相坂」
『はい、士郎先生。でも嬉しいです…気づいてもらえるだけではなく話しかけてくれて…』
「いつも寂しそうにしているのだからこれくらいはしてやらんとな。クラスでも気づいているのは知っている限りエヴァくらいだろうしな」
『ありがとうございますぅ…でも士郎先生ってすごいですねー…』
「なにがだね?」
『私は嬉しいんですけど…私って存在感が本当になくてお祓い師や霊能者にも全然気づいてもらえなかったんですよ?』
「そうなのか…それは不憫だったろうな。ま、俺の場合は目を酷使し続けた代償っていうところか」
『代償、ですか…?』
「ああ、相坂はこちらの世界は……知っているよなー。普段からネギ君が魔法を暴露しまくっているし」
『あはは…はい、そうですねー』
「俺の場合は目に魔力を集中させれば最高4キロ先まで見渡す事ができるんだ。それで最近いい加減使い過ぎたせいでそれが普通になってきてしまったから少しばかり封印処理を施しているのだがな…」
『すごいですねー…』
「自慢できるものではないがな。それより今暇なら一緒に散歩でもするか?休日でも広域指導の仕事があり話し相手でもいないと退屈でな」
『あ、はい。ぜひ! ……あ、でも私自縛霊なので学園の近くしか出歩くことしかできませんよ?』
「ならば俺に憑いていれば平気だろう」
『でも…私は仮にも幽霊ですよ? 悪影響とかないですか?』
「その辺は大丈夫だろう。影響が出ても後で取り除けばそれで事足りるしな」
『はい…では失礼しますぅ』

相坂はそういって俺の背中にとり憑いた。ふっ…この程度の圧力ならまだ遠坂のガンドの方が強烈なのだよ?
それから相坂とともに学園都市の探索が始まった。


そして探索途中で南の島に行ったものだと思われた龍宮と出会った。

「やぁ士郎さん。休日だと言うのに見回りとは感心するな」
「別に…ただ今は暇だから連れと一緒に学園を探検中なだけだよ」
「連れ…? 見た所一人のようだが……いや、なにかにとり憑かれているみたいですね?」
「まぁな。別に俺から了承したのだから害意はないから安心しろ」
「しかし、私にも見えないものが士郎さんには見えるのかい?」
「そういえば龍宮も魔眼持ちだったな。俺の場合、酷使した結果だから」
「なるほど。刹那が言っていた目の事ですね?」
「ルームメイトだから話は聞いたのか」
「はい。なんでも私ですらスコープ越しで2キロがやっとだというのに裸眼で4キロ見渡せるとか…士郎さんはもう人間の枠に納まっていませんね」
「失礼だな。これでも人間やっているつもりだ」
「ふふっ…それはすみません。ああ、そうそう。もしそれ(・・)が厄介だったら依頼してくれれば祓いますよ?」
「待て待て。本当に平気だからその魔眼を光らせるな…」
「そうですか。では私は失礼しますね」

龍宮は遠ざかる間に一瞬だけ俺ではなく肩にいる相坂に向けて視線を向けたがそのまま立ち去っていった。

『こ、怖かったですー…あの人も私のことを少しですが気づいていたみたいですね』
「そうだな。あいつは依頼金があればなんでも引き受けるから相坂も注意しといたほうがいい。さて、気を取り直して次行くとするか」
『はい』



それであらかた回って最後に着いた場所は寮の近くの表向きは非営利の鍛冶場で俺の工房でもある場所だった。
せっかくなので相坂なら別に見せても大丈夫だろうと思い中に入れたのだが、

『な、なんかこの部屋の中はいっぱい武器がありますね?』
「ああ。武器を結界代わりにして一般人が入ってこれないようにしてあるんだ」
『結界とかよくわかりませんけどすごいですねー…』
「ちなみにむやみに触らん方がいいぞ?ここにある武器達はほとんどが霊的存在にも作用するものがあるから相坂でも危険だ」
『え゛!? は、はい…気をつけます!』

