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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep27-Bアドゥベルテンシアの回廊 ~First Battle Line 2~

†††Sideヴィータ†††

あたしとシグナムが対峙するのは、復讐の炎に滾るカルド隊。すでにリインとユニゾンしたあたしと、アギトとユニゾンしたシグナムはバッチリ臨戦態勢だ。

「よくもここまで来れたものだ。だが、ここがお前たちの終焉の地となる」

「時間稼ぎを命じられているが、ちょっとした不注意で殺しても問題ない」

「そうだな。“わざと”でないならば仕方が無い」

時間稼ぎっつうのが気になるが、どっちみち向こうは端から()る気みてぇだし、返り討ちにしてやるまでだ。シグナムと視線を交わして合図。
カルドのリーダー、ガウェイン・クルーガーはシグナム。カルド・デレチョ、ジョシュア・エルグランドはあたし。残りのカルド・イスキエルド、ジータ・アルテッツァは、交戦中、手の空いているときに墜とす。

「アイゼン!」「レヴァンティン!」

≪≪Explosion≫≫

シャルロッテのカートリッジを1発ロードする。ドクンと胸が高まる。こいつはとんでもねぇ代物だ。身体中に奔るシャルロッテの神秘の魔力。今まで感じたことが無い高揚感。今なら何でも出来そうな気がする。

「(これが、魔術師の力・・・!)ハハ・・・」

つい笑みを漏らしちまう。胸の高まりを意識的に抑えていると、リインが『すごいですねヴィータちゃん。これが神秘なんですね』と話しかけてきたから、『ああ。アイツら、こんな風にいつも戦ってたんだな』と返す。
抑えるのも大変なこんな高揚感の中でアイツらは戦っていたんだ。見ればシグナムも同じなのか、表情には出しちゃいねぇが高ぶっているのが判る。“レヴァンティン”を一度振るって、「ふむ」って頷いた。

「お前たちには悪ぃが、あたし達は墜ちるわけにはいかねぇ」

「主の笑みを終の果てまで護り抜く。それが我ら守護騎士ヴォルケンリッター」

そうだ。だからカルド隊の復讐には応えられねぇ。それがさらに恨みを買うことになったとしても、あたしらはお前たちカルド隊を倒す。

「いくぜ! リイン! アイゼン!」

『はいですっ!!』≪Jawohl≫

「ヴィータに遅れを取るなよ、アギト、レヴァンティン」

『おうよ!』≪Jawohl≫

2人で同時に仕掛ける。カルド隊は散開して、あたしとシグナムの攻撃を避ける。

「ヴィータ、リイン。負けるなよ」

「シグナムとアギトこそ、はやてを悲しませるようなことになんなよ」

あたしはシグナムと顔を見合わせ、空いている拳を突き合わせる。シグナムがカルドとイスキエルドに向かったのを見送って、あたしもデレチョのトコに突撃する。デレチョは大剣を大きく振り上げたまま、あたしと同じように突撃してきた。

――テートリヒ・シュラーク――

「そぉぉらぁぁぁぁぁッ!」

――憎悪は何者にも消せず――

「おおおおおおおおおッ!」

気合と共に、デレチョに向かって思いっきり“アイゼン”を振り下ろす。向こうも竜巻状の闇色の炎を纏った大剣で迎撃態勢。ヘッドと刃が衝突。以前だったら、あたしは吹き飛ばされて“アイゼン”も粉々にされてた。だけど、今は違う。あたしも“アイゼン”も、きちんとデレチョと拮抗できてる。

「吹っ飛べぇぇぇぇッ!」

力比べなら負けねぇ。激しい火花を散らしながら拮抗を少しずつ崩していく。デレチョが「っく」って苦悶の声を漏らしたのが聞こえた。これなら勝てる。思いっきり振り切るようにさらに力を入れる。

