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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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015話 新学期、対真祖編(02) パートナー探し

 
前書き
更新します。 

 

翌日、俺と姉さんは朝早くから学園長室に訪れていた。
理由は当然この世界の吸血鬼についてのことと、エヴァンジェリンについてだ。

「む? やはり来たんじゃな。士郎君、イリヤ君?」
「ええ、何点か。自分達との世界の違いの再確認と、あの吸血鬼、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルについて、を」
「真面目に答えないとまた落とすわよ、コノエモン?」
「ひぃ!?」

なんだ、あの学園長の怯えようは? 落とす?

「なあ姉さん? 学園長に図書館島の件のあとでなにをしたんだ?」
「……知りたい?」

その妖艶な笑みを浮かべている姉さんのセリフを聴いた瞬間、全身に電流が走り、ぶわっと脂汗が出て本能的にこの先を言わせてはいけないと警報が鳴り響いていた。

「イエ、メッソウモゴザイマセン……」
「そう? 残念ね、シロウにも教えてあげたかったのに…………直で」

学園長ではないが、ひぃ!?
この姉はほんとうになにをやらかした!?学園長がいまだに震えているし!片言だったが即座に拒否してよかった!

「そ、それより! 学園長!」
「な、なんじゃね! 士郎君!?」
「あ―――……まずは落ち着きましょう」
「そうじゃの……」

「ふふふふ……」

学園長と落ち着きを取り戻しているときにそこっ!? 怖い笑みを浮かべない!
それからしばらくして、

「では、気を取り直して……この世界の吸血鬼について聞きたいのですが」
「この世界ということは、そちらでもやはりいたようじゃな?」
「ええ。あのエヴァンジェリンとは比べ物にならない奴がそれはわんさかと……まあ、もう帰れない世界ですからいいとして、聞きたいことは一つですが吸血鬼に噛まれたものは同じく吸血鬼になるんですか?」
「ん? まあ物好きな奴は術を施して同類にする奴もおる。じゃが安心せい。もし噛まれたとしてもネギ君でも治療はできるぞ」
「それは、また羨ましい世界なことね?」
「そうなのかの? あ、それとエヴァンジェリンのことじゃがそちらも安心してよいぞ? なんせ悪の大魔法使いとはいっておるが女、子供は歴史上敵対したもの以外はいっさい殺したことはないからの」
「なるほど。ではまだ話し合いの余地はありそうだな。……昨日、黒鍵なんて出して悪いことをしたかな?」
「まあよかったんじゃない? それより私もそのエヴァンジェリンに興味を持ったかも?」
「昨日というとエヴァンジェリンがやはり動いたのかの?」
「ええ。ネギ君の血を吸おうとしたのでとりあえず返り討ちにしておきました」
「そうか。それでは士郎君一つ頼みごとがあるんじゃが、いいかの?」
「なんですか?」
「今回の件はネギ君の試練として見過ごしてもらえないかの? なにも殺しはせんじゃろうからな」
「それでは、もしネギ君が挫折してしまってもよいというお考えなんですか……?」

もしそう考えているのなら容赦しませんよ? という意思表示をこめて学園長を睨みつけてみたが学園長は怯みもせず、

「それは違うぞ? 人は誰しも越えねばならない壁がある。それがまさに今なんじゃ。それにどちらにせよ、いずれは決着をつけねばいけんからの。エヴァンジェリンは今では生きているかどうかも不明なナギが自分の呪いを解いてくれるのを待っておるがいいかげん15年も何度も女子中学生をやらされていれば焦ってもこよう?」
「15年も?」

それから学園長からナギ・スプリングフィールドとエヴァンジェリンとの過去の話を聞かせてもらった。

「そうなの。意外と女の子しているのね? 今でも想っているなんてねぇ~?」

姉さんは本当にいい顔をしながら笑っている。あれは弱みを掌握した会心の笑顔だ。敵とはいえ不憫な……。
しかし、そうなると事情が事情ゆえに学園長のいうことも一理あるからどうするか?
だが、

