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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第63話 開戦と凶報



――sideフェイト――

「フェイトさん!」

 一通りの作戦会議が終わって部屋を出ようとしたところを、よく知った二つの声に呼び止められた。
 振り向けば、そこには愛おしい二人。

「どうしたの? エリオ、キャロ」

「えっと、その……」

「あの……フェイトさんもそうですけど、スカリエッティの所になんて心配で」

 ……ああ、そういうことか。やっぱり私も、二人に心配をかける事になるんだな。

「大丈夫。私だけじゃなくてなのはやヴィータも、はやてだっているもの」

 安心させるつもりで言ったんだけど、二人の顔は晴れない。それどころか、どんどん心配そうな顔になって……。

「でも、フェイトさん……」

「昨日からずっと……苦しそうな顔をしてます」

 ビクリと体が反応してしまう。参ったな、2人にまで言われちゃった。

 苦しそうな顔をしてる。っていうのは、色んな人から言われてる。なのはは勿論、はやてやヴィータ、シグナムから。
 響が倒された時も、奏達が堕ちた時も、その後居なくなった後も……いや、それはきっかけだ。自覚してないところで、感情が表に出てしまった。私が遅かったから皆居なくなった。なんて、身勝手な思いに押し潰されて。

「そうだね。響が倒された時も、六課を守護してた皆が倒されたことも。一番近くで落された奏を救えなかったことを私は後悔してる」

「フェイトさん……」

 でも、奏に言われたんだ。後ろを向いて後悔することよりも。前を向いて次を、その先を見つめないといけないって。

「だから、響とヴィヴィオを取り戻せばきっと皆も帰ってくる。スカリエッティを止めた後、皆で言おう。お帰りなさいって」

「はい!」

 ギュウッと2人を抱きしめる。本音を言うと2人も心配だ。だけど、この2人ももう心配は要らないはず。なのはがヴィータが育ててるんだ。もう大丈夫だ。

「それじゃあ、二人共気を付けてね?」

「はい!」「いってきます!」

 駆け足で離れる2人を見送る。あぁ、情けないなぁ……私の方こそ2人に声を掛けなきゃいけないのに、逆に励まされちゃって。

「……フェイトさん今いいですか?」

「シャーリー。ブリッジを離れて平気?」

 入れ違いで入ってくるシャーリーを見てちょっと驚く。出撃前の私達も忙しい。でも、ブリッジの皆は今も情報収集や、それぞれの連絡を受けたりで大変なはずなのに……。

「いえ、直ぐに戻ります。ですけどその前にこの子を連れて行ってほしくて」

 そう言ってシャーリーの後ろから小さな影が現れて、私の顔の近くまで上がってきた。それは白い着物に、赤い袴。肩に掛かる程度の黒髪、灰色の瞳の小さな……。

「……この子って」

「改めてはじめまして。主、響の融合騎。花霞と申します」

 深々と頭を下げる融合騎……いや、花霞を見て、思わず声が詰まってしまう。響が実家からデバイスを持ち帰ったのは記憶に新しいけれど。何故このタイミングで?

「不躾なお願いでございますが、フェイト様。どうか私を連れて行ってもらえないでしょうか? この身に変えてから、ゆりかごを見るとそこに主が居るような気配を強く感じてしまうのです。
 無理なお願いだというのは存じております。どうか、どうか」

 頭を下げながら、微かに震えてるのが分かる。シャーリーの方に視線を向けると、小さく首を振る。恐らくシャーリーは止めてたはずだ。それでも聞かない花霞を止められず、私の元へ連れてきたんだろう。