「うっく・・・!」

デレチョは耐えきれなくなったのか自分から離れた。あたしはすぐさま追撃に入るために“アイゼン”をラケーテンフォルムへと変える。ヘッドのブースターが点火。その場で旋回して、一気にデレチョに接近する。

「逃がすかってんだ!」

≪Raketen Hammer≫

「調子に乗るなよ、ヴィータァァァーーーッ!」

――我に滾るは怨嗟の業火――

闇色の炎の斬撃をいくつも飛ばしてくるけど、今なら軌道がハッキリと読める。あぁ、遅い、遅ぇ。シャルロッテやセインテストの攻撃に比べれば断然・・・

「遅ぇぇぇぇぇッ!」

紙一重で避ける避ける避ける避ける。全部避けきったことでデレチョに最接近。回転して、遠心力いっぱいの一撃、ラケーテンハンマーをお見舞いする。咄嗟に大剣で防ぎやがったけど、デレチョは堪え切れずに吹っ飛んだ。

『ヴィータちゃん!』

「おう! アイゼン!!」

≪Gigant Form. Komet Fliegen≫

“アイゼン”をギガントフォルムに変えて、コメートフリーゲンを生成。1発生成するだけで激しく消耗するこの魔法も、リインのサポートとシャルロッテの魔力のおかげで、余裕で3発も同時生成できた。

『こいつはシャルロッテにマジで感謝しねぇとバチが当たるな』

『そうですね。シャルさんに、ちゃんとお礼を言いたいですね』

リインが寂しそうにそう返してきた。それが叶うか判らねぇが、もしまだシャルロッテが還っていなかったら言いてぇな、ありがとう、って。そのためにはまず、コイツらを倒さねぇと。“アイゼン”のヘッドでコメートフリーゲンを打ち出す。

――慈悲すら許さぬ業火――

デレチョは大剣を連続で突き出して、闇色の炎の槍でフリーゲンの迎撃に入った。だが、その隙がテメェの敗北を呼ぶ。食らいな、全てを粉砕する、あたしの一撃を。

「『轟天爆砕!!』」

――ギガント・シュラーク――

巨大化した“アイゼン”の一撃を、デレチョに向かって振り下ろした。

†††Sideシャルロッテ†††

“ヴォルフラム”から出撃して、最初に私が当たったのは幹部じゃなく“アギラス(連合統一言語で、鷲、って意味だ)”。人格型のAI搭載の戦闘機編隊。クロノの部隊と“五課”の支援部隊も頑張っているけど、次々と現れる“レジスタンス”の波の所為で対処しきれていない。エースかストライカークラスの魔導師でないとダメだなんて、これは少し厄介だ。

『スバル、ティアナ。あなた達も下を少し手伝って』

2人の戦う相手であるクイントさんとティーダが居ないことで、2人を支援部隊の援護に回す。地上に居る2人から『了解!』との返答。

『こちら特務六課、シャルロッテ・フライハイト。同隊スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター。クラウディア武装隊及び特務五課の支援部隊の援護に入ります』

『いいのか、シャル。そっちも大変なんじゃないのか?』

クロノからの念話だ。すっごい久しぶりな感じ。エイミィとは上手くやってるの?とか、子供は元気?とか聞きたくなったけど、生憎と今は実戦の最中。

『問題ないよ。私たちを誰だって思ってるの?』

『フッ、そうだったな。判った。援護、感謝する』

念話が切れる。さて、やってやりますかっ! 気合を入れるために両手で頬をパンッと叩く。

『出来るだけこちらで受け持つから、そっちも頑張って!』

『あ、はい! お願いしますっ!』

離れた場所に居る航空隊員たちに激励を送る。すると何か興奮気味な男性隊員がそう返してきてくれた。私はもう1度「一緒に頑張ろう」って言うと、離れた場所から「おおおおお!」って雄叫びが聞こえた。
あはは、まぁ頑張ってくれるならそれでいいや。さて、私の視界に入る、こっちに突き進んできた“アギラス”から今のところ神秘は感じられない。だから“キルシュブリューテ”を使うまでもないかな。

