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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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014話 新学期、対真祖編(01)  桜通りの吸血鬼

 
前書き
更新します。 

 


──Interlude


まだ桜が咲き誇る道中でもう夜だというのに一人の少女がなにかから逃げるように走っていた。

「は、はっ……はっ!」

だがそれは無駄なあがきのごとく少女は後ろから迫ってくる黒い何かに見えない力で足を転ばされた。

「きゃあっ!?」

そして少女は地面ではないが一本の桜の木に体を打ち付けてもう立ち上がる気力もなかった。

「出席番号16番、佐々木まき絵……お前の血液をいただく……」

黒い何かから声が聞こえ逃げていた少女、佐々木まき絵は恐怖に怯え、だが黒いなにかはお構いなしにまき絵に迫ってその口から生える牙を後ろに回り噛み付いた……!

「あ、いや……イヤ―――――ンッ!!」

噛み付かれて気を失う直前で叫び声をあげた。だが、その叫びを聞くものは誰もいなかった。
噛み付いた何者か以外には……。

「もう少しだ……」

黒い何かはそう呟き姿を消した。



Interlude out──


◆◇―――――――――◇◆


Side ネギ・スプリングフィールド


「3年!」
「A組!!」
「ネギ先生――――ッ!!」

(バカどもが……)
(アホばかりです……)

盛大にネギの歓迎と新学期に対しての言葉が響く中、前者は長谷川千雨、後者は綾瀬夕映が小言で呟いていた。

「改めまして3年A組の担任になりましたネギ・スプリングフィールドです。これから1年間、よろしくお願いします」
「はーい!」

よーし! 今日から新学期、まだまだ士郎さんに助けてもらってばかりだけど頑張っていかなきゃ!
まだ話していない生徒の方もいますがこれから話していけばいいですからね。
そういえば、佐々木さんが今日はいないなぁ? それに士郎さんも。

「ネギ先生ー!」
「あ、はい。なんですかハルナさん?」
「士郎さんがいないようだけどなにかあったんですかー?」
「士郎さんですか? 僕はとくに聞いていませんが……」
「それにまき絵もいないようだね?」

裕奈さんも言っていることですし、どうかしたんでしょうか?
そんなことを考えていると突然鋭い視線を感じたのでその方を見てみました。
するとその先には後ろの扉の近くの後部座席に座っている出席番号26番のエヴァンジェリン・A・K・マクダゥエルさんが僕のことをまるで睨むように見ていました。
一瞬ゾッとしたけどすぐに視線を外してくれた。な、なんだろう……?
だけどすぐにしずな先生が入ってきて、

「ネギ先生? 今日は身体測定ですから3-Aのみんなに準備をさせてください」
「あ、そうでした! では皆さん身体測定ですので今すぐに服を脱いでください!」

シンッ……

あ、あれ? 僕なにか変なことを? あ! 皆さんの顔が赤くなってる!?
そして桜子さんと風香さん、史伽さんが、

「ネギ先生のエッチーーーーッ!!」
「わーーーーん! 間違えました!!」

ううぅ、いきなり失敗してしまいました。
それからしばらく教室の外で待っていると亜子さんが走ってきて、

「ネギ先生! 大変やーーー!! まき絵が!!」
「え!? まき絵さんがどうし―――……」
「何!? まき絵がどうかしたの!?」
「わあーーーーーッ!!?」

いきなり下着姿のまま皆さんが扉を開けて出てきてしまいました! いけません! 英国紳士として女性の体を軽はずみに見ては!!
それからなんとか落ち着いた皆さんとともに保健室に向かうとそこには保健の先生のイリヤさんはいいとして、なぜか士郎さんがベッドで眠っているまき絵さんの近くで椅子に座っていました。

「士郎さん? どうしてここに?」
「なに。朝の巡回をしていたら桜通りに佐々木が木にもたれかかっていたので保健室に運んだんだ」
「そうなんですか。それでまき絵さんの容態は?」
「それは大丈夫よ、ネギ。ただ眠っていただけみたいだから」