 だからこそ言わなくちゃいけない。連れてはいけない、と。

 でもね。

「……いいよ。一緒に行こう」

「ッ、感謝致します!」「フェイトさん!?」

 驚くシャーリーに目配せで伝える。大丈夫だと。花霞も一度顔を上げてもう一度頭を下げてる。

 そっと、宙を浮く花霞の下に手を置いて座らせる。グシャグシャになった顔でこちらを見上げる花霞に笑いかける。勿論感情に左右されたからじゃないちゃんと理由がある。

「ユニゾン出来るということは、最悪な場合響とユニゾンして、花霞がコントロールをすることが出来るね?」

「……えぇ、勿論可能で御座います」

「あ、そっか。もし響が目覚めて無くても……」

 私の考えに気づいたシャーリーの言葉に頷いて、もう一度花霞を見る。

「戦闘中私から離れないこと。はぐれてしまえば守れないし、助けられない。分かってるね?」

「えぇ、勿論でございます。本当に感謝致しま……わぷっ」

 私の掌の上で正座の姿勢から頭を下げようとするのを。人差し指で止める。

「そんなに感謝することじゃないよ。しっかり響を助けて皆で戻ってこよう、ね?」

「……はい!」

 両手で涙を拭って、笑顔で返事をする花霞と笑い合う。さぁ、行こうか。


――sideなのは――


「今回の出動は、今までで一番ハードなものになると思う」

 私は一番最初に出動するFWの皆とギンガを送り出すためにヴィータちゃんと共にヘリの元へ来ている。

「でも、目を閉じて思い出して」

 この子達はこの日のためにずっと訓練をしてきた。もうこんなことがないかもしれない、でも。

「ずっと繰り返してきた基礎スキル。磨きに磨いたそれぞれの得意技」

 解り合えないときもあった。私の言葉が足りなくて、それぞれを傷つけてしまった。

「痛い思いもした防御練習」

 私やヴィータちゃんとで、何度もバリアの上から叩いて、防御を徹底的に鍛えてきた。

「毎日ぼろぼろになりながらやった模擬戦」

 皆苦い顔をしている。途中から六課に出向だったギンガも。きっと、ここには居ない彼らもそうかもしれないけど。

「はい、目を開けて。まあ、私が言うのもなんだけどキツかったよね」

 それぞれ思うところがあるのか渋い顔をしてたり、スバルなんて思い出しすぎてるのか、凄く眉間にシワが寄ってる。

「でも、四人はよくここまでついてきた。ギンガは途中からだったけど……質は全然変わらねぇしな」

 ヴィータちゃんの発言に皆驚く。厳しく育ててきたのは事実で、それはギンガも同じ。手加減無しできっちり育ててきた。

「四人とも誰よりも強くなった………とは言えないけど、どんな状況でも負けないように教えてきた。
 実を言うとね。六課に来たばかりの響に皆の評価を聞いた時。私は嬉しかったんだ」

 なんだろうと首を傾げる皆に、あの日言ってた響の言葉を思い出して伝える。

「皆それぞれ一級線のポテンシャルを持ってるって。
 スバルには理想的な機動力とそれに突破力があるって。ティアナには質量を持った幻術を使えて尚且つ、多重弾殻射撃を使えると言う努力を。エリオには、一級品のポテンシャルを秘て、スピードを武器に広域攻撃も放てると。キャロには、皆を支える屋台骨。いつでも皆を支援できて、強い支えになれるって。ギンガにも、理想的な機動力、刹那の一瞬を見切れる一撃がある」

 皆の表情が驚いたような、照れてるようなそんな顔になっていく。

「四人とも、誰よりも強くなった……とは、まだちょっと言えないけど」

 あ、皆がズルっとコケそうになった。うーん、もう少しなんだけどねー。咳払いをしてからもう一度空気を締めて。

「どんな相手がきても、どんな状況でも絶対に負けないように教えてきた。守るべきものを守れる力。救うべきものを救う力。絶望的な状況に立ち向かっていける力。ここまで頑張ってきた皆は、それがしっかり身についてる。夢見て憧れて、必死に積み重ねてきた時間。どんな辛くても止めなかった努力の時間は、絶対に自分を裏切らない。
 それだけ、忘れないで」

「きつい状況をビシっとこなしてみせてこそのストライカーだからな」

「私たちからは以上。それじゃ、機動六課FW部隊、出動!」

 はい、と元気よく皆が返事をくれたのが、とても嬉しいんだ。

 ふと、皆が退出していく中で、心配そうに寄り添ってるスバルと、少し俯いてるギンガが残ってるのが気になって側まで行く。

「……ギンガ?」

「なのはさん、忠告も何も聞かずに申し訳ありません!」

 バッと頭を下げるギンガを見て、驚いちゃった。
 顔を見た時点で、吹っ切れた……いや、整理出来たのかなとは思ってた。何があったのかわからないけれど。

「うん。タイミングが合わなかったから良かったけど。本当は今回の出撃を見送ろうかなって考えてたんだよ?」

「……勝手に私がやらなきゃ、倒さないとって」

「うん。そんな状態で無茶な戦いをしたら、今度こそ取り返しがつかなくなっちゃうかもって。
 だから、ギリギリまで悩んだんだよ?」

 ティアナの時とは違う、自分の無力さに、誰よりも後悔してたもんね。

「勝手に思い込んで、無理を重ねて……思ってしまってたんです。皆の代わりに取り返さなきゃ、やらなきゃって」

 涙を溜めて、必死に堪えてる。そうだよねギンガも目の前で連れて行かれて、届かなくて悔しくて。

「本当は私もゆりかごに行きたかったんです。でも、アーチェに言われました。自分たちに出来ることをしようって。
 だから、フェイトさんや、なのはさん達が行くのなら。もう……心配はないって」