「トロイメライ、準備は良い?」

≪Ja≫

この世界での相棒“トロイメライ”を手に、“アギラス”を見据える。

山羊座部隊(カプリコルニオ)リーダーより各機、エース狩りだ≫

≪雑魚に構うな。特務六課の魔導師を最優先に仕留めろ≫

蠍座部隊(エスコルピオン)の二の舞は踏むな。情報通りならば、この女が例の部隊の最強だ≫

“アギラス”の声が耳に届く。カプリコルニオ、蠍座。それがコイツらの部隊名のようだ。あと私のことはすでに知れ渡っているみたい。まぁ3日目となればそれくらいは当然か。オーレリアじゃ幹部相手に暴れたし。

「掛かってきなさい。その翼を墜としてあげる」

8機編成のカプリコルニオとの距離が徐々に縮まる。私は動かない。向こうからわざわざ来てくれるんなら、それを真っ向から迎撃するのみ。カプリコルニオ全機の前面にヨツンヘイム魔法陣が展開される。魔力砲か。んでもって防御が対魔力フィールドAMF。これは普通の魔導師にはちとキツイ。だけど・・・

「こっちはお前たちのようなモノとも何度も戦ってるんだ・・・よっ!」

――光牙飛月刃(シャイン・フリーゲン)――

先制攻撃。真紅の魔力刃を8閃と放つ。狙いはエアインテーク。魔力と空気を供給する戦闘機にとって最重要部位。だけどまぁそいつらはそれなりの機動力で回避するわけで。

「なるほど。まぁ疾いのは判った」

回避運動と共にぶっ放してきた黒い砲撃8発。威力は大体AAA-あるかどうか。武装隊の一般的な隊長より上だ。でもこれでも出力を押さえている可能性も視野に入れておく。

(それでも私の敵じゃないけどね)

――光牙月閃刃(シャイン・モーントズィッヒェル)――

魔力を纏わせた“トロイメライ”で、砲撃を斬り裂いて霧散させていく。ヨツンヘイムの魔法陣からしてちょびっとでも神秘でもあるのかと期待したけど、なんてことは無い。単純、現代の魔力だった。当然、私の敵じゃない。

「3枚に下ろされたい奴から来なさい!」

“トロイメライ”の剣先をカプリコルニオに突きつける。

†††Sideシャルロッテ⇒エリオ†††

「よぉ、騎士エリオ。そんで、そのパートナーの竜召喚士キャロ」

僕とキャロの前に現れたグラナード。そしてパートナーのフォヴニス。グラナードはフォヴニスの頭の上で腕を組んだままこっちを見下ろし、僕たちに挨拶をしてきた。僕はそれに応えずに、ただ黙って“ストラーダ”の矛先をグラナードに向ける。

(大丈夫、大丈夫だ。シャルさんとの模擬戦のおかげで、フォヴニスの威圧感はもう感じない)

フォヴニスなんかよりシャルさんの方がずっと怖かった。だから何も怖くなんて無い。僕は、僕に与えられた役目を果たすだけ。

「良い目になったな。いいぜ、その目。戦いがいがある。オレの未練。お前なら叶えてくれると信じたのは間違いじゃなかった」

「未練? 管理局への復讐、ですか・・・?」

聞き返すとグラナードは、静かにフードを脱いで僕を見つめる。感情が読めない目だった。僕を見ているようで何か別のモノを見ている。

「管理局の上層部、そのまた一部の将校だけどな。まぁそれが1つだ。もう1つの目的、未練は・・・騎士エリオ、おまえがその槍でオレを斃すこと」

「「っ!?」」

今、グラナードは僕に斃されることが未練だって言った・・・? どういうことだ? 斃されることが未練? 普通は逆なんじゃ・・・?

