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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第40話 下準備と、親友だから本気で。


――sideなのは――

 正直驚いたというのが感想だった。
 響は底を見せたがらない。見せたら対策取られるからと何時も言っていた。だけど、それはあくまで伸びしろがあるティア達に対してであって、本当の意味とは微妙に違うらしい。

 だって今。

『取ったぞ、響ぃぃいいいいい!!!』

『取られてんだよ、お前がなぁああああああ!!!』

 モニターの向こうで、激しくぶつかりあう。片や一人だけズルは良くないと、前のデバイスの二刀を構え、片や杖を硬化させ相対している。
 既に二人共ボロボロだ。バリアジャケットは所々焼け、もう一人もボロボロに斬られている。

 ポテンシャルは高いと知っていた、だけど……。

「……ここまでとは」

 ちらりと周りを見渡すと、皆口が開いている。煌が強かった事に驚いたそれは本当だ。だけど問題なのはそれに完全に五分……いや、若干押してる響に皆一同に驚いてる。
 元々フェイトちゃんを落とせたかもとは皆考えてた。だけど、あの時と今では全然違う。それどころか普段と全然違う。煌の一手を見切って、その一瞬で掴み、壁や地面に叩き付ける。文字通り人を倒すための術だ。
 スバルやエリオ、そして最近ではギンガを投げるような、技の延長ではなく、完全に行動不能……怪我させても知らないという行為……だが。

 投げられても、その途中で姿勢を整え逆に投げ返されている。かと思ったらわざと途中で切り離し、それを追撃等。なんというか、魔道士って言うより完全に殺し合いと言うかなんというか。

 使ってる技術は間違いなく二人共高いレベルだというのは分かるけど……あんまり良い教材にはならない。

 間違いなくあの2人の考えてることはただ一つ。全力で打ち込んでも有効打にならない。なら全力で戦っても問題ない! と、そんな感じだ。いやうん。間違ってないけど……これ、全力って言うより死闘に近い何かだよね。

 未だにモニターの向こうでは、2人が全力でぶつかり合い、鍔迫り合いをしたかと思えば投げられ優位を取ろうと追撃、また鍔迫り合いと、ギリギリで戦ってる。既に煌の杖は半分から折れてカートリッジは使えない、響も既に刀の刀身が折れ、鞘だけで戦ってる。

 ……よし。ほっとこう!

 さて、こちらのモニターを置いといて、もう片方を見ると……お? ちょうど奏と時雨が遠距離で弾幕を生成して、牽制し合ってる。そして、その合間合間に弾幕を地上へ送ってる、勿論その先には。

『……やっぱそれ汚い! 忍者汚い!』

『使えるものは使いましょう。鉄則でしょ?』『そうだそうだー』

 地上のビル街の真ん中で、震離が紗雪と相対している。だけど、それは……。

『しかもそれ、紗雪と同等の分身(・・)じゃん!!』

『『そう。だけど、震離ならどっちが私でそうじゃないかは分かるよね?』』

 2人の紗雪からの攻撃を必死に躱す震離に、静かに笑いながら告げる。震離を中心に対角線上で攻撃されて、防ぐので一杯。と言うより、さすがというかなんというか。しっかり対応できてる辺り震離も凄いね……。いや、これは知ってるから対応出来るってことかな?

 だけど、一手足りないね。

 ロングアーチに4人が交代武装隊員として配属されるにあたって、4人のデータを自己申告で聞いて驚いた。ランクはそれぞれ聞いていたけど、問題はその技能。特にここで羨ましそうに響と煌の相対を見ている優夜。そして、今震離と戦ってる紗雪。この2人は飛び抜けて凄い。

 優夜は変換資質、風を使った天候操作に、風でモノを任意のものを浮かせる事が可能。そして、何より条件次第とは言え、対艦攻撃を放てる技術。
 更にはその応用で熱も冷気も操作出来るのは、風……いや、大気操作の特権だ。

 表には出さないようにと釘を差してきた紗雪が使うものは、気と呼ばれるモノを使った忍術と、魔力では資質、氷を使った戦闘……まぁ、これも凄いけど。忍術が本当に凄い。準備に手間がかかるらしいけど、呪符を使った転送術に、文字通りの分身。しかも自分と同等の分身を出せる……。
 ただ、氷は氷結には遠く、冷気が精々だと言ってた。でも、それを切欠に氷結魔法を扱えるのはしっかり出来てるね。

