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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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戦姫絶唱してないシンフォギア~装者達のサマーバケーション~
  それぞれの同棲生活~翔ひびの場合~

 
前書き
これを上げた日がちょうどXV最終回の日だったんですよ。
XVリアタイ&伴装者を最新話まで追っかけてた読者の皆さんの思い出に、日付と共に深く残っていると良いなぁ……なんて思いながら上げてます。
引っ越してから、我ながらノスタルジックになっちゃうなぁ……。 

 
「終わった~!」
 授業が終わり、響は思いっきり伸びをする。
 時刻は午後の4時過ぎ。今日の授業は全て終わった。

「お疲れ様。課題、間に合ったね」
「うんっ!手伝ってくれた翔くんには感謝しないとね~」
「あんまり頼りっきりなのもダメだよ?」
「あはは~……」
 未来に釘を刺されつつ、響は鞄を手に席を立つ。
「今日も待ち合わせ?」
「うん。今日はわたしの方が先に着けるかも~」
 未来と二人、教室を出た響は、玄関を出て校門へと向かって行く。
 校門脇の木の下まで着くと、響はスマホで時間を確認する。
「まだかな~」
「今来たばかりでしょ?」
「だって~……」
 うずうず、と待ちきれない様子でいる響を見て、未来は少し呆れたようにそう言った。

 五分ほどして、玄関から現れた待ち人は、いつもより早く待ち合わせ場所に立つ響を見て、手を振りながら駆け寄って来た。
 その姿を見つけると、響は彼の方へと全力で駆けだした。
「翔くーーーーーーーーんっ!」
「響!?まったく、仕方ないな!さあ来いッ!」
 全力疾走からの全力ダイブ。響からの唐突な無茶ぶりだが、翔は両腕を広げると難なく彼女を受け止め、そのままくるりと一回転して響を着地させる。
「翔くんおつかれー!」
「ありがとう。今日は早いね?」
「だって今日は、駅前のクレープ屋さんに行くんでしょ!?待ちきれないもんっ!」
「この食いしん坊め~。……小日向、君も来るか?」
 響の後ろに駆け寄ってきた未来を見つけ、翔は彼女にも声をかける。

 未来は少しだけ考えた後、首を横に振った。
「わたしは、また今度でいいかな。今日は二人で楽しんでね」
「そうか……。ありがとう」
「未来、いいの?」
「うん。今度、創世ちゃん達も誘って女の子だけで行きたいな」
「わかった!未来の分まで、味見してくるからね!」
 響は未来と笑い合い、ハイタッチを交わす。
 そして翔の手を引いて、校門の外へと走り出した。
「ほらほら翔くんっ!早く行かないとお店閉まっちゃうよ!」
「慌てるな響、まだ4時過ぎだから時間は充分あるぞ!」

 響に手を引かれて行く翔。二人の後ろ姿を見送る未来。
 そこへ創世、弓美、詩織の三人が声を掛けた。
「よくこんな人前で堂々とイチャイチャできるよねー。まるでアニメみたい」
「わっ!?さ、三人ともいつから?」
「響さんが翔さんに抱き着いた辺りから、ですわよ」
 呆れたように、それでいて楽しげに呟く弓美。
 いきなり声をかけられて驚いている未来に、詩織は微笑む。

「ヒナ~、ひょっとして寂しがってたりするの?」
「ちょっとだけ、ね……」
「まあ、無理もないか。ずっと一緒だったもんね」
「まさかあの響が真っ先に彼氏作って、しかも同棲しちゃうだなんてね~……。いや、まあ、あれだけアニメのクライマックスみたいな王道展開見せつけられちゃうと、納得もしちゃうんだけど」
 弓美の言葉に、創世、詩織の二人は頷いた。
 何故、アイオニアンの校舎に響達リディアンの生徒がいるのか。それはルナアタック解決直後に遡る。
 
 カ・ディンギルにより、リディアン音楽院高等部の校舎は崩壊した。
 これにより、代わりとなる新校舎が見つかるまでの間、リディアンの生徒らは姉妹校であるアイオニアン音楽院の校舎を使う事になったのだ。
 そのついでに、クリスと純の同棲をちょっとだけ羨んだ響の提案により、翔もアイオニアンの学生寮を引き払い、響との二人暮しを始める事に決める。
 姉である翼からはあっさりとOKサインを貰い、最大の障害になるかと思われた未来もまた、これまでの二人を顧みてこれを了承。
 今の二人は、クリスと純が住むマンションのすぐ隣の部屋に同棲しているのだ。
 
「……ううん、いつまでも響に依存してちゃダメなんだ!響は前に向かって歩き続けてる。わたしも前に進まなきゃ!」
 自分の頬を両手で叩いて気合を入れる未来。その様子を見て、創世ら三人は顔を見合わせた。
「あんまり気張り過ぎて、うっかり折れないでよ~?」
「小日向さんは小日向さんの歩幅で、少しずつ進んでいけばいいんです」
「そうそう。ヒナはヒナらしく、ってね」
「みんな……」
 未来を囲んで口々に励ます三人。そんな未来にもまた、春が迫っている事を、この時の誰も知る由はなかった。
 