「って思っている顔だな、騎士エリオ」

考えていることを読まれた。そんなに顔に出ていたのか、グラナードが心底面白いとでも言うように子供のような笑みを浮かべた。

「これはオレの目的にも繋がるが、オレは管理局のある将校の謀略によって殺された。そう、謀られて死んだ、殺された。オレはそんな形での死なんか望んじゃあいない。オレは・・・オレはさ、武装隊として、せめて戦いの中で死にたかった」

「だから、だからエリオ君と戦うんですか? 自分を斃させるために。そんなことで、エリオ君にあなたの未練(おもい)を背負わせるんですか!?」

「キャロ?」

僕の後ろに控えていたキャロが、前に躍り出て一生懸命にそう言った。対するグラナードは小さく「女には解からないか・・・」と、笑みとも言えない冷たい表情を浮かべてた。

「オレは、管理局員として何かを守るために戦いたかった。その結果が死だったとしても、だ。だが、結局それは叶えられなかった。憧れた組織に入り、自身を鍛え、経験を積み、任務をこなした。信じていたんだ。世界が平和になるための過程にオレは居て、その手伝いをしている」

「グラナード・・・」

「信じていたんだ! 管理局を! だが実際はどうだ!? アイツらは都合が悪い、世間に出てはいけないことを知ったオレを謀り、殺したッ!!」

グラナードの放つ怒りの空気に、キャロはたじろいで後ずさった。僕はそんなキャロの左手を取って、落ち着かせるために「大丈夫」って微笑みかける。けど実際僕も呑まれそうだ。キャロの体温を感じているからこそ、まだ落ち着いていられる。

「オレは! オレはそんな結末のために管理局員になったんじゃない! はぁはぁはぁはぁ・・・。すまん、話が逸れたな。だからせめて、オレを嵌めたヤツらに復讐し、最期は好敵手ってやつと戦って逝きたかったんだ・・・」

どう声をかければいいか判らない。信じてきたモノに裏切られて、その上騙されて殺された、だなんて・・・。管理局は、本当にそんな組織なのか?
思い出すのは幼少の頃。フェイトさんとルシルさんと出逢う前の頃。信じてきた世界が僕を裏切った。だから世界そのものが僕の敵となった。憎んだ、世界を。恨んだ、世界を。否定した、世界を。

(けど、僕は出逢ったんだ。こんな僕に手を差し伸べてくれて、新しい世界をくれた家族に・・・)

全てが変わっていく。消えていく。癒されていく。大切な時間を過ごすことが出来た。僕は、完全に裏切られなかったから世界を許せた。僕を絶望に追いやった人を許せた。
でもグラナードは、裏切られて、そして新しい何かを手にする前にその命が断たれた。どれだけ悔しかったか、僕には到底解るものじゃない。その結果が、復讐したい。
その強過ぎる未練(ねがい)によって再びこの世界に舞い戻った復讐者・・・メルセデス・シュトゥットガルト。

「まあどっちにしろ戦わないといけないのは違いない。だから・・・来いよ」

伏せていたフォヴニスが立ち上がる。黒い甲殻の隙間や穴の中に揺らめく翠色の光が一際強く輝きだした。

「キャロ!」

「うん! 我が乞うは疾風の翼。城砦の守り。撃砕の矛。槍騎士に、一騎当千の加護を」

これは僕の身勝手だ。だけど、それでも、僕はあなたを止めたい。そんな悲しくて寂しい想いのままでまた逝かせたくない。グラナード、僕はあなたの復讐を叶えさせずに、それでも満たしてあげたい。だから、あなたのもうひとつの目的である未練。僕が背負います。叶えさせます。復讐という未練(ねがい)が消え去ってしまうような戦いの果てに、僕があなたを・・・。

「僕があなたを・・斃します!!」

≪Triple Boost Up≫

キャロのブーストの効果が僕と“ストラーダ”を強化する。僕は“ストラーダ”に「いくよ」と声を掛け、“ストラーダ”も≪Jawohl!≫といつも以上に強く答えてくれた。