 声が震えてる。行きたくて行きたくて仕方ないだろうに……スバルもその気持ちが分かるのか悔しそうにしてる。

「だから、私の心配は無いです。今はなのはさんとヴィヴィオのことが」

 グッと拳を握るギンガ。うん、だけどねギンガ。

「……ありがとう、ギンガ。でも大丈夫だよ。一番怖いのは、現場に行けないことだったんだけど、八神部隊長がそこをクリアしてくれた。現場に行って全力全開でやっていいんだったら、不安なんて何もない。ヴィヴィオも響も大丈夫。私達がきっと助けてみせる。だから、心配ないよ」

「はい!」

 コツンとギンガの拳と、私の拳をぶつける。ふと、スバルの方を見ると……。

 ……いいなー。

 と、副音声で聞こえた気がするので、スバルの方にも拳を向けて。

「スバルだって、うちの自慢のフロントアタッカーなんだからね。相棒と、マッハキャリバーと一緒に、負けないで頑張ってきて」

「はい!」

 コツンと、スバルとも拳をぶつけ合って。笑顔で2人を送り出す。

 さぁ、私もしっかりとしなきゃね。


――sideはやて――


「八神部隊長、陸戦部隊の搭乗したヘリの出撃を確認、作戦ポイントへの移動を開始しました」

「了解や……それじゃあポイントにつき次第私達も出発やな」

 一通りの準備を終えて、降下ハッチへ向かう。移動してる間にもアルトやルキノ、シャーリーからの報告が次から次へと流れ込んでくる。
 当然や。アースラはゆりかごに対して接近を続けとる。クロノ君からの通信で報告を受けた話によると、戦艦ではアースラのみがゆりかごが衛星軌道上に到達する前に接敵出来るらしい。私達の……機動六課が遅れたらそれだけ不利になってまうという事。

「グリフィス君、私が外で頑張る間の指揮は任せる……頼むで?」

『了解です。完遂してみせます! ここに居ない彼らのぶんも必ず!』

 モニター越しにグリフィスくんが敬礼を行ってる。煌達が消えたことを隊長陣以外ではグリフィスくんには伝えた。話を聞いた時、悲しそうに顔を伏せとった。そして、彼らがいたから六課の被害は抑えられて、自分たちはアースラに乗り込むことが出来たと言ってた。
 そして、何より悔しい負け方をしてるのも知っとるし、目覚めるまで皆御見舞にもずっと行っとったしね。

 だから、私も彼らの分までしっかりせなね。

 気が付けば降下ハッチのある待機室の前まで来とった。そこには既に私以外のにアースラに残っていた前線メンバ―全員がそろっていて、皆の顔をもう一度見渡して……。

「みんな待たせてごめんな。八神はやて、ただいま到着や」

「これで全員そろったね」

「アタシ達の準備は完全に済ませておいたよ」

 皆が力強く返事をくれる。直ぐに作戦の確認を行うためにデータを展開して確認を取って。後はポイント到着まで待機。やけど……その間にや。

「皆に話さなアカンことがある。震離の事やけどな」

「……うん。さっきの通信の最後、あれ震離だったよね?」

「あぁ、ノイズ混じりで何言ってんのか聞き取れなかったけどなー」

 直接の上司2人が不思議そうに顔を見合わせる。フェイトちゃんも要領を得ないようで、首を傾げとる。

「……実はな。クロノくんからの連絡でな。震離、死亡したって連絡受け取っててな。震離の切断された右腕が見つかって、その近くに背丈が同じくらいの遺体があったんやと」

「ッ?!」

 皆の表情が凍りついた。せやけど。

「まだあの子が生きてると断定出来たわけやない。だけど、このタイミングで介入出来たのは。六課にだけあの内容の通信を中継出来たってことは、震離がやったことやと私は思いたい!」

 突然の何者かの通信。あれは六課にだけ聞こえるように通信を中継されてた。実際クロノ君達も誰かが更に割り込んだ所までは聞いてたけど、その会話の内容までは聞けなかったそうやし。 

 だから!

「機動六課の全員が戻ってくる為に。未だに帰ってきてない子達にちゃんとおかえりって言うために……皆、力を貸して欲しい」

「勿論だよ」

「当然だ!」

「震離とお話するの楽しみってアリサちゃんもすずかちゃんも言ってたんだ。しっかり帰ってこさせないとね!」

「せや! ……え、いつの間に震離ってあの2人と仲良くなって……あ、だから月村家のメイド服持ってたんか!?」

 今更知った事実に驚いてると、皆が笑ってくれた。そんなつもりで言ったわけや無いんやけどなー。

「……あの宣戦布告した声も、いつか遺跡で見た流と同じ顔の人と同じトーンだったし、キュオンって人も、この前六課に突っ込んできた人の声だった。
 だからはやてちゃん。あの人達はきっと敵ではない。だけど、味方というわけでもないかもしれない」

「せや。だからこそ、私達がしっかりとやるんや。イレギュラーばっかりやけど……」

 ふと、フェイトちゃんが左胸の当たりを抑えてるのが見えるけど……何や、緊張してるんかな? 私の視線に気づいたのか、ぎこちなく視線をずらしてるけど……なんやろ?  まぁええか。

「しっかりやろう!」

「おう!」

『アースラ、第二出撃ポイントへと到着しました。降下ハッチ、開きます!』 

 シャーリーの言葉に合わせて、私達の足元にあるハッチがゆっくりと開いてく。同時に風が吹き荒れることから上空に居ることがよく分かる。

 さぁて。

『それでは皆さん、出撃どうぞ!』

「いくよ皆! 機動六課隊長陣、出撃!」

「了解!」

 ハッチへ勢い良く飛び込んで、さぁ、やろうか!