「ですが学園長。今回はネギ君の力になろうと思います。二人の事情に横槍するようで悪いと思いますが……ネギ君には協力すると約束をしてしまったのでね」
「そうか。では……」
「わかっていますよ。なるべくネギ君の力で解決させるよう助言していきますから。それにいつまでも他人に頼っていては成長はできませんから」
「それなら構わんよ」

そしてお互い納得した上でこの話は終了となった。
さて、こちらは殺しはしないと安心したが、今はまだ昨日のショックから抜け切っていないだろうネギ君が心配だな。


◆◇―――――――――◇◆


Side  エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル


朝の日差しが窓から照らしてきて私はだるいが起き上がることにした。
やはり力を使った翌日は人間並みの身体能力に戻ってしまうからやっかいなものだ。
気配がしたのでそちらに向いてみるとすでに茶々丸が立っていた。

「おはよう茶々丸」
「おはようございます、マスター」
「ケケケ。今日ハ機嫌ガ悪ソウジャネエカ、ゴシュジン?」
「うるさいぞ、デク人形が。昨日はもう少しというところで邪魔が入ったんでイラついているだけだ」

初代の従者で今では魔力を送ることができないので喋る人形と化しているチャチャゼロがなにかほざいていたのでムカついたからとりあえず投げといた。

「ヒデエジャネエカ? モット相棒ハ大事ニ扱ワナキャ駄目ダロ?」
「黙れ……それより茶々丸。衛宮士郎と衛宮イリヤについてあれからなにかわかったか? 本格的に調べたのは昨日だが以前から探りは入れていたのだからわかるだろう?」
「それが……」
「ん? どうした、お前にしては歯切れが悪いぞ?」
「そんなことはありません。ただ、衛宮先生とイリヤ先生についてですが該当件数は0です」
「な、に……? 0だと? なにかしらこの学園に来る前の足取りくらいはつかめなかったのか?」
「はい。魔法世界の方でもあたっては見ましたが、お二人はネギ先生と同時期にこの学園に来る以前のことはまるで霞がかかったかのように一切不明です」

茶々丸が言うなら本当なんだろうが、そんな話があるか……?

「そうか。ではあのじじぃが裏でなにかをしたかもしれないな。では他にはなにか情報は無いのか?」
「はい。イリヤ先生は本名、衛宮イリヤ。年齢24歳。麻帆良中等部女子寮の管理人と学園の保健の教論として勤めています。寮でも色々と相談に乗ってくれるということで信頼は厚い人物だと思われます。ですが現在はまだ裏の関係者というくらいしか判明しておらず魔法使いかも判別はできません」
「衛宮士郎は最初からこちらのことを気づいていたのだから裏方に徹しているのだろう? 見た限り衛宮士郎よりは強くなさそうだから後方支援型の魔法使いかなにかだろう? 衛宮イリヤのことは情報不足だが今は放っておいても心配ないだろう。それより衛宮士郎についてはどうだ?」

問題の奴を聞かないとな。

「はい。衛宮先生は本名、衛宮士郎。年齢23歳。英語の担当教論でネギ先生の補佐として副担任を兼任しています。
そしてイリヤ先生の弟でともに女子寮の管理人室で管理人として暮らしています」
「ほう……だが目の色や肌、髪色も違うから義理の姉弟か。しかし女子寮の管理人か。女である衛宮イリヤはいいとして男の衛宮士郎はよく今もいられるものだな」
「それですがマスター。最初は突然のことで寮内は混乱したそうですが、衛宮先生の人柄は誠実で温厚。管理人としての仕事はしっかりしており寮の清掃、生徒の相談、頼まれごとなどもちゃんと応えてくれてむしろ今では人気が高いです。
特技は料理と修理業。よく寮の生徒や学園長から壊れたものの修理を頼まれています」
「確かによくものの修理をしているところを見かけることがあるな。後、料理に関してはうなずける。
何度かあのお祭り騒ぎが好きなうちのクラスのガキどもに頼まれて作って私も頂いたことがあるが久しぶりに私の舌を唸らせた。
あの超や五月も負けたという顔をしていたのが印象に残っている。……なぜか奴のことを無性に欲しくなったな」
「イイ家政婦ニナルンジャネェカ?」
「姉さん、それは執事の間違いかと…」
「ドッチデモイイジャネエカ?」
「はあ……? それでですが生徒達には麻帆良のブラウニーと慕われている一方で、生徒指導員もやっていまして不良生徒にはその鋭い眼光から『死の鷹(デスホーク)・衛宮』、『白夜の鷹』などと呼ばれ、高畑先生と双璧をはっていて恐れられています」
「タカミチとか。っと、そんな表向きの情報はいい。当然あの時の映像も残されているのだろう?」
「はい。刹那さんとともに西の刺客が送り込んできた妖怪を掃討しているときの映像ですが、見ますか?」
「桜咲刹那と、か?」
「はい。刹那さんは一般のクラスの生徒たちより衛宮先生とよく喋っているようです」
「ふむ、奴がな。……まあ詳細は映像の後でもいい。見せろ」
「はい。では映像を再生します」