そのとき、ちょうど常連の客が入ってきたようだ。
行ってみるとカウンターにはガンドルフィーニ先生、刀子先生…それとタカミチさんも一緒にいた。

「どうしたんですか、こんな大人数で? 今日は学園長からは依頼は受けていませんけど」
「なに、士郎君の名が魔法世界に知れ渡ったと学園長に聞いたんで祝いに来たんだよ」
「さすが学園長だ。もう通達しているとは…」
「まぁ衛宮の作る作品は目を見張るものがあるからな。私も衛宮の作ったナイフをとても有効活用させてもらっているよ」
「私の刀も研ぎ直してもらった後に使わせてもらいましたが切れ味が抜群に飛躍していたのでとてもよかったです」
「それはよかったですよ。魔的付与も追加しておきましたから妖怪には驚異的だったでしょう?」
「ええ。感謝するわね、士郎先生」
「それより士郎君。一度君の鍛冶場兼工房を見せてもらえないかな?」
「な、なぜですか…?」
「いや、どんなものかとね。興味本位だと思っておいてくれないかい?」
「まぁ別に構いませんけど一つ注意を…乱雑している剣や槍、防具には一切触れないようにお願いします」

三人は正直に頷いたので中に案内した。
相坂は少し苦しそうだったので今は表の方で待機中だ。離れても憑かれていることには変わりないのだから大丈夫だろう。
そして案内したらしたで三人はそれぞれ思っていることは違うだろうが驚いていた。

「これは…すごいね。工房内が外からは分からなかったけどたくさんの武器で飾られている」
「それに一つ一つの武具がそれぞれ配置によって違う役割をしているようだな?」
「そしてすべてに魔力が籠められていて一般のものと比較できないものがたくさんありますね。入ったときの違和感はこれだったのですか」
「ええ。さすが目が利きますね。きっと俺が招かなければ強硬手段をとらない限りは入ってこられないでしょうね?」
「そのようだね…。でも魔法世界でもこれほどの鍛冶場はそうはないだろうと思う。これなら士郎君の作品が軍に配備されるかもという学園長の冗談も納得できてしまうなぁ」
「学園長がそんなことをいっていたのか? 高畑先生」
「さすがにそれはないのではないでしょうか…?」

三人して学園長のいっていることは冗談だろうと口々にいっているが…
…すみません。それ、わりと本当のことなんですよ。
証拠に学園長から渡された首都・メガロメセンブリアからの直接依頼の書き出しを見せたら三人は絶句した。

「す、すごいですね…」
「ああ、まさかこれほど有名になっていたとは驚きだ」
「俺自身も驚いているんですよ。まさかただの試作段階のものを送っただけでこれだけ好評価を受けるとは思っていませんでしたから」
「士郎君。ちなみにその試作はここにはもうないのかな?」
「最初の一振りの作品だけなら…これから大量生産しなければいけませんから残してありますよ」
「ぜひ見せていただけませんか!?」

刀子先生がすごい剣幕で近寄ってきたのでちょっと後ろに引きながらもその作品である剣、槍、ランスなどを工房の鍛冶場に置いてあるところから持ってきた。
それを見せた途端、三人の顔は真剣なものになった。
どうもやはりこちらのものには興味があるらしく何度か振ったりしてどういったものか試している。

「ふむ、確かにこれは高級品と一緒に並べても目立つものだろう。なにより篭められている魔力がすごい…」
「切れ味も私のものを上回るかもしれませんね。ですがなにか突起した効果などはあるのですか?」
「当然ありますよ。どうやって作成したかは企業秘密ですが、その作品達は切れ味や強度、使いやすさを今回は重点に置きましたが、最大の特徴は瞬間的ですが魔力的防御を掻き消す効果が付与されています」
「「「なっ!?」」」

