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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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032話 行動を開始した二人の異邦人(後編)

 
前書き
更新します。 

 



「ここは、どこだ…?」

いきなりこんなことを言ってどうしたのかと誰に問われてもおかしくはない状況だがそれでも俺はその言葉を吐くことしか出来なかった。
なんせ、先ほどまでエヴァと姉さんに会いにログハウスに向かったら二人が俺に後から来て地下にあるボトルシップに触ってみればいいとのお達しなので、その場に一人残されていたチャチャゼロに案内されながらその場所に向かってなにやらでかいボトルシップに触ったら……気づいたら俺が立っている場所はとても高い塔の上だった。
しかも周りには海がありまるで南国のような日差しが降り注いできていた。
呆気にとられている俺に頭に乗せていたチャチャゼロが笑い声を上げながら、

「ココハ御主人ノ別荘ダゼ」
「別荘…? まさかあのボトルシップの中にあったものが今俺の足元のモノか!?」
「ソウダゼ? サスガノシロウモ驚イタロ?」
「ああ…正直いってインパクトは相当のものだった」
「ダロウナ? ソレヨリコノ中ナラ俺モ自由ニ動ケルンダゼ!」

チャチャゼロは俺の頭から降りるとその体を自由に動かしていた。

「ふむ…結界はさすがにこの中まで縛れないということか」
「ソーナルナ。ダガ、ソレデモ本気ハ全然ダセネェケドナ」
「では相当しつこいのだな。登校地獄というものは…どれだけの馬鹿魔力をしていたのだ? ナギさんというのは…」
「サァナ? 少ナクトモ御主人ノ前デハ本気ヲ出シタコターネェナ? ソレヨリサッサトムカオウゼ? 御主人モカンカンニ怒ッテイルカモシレネェカラナ、ケケケ」
「そうだな。では案内を頼む」
「アイサー!」

チャチャゼロは返事を返して再び俺の頭の上に乗ってきた。
そんなに気に入ったのだろうか…?
そして案内されたらいきなり魔法の矢が合計30以上は飛んできたので干将莫耶ですべて防いでやった。

「いきなり魔法の射手をしかけてくるとは…やはり怒ったか、エヴァ?」
「なんの話だ? 私はなにもやってはいないぞ」
「ようこそ衛宮先生。マスターの別荘へ」

見た先には不動に腕を組んで立っているだけのエヴァとその隣に律儀に挨拶をしてくる茶々丸が一緒にいた。
それでは、一体誰があの矢を放ったというのだろうか? そこでふと…

「遅かったじゃない、シロウ! 一時間遅刻よ?」
「……………はい?」

声が聞こえてきたほうを向くと姉さんがその場に立っていた。
しかし、ただ立っているのではなくなにやら手には小さいステッキが握られていて、それに加え周りには魔法の射手を待機させているのか空中に浮かばせている姉さんの姿があった。
その姿にまた俺の思考は一瞬停止した。
だが、すぐに復活して、

「ね、姉さん? それは…まさか、魔法か?」
「そうよ。シロウ驚いたでしょう~? 私も魔法が使えるようになったのよ」
「では先ほどの魔法の射手は姉さんのか!?」

そこでクックックと微笑をしていたエヴァが俺の隣に立っていた。
すぐに気づくべきだった。チャチャゼロが動けるのだからエヴァも今は少なくても力は取り戻していることを!
だが、驚きはそれだけではなかった。

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック」

エヴァが呪文キーを唱えたがただそれきりでなにも仕掛けてはこなかった。
疑問に思いふと、なぜ呪文キーだけ言うのか? というだけなのかと思った矢先エヴァから伝わってくる感じがこちらの魔法使いではなく魔術師に酷似していたのだから。
それでたどり着いた答えはただ一つだな…と、冷静に俺の頭は理解し疑問が一気に晴れた。

「…等価交換したな?」
「ほう…すぐに気づくとは士郎もやるではないか」
「そうよね。普通シロウならもっとボケてくれると期待していたのに…」
「褒められているんだか貶されているんだかわからんが……まず姉さん、エヴァの魔術回路を開いたな? そして見返りにおおかた魔法を教わるとか、なのか?」
「そういう事! エヴァに教わっていたんだけど結構慣れれば出来るものね」
「確かにな…ここ数日でイリヤはとても初心者とは思えないほどの実力を開花させた。考えてみれば確かに納得できてしまうものだな。イリヤの魔力の許容量はぼーややあの近衛木乃香をも凌いでいるのだから」