そして茶々丸の設置した撮影機で撮影した映像を見させてもらったが……驚愕の一言に尽きるな。
桜咲刹那は信頼しているようで一体ずつ確実に妖怪を倒していっているが竜宮真名でさえスナイパーライフルのスコープ越しでも2キロがやっとだというのに、衛宮士郎は裸眼でしかも洋弓で黒塗りの矢を手に呼び出し(マジック・アイテムなのか?)秒単位での射撃をし続けてそれは確実にすべて貫いている。
そして最後の一体を桜咲刹那が葬り刀を納めた瞬間、あたりの周囲に妖気が立ち込めて巨大な妖怪が姿を現して襲い掛かってやられたかと思ったが、それを先日に見たあの黒鍵を矢として放ち妖怪は剣を中心に燃え上がり還るのではなく“消滅”してしまった。
すると衛宮士郎が突如カメラのほうに向いたと思ったら3キロ以上も離れていたというのに一瞬でカメラは射ち抜かれてそこで映像は終了した。
馬鹿な!? この時間は夜で月も隠れていたんだぞ! それなのに気づいただけでなく破壊するなんて……魔眼持ちの化け物か?

「オオー!? イイ燃エップリダナ! 久シブリニイイモン見タゼ! 焼キ殺スナンテナァ……ケケケ、ゴシュジン、出来ルナラアイツト戦ッテミテエゼ!」
「お前が興味を持ったか。なら相当の奴だということは確実だな。ふふふ、本当に楽しくなってきたな」
「楽しそうですね、マスター」
「まあな。ぼうやより歯ごたえは有りそうだしな。では、さっさと食事をしていくとしようか、茶々丸」
「はい、マスター」


◆◇―――――――――◇◆


Side 衛宮士郎


ううむ、やはり案の定ときたか。ネギ君は昨日のこともあり意気消沈気味だ。
それを好機とみたのかエヴァンジェリンは登校はしているらしいが教室にはいない。
絡繰が言うにはサボタージュらしい。……と、いうか普通に話しかけられて逆の意味で驚いた。

「ネギ君、大丈夫かね?」
「あ。おはようございます、士郎さん……」

重症だな……ふらふらとしながら教壇へと歩いていったが倒れなければいいが。
そこに絡繰が話しかけてきて、

「おはようございます、衛宮先生。ネギ先生にも伝えましたがマスターは―――……」
「聞いていたから大丈夫だ、絡繰。それより昼間はしかけないのだな?」
「はい。そういうことはマスターは嫌いますから」
「ふむ。それはプライドの問題か」
「おそらくは……それでは」
「ああ。引き止めてしまって悪かったな」
「いえ、それと苗字ではなく名前で構いません」
「わかったよ、茶々丸」