…学園長にエヴァと同じ反応だ。三人ともまた目を見開いている。

「まぁ学園長には軍にだけと釘を刺しておきましたから悪用はされる心配はないでしょう。それに…悪用されたときの保険で、そのときには使用者の意思に反応して悪意かそれに連なった感情がわいてくれば一瞬で塵芥となる効果も施しましたからご心配なさらずにお願いします」
「抜かりがないな…。本当に衛宮は将来いい鍛冶師になれるだろうな。もちろん戦闘方面も信頼はしているぞ」
「後で一度試合をさせてもらっても構いませんか?」
「それはやはり学園長から経由してもらっても構いませんか、刀子先生?」
「ええ、構いません」




それから満足するまで工房を見学していったガンドルフィーニ先生と刀子先生は終止笑いながら先に帰っていった。
そして本題があるらしくタカミチさんだけその場に残っていた。

「さて、では士郎君。今更だがあらためて修学旅行の件はありがとう。僕も駆けつけられたらよかったんだけどね」
「気にしないでください。俺もみんなを守れてよかったと今は思っていますから」
「しかし君だけ重症を負ったという話を聞いたから心配したんだよ」
「ははは…まぁあれくらいなら慣れるのもどうかと思いますが大丈夫ですよ。このかの力で回復もしましたし」
「そうか、それならよかったよ。とりあえずお疲れ様、士郎君……いや、もう僕達の仲では堅苦しいかもしれないから士郎で構わないかい?」
「そうですね。では俺もタカミチと呼ばせてもらうけど構わないですか?」
「構わないよ。あ、あと敬語もなしでいいから」
「了解した」

そしてタカミチは祝いに持ってきたらしい一本のお酒を取り出したので少し待ってもらった。
どうしたんだい? と聞かれたけどそろそろ相坂も寂しがっている頃だろうと思い中に入れてやった。

「あ、相坂君。君も一緒にいたのか」
『高畑先生も私の事が分かるんですか!?』
「うん。君達のクラスを前までやらせてもらっていたからね。僕も気づくのには相当苦労したけど…士郎はすぐに気づいたようだね」
「ああ。初めて見た時は目を疑ったが今となっては話し相手にもなってやっている」
『はい。士郎先生、すぐに私のことを気づいてくれたんですよ。だから私とても嬉しかったです』
「そうか、それはよかったね。いつも寂しそうにしていたから心配していたんだよ。それじゃ相坂君は幽霊だから飲めないだろうけど気分だけでも味わっていかないかい?」
『いいんですか…?』
「構わんさ」
『ありがとうございます…うくっ…ひっく…』

相坂は話し相手ができたのがそんなに嬉しいのか泣き出してしまったので、俺は小声で「魔力、装填(トリガー・オフ)――全魔力装填完了(セット)」と唱えて霊力がこもった殺傷性はない礼装用の魔剣を装填して涙を拭ってやった。
それに相坂はもちろんタカミチも驚いていた。

「それが、エヴァの言っていた士郎の新しい戦闘技法の能力かい?」
「そうだ。霊力が宿った剣の魔力を体に装填したから今なら相坂に触れることもできる、こうやってな…」

俺は今も泣いている相坂の頭を撫でてやった。

『う、うれしいです…まさかまた人肌に触れる事ができるなんて夢のようです…』
「まだこれからだ。相坂は友達が欲しいのだろう?いつかネギ君達にも紹介しよう…きっといい友人になってくれるはずだ」
『はい…はい!』

相坂の目からとめどなく流れる涙は今はとても純粋に綺麗にうつっていた。
長年溜め込んでいて凍ってしまった想いが溶けていくかのように…
タカミチもとてもいい笑顔をしていた。正直に嬉しいのだろう。
それからは三人で色々な話をしながらお酒を楽しんだ。




それから数日後にネギ君とアスナは南の島から帰ってきたときには仲直りをしていたらしくよかったなと思っていた。
…追記すると相坂はあれから俺によく憑くようになった。
なんでもいるだけで気持ちが和らぐらしい。
俺が触れられるのも一つの起因だと思うがな。

 
 

 
後書き
士郎の従者候補に相坂さん、参戦。 
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