それは当然だ。姉さんはアインツベルンの最高傑作とも言われ切嗣の血も継いでいる元はホムンクルスなのだから…。
だが口が割れてもそのことは言わない。姉さんが嫌がるからだ。
昔は誇っていたが、今はもう、一人の人として扱われるほうが好きだというようになったから。




―――閑話休題。


「それで私の始動キーは『ニー・ベル・ロー・レル・フリードリヒ』にしたのよ。シロウならもうわかるよね?」
「ああ、ローレライから取ったんだろう? 姉さんらしい始動キーだな。と、まあそれはいいとして前からなにやらエヴァと話し合いをしていたのはそのことだったのか」
「そうだな。士郎、魔術回路とはいいものだな。自身の魔力だけという制限がつくが私も起動時に呪いは効いているがそれでもぼーやを相手にもう負ける気はしない」
「本当か?」
「はい。マスターの魔術回路起動時はイリヤ先生から教わった“身体強化”の魔術を使えば元から展開されている魔法障壁ともいい具合に合わさって二乗以上の効果を発揮いたしますから」
「あ、そうだったな…あくまで登校地獄の効力は外側から魔力を受け取るのを妨害するといったものだったな。それなら納得だ。それよりエヴァ、では姉さんはどれくらい魔法を使えるようになったんだ?」
「それがな…イリヤはずいぶん物覚えがよく初歩の魔法はほぼ習得。さらに魔法障壁、及び武装解除、防御魔法の盾も使用可能。属性が『氷・水・光』とで相性もまぁまぁよい。
そして『水・光』から付随して回復魔法もかなり上達した。単純に後衛の魔法使いと前衛の魔法剣士でわければ完全に魔法使いスタイルだな」
「そして前衛は従者である俺が当てはまるわけか」
「そうだな。本当にお前達二人は相性がいいな。士郎にもよかったら教えてやってもかまわんぞ。どうせ魔法剣士スタイルになるだろうがな」
「いや、俺は今の力で充分満足しているからいい。それに俺は魔術師では『剣』という属性なのだからこちらでもろくな属性はつかないだろう。それに俺はこちらの世界では魔法より気のほうが得意みたいだからそちらを刹那かタカミチさんに教わることにする」
「そうか。ま、気が変わったらいつでも来い。教授してやるぞ?」
「その時があればな。それに今は契約の証であるアーティファクトの使い方もマスターしなければいかんからな」

俺は懐からカードを取り出して起動させた。
そして俺の手には大剣が握られている。

「それがお前のアーティファクトか。名はなんというのだ?」
「名は『剣製の赤き丘の千剣』だ」
「千剣だと…? 千がつくアーティファクトは奴以外に聞いたことがないが、ならそれのどこが千剣なのだ?」
「ならば、こいつの本領発揮といくか…」

俺はエヴァに不適な笑みを浮かべ同時に剣を地面に突き刺して、

「―――I am the bone of my sword(体は剣で出来ている).」
「えっ!?」

姉さんが驚いているようだがこれだけでもう準備は整った。

「さぁ、その真の姿を現せ…『剣製の赤き丘の千剣』よ」

俺の呼びかけと同時に剣は光を上げ俺を中心に竜巻が舞いおこり、それがおさまったときには回りに古今東西の武器がところ狭しと地面に突き刺さっていた。
しかもそれ一本でも相当の魔力を秘めていていつでも打ち出す準備は出来ている。そう、これは…

「固有結界!? いや、でもなにか違う…!」
「そうだ姉さん。別段魔力は使用せずともこれによって剣が何十、何百、何千といくらでも取り出せるようになった。当然本体は俺の手に握られているからこれを封じない限りは消えないというまさに俺にあったアーティファクトだ。さすがに宝具級のものは出現させるとなると俺の魔力も消費することになるがな」

するとエヴァがわらわらと体を震わせながら、

「これはラカンの持つ『千の顔を持つ英雄』と同種のアーティファクトか!? そしてそれだけでも凄いというのに宝具も出現させることができるとは…まさに剣製の名にふさわしいな」
「そうだ。さて…疲れたから戻すか。去れ(アベアット)…」

俺がカードに戻したら回りにあった剣達もすべて姿を消していた。
初めて全開で使ってみたがどうやらAクラスの宝具を投影して尚且つ真名を開放するよりは魔力は食わないらしい。