イリヤさんが士郎さんの代わりに答えてくれました。
それを聞いて皆さんはホッと息をついていますが、これはただの眠りではありません。なにかの魔法の力を感じます。
どういうことでしょう?
少し考えにふけっていると何度か呼ばれていたのかアスナさんが頭を掴んで無理やり僕を正面に捻ってきました。正直すごい痛かったです。

「どうしたのよ、ネギ? さっきからボーっとしちゃって……」
「あ、なんでもないです。まき絵さんはただの貧血みたいだったみたいですので心配はありません」
「そう。それじゃ先に戻っているわね?」
「あ、アスナさん」
「なに?」
「今日は帰りは遅くなりそうですので先に帰っていただいて結構ですよ」
「え?う、うん……」

それからみなさんは教室に帰って保健室に残ったのは僕といまだに寝ているまき絵さん。それに士郎さんにイリヤさん。

「士郎さん、あの……」
「わかっている。姉さん頼む」
「わかったわ」

やっぱりお二人は気づいていたようでこの保健室に結界をはってくれました。本当に頼りになります。

「これでいいだろう。さて、ネギ君。きみも気づいていると思うがこれはただの貧血ではない。だからアスナ達にも嘘をいったのだろう?」
「はい。巻き込むわけにはいきませんから」
「今回はいい判断ね、ネギ。それで本当のことを言うとこれは人為的なものね。首筋を見てみなさい?」
「え? あ! なにかに噛まれた痕があります!」
「そう。それでネギ君、桜通りの吸血鬼の噂は知っているかね?」
「あ、はい。みなさんが噂していましたから話は聞いています」
「それは本当のことかもしれない。だから俺はこのことを学園長に相談してみる。この世界ではどうかはまだわからないからな」
「この世界、ですか?」
「なんでもないわよ、ネギ。それでだけど今日はもしかして一人だけで見回りをしようと考えていないでしょうね?」
「え!?」
「やはりか……ネギ君の考えはわかっていたよ。で、だ。今日は一人で行動するのではなく俺と行動しよう」
「え!? ですがまき絵さんは僕の生徒ですから……あた!?」

……い、いきなり頭を士郎さんにこつかれてしまいました。

「ネギ君。忘れているようで悲しいことだが俺はなにかね?」
「なにって、士郎さんは僕と同じで3-Aの副担任で……あ」
「そういうことだ。佐々木は俺の生徒でもある。だから協力しよう」
「す、すみません! そうでしたよね!」

うっかり忘れていて士郎さんに薄情なことを言ってしまいました。反省しないと。

「よろしい。では桜通りの公園で今夜待ち合わせをしよう。時間は6時くらいでいいか?」
「はい!」
「決まりだな。ではまたその時間になったら会おう。ネギ君はこれから授業があるだろう?」
「わかりました。では先にいっていますね!」


◆◇―――――――――◇◆


Side 衛宮士郎


「ネギ君はいったか」
「ええ。でも一人で解決しようと考えるなんて……まるで聖杯戦争時のシロウみたいね?」
「否定はしないよ。今ネギ君はあの頃の俺と同じで他人に迷惑をかけないで一人で解決しようと躍起になっているところがある」
「それはちゃんとシロウが補佐してあげるのよ? きっと相手はあの吸血鬼……」
「そうだな。いつ動くかと警戒していたが、ついに動き出したようだ」
「それよりマキエだけど……噛まれたようにしては大丈夫そうね?」
「やはりあちらとはなにかと勝手が違うらしいな。エヴァンジェリン・A・K・マクダゥエルはどちらかというと死徒というよりあの真祖の姫君と雰囲気が似ている」
「もしかしたらこちらの真祖かしらね?」
「まさか……まあ、用心に越したことは無い。今日はまずはネギ君とともに奴が現れるか見張るとしよう。姉さんも危険があるかもしれないから予備のコートを持参していてくれ」
「わかったわ」