 煌もあまり目立たないと言うけれど、炎を使った高火力戦闘に、ビットを生成して弾幕を張ったり、何より一人で全局面に対応出来るオールラウンダー型のアタッカー。スバルとはまた違うフロントアタッカー。
 響が距離を詰めて戦うのは、離れれば砲撃を叩き込まれ回避するしか出来ないから、あの距離で戦っているんだ。

 そして、それを束ねる時雨。奏やティアナとは違った射撃型。何より3人の補助と言いつつ自分からも落としに行ける射撃力……。
 しかも、最初に響達を分断させるために遠距離から狙撃をしてみせたのは凄い。

 響が言っていた。攻撃力突破力ならあの4人のが上だと。もし4人揃っていたら。優夜が戦線に穴を開けて、煌がその穴を広げて、追いついた紗雪とで制圧。そして、次へ行き時雨がラインを上げてそこから援護。
 なんというか……この子達いいなぁ。

 なんて考えてたら震離が落された。モニターの向こうで2人の紗雪がハイタッチしてる。奏も震離が落ちたことを受けて投了したね。奏と時雨の打ち合いでは、若干奏が有利だったけど、前衛がやられては流石に無理はしない感じだ。
 で、こっちはというと……。

『『……』』

 息絶えたんじゃないかってくらい、二人共ダウンしてる。いやでも、なんというか。

 17歳の若者って感じが伝わってきた。

 響なんて特にそうだ。上官だからというのもあるとは言え、私たちには一歩引いた対応を。当然といえばそうかもしれないけど、しっかり敬意は伝わってくるしね。そして、スバルやティアナには、少し上の先輩として、エリオ、キャロに接する時も良い年上の人として。
 だからあんなにはっちゃけてるのは驚いた反面、何処か微笑ましかった……内容は置いといて。

「さて、皆集合!」

『了解です!』

 ――――

「皆は参考に……ならなかったよね」

 乾いた笑いと共に、皆が気まずそうに返事するけど。なんというか、本当に参考にならなかったなぁって。
 響なんて今回は指揮しないで、完全に戦闘のみに集中してたし、何よりまだダウン状態から復活してないし……。
 まぁ、魔力の使いすぎなんだけど、普段の運用見てるのもあって、ダウンしてるのは本当に珍しいなぁって。まぁ、優夜と流が医務室に運んでいったから大丈夫だと思う。
 だけど煌が普通にしてるのは魔力量の差なんだろうなー。

「凄いのは分かるんだけど……ねぇ、紗雪? 札で転移する時は気って言ったけど、もう一つのあれは魔力で使っていたの?」

「……あれって言うと、あぁ影分身ですか? あれも気ですねー」

 何事もなく言うけど……気って。

「そうですねこの2年リンカーコアに制限入ってたのでその辺から説明しましょう。お願い震離?」

「え、私? いやまぁうん良いけどさ」

 曰く、魔力がリンカーコアに大気に存在する魔力素を吸収し、溜めておける物に対して、気はリンカーコアを通じて使う生体エネルギー、又はオーラとの事。魔力は溜めておく能力に依存するが、気は誰でも持っているけれど、気の存在を認知して、鍛錬しないと使えない物らしい。
 そして、何より驚いたのがAMFが発動していても気ならばある程度動けて発動も可能らしい。ただし、魔力と気を同時で使うと内部から暴発、外で魔力と気を混ぜても暴発する使いにくさ。
 上手いこと織り交ぜる事も理屈では可能らしいけど、紗雪は出来ないものだと割り切っているとのこと。
 これについては震離からも補足として、魔力と気は同じエネルギーであっても、水と脂のようなものらしく、基本的には弾き合う物。
 だけど、体内に内包されているし。何より保管場所が違えどリンカーコアを通して使用されている事から、何らかの手段で混ぜることは可能かもしれない。だけど、気なんて調べてるミッドの人なんて居ないから憶測でしか無い。
 そして、暴発したときのエネルギー量から凄まじい強化が出来るかもしれないが、混ぜ方がわからない以上難しいと。

 もう一つ。紗雪の転送術についても話があった。札を使って対象を札のある場所へ転送することが可能だけど。そもそも作成コストが凄まじく、現在も暇な時に作成しているけれどまだ2枚1セットの6セットしかない上に、大抵は一度しか使えない事から、取り回ししづらい。
 皆が参戦した時響を転送したけど、昔残してた札を使っただけであの時点でもう札は残り少なく。 現在時間と暇があれば作成し直してるらしいが、やっぱり時間がかかると微妙な顔をしてた。