「ハッ! さぁいくぜ!」

――穿たれし風雅なる双爪――

フォヴニスの両ハサミが開く。エルジアで見せた砲撃だ。その衝撃波で僕とキャロを昏倒させた大威力砲撃。先手必勝。シャルさんが言ったことを実践する。

――下手に後手に回るとジリ貧になるから、攻められるときは攻めなさい――

僕は“ストラーダ”のカートリッジを1発ロードする。

「ぅく・・・!(なんだこれ!? 今までで一番強烈な・・・・高ぶりが・・・!)」

「エリオ君!?」

「だ、大丈夫・・・大丈夫だよ、キャロ・・・」

何とか高ぶりを抑えて一度深呼吸。放たれた2発の砲撃を、高速移動のソニックムーブで回避して一気に距離を詰める。速さも尋常じゃないほどにパワーアップしている。キャロのブーストの効果だけじゃないのは確か。これがシャルさんの力・・・とんでもなくすごいモノだ。

(でもこれはこれで・・・いい感じだ!)

リンカーコアが暴れ出しているような少しの苦しみ、それ以上の高揚感。その高揚感に身を委ねて、僕は駆ける。見据えるのはフォヴニス。だけど狙うのはフォヴニスじゃなくて・・・

本体(オレ)を狙ってきたか・・・! だが、甘ぇぇぇッ!」

始めからグラナードのみ。光が漏れ始めた右のハサミが僕に向けられた。信じるんだ。シャルさんの言葉を。僕と“ストラーダ”を。キャロの力を。

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」

≪Speer Schneiden≫

再度砲撃が放たれる。それに向かって“ストラーダ”の斬撃を放つ。視界いっぱいに迫る翠色の光。その光を僕の“ストラーダ”は砲撃を真っ二つに斬り裂いた。グラナードの「斬り裂いただと!?」驚愕の声が耳に届く。これなら僕は勝てる。そう、グラナードがこのままで来るなら。着地してすぐさまもう1度ソニックムーブで最接近する。

「いいぜ、騎士エリオ!! フォーーヴニーーーースッッ!!」

――翠閃に穿たれる罪人――

フォヴニスが咆えて、両ハサミ、背部の甲殻が開き、尾の先端にも光が集束していく。オーレリアでシャルさんに使った多弾砲撃だ。僕は念話でキャロに離れているように告げ、キャロを巻き込まないようにする。

「いっくぜぇぇぇぇぇぇ!」

その直後に放たれる翠色の光線の雨。ソニックムーブの連続発動で避けて避けて避けまくる。地面を削り取っていく光線。破片と粉塵がこの一帯を覆っていく。視界が狭まる。でも、見えるんだ。翠色の両目(ひかり)が目印になってくれている。

「おおおおおおおおおおおおおッ!!」

――紫電一閃――

†††Sideエリオ⇒はやて†††

「少しぶりやな、リインフォース」

私の目の前、私に未来をくれた最愛の家族の1人、リインフォースが居る。リインフォースは白の騎士甲冑姿で、私のことをじっと見つめている。

「リインフォース・・・」

「まだ、私をそう呼んでくれるのですか・・・?」

「当たり前や。ノーチェブエナやろうがなんやろうが、リインフォースはずっと変わらん私らの家族、リインフォース。家主の私がそう言うんやから、これは絶対や♪」

最高の笑みをつくる。誰が何と言おうとそれだけは絶対に変わらへん不動の事実。

「そう、ですか。それは、とても光栄なことですね」

リインフォースの微笑み。あの頃と何ら変わらん――ううん、もっと綺麗な微笑み。でもすぐに無表情に戻して、静かに拳を構えた。

「やっぱり戦わなアカンのやね。・・・ええよ、必要なんやろ?」

リインフォースが裏切り者とバレへんようにするには、どうしても私ら“六課”との戦闘が不可欠。そやったらそれに付き合うのが家主として、そして“夜天の書”のマスターとしての務め。決意を固めて、“シュベルトクロイツ”をリインフォースに突き出す。リインフォースも右拳をゆっくりと“シュベルトクロイツ”の先端に向けて、コツンと当てた。

