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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-

作者:炎の剣製
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第039話 7日目・2月06日『無限の剣製。そして…』

 
前書き
更新します。 

 
………少し時間を遡る。
志郎がアーチャーとしっかりと話を出来てお互いに和解ともいうべき仲になれた後の事であった。

「志郎。セイバーを呼んでもらっても構わないか…?」
「セイバーを? なにをするの、兄さん?」
「いや、なに。これから戦うであろう英雄王にもしかしたら私だけでは敵わないかもしれない。
しかしだからと言って不完全なセイバーだけでも倒せる相手でもないのだ」
「…不完全ってどういう事?」
「君ならすぐに分かると思うがセイバーにはもう一つ宝具がある。今は志郎の中にあるがな」
「あ…」

それで志郎もそれを察したのだろう。
セイバーを自身の部屋に呼び出した。

「シロ。呼びましたか? アーチャー…あなたがここにいるという事はシロとしっかりと絆を結べたのですね」
「ああ。君たちの後押しもあっての事だったがね。それに関して感謝の言葉を言っておく」
「いえ。この程度なら構いません。シロとアーチャーが仲直りできれば私も嬉しいです」

別に喧嘩をしていたわけでもないのだがね、とアーチャーが小声で言うが今は時間も惜しいということで早速志郎達は本題に入る。

「それでね、セイバー。大事な話があるの」
「はい。なんなりと」
「英雄王は並々ならぬ相手だ。それは十年前に戦ったセイバーなら分かる事だろう」
「…はい。悔しいですが彼の方が私より強いのはあきらかでしょうね」
「それでだが対策としてセイバーには完全に力を出し切れるようにある事をしようという考えになったのだ」
「ある事…?」
「うん。セイバーに鞘を返そうと思うの」

志郎がその事を告げた瞬間にセイバーは目を見開き、

「いけません、シロ。それでは貴女を守る術がなくなってしまいます。鞘の加護があるからこそシロには安心して後ろを任せられるというのに…」
「でも、この鞘はもともとセイバーが本来の所持者…。だからセイバーには受け取ってほしいの」
「しかし…」

それでもごねるセイバーの手に志郎は自身の手を合わせて、

「…大丈夫。確かにこの十年間私を守ってきた鞘だけど、もう一人立ちしなきゃいけないんだと思うの。それにセイバーには必ず必要となる…だから」

志郎の真剣な表情にセイバーも諦めたのだろう、「やれやれ」と言葉を零し、

「シロは意地っ張りですね。ですがわかりました。シロの事です。きっと私の事も考えてくれてるのでしょう」
「うん!」

それで三人は志郎が一番魔術が集中できる場所である土蔵へと足を運んだ。
その際、

「志郎…。イメージするんだ。そして感じるんだ。自身の中にある鞘の存在を。偽物ではなく本物の鞘を投影して形にするんだ」
「うん。わかったわ、兄さん。復元、開始(トレース・オン)…」

そして志郎は集中して己の中にある鞘をイメージする。
すると今までぼんやりとだが自身の中にある感じ取れていた百以上のパーツに分解されている鞘の存在をしっかりと感じ取れる。
志郎は今まで私の事を守ってくれていてありがとう…という思いを込めて、そのパーツを一つ一つ集めていく。
そして、

「…復元、完了(トレース・オフ)

そこには黄金に輝く鞘が志郎の手に握られていた。
集中し過ぎたのであろう志郎は少し息切れをしながらも、

「はい、セイバー。あなたの鞘だよ…」
「はい。しっかりと力を感じ取れます。これこそ私の宝具であり一度は紛失して失われてしまった鞘…『全て遠き理想郷(アヴァロン)』です」

セイバーは志郎から鞘を受け取り、次の瞬間にはセイバーの体内の中に入り込んでいった。
そして不死の力が戻ってくる感覚を久しく感じながらも、

「(マーリン…私は答えを出しました。この戦いが終わりましたら…)」

心の中でセイバーがそう言葉を発するとどこからか声が聞こえてきた。

《いいんだね。わかったよ…僕も君の運命を最後まで見届けるとしよう》

そう聞こえてきた声を聞き流しながらセイバーはそれでいつも通りの表情に戻り、

「シロ…そしてアーチャー、いえ、シロウ。あなた方二人に感謝を…これで私は万全に戦えます」
「ううん。私からも感謝するね。私に従ってくれてありがとう。セイバー」
「ああ。私も過去に君には助けられたからな。これで、安心できる」

それで平行世界での絆という繋がりを感じながらも三人は決戦に意欲を燃やした。






そして時間は現在へと戻ってくる。
セイバーは鞘を掲げながらも、

「大事ないですか…? アーチャー」
「…ああ。助かった、セイバー」

そこに志郎と凛も駆け寄ってくる。

「兄さん、大丈夫…?」
「ああ。大事ない。それよりも凜、できれば思念通話で伝えてほしかったぞ?」
「う、うるさいわね! うっかり大声を上げちゃって悪かったわよ!」

全員が揃い和気あいあいの雰囲気だがそれを許さない空気を読まない男がいる。

「ハハハハハハハハハ! 来たかセイバー! ここに来たという事は我に返事の用意でもできたのか?」
「英雄王。あなたに贈る言葉もありません。私はあなたには従いません。絶対に!」
「ククク…恥ずかしがらずとも我はすべて受け入れてやるぞ?」