「説明は以上ですけど、ただあまり頼れるものではないので……そこだけです。それに結局私が発動許可しないと使用すら出来ない紙切れですし。
 インスタントで、私の発動が無いと飛べない紙切れで、その距離は全然短い以上、本職の召喚師には遠く及びませんよ」

 苦笑しながら言うけど、やってることは凄まじいんだけどねー……物を用意すれば召喚術の様な事が出来る。それは凄いことだけど、紗雪の場合コストと用意する時間が掛かるのが難点だなー。

「さて、これを踏まえて今日はそれぞれ訓練をしていくよー。各自メニューをしっかりこなすように!」

「はい!」

 あえての自習としてみる。理由は色々あるけど……お、早速ティアナが時雨の所で話を聞きに行ったし、キャロも紗雪の元へ。スバルはギンガと今の試合……特に響と煌の戦闘を見て火が入ったみたい。自分たちならこうするって話し合ってる。

 で、一番熱心なのが……。

「あの!」

「うん?」

 エリオだった。だけどよく分かる。試合の後半の方はもう剣として振ってたけれど、前半戦は槍として扱ってたからね。

「……僕に、その……槍術を教えてください!」

「……え、俺に? 構わんけど、俺のあれどっちかというと棒術だけど、いいの?」

「はい!」

 迷いなく言うエリオに一瞬驚いてきょとんとする。直ぐに笑みを浮かべて。

「分かった。そしたら一通り動きを見たいから、適当な場所で打ち合おう。宜しくなエリオ?」

「よろしくお願いします!」

 うん、この影響がいい方向へ向かうと良いなって。最近時間があくとシグナムさんがエリオと打ち合ったり、響が簡単に動きを見てくれてたけど、やっぱり槍術を知ってるかどうかとなると話が変わってくる。私もレイジングハートを使った杖術、棒術を使うけれど、あくまで魔道士としての戦い方……と言うより、受け身になってしまうことが多くて。
 
 さぁ、どんどん楽しくなってきたぞ-!


――side――

 
 地上本部から届いたメッセージを見て、軽くため息が漏れる。内容を要約すると。

 機動六課を査察してくれ。間違いなく最近おかしな事が起きているそれを見つけてもらいたい。

 わざわざ本局を通してまでの今回の査察、正直アホらしくて話にならない。ただし、メンバーは私が決めていいと書いてあるのは幸いだった。
 それならば、と。本局第6武装隊、陸士201部隊、辺境警備部隊に連絡を入れて、今日中に返事が来るはずなんだけど……お?
 さすが、事情を説明したら皆快く承諾してくれた。大体の反応がこうだ。

 六課の査察? あぁ、良いよ。暇だし!

 と快く承諾してくれた。まぁ、私も六課の面々にはお世話になった……というか、迷惑を掛けてしまったからね。そのお詫びも兼ねて行かないと。
 レジアス君には申し訳ないけれど、アナタの思うとおりには動く気はないのよね。私も彼らも。皆、ね。

 ふむ、それにしても六課に行くとなると、私の事は……伏せさせようかな。そう決まったら彼に連絡入れといて、と。しかし、このタイミングで言ってくるのは正直困ったなぁ。
 先日抜けてしまったクランベルさんの調査がいい感じに進んでるときだもん。また手が止まってしまう。最近は変に破損してるデバイスが幾つか見つかってその解析で忙しいのに。嫌になるわ。