「時空管理局、テスタメント対策部隊・特務六課部隊長、八神はやて二佐」

「テスタメント幹部、祝福なる祈願者ノーチェブエナ」

決闘前の名乗りを上げる。騎士としての礼儀。その瞬間、二人同時に距離を開ける。先手は・・・もらうよっ!

――バルムンク――

直射弾をあらゆる包囲から射出する。リインフォースは防御やなくて突進することでバルムンクを回避。

「いきます・・・!」

――シュヴァルツェ・ヴィルクング――

突進の勢いのまま、黒い魔力を纏った拳打を放ってきた。そやけど全力やないんは判るよ。だってこんなにも簡単に回避できるんやからね。半身横にずれて、リインフォースをやり過ごす。

『なぁ、リインフォース。やっぱりテスタメントとして、何かやりたいことがあったりするん? そのあと、全部が片付いた後、どうしたらリインフォースは解放されるん?』

――ブリューナク――

適当に射撃魔法を撃ち込みながら、思念通話で語りかける。リインフォースは何かを探るように周囲を警戒してから答えてきてくれた。

『前者については、はい、です。私は、マスターの願いを、叶えさせてあげたいのです。ですからまだ私はテスタメントとして、こちら側に居ます。申し訳ありません』

シグナム達から聞いてたけど、やっぱりすぐには連れ出すことは出来ひんのやね。マスターの願い。ネベラ山での邂逅時、リインフォースは答えへんかったけど、『教えて、リインフォース』私が聞いたら答えてくれるやろか・・・?

『申し訳ありません。それにはお答え出来ません。私の意思と、そして・・・マスターのために』

――ブラッディダガー――

リインフォースの放った攻撃を回避。お返しとしてブリューナクを連射。もちろんリインフォースも軽やかに回避してく。

『リインフォースがマスターのためにそこまでする理由はなんなん? こんな風に私らと戦うことになって、それでもリインフォースは、次元世界に混乱を招いたマスターの力になりたいん?』

シグナムとヴィータには、“テスタメント”側から私らを守るって言うてたリインフォース。その思いが、やっぱり本当なんかここで確かめる。

『っ・・・私とて、本当なら戦いたくありません。ですが、烈火の将と紅の鉄騎に言った通り、私は戦いを止めることの出来る立場にはありません。ですから私は、こちら側からあなた方を守るために、こうして手を抜いているのです。カルド隊に対しても、マスターとルシリオンの迷惑になると判りながらも撃墜寸前まで追いやりました』

お互いに距離を開けての1度仕切り直し。リインフォースが辛そうに顔を渋らせた。アカン。思ってた以上にリインフォースは危ない橋を渡っとる。リインフォースが『ご理解を』って悲しそうに目を伏せて、少し間を置いて続けた。

『・・・後者についてですが、ルシリオン、彼が私の存在を握っています。ですから、どうすれば私が解放されるのかは、私自身にも判りかねます』

――ブラッディダガー――

リインフォースはブラッディダガーを私に向けて放ち始める。同じブラッディダガーでオート迎撃。撃ち落としていく。まだ言いたいことや聞きたいこともあるけど、ここはリインフォースに話の流れを明け渡す。

『やっぱりルシル君をどうにかせんと前には進めへんのやな』

リインフォースを迎え入れるには、ルシル君をどうにかすればええんやな。そやけど今、確かこの戦場にルシル君は居らへんかったはずや。視線を“レジスタンス”や“アギラス”の出てきた山脈(えんたく)の、ポッカリ空いた空間に向ける。