――sideギンガ――

「さて、なのはさんとヴィータさんからのお墨付きを貰った訳で。
 改めて作戦の確認よ。
 私達は地上の部隊と協力して、ナンバーズの進撃阻止……なんだけど」

 ヘリの中で、各ナンバーズの進行ルートを表示される。

 1つは9番……いや、ノーヴェと、ウェンディ。そして、12番の子の三人体制。こちらは既に食い込んできてる。

 1つはチンク。飛行型ガジェットに乗って別ルートからの進行。

 この2つはまだ止められる。私自身チンクに用があるから。だけど一番の問題が……。

「3人組は私達で、単独で動いてるのは……ごめんなさい。ギンガさんに」

「うん、気にしないでティアナ。私も彼女に用があるから」

 申し訳なさそうにこちらに視線を向ける皆に笑って応える。甘い考えかもしれないけれど……もしかするとそこまで悪いことになるとは思えない。それに―――

 いや、止そう。これ以上は希望がすぎるもの。
 
 けど、それでも問題なのが。

「一番危険で、問題なのがこの二人組。3番と7番の二人組。これはフェイトさんと交戦してたけど……距離がありすぎる」

 悔しそうに進行ルートを見ていると。他の2つと違い、明らかに違うルートからの侵攻。

 もう間もなく降下ポイントに到着というこのタイミングでは……あまりにも時間がなさすぎる。その上、彼女らを指揮する子も、召喚士の子もどこかに居るはず。それも探さないといけないのに……。

『……え!? な……確かに居るけど。わかった。ティアナー、直通通信を繋ぐねー』

「え、このタイミングで? 誰?」

 アルトさんが慌ててるなーと考えてたら、私達の前にモニターが開いて……。

『よう』

「……ハァ!?」

 あまりにも予想外の人物で皆驚いた。だって……。

「な……あん、え!? 何で空に居るのよ、煌!?」

『まぁ色々あんだよ気にすんな。業務連絡でなー。俺も地上の防衛ラインに参加するし、その上でポジション的にぶつかる相手が居てなー。この2人(・・)とかち合う事になるんだが』

 煌が指す人物を見て、皆の表情が明るくなった。けど、その中で唯一ティアナだけは暗い表情のまま。なぜなら……。

「……お願いしたいけど。フェイトさんと互角に渡った2人……やれるの?」

『おぅ。問題ない。本部の防衛にゃ、あいつ(・・・)が出るし、ゆりかご戦にはあの子らが出るし。問題ねぇよ』

「そうじゃないわよ。頭に包帯巻いた怪我人が出来るのかって聞いてるの」

 モニターの向こうの煌は頭に包帯を巻いて、御見舞に行ってた時と変わらないようにも見える。心なしか顔色も悪いようにも見える。

『……まぁ損な役割だな。なんとかするし、歓迎するだけだ。
 大体、お前らが俺の心配するなんてちょっと早いんだよ、ハッ!』

 ビシっと、ティアナが笑顔のまま青筋が入ったのが見えて……皆がちょっと引いた。勿論私も、エリオとキャロを連れてちょっと下がる。

『まぁ、それは冗談で。気にすんな。目的がハッキリしてる以上、こちらはこちらでなんとかするから』

「……まぁ、どうやっても手が足りないし……お願いしか出来ないんだけどね。よろしく頼むわ」

『おう』

 そう言って通信が切れたけど……。

 何というか、ね。

「……何で重症人が動いてるのか分からないけど。これで憂いは無くなった。そろそろ時間よ。皆しっかりやるわよ!」

「おう!」

 さぁ、私も気合を入れなきゃね!


――sideフェイト――

 ある程度空を飛んだ後、騎士カリムより私達全員のリミッターが解除されたのを確認。それと同時に。

「レイジングハート、エクシードモード!」

『All Ringht.Master.』

 なのはがエクシードモードになったのを確認して、その側まで行って。

「なのは」

「フェイトちゃん?」

「なのはとレイジングハートのリミットブレイク、ブラスターモード。なのはは言っても聞かないだろうから、使っちゃ駄目…とは言わないけど。お願いだから、無理だけはしないで」

 困ったように笑うなのはを見て、少し心配になる。何時も前を走るから、何時も心配してしまうし。

「私はフェイトちゃんのほうが心配。フェイトちゃんとバルディッシュのリミットブレイクだって、凄い性能な分危険も負担も大きいんだからね」

「私は平気。大丈夫です」

 えへん、と胸を張るけど。なのはからはじとーとした視線を貰う。な、何か変だったかな?