「だが、数だけあっても一撃の攻撃力にしては宝具より格段に下がるようだ」
「だろうな。それだけ神秘の塊である宝具が異常だということか。比べるのもおごがましいだろうな」
「それより、エヴァ。少しいいか?」
「なんだ、士郎?」
「なに、最近ネギ君が無性に古菲と一緒に中国拳法の特訓をしているのだが、エヴァに弟子入りをするという話ではなかったのか?」
「そのことか。なに、私に弟子入りをしに来たくせにすぐに違うものに目を移した奴が気に食わなかったので弟子入りの条件を茶々丸にカンフーもどきで一撃入れるというものにしてやったのだ」
「そうなのよ。それでエヴァってヤキモチ焼いちゃって」
「黙れ、イリヤ…」

それから姉さんとエヴァのにらみ合いが始まったが、なるほど…

「そうか。しかし、茶々丸に一撃など…ネギ君がいかに天才と言え一週間そこらで覚えたカンフーでは無理ではないか?」
「まぁな。才能の無いというお前のように長年かけて培って習得した様々な体術と修練・経験に比べれば奴は今毛ほども実力はなく才能に身を任せて溺れがちだからな。戒めのようなものだ」
「なるほど。才能があっても経験がなければどうしようもないからな。そこはエヴァのいうことも一理あるな」
「タカミチも魔法使いとしての才能はなかったからさぞ奴のことが羨ましいだろうな」
「タカミチさんが?」
「そうだ。あいつは魔法使いとして致命傷とも言える呪文の詠唱が出来ないからな」
「そうだったの…」
「ああ。だから昔にあいつはここで死に物狂いの修行をして今の力を手にしたわけだ。つまり士郎、お前と奴は才能がない点で言えば同類だな」
「………」

俺は無言でそれを聞いていた。ここでなにか言ってもタカミチさんの努力を侮辱してしまいかねないからだ。
それ以降は湿っぽい話はそこまでという様子で、それから違う話が色々と交わされてここは1日経過しないと外に出られないやら外ではそれが一時間しか経過していないと言うことを聞いて本当に驚いていると姉さんから試しに初歩でも唱えてみたら? と言われて、一度くらいは経験してみるかと俺は干将を投影した。

「ん? なんで詠唱するのにそんなものを投影するんだ?」
「教えていなかったが、これはもともと触媒用にも適した魔術兵装だ。だからこちらでは魔法の杖と同じ役割にもなる」
「そうだったのか。まぁいい、では唱えてみろ」
「ああ。確か…プラクテ・ビギ・ナル、炎よ灯れ(アールデスカット)…だったか? む…」

エヴァに聞く前に干将の剣先には小さいながらも炎が宿っていた。
さすがに俺も驚いた。まさか一発で成功するとは思っていなかったからな。

「すごいじゃない、シロウ。一発で成功するなんて」
「ああ…俺自身驚いている。だが恐らくこれ以上は年数かけないと完璧にものにはできないだろう」
「そうだな。イリヤに比べたらただ火が灯せただけならまだライターのほうが効率はいい」
「そうね。それにシロウはやっぱり投影での戦い以外は似合わないし…なにか他に素手でも戦える術ってないかしら」

姉さんは真剣になって考えているがこれ以上はどうしようもないのではと思っていたらエヴァから思わぬ提案が入ってきた。

「確か士郎。お前の使える魔術は『強化』『解析』『投影』以外にもう一つ『変化』があったな?」
「ああ。確かにあるがそれがどうかしたのか…?今まで使った機会といえば木を変化させて弓と矢にしたくらいだから使用頻度は低いぞ。後、使ったとしたら宝具の形を変化させたり、効果をただの剣に宿らせるといったものだな」

エヴァにその話と、改造した後のものとする前のカラドボルグを投影して見せたところ、少し考え始めて、出した言葉は「なぁ、それは形ではなく魔力の塊に変化まではできんのか?」ととんでもないことを言ってきた。
それは、さすがに無理だろう? と思ったが姉さんは「出来るかも…」と言い出した。
その意を聞いてみると元々魔力から作り上げるのだから形にする前の段階で工程を終了させればできるかもしれないと無茶を言う。

「そんなことをして中途半端に投影した武具はどうなると思っているんだ? おそらく爆発するぞ?」
「なに、簡単なことだ。士郎、それをお前が纏えばいいんだよ」
「ばっ!? 仮にも宝具だぞ!? そんなものを体に宿すなど自殺行為ではないのか!?」