 ∮
 
「う~ん、美味し~っ!」
 響は注文したクレープを一口齧ると、その薄い生地に包まれたふわっふわの生クリームと、甘酸っぱいイチゴ、その甘さを助長するチョコレートソースが口の中で奏でるシンフォニーを噛み締める。
「響、クリームついてるぞ」
「ええッ!?ど、どこどこ!?」
「こ~こっ」
 チョコバナナクレープを片手に、翔は指で響の頬に付いたクリームを取ると、そのままペロッと舐めた。
「ちょっ、ちょっと翔くん!?」
「い、いいだろ別に……。直接舐めとるよりは、恥ずかしくないだろ……」

 互いに頬を赤らめる初々しい姿。付き合い始めてまだひと月と経っていない二人だが、こう見えても告白の際に勢い余ってプロポーズしたり、友人知人その他諸々がカメラ越しに見守る前で公開キスしたりした仲である。もっとも、後者は緊急事態であり、ファーストキスの思い出としてはロマンに欠けるものではあったが。

「そ、それはそうだけど……」
「……恥ずかしかったら、仕返ししたっていいんだぞ……?」
「ッ!?し、仕返しって……その……え……?」
「…………」
 突然のキス許可に、耳まで真っ赤になってしまう響。
 自分で言い出しておいて、頬を染めながらそっぽを向く翔。

 そんな二人を、向かいの店のテラス席に座っていた客が、コーヒーカップを片手に見ていた。
「……すみません。頼んだ珈琲はブラックだった筈ですが……」
「お客様、申し訳ございませんが、御注文に間違いは見受けられませんよ?」
「あ、そうですか……ズズッ……ブラックなのに、甘い……」
 その客は不思議そうな顔で、向かいの店でクレープ片手に見つめ合う二人を見ては、甘くなってしまったブラック珈琲に首を傾げるのであった。
 
 ∮
 
「たっだいま~」
「ただいま」
 クレープを堪能した二人は、自宅のマンションに戻ると鞄を置き、ソファーへと崩れ落ちた。
「美味ししかったね~」
「そうだな。また行こう」
 そう言って二人は笑い合う。翔は立ち上がり、キッチンへと向かうと、冷蔵庫の中身を確認する。
 今日の夕食の献立を決める為、材料を見繕っているのだ。
「鮭があるな……。響、焼き鮭とホイル焼きとムニエル、どれがいい?」
「うーん……悩むなぁ。翔くんが作る料理、どれもすっごく美味しいから……」
「ありがとう。でも、褒めたって鮭は二人分しかないぞ?献立はひとつに絞らないと」
「え~、どうしよう……。ん~……じゃあ、焼き鮭で!」
「了解。チーズ乗せてレモンを添えよう」
 そう言って夕飯の支度を始める翔。響は先に食器を食卓へと並べると、自分の部屋へと向かった。
 
 自室に入ってドアを閉めると、机の上に置かれている袋の中身を見て、響は溜息を吐いた。
「貰ったはいいけど、どのタイミングで見せればいいんだろう……」
 袋の中に入っているのは、猫耳、肉球、服にくっつけるタイプのモフモフとした尻尾といった、所謂コスプレセットだ。

 先日、女性職員の一人から『翔くんを癒してあげるのに使ってね♪』と渡されていた物がこれだ。ちなみにその職員さんは、無類の動物好きであり、何故猫耳なのか聞いてみたところ、『マンションだとペットは飼えないでしょ?そういう時はこうするのが一番なのよ』と大真面目な顔で言われてしまえば、素直な響は納得するしかない。
 そんな訳で貰ってしまったこの猫コスセットだが、響はそれを着るタイミングに迷い続けていた。
「うーん……貰ってからまだ一度も着てないし、試着してみようかな~……」
 そう言って袋の中からそれらを取り出し、響は試着を始めるのだった。
 
 ∮
 
「これでよし、っと」
 翔は焼き鮭を皿の上に乗せ、その上にスライスチーズとレモンを盛り付ける。しばらくすれば、鮭の熱でチーズは溶けて広がるだろう。
 今夜の献立は白米、チーズとレモンを添えた焼き鮭、豆腐とワカメの味噌汁、ほうれん草の胡麻和え。
 それらを食卓に並べると、翔は響を呼びに向かう。
 部屋のドアをノックして、翔は響の名前を呼んだ。
「響~、夕飯出来たぞ~」
「ちょっ、ちょっと待ってて!」
 何やらドタバタと、慌てるような音が聞こえる。
 いったい何をしているのか、と翔は疑問に思い、ドアノブに手をかける。
「響?いったい何して……って、なぁッ!?」