少し会話をして茶々丸はお辞儀をして自分の机に向かっていった。
エヴァンジェリンといい昨日の件で甘く見られているというべきか? しかし……

「あ、あの―――……士郎さん」
「ん? なんだね、アスナ?」

アスナがネギ君に聞こえないように話しかけてきた。

(ネギの奴なんだけど、どうにかなりませんか? 朝からすっかりこの調子で……)
(そうだな。しかし酷なようだが……エヴァンジェリン達も正体を明かすという行動にでた以上、当然リスクはおった。
ならばネギ君もこれは有利とポジティブに考えて事件解決にあたってくれればいいと俺は思う。
二人の間にある因縁については第三者である俺達にしてみれば、これがきっとネギ君にとっての初めての壁に当たるのだろうからな。
それにいつまでも逃げているばかりでは壁を越えられず成長もできない、それにまた被害がでるかもしれない。
だから今は混乱していてうまく立ち回りできなくてもいい……考えすぎずに周りに頼るという行動もしたほうがいい)
(はあ~~……すごいですね。経験者は語るっていう奴ですか?)
(ああ。俺も昔はよく一人で躍起になって無茶したことは数えればいくらでも出てくる)
(士郎さんが? あんまり想像つかないな?)
(誰だってそういうものさ。だからアスナも相談に乗ってやってくれ)
(わかりました。あ、それで私でも無理だったら……)
(わかっている。相談は乗ってやろう)

それからなんとかネギ君を慰めて授業に入ったのだが、ネギ君のあのみんなを見る熱い視線はなんだ?子供とは思えないな。
するとしばらくしてため息をついている。

「和泉さんはパートナーを選ぶとして10歳の年下の男の子って嫌ですよね?」
「ぶっ!?」

思わず噴いてしまった……アスナも噴いているし。おいおい、ネギ君。また誤解を招く発言をしていないか?
むむぅ? しかしパートナーとは例の“魔法使いの従者(ミニステル・マギ)”というものか?この世界でのことはまだわからないな……。
それから話はエスカレートしていって俺からしてもわかるほどに脈はありだという生徒が名乗りを上げていた。雪広は別として。
ネギ君はなんとか誤魔化していたようだが顔を赤くしていては説得力が無いな。
そこで終わりのチャイムが鳴り、授業が終わりネギ君はふらふらとしながら教室を出て行った。

「ちょっとネギ!?」
「ちょっとアスナさん? ネギ先生はいったいどうしたのですか?」
「あ、ちょっとね。なんかパートナーが見つかんなくて困っているみたいよ?」

しょうがなく俺はアスナとネギ君を追ったが、それからまた教室が騒ぎになっていたようだ。

「アスナ……クラスのみんなを煽る発言は禁止な? また勘違い者が続発していたぞ?」
「あ、あはは……ごめんなさい」

それからネギ君とアスナとは別れて姉さんと寮に帰っているのだが、

「そう。やっぱり萎縮しちゃっているのね?」
「ああ。あれは中々すごい落ち込みようだったな」

文字通りそうである。あれから職員室でもどこか上の空で時折り、
「どうしよう……」や、「怖いよ……」などと、呟いているようで、ここのところはやはりまだ10歳の少年だと思ってしまう。
もし俺が10歳のときにネギ君と同じ場面に直面したらどうだろう?
……やはり逃げ出していたのだろうか? その時にはほんとうに何の力も無かったからな。

「ちょっと、シロウ、聞いてる!?」
「あ、ああ。なんだ、姉さん?」
「シロウまで考え込んじゃってどうしたのよ?」
「いや、俺も同年齢のときに同じ場面に遭遇したらどうしていたのだろうと考えていてね」
「そうなんだ。でもシロウだったらそれでも被害が出るようなら考えなしでそいつに突っ込んでいったと思うわよ?」
「そうかな?」
「そうよ!? シロウったら自分の命の勘定なしで勝手に手を出す癖はまだ治りきっていないんだから。昔なら尚更そうだわ!」
「はは……耳が痛いな」