「んぅ、フェイトちゃんは相変わらず頑固だなぁ」

「な、なのはだって、いつも危ないことばっかり」 

「だって、航空魔道師だよ?危ないのも仕事だもん」

「だからって、なのは無茶が多すぎるの!」

 むーっと、納得行かない様子で、眉間にちょっと皺を寄せながらいうなのはに、思わず言い返しちゃう。だって、私以上の無茶をするんだもん。無茶を心配しないわけないじゃない。

「私が、私たちがいつも、どれくらい心配してるか」

「……知ってるよ」

「ん」

 今までとは打って変わって、優しそうで、それでいて力強い笑顔だ。

「ずっと心配してくれてたこと、よく知ってる。…だから、今日もちゃんと帰ってくる。私がヴィヴィオを連れて、フェイトちゃんが響を連れて、皆一緒に元気で帰ってくる!」

「ぁ、うん!」

 ……何でそこで響の名前を出すかな? ちょっと恥ずかしくなって顔が熱くなるのを感じて……他にも言いたいことあったのに詰まってしまった。

 ふと、私の隣にはやてが並走してきて、なんだろうと首を傾げる。

「せやんなぁ。響が居るかどうか分からへんけど……そこんところはどうなん、花霞(・・)?」

「え゛!?」

「花霞?」「何のこと、はやて?」

 突然の名指しに私も、胸ポケットに忍んでる花霞もビクリと反応しちゃった。でも何ではやてが? さっき出撃の時見られてたからその時に? 

「今さっきシャーリーから個別回線で連絡貰ったんよ。フェイトちゃんには花霞が居るから、響がいたら何とかなるって」

「……申し訳ございません。はやて様」

 風圧で飛ばされないように、胸ポケットから顔をだして、申し訳なさそうに頭を下げてる。不味い……このままだと帰れって言われたりしないかな?

「ええよ。事情も聞いたし。響が起きれない時に花霞が安全圏まで連れていけばええしね。本当は高速飛行に絶えれるようにしたかったけど、そこまで手が届かなかった……ゴメンな」

「いえ、動けるようになっただけでも感謝の念しか御座いません……です」

 ……うん、今ちょっと繋ぎが変だったような。まぁ、いいか……。

「フェイトちゃん、花霞は誰とでもユニゾンできて、一定の性能が引き出せる。万が一になったらユニゾンするんやで?」

「う、うん。花霞もそれでいい?」

「えぇ、勿論です。その為に防御系のデータは大量に仕込まれております」

 ちょっと緊張気味の花霞を撫でて、危ないからポケットの中に入る様に指示。

「ま、フェイト隊長も無茶すんなよ。一番前はあたしがきっちり抑えるからな!」

「うん! お願いね!」

 ギュウッと、バルディッシュを持つ手に力が入る。微かにだけど、もうゆりかごの近くまで来たのが分かったから。

 はやてが少し下がって、シュベルトクロイツを構えて。こほんと咳払いを1つ。それと同時に皆の空気が変わった。

「三人共、予定ではアースラより先に本部の航空部隊も来てくれる……それまでにある程度数をへらしとくよ!」

「了解!」

「弾幕、行きまーす!」

『All right. Accel Shooter.』

 なのはの周辺にスフィアが展開されたのを確認して、その少し上方へヴィータと共に出る。

 一瞬、静かになる。

 そして―――

「シュート!」

 展開されたスフィアが雲へと入ると共に、小規模な爆発。それを切掛に、空戦型のガジェットが飛来した。

 さぁ、開戦だ!