 ドアを開けた翔の目の前には、髪の毛とおなじ茶色の猫耳カチューシャを頭に付け、その手からとてもモコモコとした肉球付きミトンを外そうとしながら、こちらを振り返る響の姿であった。
「待って翔くん今行くか……ふえぇっ!?なっ、なっ……なんで開けちゃったの!?」
「なんかドタバタしてるから気になって……。ノックはしたし、鍵かかってなかったから着替えとかじゃないだろうと思って……」
「もーっ!……ば、バレちゃったら……見せるしかなくなっちゃうじゃん……」
 響は隠せない事を悟り、観念したように肉球ミトンを手に付け直して、翔の方を振り向いた。
「そ、その……どう、かな……?変じゃない……よね?」

 耳と肉球、そしてスカートに引っ掛けた尻尾。
 聖遺物の代わりに猫の衣装に身を包み、響は恥じらいながらそう言った。
 翔はふらふらと、吸い寄せられるように響へと近づいて行く。
「……え、ちょっと、翔くん……?え?えっと……その……」
「響の……猫耳……。……そんなの……そん、なの……」
 響は付い後退ってしまうも、翔はすぐ目の前だ。
 ただならぬ雰囲気を漂わせて近づく翔に、何を言われるのかとドキドキしながら、響はその答えを待つ。

「そんなの……反則級に可愛いに決まってるだろ……ッ!」
「ッ~~~!?かっ、かわっ、可愛い……!?」
「ああ可愛いとも!最高に可愛いッ!何だこの可愛い生き物!?響か、響だな。ネコミミ響がここまで可愛いなんて……ッ!」
「しょっ、翔くんストップ!ストーップ!これ以上褒められるとわたしの身が持たないッ!」
 余りに褒めちぎられて真っ赤になった響は、その両手の肉球で、翔の両頬をぷにっとサンドした。
 瞬間、翔の表情がこれまでにないほど緩む。
「あふんっ……あ……ぷにぷにだぁ……最高……ああ、ダメになるぅ……」
「えっ!?ちょっと翔くん!?」
 慌てて両手を離すと、翔は冷静さを取り戻してこちらを向いた。

「ッ!?お、俺はいったい……」
「翔くん、この肉球ってそんなに気持ちいいの?」
「うん?……自分に試せば多分わかるぞ?」
 翔にそう言われ、響は自分の両頬にその肉球を当てた。
「おおっ!?こっ、これは……だ、ダメになっちゃうやつだぁ……」
「だろ?……ってか、その猫コスはいったい……?」
「えっと、実は……」

 響はその猫コスセットを貰った経緯を話す。それを聞いた翔は、その職員に心当たりがあったようで、納得したように頷いた。
「あ~……あの人かぁ。あの人こういうの好きだからなぁ……。多分、その肉球とか手作りだよ」
「にゃんと!?」
「……響、今、なんと?」
 つい口を出た言葉に、響ははにかんだ。
「いやー、猫の格好してるからつい……」
「……あ~、もうっ!いちいち可愛過ぎるんだよ!本当なら今すぐにでも抱き締めて、撫で回して、思いっきり可愛がりたいッ!」

 いつになく食い付いている翔に、響は驚きながらも、ちょっと楽しくなってきていた。
 普段はクールな翔が、ここまで素直に、それも長時間悶えている姿は貴重なのだ。
「じゃあ、ご飯食べたらでいいかな?」
「そう……だな。冷めたらもったいないし、夕飯終わってから……な?」
「うんうん。わたし、もうお腹ペコペコだもん!」
 響は猫コス一式を一度外して、翔と共にリビングへと戻って行った。

 この後、二人は食卓で共に笑い合う。翔の料理に舌づつみを打つ響の表情は、今日も満面の笑みであった。
 それから食器を片付け、風呂で一日の疲れを流した二人は寝間着に着替え、響は再び猫耳を付ける。
 恥ずかしがっていた先程までとは違い、今は楽しそうにポーズを取っている。
「というわけで、この立花響、全力で翔くんの日頃の疲れを癒してみせます……にゃんっ♪」
「既に目の保養として十二分の効果を発揮してるんだけどここに聴覚と触覚が加わるとか、果たして俺は大丈夫なんだろうか……」
 これ、可愛過ぎて逆に身がもたないのでは?などと考えながら、翔はソファーの上でゴロゴロしながらこちらを見つめるネコ響を、思いっきり可愛がる事を決めるのだった。
 
 
 
 その夜、翔と響はいつものように同じベッドで静かに寝息を立てていた。
 ただ、いつもと違うのは、いつもなら背中か首元に回されている手を包んだ肉球が、翔の頬を包んでいる事だった。
 今夜の翔は、いつもよりもリラックスした顔で眠りについている。
 一方、響もまた、満面の笑みで眠りについていた。
 たまには、猫もいいかもしれない。女性職員に礼を言いに来た二人は、そう語っていたという。 
 

 
後書き
改めて『戦姫絶唱シンフォギア』、シリーズ完結おめでとう!
でもまだ終わってないよね!?XDまだ続くし、アニメ終わってもOVAとか劇場版とか期待してるからね!

次回は入院中の了子さんの元へとお見舞いに行く司令の話、そして独り身ネタにされてる未来さんに春が来るかもしれない話になります。お楽しみに! 
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