『あそこの中に居るんやな・・・。なぁ、リインフォース。もし、無理やりにリインフォースを連れ出したらどうなるん・・・?』

――クラウ・ソラス――

――ナイトメア――

1度大きく距離を取って、2人同時に砲撃を放つ。威力は互角。もちろん2人とも威力は意図的に抑えてあるから。

『おそらく私は粛清されてしまうかと。ルシリオンは粛清権限なるものを授かっています。幹部にそれを防ぐ手立てはありません。どういうものかはカルド隊が1度見せています』

カルド隊が1度見せた。それを聞いて思い出すのは、シグナム達が撃墜されたあの戦いの最後。ルシル君がカルド隊を一瞬にして倒したアノ場面。アレがそうか・・・。予備動作も何もない一撃。確かにアレは防げへんな。

『威力や効果はルシリオンの判断によって変わりますが、本格的な裏切りと判断されれば確実に消滅させられてしまいます』

『厄介な力を持っとるんやな、ルシル君は・・・』

今この場で無理に連れ帰ったらそれでバッドエンド。ルシル君にリインフォースを消される。

――クラウ・ソラス――

――ナイトメア――

『ある――八神はやて二佐。1つお願いがあります』

リインフォースが、たぶん“主”と言いかけたのに、わざわざ八神はやて二佐と言い直した。少し胸が痛んだ。こんなときくらい、前みたいに呼んでほしかった。でも、それよりお願いというのが気になる。『何や?』先を促す。

『ルシリオンを救ってほしいのです。おそらくもうご存知かと思いますが、彼は操られているだけなのです。私はマスターの意思に賛同していますが、ルシリオンは・・・』

リインフォースは右サイドの前髪を留めとるヘアピンを、愛おしそうにそっと撫でる。そのヘアピンは光沢を放つ綺麗な赤。私やリインが使おうとるようなヘアピンに似とる。

(あれ? あれれ? ちょお待ち。リインフォース、もしかしてそれはルシル君から貰ったやつか? どういうことや? 2人はそういう仲なんか?)

私らが悩んで苦しんどる間にも2人は・・・。そう思ったら何かこう、ルシル君とリインフォースの「うふふ」、「あはは」といったデートな感じの光景が浮かんできた。

「そんなん許さんよぉぉぉーーーーーーッ!!」

そんなん今のルシル君にはありへんことやけど。うん、判ってるよ。

「っ!? だ、ダメなのですか・・・!?」

2人の関係(とんでもない妄想やけど)への反対の大声に、リインフォースがビクッと肩を跳ねさせた。判っとるよ、これは私のただの妄想やってことは! でも! でもな! 今のリインフォースの表情は怪し過ぎるんや!
私の知らんうちに、そんな乙女な表情するようになったんが、嬉しいような悲しいような悔しいような。何やこの気持ち、モヤモヤ感・・・。あっ、そうか、そうなんや。これが・・・。

「うちの娘はやらん!ってやつなんやな!」

アカン。少し思考が暴走気味や。このままやと大ポカしでかすかもしれん。自分を落ち着かせるために深呼吸を繰り返して、気を取り直す。コホンと咳払いして、不毛な恋をしようとしとる(妄想レベルMax)愛しき娘リインフォースを説得しようと試みる。

「あのな、リインフォース。ルシル君にはフェイトちゃんが――」

「・・・っ! 主はやて! 今すぐにここから、オムニシエンスから逃げてください!」

ルシル君にはフェイトちゃんとゆう恋人が居る、そう言おうとしたところで、リインフォースが物凄い剣幕でそう言ってきた。その尋常やない様子に、私は周囲を軽く見回して気づいた。

「なんや・・・アレ・・・? ちゃう。知っとる、見たことある・・・」

今まで視界に無かった、映らなかったあるモノが、私の視界に唐突に入った。知っとる。アレは、シャルちゃんとルシル君の記憶の中で見た魔道兵器。確か名前は・・・。 
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