――side煌――

『へぇ。FWの皆が防衛ラインに入るなら安泰だな。問題はお前ん所か』

「うるせぇ。お前も抜かれんじゃねーぞ?」

 適当な朽ち果てたビルの屋上の瓦礫を椅子代わりに、暇を潰してる。まだまだ時間はあるしなー。

『ばか言え。一度目は紗雪が追いきれず。二度目は奏を氷漬けにして落として髪を切るっていう事をしくさったんだ。三度目はねぇよ』

「そうかいそうかい。まぁ、なんだ。俺は2人抑えるから俺のが上だな」

『バーカ。邪魔するやつは殺しに来るであろうオーバーSランクで、レアな魔力変換を持ちを抑える俺のが上だ』

 画面の向こうの馬鹿と互いに笑い合う。既に配置にお互い着いて後は敵が来るのを待つだけだ。俺はナンバーズの三番と七番を、優夜は元三佐を抑える手筈だ。

 ただし、俺は全体的にダメージを負ってるし、アイツも半身に収束砲の直撃受けてるから、あまり踏ん張りとか効かない。

 だが……。

「……なぁ優夜よ」

『なんだよ』

 思い返すのは数日前、奏の告白を聞いたことだ。

「……俺達はアイツに背負わせ過ぎたんだな」

『……あぁ、あんなに責任感じてたなんて思わなかった……考えすらしなかった。俺達が代わりになったことでアイツが苦悶して、悩んで……自殺未遂まで行くなんて、な』

 病院で奏が泣きながら言っていた。私はあの人の側に居る資格はもうない。一度ならず二度までも私は助けることも気づくこともできなかったんだって。

 だから、どうにかして奏をアイツの元へと考えたけど……。

 その前にまさかの人が助け舟……というか、しばかれたというか。まぁ、うん。

「世の中何があるかわからない訳で」

『あぁ……そうだな』

 ふと、空気が変わるのを感じて、ガシャンと背の丈程の両刃の長斧を……担ぐ。画面の向こうの優夜の周辺にもアイツの背丈ほどの四本の十文字槍、両手にも二本手にしている。

「……そろそろか」

『……あぁ、こっちも見えたよ』

 ふぅーっと、息を吐いて。タバコでもあれば様になるんだろうけど、まだ未成年だしなぁ。吸えないんだよなぁ。というか、吸ったら臭いって言われそうだし。

「やるぜ優夜」

『あぁ』

 空へと上がって。前から飛来する2人を、あちらは元三佐を見据えて。

「『此処から先は通行止めだ。歓迎しよう、盛大にな!』」

 さぁ、始めようか。今、此の時だけは、第13艦隊所属として、貴様らをここで止める!

――side優夜――

「……通行止め、ねぇ。いつかの訓練用とは打って変わって、カートリッジの本数は減ってますけど。大丈夫ですかぁ?」

 不機嫌そうにこちらを睨んだと思ったら、今度はあざ笑うような笑み。

「さぁな。だが、あの時と状況違いすぎて参考になりませんよ」

「そうですねぇ。私は万全、貴方も万全と言いたいところですが……。まだ怪我は完治していないですし……。何より……。
 邪魔をするなら、砕き殺すわよ糞餓鬼」

 ピリピリと肌が粟立つ。俺は体が震えている事を自覚した。
 だが、恐れているのではない、これは武者震い。

「……大体なぁ。いままでさんざん手前勝手にしてた奴を、最後まで好きにさせるわきゃねぇだろうが」

 風が冷気が吹き荒れる。

 あぁ、あぁ、あぁ……。怪我がなんだ……気にせず全開を出せるというのはやはりいいじゃないか!

 元三佐の小型ナイフが一本の杖へと切り替わる。いや、あれは杖というよりも、杖先が細く鋭利に、まるでアイスピックの様に。そして先端にはツルハシのような、大きな錨のような物がついてる。

 まるでそれは……。

「氷結の死神って所か?」

「さぁ? 氷ごと砕こうと思ったら此の形になっただけですよ」

 風と冷気がぶつかり、渦を巻いてく様を見ながらため息を吐く。既に当たりの気温は下がりつつある。

 だが。時期にそれも……。

「あぁ、そうか……自分の変換資質に合わせたわけか。いいですね――大人しく捕まれ」

「――砕き殺すわ」

『Speere Sortie.』

 短い音声を聞くと共に、背後の4本がそれぞれ元三佐へと接近する。それに合わせてこちらも接近、否。突撃を開始。

 あちらも疾走。互いの眼前へ、息が掛かるほど接敵。同時に、槍と杖が苛烈な響きを上げて交錯する。

 こちらは6手あちらは1手。普通に考えればこのまま押し切れる……はずだが。

 先に展開した4本が氷で作られた盾に阻まれてるのを見た。それに気を取られたと同時に互いの獲物が弾かれ、一瞬隙を晒してしまい、空いた胴体へ向けて真っ直ぐ杖先が最短距離を突っ走ってくるのが見える。
 即座に体を反転させ、その一撃を躱すと同時に左手の杖を逆手にもち、元三佐目掛けて突き落とす。