それから俺は一度家に帰りフル装備でネギ君の待ち合わせの場所に向かった。


◆◇―――――――――◇◆


Side ネギ・スプリングフィールド

あれからアスナさん達とは別れて士郎さんとの待ち合わせの場所に待機していたんですが、悲鳴が聞こえてきたんで士郎さんはまだ来ていませんがしかたなく僕一人で飛び出していきました。
するとそこには襲われそうになっている宮崎さんがいたので、

「僕の生徒になにをするんだ!」
「!?」
「ラス・テル・マスキル・マギステル……風の精霊11人。縛鎖となりて敵を捕まえろ。『魔法の射手・(サギタ・マギカ・)戒めの風矢(アエール・カプトウーラス)』!!」

僕は宮崎さんを襲おうとした人に向けて束縛の矢を放ちましたが、その人はなにかを呟くと僕の魔法を魔法薬みたいな瓶を放ち打ち消した!? やっぱり相手は魔法使い!?
そしてその人が被っていた黒い帽子が揺れて飛び去っていくとその下からよく知った人物の顔が出てきた。でも、そんな!?

「あ、あなたはエヴァンジェリンさん!?」
「ふふふ……新学期に入ってからの改めての挨拶だよ、先生。いや、ネギ・スプリングフィールド。しかし10歳にしてなかなか……さすが奴の息子……」
「(この人、父さんのこと!?いや、それより!)エヴァンジェリンさん!どうしてこんなことを!?」
「ふふ……この世にはいい魔法使いと悪い魔法使いが存在するということさ!氷結・(フリーゲランス・)武装解除(エクサルマティオー)!!」
「わああああっ!?」

なんとか抵抗(レジスト)しましたが、僕の服は少し砕けて宮崎さんにいたってはほぼ砕けてしまいました!
そこにアスナさんとこのかさんがやってきて誤解されましたが、エヴァンジェリンさんが逃げてしまったのでお二人に任せて僕は追うことにした。
それにしてもいい魔法使いと悪い魔法使いが存在するなんて、どうしてそんなこと!
それに『奴の息子』という言葉が気にかかります。だからどうにかして聞き出さなきゃ!
それからなんとかエヴァンジェリンさんに追いついて風精召喚を使い寮の屋上まで追い詰めて、

風花・(フランス・)武装解除(エクサルマティオー)!」

武装解除をしたのはいいけど下着姿にしてしまったのは後で謝ることにして父さんのことを聞き出そうとしたら、

「お前の父、サウザンドマスターのことだろう? 聞きたいらしいがこれで勝ったと思うのか? まだまだ甘いな、ぼうや……」

すると突然エヴァンジェリンさんの背後に人らしき人物が降り立ってきた。仲間!?
いや、でも構っていられない!
それで僕は魔法を使おうとしたらデコピンで弾かれてしまった。
って、あれ!? この人は!

「紹介しよう、私のパートナーで『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』の絡繰茶々丸だ」

え!? そんな! 茶々丸さんがエヴァンジェリンさんの従者!?
それでエヴァンジェリンさんの従者の意味を聞かされ愕然としている僕に容赦なく茶々丸さんの手が伸びてきて捕まってしまった。

「ようやくこのときが来た……真祖であり『不死の魔法使い(マガ・ノスフエラトウ)』『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』とも呼ばれた私が、あのサウザンドマスターに敗れてからというものこの地に封印されこの15年間苦汁の日々を過ごすことになったんだ! だがぼうやの血をたらふく飲めばこのふざけた呪いもようやく解ける……!」

そんな! 呪い!? それに吸血鬼でしかも真祖!? も、もう頭がぐるぐるしてきた。
あ……! エヴァンジェリンさんが僕の首を噛んだ!? も、もうダメかも?