とんでもない事を言ってくれるものだ。そんな発想はしたことはないがおそらく危険だろう。
だが、戦力になるかもしれないと姉さんも人事のようにいってくる。……人事か。

「大丈夫よシロウ。もし暴走しても私とシロウはレイラインが繋がっているんだからもしもの場合はすぐに私が止めてあげるわよ」
「任せた…失敗することは目に見えているがな」
「ええ。それで試しになにで試してみるの?」
「とりあえず宝具級は今はしないほうがいいから、なにかしら五大属性の力が宿っている魔剣か防具で試してみよう」


そういって俺はみんなから少し離れたところで、

「――投影開始(トレース・オン)

まず剣の丘から手ごろな魔剣を引きずり上げる。そしてまだ魔力から外に作り上げる段階で、

「――変化、開始(トレース・オン)ッ!」

そこで工程をいじりその魔剣を飽和状態にとどめた瞬間、俺の体内で魔力の塊となったものが暴れだしそうになる。
だが、それをさせないためにその魔力の塊の状態で外の世界に現界させる。
するとやはり中途半端だったのか俺の手には魔力の塊が形を成していて今にも壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)してしまうかもしれない状態であった。

「それを握りつぶして自身の体に流してみろ! 失敗して結構だからためしにやってみるがいい」
「無茶を言う…しかしこのままでもいつ爆発してしまうかわからんからな。駄目もとでやってみるとしよう」

暴走するなよ? と、とりあえず祈りながらそれを握りつぶした。
…その後はひどかった。まるで一瞬火に焼かれているような錯覚に襲われ眩暈がしたからだ。
だがそこはなんとか踏みとどまりその魔力を全身に流すようにして、今までとは言葉は同じでも意味合いがまったく違うものを唱えた。

魔力、装填(トリガー・オフ)――全魔力装填完了(セット)!」

くっ! どうなった!? どうやら死んでいないようだが…。
すると離れて見学していた一同からどよめきが上がった。
なにごとかと思い聞いてみようと思ったが自信の体の変化に思わず戸惑った。
今現在外面はさして変わったことはないが薄く魔力が体を纏っている。

「成功、したのか…?」
「自分で言っておいてなんだが…まさか成功するとは思っていなかったぞ。とりあえず聞いてみるがなんの効果がついている魔剣を纏ったんだ?」
「いや、風属性のついたものを纏ってみたのだが…」
「ねぇねぇシロウ! とりあえず動いてみたら!? 変化があるかもしれないわよ!?」
「そうだな」
「…おもしろそうだな。チャチャゼロ。行け…!」
「アイサー!」

俺が行動を起こす直前でエヴァがチャチャゼロを俺に差し向けてきた。
だからいつものごとく回避運動を取ろうと足に強化を施し体を動かそうとした次の瞬間、俺の視界には、誰も、いなかった。
はて? と思って回りを見回したら………気づいてしまった。真下の地面がなくなっていた。
いや、なくなったのではなく……俺が、地面のない場所まで移動してしまっていたのだ。
当然重力の足枷は俺を青い海が広がる真下へと落とそうとしてくる。



「おああああああああああーーーーーーーっ!!? あ、来れ(アデアット)!!」



落下し混乱する頭でなんとか千剣を出現させてそれを掴んでなんとか落下は免れた。
そのままゆらゆらと足場がある場所まで戻るとどっと力が抜けた。腰が抜けたとでもいえばいいのか。
そこに姉さん達が駆けつけてきた。

「シロウ、大丈夫!?」
「あ、ああ…なんとかな。しかしまさかただの一足であそこまで移動したのか…?」
「自分でも気づかずにあそこまで移動していたのか…?」
「ああ…そうみたいだ。む? どうやら体に宿した魔力が切れたようだな…あの移動で集中力が切れたのか霧散したみたいだ」
「さすが魔剣といったところか。宿しただけであれほどの身体能力向上を起こさせるとは…制御は出来そうか?」
「難しそうだな。なんせ一瞬のことだったからな…」
「ケケケ…イキナリ俺ノ視界カラキエチマッタカラオドロイタゾ、シロウ」
「はい。私の記録した映像でも衛宮先生の姿はうつっておりませんでした。まるで転移をしたかのごとく…」
「茶々丸やチャチャゼロも目視不可能だったのか?」

姉さんにも聞いてみたが確認できなかったとのことだ。エヴァはかろうじて見えたそうだが…さすが真祖。
しかし、なんだこの術式…?
ためしにもう一回やってみるか。
今度は先ほどの工程はもう覚えたので魔力の塊を体内に宿したまま、