 が、今度は装飾部で受け止められるが、右手の槍を突き出しもう一度撃ち込む。

「……うふ。左と右とじゃ速度が違うじゃない!」

「……ちぃ」

 僅かに出遅れた右の槍を掴んで防がれる。互いに獲物を渾身の力で押し合いながら目を合わせる。

「……貴方のデバイス。シルフィードといいましたっけ? 処分してから裏切ったはずですけど?」 
 
「はっ。没収した時点で処分してりゃこうならなかった……よ!」

 距離を取るために、右の槍を一度収納。そのまま互いにバランスを崩した所を大きく弾いて距離を取る。

「しかし……流石に防戦一方というのも面白くありませんね」

「冗談。完全に防いでいるじゃねぇか」

 俺と元三佐の周位を4つの槍と4つの盾が、それぞれぶつかり合う。貫くために防ぐために、金属音の様な音を響かせながら。

 だが……。

 ―――にたり。

 不意に笑みを浮かべた瞬間、ゾクリと悪寒が奔る。

アリス(・・・)! 後ろです!』

「ッ!」

 跳ね上がるように、急上昇して回避。先程まで自分のいた場所を、多数の透明なナイフが通過したのが見えた。

 同時に、辺りを見渡して、冷や汗が背中を伝うのが分かった。なぜなら。

シルフ(・・・)。こりゃどういうことだと思う?」

『さぁ、何とも言えませんが。ざっと200本。数の利はとうに消え失せました』

 こちらに切先を向けた透明な氷のナイフが、俺と元三佐を取り囲むように展開されているのが見える。今しがた通過したナイフも既に空いたスペースで待機し、こちらに切先を向けている

「砕き殺す以外に、切り刻むのも有りになったわ。さぁ、始めましょうか? アリスちゃん?」

 ニヤニヤと薄笑いを浮かべながら

「てめぇ、女の子チックに人の苗字を呼ぶんじゃねぇよ!」

『来ます!』

 瞬間、全てのナイフが動いたのが見えた。


――side煌――

 我ながら損な役割だなぁと思ってた、少し前の自分を殴りたい。

 俺を倒したあの老婆に一矢報いたいが、何処に居るかわからない以上それは叶わない。
 
 だから、あまり乗り気じゃ無かった。相性の問題で、優夜は元三佐に着けるって言ってたし、奏はゆりかごへ向かわせないと行けない。だけど、地上にもう一人欲しいと言われたら、残るのは俺なわけで……。

 それぞれが想いを通すために戦うのに俺だけなんだかなーと思ってたが……。

「いいね。速いし連携もいい!」

「黙れ、そして死ね」

 左右から迫るブレードを長斧をバトンの様に回転、左右に振って弾く。その一瞬を。
 3番が最短で左拳を俺の顔目掛けて奔らせるのを辛うじて避ける。

 だが、避けたはずの頬が裂け、そのかわりに右の掌底を胴へと走らせ衝撃を叩き込む。無理な姿勢で撃ったせいか思いの外ダメージが少ない。
 そもそも硬いのか? だが、まだまだ対応範囲内だ。

 しかし、敵は四肢を使い闘う者。すなわち左拳を撃った後は。もう片方が残ってることを、考えていなかった。至近距離から右の拳をフックの要領で胴体へねじ込まれた。

「ッ……ぐぅ?!」

 何かが砕ける音と共に、体に衝撃が奔る。即座に拳の勢いを殺さないように体を進行方向へと流れるように飛ぶ。既に衝撃を殺す事は出来なくとも、一旦は距離を取ることが出来る。

「やはりこんなものか。あまり貴様に時間を掛けられない―――速く死ね」

「……ふぅ、ふぅ」

 呼吸を整えるが、即座に骨が砕けた事を把握する。元々罅が入ってたんだ。今更変わらないし、綺麗に砕けたせいか肺に刺さるような事態にはなっていない。

 アイツ……名前はわからんが3番は、高速戦闘は出来るけど、細かい格闘技術は無いな。コレが響とか優夜だったら間違いなくこの時点で俺の意識は完全に奪われてたし。
 だが、間違いなく致命傷にはまだ(・・)なっていないが、致命的ではあるな。

『コウ君、上です!』

「覚悟」

 自分の状態に意識を向けすぎた。気が付けば7番が上空から斬りかかってくるのが見えて、フェル(・・・)を掲げて防いでしまった。
 それに合わせて3番が蹴りと共に迫り来るのが見える。咄嗟にバリアを張って何とか防ぐが。

「ぬぅううう、ぐぅ!」

 防いでも威力を殺すことは出来ず、そのまま腕で防ぐもそのまま瓦礫の中へ吹き飛ばされる。が、即座に瓦礫を押しのけながら立ち上がり構える。

 短い攻防の中で、あちらはほぼ無傷で、こちらは手負い。いやいや何というか……。

「熱くなれるじゃねーか!」

『えぇ、その通りです!』

 心に焔を灯す。悪いなナンバーズ。舐めてた俺を許せとは言わん。だが……。

 本気で闘うことを誓いましょうか!