ギルガメッシュのその言い様にセイバーは少し眩暈を感じながらも敢えて無視することにする。
なにやら一人語りをしているギルガメッシュを無視してセイバーはアーチャーに話しかける。

「…アーチャー。なにか作戦はありますか? 力押しでもどうにかなるでしょうがそう簡単な相手でもない」
「ああ。セイバー、頼みがある。少しばかり英雄王と戦ってもらって構わないかね? その間に私の宝具を展開する…あるものを結界内に取り込まないといけないからな。できるだけ集中したい」
「わかりました。それでは参ります!」

それだけで二人の会話は終了した。
そしてセイバーは剣を構えて英雄王へと駆けていく。

「くるか。セイバー! よいぞ。刃向かう事を許す!」
「許す許さないなどありません。これは戦いだ!」

そう言いながらもセイバーは英雄王が放つ剣群を弾いていきながらも戦いを繰り広げる。
それを見ながらも、

「…志郎、凜。今から宝具を展開する…嫌なものを見せるかもしれないが許してくれ」
「大丈夫…。兄さんのすべてを見せて!」
「そうよ! ばっちりとやっちゃいなさい!」
「ああ!」

それでアーチャーは目を瞑りながらも手を掲げて詠唱を開始する。

―――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)


…そう、生涯体は剣で出来ていた。


―――Steel is my body,(血潮は鉄で) and fire is my blood(心は硝子)


…砕けそうになりながらも心を鉄にして踏ん張ってきた。


―――I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗)


…ゆえに負けることなどあり得なかった。


―――Unknown to Death(ただの一度も敗走はなく、) Nor known to Life.(ただの一度も理解されない。)


…確かに理解されなかっただろう。理解されようとも思わなかったしそれより助ける事だけを考えて走ってきた。


―――Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う。)


…だからいつも独りだった。剣の丘だけが私の在り方だった。


―――Yet,those hands will never hold anything.(故に、生涯に意味はなく。)


…私の生涯は意味がなかったのかもしれない。だがそれでも掲げる理想だけは嘘ではなかった。
だからこの生涯は確かに誇れるものではなかったのだろう。それでも誰かにためにあろうという剣の意思があった。


―――So as I pray,(その体はきっと)unlimited blade works.(剣で出来ていた。)


その生涯を外界に現す。
そして見てくれ志郎。私が辿り着いてしまった境地を。

瞬間、地面に炎が走っていく。
それはあるものも取り込みながらも世界を破壊して外観を変えていき、そして再生する。
その世界は荒廃していた。
様々な剣が地面に刺さり、灰色の空には歯車がいくつも浮いておりゴウンゴウン…と回転する音を響かせていた。
全員がこの世界に取り込まれてギルガメッシュは声を上げる。

「…なんだこのみずぼらしい世界は」
「これが私の世界だよ、英雄王…。固有結界、無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)。これが生涯を駆け抜けて私が辿り着いてしまった境地だ」

その世界を見て志郎は胸が痛かった。
兄さんはどうしてこんなになるまで心を摩耗させてしまったのかと…。
凛も夢の中でアーチャーの生涯を見たとはいえこうして改めて見せられると言葉を失うほどにショックを受けざるを得なかった。
と、同時に志郎にはこんな世界には辿り着かせないという意欲を燃やせた。
セイバーもこの世界を悲しんだが、だがアーチャーの顔を見てその考えをやめた。
アーチャーは笑っていたのだ。
こんな世界でも私は意地を張り通せるという思いを抱いていた。
志郎という妹と出会う事が出来てアーチャーはまた頑張っていこうという思いを抱いていた。
それはある意味革命的であった。
諦めきっていたアーチャーに志郎は希望を与えたのだから。
そんな心境など分からないギルガメッシュは「ふんっ…」とまたしても鼻を鳴らしながら、

「…こんなつまらん世界を見せて貴様はなにをしようとする?」
「気付かないかね…? ならば背後を見てみるといい」
「なに…?」

それでギルガメッシュは後ろを振り向くと驚愕する。
そこには固有結界の中に取り込まれたのだろう大聖杯が丸裸の姿で鎮座していたのだ。

「これが狙いか!」
「今更気づいても遅い!」

そしてアーチャーはすでに展開されている剣達を空に浮かび上がらせながらも、

「セイバー! 駆けるんだ! 露払いは私が務めよう!」
「はい!」

ギルガメッシュが剣群を放つがそれを悉く撃ち落とすアーチャーの剣。
その中をセイバーは安心しながらも風の加護を解き黄金の剣を展開させながらもギルガメッシュへと駆ける。

「おのれぇ!」

ギルガメッシュが乖離剣を使おうとするが、それよりも早く一振りの剣がギルガメッシュの腕を切り落とす。

「ッ!? 我の腕が!?」
「英雄王! 覚悟!!」
「ッ! セイバァァァァアアアッ!!」

ギルガメッシュの叫びも虚しく大振りに振り上げられたセイバーの剣がギルガメッシュを切り裂いた。
それで勝負は決した。

「…ぐふっ。セイバー…」
「………」
「最後まで我に刃向かうのだな…。だがよかろう。それも一興である…さらばだ…」

そうして英雄王は消えていった。
少しの余韻がその場に残る。
そして後は大聖杯を破壊するだけになった。

「兄さん…」
「志郎…」

志郎とアーチャーが大聖杯を破壊する前に少しばかり見つめあうのであった。



 
 

 
後書き
次回、最終回。 
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