魔力、再装填(トリガー・オフ)――全魔力装填完了(セット)!」

するとまた俺の体には薄い魔力が纏われていた。
なので今度は慎重になって体を動かしてみたらなんとか先ほどよりは移動距離は制限できたようで落ちないで済んだ。
ふむ、これは実はかなり効率がよいのではないか? 宝具を投影するより負担は軽そうだ。
しばらく俺は体を制御できるように動かしてみた。
すると移動距離が少しずつ減ってきた代わりにその分装填した魔力消費も減少した。
なるほど、魔力を制限すればそれだけ自分の移動したい距離を限定できて装填魔力の減少にも繋がるわけだな。
慣れた頃にはすでに何時間も経っていたようで申し訳ないと姉さん達の前に戻ったが、

「シロウ…新しく戦う術が出来たじゃない?」
「ああ…ずっと見学していたが中々いい見世物だったぞ」
「そのようらしい…まさかここまでうまくいくとは俺も思わなかった。ちなみにエヴァ、なにかぶち壊してもいいものとかはないか?」
「なんだ、やぶからぼうに? …まぁいいが」

エヴァは魔力を使い巨大な氷の柱を出現させた。
…さて、ではやってみよう。

属性、付加(エレメントシール)“火炎”(ファイア)……魔力、装填(トリガー・オフ)――全魔力装填完了(セット)!」

そして俺は氷の柱に拳を放った瞬間、それは砕けるどころか蒸発しすぐに溶解してしまった。
ふむ、なんとなくだが使い方は理解できた。
次は片手をかざし掌に体にまだ残留している装填魔力をすべて集めそれを秒単位で区切って開放した。
そしたら思惑通り掌から炎の玉がいくつも噴き出した。

「す、すごい! シロウすごいわよ!」
「魔法の射手以上の威力を持っていたな? 私が出した氷の柱も一瞬で溶解させるとは…」
「そのようだ。さしずめ“風”は大幅移動、“炎”は攻撃に特化、といったところか…まだまだ研鑽が必要そうだが、どちらにしても魔力を装填している状態なら魔法障壁の変わりになりそうだな。おまけに炎に関しては耐性がつきそうだ」
「新しい技法が出来たのはいいがそろそろ化け物じみてきたな? 瞬動を使ったときにはどうなることやら…どうだ、士郎? 本気で私の従者になってみないか?」

割と本気の顔になっているエヴァを見て俺は一歩後ずさりをした。
そこで姉さんが「駄目よ!」と止めてくれなければ危ないところだった。
エヴァは残念そうにしていたがなにか思いついたのか目を光らせた。あれは…よくないことを考えている目だ。

「なぁ士郎? 私がせっかく新しい技法の糸口を見つけてやり、しかも威力を試したいがために氷の柱まで作ってやったのだからその分の代価は支払ってもらっても文句はないな?」
「な、なにを企んでいる…!?」
「なに…以前イリヤにお前の血は美味しそうだという話を聞いてな?」

シークタイムゼロ脊髄反射で俺は姉さんの方を向いたが姉さんはすでに顔を逸らしていた。
くっ! なにエヴァに呟いているんだ姉さん!?
その間にもエヴァは迫ってきている。いつの間にか俺の体はなにかに縛られ動けないでいた。

「なっ!? これは、糸か!」
「ほう、よくわかったな? まぁ解析を使えば楽勝だろうな…さて、では代価に血をもらうぞ? 安心しろ。お前の世界とは違い死徒とやらにはなりはせん」
「そ、そういう問題では…!? そ、そうだ! きっと俺の血は鉄の味がするからまずいに決まっているぞ!」
「言動が混乱しているぞ?試してみなければわからんな。無駄な抵抗するよりさっさと捧げればそれで済むんだ。これでも安請け合いなんだぞ? 感謝しろ…」
「………」

まわりに助けを求めたが姉さんは本当にごめんと両手を合わせている。チャチャゼロはケケケと笑いながら「マーアキラメロ」といっている。茶々丸などは論外だ。
そして抵抗も出来なく俺の首筋にエヴァは噛み付いた。
な、なんでさー!?

…結果、俺は血を結構吸われてしまった。
エヴァが言うには俺の血は下手なワインより芳醇で魔力の回復量も凄まじいらしく何度でもいけるといっていた。
俺は内心かなり泣きそうになったが、まぁ確かに考えてみれば俺の今の体は橙子さんの最高級の作品でアヴァロンも入っているのだから血も美味いのかもしれない。
そんな事実は知りたくなかったが…。
これからは背後に気をつけねばいかないな?

 
 

 
後書き
士郎、新技法を獲得。 
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