――sideフェイト――

 なのはを中心に、弾幕を展開しつつ弾幕を躱したガジェットを私とヴィータで叩きながらゆりかごまで接近していく。
 気が付けば遠く霞んでいたのが、直ぐそこまで来た。こんな大きな船が飛んでいることを事態未だに信じられないし、その射出口からは未だにガジェットが投下されている。

 はやてが言うには私達の少し後に航空魔導士の部隊が来ると、そして、その指揮をはやてが担当し、私達はゆりかごに侵入口を見つけ次第、内部突入……だったんだけど。

「フェイト様。あの、誰かが既に戦闘を開始してます」

「航空隊は未だ到着してないのに……一体?」

 ポケットから顔を出しつつ不思議そうにそう告げる。困惑するような、何処か安心してるような、そんな顔。

 そして。その誰かの近くまで行く。遠目で確認出来た内の1人は白いロングコートに、二丁の対物ライフル。その人物の少し離れた隣には、青い袴の弓道着と、身長の二倍はある和風の見た目の弓を持った人物の2人が居た。

 だけど、あの後ろ姿って……。

「あの2人ですね。だけどあのデバイスの皆様達は……懐かしい(・・・・)ような、なんでしょう?」

「それは……分からないけど。ちょっと加速するよ。ちゃんと入っててねー」

 顔を出してる花霞をポケットへ避難させつつ、その2人へ一気に接近して。

「……何してるのー?」

「へ、斥候で出した子の帰還……待ち……で」

 ニッコリと笑って声を掛ける。振り向きながら応える白いコートの……奏は徐々に顔を強張らせて。

「あ、通りすがりのガンナーですぅ!」

「同じく通りすがりの弓兵ですぅー」

「そんな雑な言い訳通用するかいな。どこのさ○ま御殿や?」

 私たちに気づいた奏と時雨が、目元を隠すように顔を逸らすのをはやてが叱る。

「あんたらはもう……今まで何してたん!? 心配したんやで?」

「……話せば長くなるんですが……さっくり言えば不服だったので勝手に出撃しようかと。早い話が私のせいです」

「いえ、奏じゃなくて色々考えたのは私です。もっと言えば唆したのは私なんです。処罰するなら私を!」

 二人して庇い合ってる。私も心配してた。

 だから、奏の手を取ってこちらを向かせてから。そっと抱きしめて。

「心配してたんだよ。私があんなこと言ったから居なくなったんじゃないかって」

「……ごめんなさい」

 心から安心する。だって、後味悪い別れ方をした私にも非があるけど、こうしてまた会えたんだから。

「……ところで斥候出してるって、中に入れたのか?」

「いえ、こっちに到着した時三人で打ち込んで空けた穴から紗雪に入ってもらったんです」

「……はー、くの一やって聞いとったけど、凄いやん」

「えぇ、本当に。既に突入して10分です……何か掴めてたら……お?」

 向こうでヴィータとはやて、時雨の三人が会話をしてる。少し離れたところでなのはが寂しそうに迎撃してるのはちょっと申し訳ないけど……情報交換って大事だからね、ほら。

 不意に、時雨の胸元が淡く輝き出したと思ったら。

「最っ悪な展開……に……って」

「お、紗雪ーおかえり」

 転移してきた紗雪とはやての目が合った。しばらく間が開いたと思ったら。

「と、通りすがりのニンジャオタクですー!」

「もうええから」

 はやてのツッコミを貰いながら狼狽えてる紗雪。その格好は黒い袴に、ノースリーブ型の黒いアンダー。赤いマフラーを纏ったその姿は、まさに忍者と言った格好だった。
 
「色々聞きたいけど、中に入ったんなら何か掴めたんか?」

「悪い報告が幾つかと、特に悪い報告が1つ。どっちから聞きます?」

「……悪い方からお願いしよか」

 一瞬考えてから、そう告げるはやて。静かに頷いた後紗雪は1つのデータを表示する。

「まず、内部はAMF濃度が濃いという事。そして突入部から駆動炉と玉座の間はそれぞれ正反対。玉座に向かう道には大きな砲身を持った子と壁をすり抜ける子が居たためそれ以上は向かえず。反対に駆動炉に通ずるであろう道には大量のガジェットがいるので、こちらにはあまり護衛は居ないのではないかと推測します」

「……確かに悪いことやな。ヴィータ!」

「おう、言われなくても駆動炉はあたしとアイゼンがぶっ潰す!」

 即座に役割が決まる。だけど、コレで悪いことなら……特に悪い報告は?

「そして玉座の方向には遠目で2人を見ただけです。一番の問題が、二本の刀を持った()がその道を守ってること。そこには二つの道。まっすぐ玉座へ向かう道と、上部へ向かう階段の2つが……ごめんなさい。こちらは全て分身を破壊されたので、コレ以上は」

 侍、その言葉を聞いて皆の視線が鋭くなった。そして、その侍は二本の刀を持っている。

 という事は。

「お察しの通り。玉座への道を守っているのは響です。しかも最悪なのが……操られてるって一発でわかります。
 接敵と同時にまっすぐこちらの首を取りに来ました。
 ……効率よく人を殺す技術全開の響です」

 それを聞いて、静かに奏が涙を一筋、流したのが見えた。

 
 

 
後書き
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