「ウチの居候に何してんのよーーー!?」

と、思っていたら突然さっきかなり離れた距離で別れたはずのアスナさんがエヴァンジェリンさんを蹴り飛ばしていました。

「き、貴様は神楽坂明日菜!?」
「え!? エヴァンジェリンさん!? それに茶々丸さんも!!? もしかしてあんた達がこの事件の犯人なの!?」
「……うるさいやつだ」
「ああ……マスター大丈夫ですか?」
「平気だ、茶々丸。それより神楽坂明日菜……よくも私の顔を足蹴にしてくれたな? もう少しというところで……許さん!!」
「え! ちょ!? ちょっと待って! なにこの展開!?」
「うるさい! この代償は高くつくぞ!?」

エヴァンジェリンさんから膨大な魔力があふれ出しました。僕がアスナさんを守らなきゃ! でも腰が抜けて……
その時、

「ほう……? それはどのくらい高くつくのかね?」

まるで風切るような静かな声で待ち合わせた頼もしい人の声……士郎さんの声が聞こえてきました。


◆◇―――――――――◇◆


Side 衛宮士郎


「貴様は、衛宮士郎!?」
「まさかとは思っていたが本当に真祖だったのだな? それより……大丈夫かね? ネギ君、アスナ?」
「は、はい。士郎さん。でもネギが……」
「放心状態といったところだな? まあ致命傷ではないから大丈夫だ」

俺が二人の心配をしていると「私のことを無視するな!」という声が聞こえてきたので、

「別に無視していたわけではない。さて、話をするとしようか吸血鬼の真祖、いや……エヴァンジェリン・A・K・マクダゥエル」

そして俺は指の隙間に挟むようにして黒鍵を両手に合わせて6本投影した。

「マジック・アイテム!? いや、違う! なんだそれは!?」
「わざわざ教えると思うかね?」
「くっ! まさか衛宮士郎がぼうやの従者についていたとは!」
「勘違いしているようだが俺はネギ君の従者とやらではない。アスナや君たちのクラスの副担任だ」
「ふざけているのか!?」
「なにを言う、本当のことだろう? それよりこれにどういった効果が秘められているのかはどうせ知っているのだろう? 偵察はばれないようにした方がいいぞ? 何度も見られていたのでいい加減うんざりしていたんだ」
「なっ!? 気づいていたのか!」
「当然だ。さて覚悟はいいかね?」

俺は多少殺気をこめながら黒鍵の投擲体勢に入った。
だが、それに瞬時に不利と感じとったのかエヴァンジェリンは茶々丸とともに屋上から飛び降りて逃げていった。

「逃がすとおも―――……ん?」

黒鍵を投擲しようとしたが突然ネギ君が俺の腰にしがみついていた。
どうやら緊張が抜けたのか恐怖心が表に出てきたらしく泣き出していた。
しょうがなくネギ君が落ち着くまで頭を撫でてやっていた。

「それにしても、士郎さん助かりました」
「気にするな、アスナ。当然の行動だからな。それよりネギ君を部屋まで頼む。途中まで送ろう」
「ありがとうございます。ほらネギ!いつまでも泣いてないで帰るわよ!?」
「こらこら。まだネギ君は体を震わせているのだからゆっくり帰ろうではないか?」
「そう、ですね」


◆◇―――――――――◇◆


Side エヴァンジェリン・A・K・マクダゥエル


どうやらまだぼうやは誰とも仮契約を結んでいないようだからまだチャンスはある。
当然、神楽坂明日菜も所詮はただの中学生。私達の敵ではない。
だが……衛宮士郎だけは違う。奴は最初から私のことを吸血鬼と気づいていた。それに3キロは離れて偵察していたというのにそれすらも気づかれていた。
極めつけはあの剣だ。あれは昔見たことがあるがよくエクソシストが使う名を『黒鍵』。私達吸血鬼にとって天敵といってもいい武装。
奴はエクソシストなのか? いや、そのような気配は感じない。では奴は一体なんなのだ!?

「…茶々丸。衛宮士郎と衛宮イリヤのことを念入りに調べておけ。厄介な敵には違いないからな」
「わかりました、マスター」

ふふふ……だが、この『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』である私がこの程度で臆したと思ったか? 時が来れば貴様など軽く倒してやる。覚悟しておくんだな衛宮士郎!
私は久しぶりの強敵に血がたぎる気分になっていた。
 
 

 
後書き
やっと戦闘らしい戦闘が見れますね。 
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