と、そこに前からエヴァンジェリンと茶々丸が歩いてきた。
向こうも気づいたようでなにかと睨んできていた。

「衛宮士郎に衛宮イリヤか……なんでこんなところにいるんだ?」
「私達は帰っている途中よ、エヴァンジェリンさん。それにしてもいきなり呼び捨てなんて礼儀がなっていないわね?」
「なっ!? 衛宮イリヤ! 私を真祖の吸血鬼としってそんな口を聞いているのか!?」
「さぁなんのことかしら? それと私はそこまで聞いてないわよ?」
「くっ! なに戯言を言っている!? どうせ衛宮士郎から私のことは聞いているのだろう?」
「そうなのシロウ?」
「ぐぐぐっ!!」
「姉さん……からかうのはそこまでにしておいたらどうだ?」
「だってなんか彼女、アルトと似てない?」
「まあ……これで大人の姿にでも化けたら姉妹みたいなものだが」
「さっきからなにをいっている!? それにアルトとは誰のことだ!」
「企業秘密よ。話してもきっと知らないと思うから」
「貴様……八つ裂きにされたいか?」
「できるものならやってみたら?」

それから二人は言い合いを繰り広げているが……これはもし姉さんが小さいままだったら末恐ろしいことに発展していたのではないかと思うと心の底で安堵していた。
まさに今の二人はアカイアクマである遠坂とギンノアクマである姉さんが争っているような光景を彷彿とさせている。
さしずめエヴァンジェリンはキンノコアクマといった感じか?
そんなどうしようもないことを目の前の光景を分割思考で考えていたら、

「……なにを考えている、衛宮士郎?」
「……なにを考えているのかな? お姉ちゃん知りたいな?」
「二人とも意外に息が合っているんだな……? 別になんでもない。それより用事はいいのか、エヴァンジェリン?」
「そうだった……こんなことをしている場合ではなかった。癪だが聞いておこう。どうやらこの学園の結界を破ってなにかが侵入してきたようだがなにか知らないか?」
「いや? 知らな「ああ、さっきの変な小さい魔力反応のことね?」……い、って姉さん、気づいていたのか?」
「ええ。やっぱりシロウは気配を読むのは得意だけれど魔力探知はまだまだのようね?」
「すまないな。まだ姉さんと比べて小範囲しかわからないものでね」
「もう、そんなに拗ねないの」
「なんだ? 衛宮士郎は魔力探知は苦手なのか?」
「私に比べたら、ね? そこのところ勘違いしないでね? シロウは弟と同時に弟子でもあるんだから私のほうが得意に決まっているじゃない?」
「ふむ、そこを詳しく聞きたいところだが今は敵同士だから聞かないでおこう。それじゃなにか発見したらじじぃにでも差し出すことだな! それと衛宮イリヤ、この話の決着はいずれつけるぞ?」
「そう。期待しないで待っているわ。エヴァンジェリンさん」
「なんか貴様から名をそのまま呼ばれると馬鹿にされているようで嫌だな」
「そう? じゃフルネームは?」
「却下だ」

即否定とは。そんなにあの(・・)呼び方をされるのは嫌か? 本名、エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル。

「あら、可愛いじゃない? キティって?」
「その呼び方をしたら血を吸うぞ?」
「怖いわね。それじゃエヴァと呼ばせてもらうわ。シロウも構わないわね?」
「ああ、エヴァと……確かに響きはいいな」
「な、な!? なぜ衛宮士郎にも言わせるのだ!?」
「別にいいじゃない? シロウもこっちの方がいいって言ってることだし」
「ふ、ふん! 勝手にしろ!」
「ええ」

姉さんはどうにか言い返そうとしているエヴァンジェリン……もといエヴァに隙を与えず勝利を確信しているような笑みをしている。
それに感づいたのか悔しそうな表情で茶々丸を置いて先に行ってしまった。

「ふふっ……真祖と聞いてどういう奴かなと思っていたけど案外からかいがいのあるのね。ほんとうにアルトみたい」
「からかうのは程々にしておいた方がいいぞ? いつ牙を向かれるかわかったものではない。まぁあれなら完全に悪ってわけでもなさそうだ」
「そうね。それよりさっきの話だけど……なんか女子寮からその怪しい魔力反応が感じられるんだけど」
「そうなのか?」
「ええ」


 
 

 
後書き
Q:アルトって誰……?
A:月姫で有名なアルクェイドの姉のアルトルージュ・ブリュンスタッドの事です。 
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