 さぁ、今日のお仕事を早く終わらせて、お家で待っててくれる愛娘の元へ帰ろうかな。



――side響――

「部隊長ー部隊長ー?」

「な、なんや急に? どしたん?」

 気味悪いって顔されてますけど、普段はこれが平常なんだけどなー。まぁ、いいや。とりあえず申請書類を出して、それを見せまして……よし。

「……え、これ何時?」

「まだ決まってないというか、フェイトさん家の地球帰還に合わせて、私用で一日だけ延長したいなーと」

「ほー……それは構わへんけど。私用って、何か理由あるん?」

「あー……単に母に挨拶しにいこうかと。数年行ってないですし」

 まぁ、間違った事言ってないし、はやてさんも納得してくれたみたいで、微笑みながら承認してくれた。

 ここまでは普通にいい人なんだけど、何か間違いなく裏がある笑い方だったんだよなぁ……まぁいいや。

「そういやはやてさん?」

「んー?」

「各分隊に休み与えるなら、はやてさんは?」

 ギクリと肩が震えたのを確認した。この人は……ほんとにもー。

「駄目ですよー。貴女も率先して休まないと。ロングアーチ組が気にしたらどうするんですか?」

「せ、せやけど……」

「けどもどうも無いですよ……。ヴォルケンリッターの皆さんと休み合わせて2日取ればいいじゃないですか?」

「うーん……せやけど」

 あー、ダメだ押しが弱すぎて駄目だなー。物で釣ろうにも……あ。

「はやてさん……休んだって確認が取れたら」

「……とれたら?」

 花霞に念話を飛ばして例の物を表示させる。瞬間はやてさんの目が見張るのを確認。釣れたのを確信。

「震離から没収した、この前ミスってウィスキーボンボン食べた時の流の画像を譲りましょう」

 作戦中かなって思うほどキリッとした顔で。

「休みを取るって確約しようやないか。だから欲しい」 

「確約じゃ駄目です。ちゃんと休んだのを確認してからですよ。それでは失礼しますー」

「あ、ちょっとー?!」

 後ろで何か言っているのを無視して退室。まぁ、部隊長なんだし責任感じるのは大いに結構。だからこそしっかり休まないとロングアーチ組が気に病むでしょうに。

『……いいんですか? 叶望様より没収したのを八神様へお渡ししても?』

「あぁ、アイツのことだしバックアップは十全に保持してるだろう。没収した時最初こそ抵抗したけど、それ以上はしなかったろ?」

『確かに』

「だろ? だからいいんだよ。そもそも俺がこれ持ってるって流とかに見つかってみろ。悲しむだろう?」

『フフ、そうですね』

 花霞との会話もその辺で。軽く肩を回してボキボキなるのが聞こえる。久しぶりに煌と正面切って戦ったツケだなこりゃ。なのはさんからは微笑ましいってだけで済まされたけど、正直あれは無いわ。起きて時計見たら既にお昼前だったし。
 だけど、前にエリオに伝えてた事がようやく実現したみたいで何より。俺じゃ限界あったしなー。あとベルカ式の戦い方を教えられるあの人が手を貸してくれたらいいんだけど……。それと優夜が技を一度見せてくれたら最高なんだけど……説明したらやってくれないかなー。
 だけど、アイツ受けて覚えろ見て覚えろ気質だからな……駄目なんだよね。
 
 何より今の体の出来上がってないエリオとは相性が悪い。
 棒術の要領で取り回し優先した技術よりの煌に比べると、優夜の剛撃とも言える一撃を叩き込むための槍。
 事実、昔の優夜も技術よりだったのに、体が出来上がる頃には、連撃も一打にも剛力を込めて、貫き通す実家の槍術になった。
 こんな技もあると教えられても、正式に教えられないのがなんとやら……。
 まぁ、当面は煌に任せよう。アイツなんやかんやで教えるの得意だし。褒めて伸ばすタイプだし……あれ? エリオから兄さんって呼ばれなくなるかな? 大丈夫かな?

「お兄ちゃーん!」

「ん、おぉ。キャロか。どうした?」

 遠くから大声で呼ばれてそちらを見ると元気にこっちに走ってくるキャロの姿が。それにしてもえらく上機嫌だなー。いいことだ。

「さっきフェイトさんから聞きました。着いてきてくれるって!」

「あぁ、その話か。ゴメンなー家族団欒を邪魔する形になっちゃうけど?」

「ううん! またアルフやリンディさんに会えるし嬉しい!」

「そっかぁ」

 よしよしと頭を撫でる。いやはや、話を受けてこんなに喜ばれるなら良かったかなぁって。まだ詳細も何も聞いてないんだけどねー。

「だから、明日(・・)がすごく楽しみで!」

「あぁ、良かっ……え?」

 ……えっ?

 ――――

「へー、私達も聞いたけど。正直どうしようかってスバルとギンガさんと相談中」

「急だもんなー」

 あれから慌ててキャロ抱えてフェイトさんの元へ行き、詳細を聞いて慌てて用意した。で、それが終わって適当に隊舎の外にある自販機の側のベンチでコーヒー飲んでたら、ティアがやってきて、絶賛愚痴……というか、適当にだべってる。

「それにしてもあんた……あの模擬戦見てて痛々しかったわよ?」

「あー? あー……あれなー。やりすぎたなーっていうのはあるけど。いつかティア達とやる時も最終的にはああなると思うけどなー」

 隣でげって声が聞こえて思わず笑いそうになるのを堪える。おもむろ自販機の前に行って、視線を向けると「ブラック」「あいよ」とやり取りをして。コーヒーを買う。それを手渡して。

「大体、煌との試合はもう俺の手札は全部割れてたからの行動だし。まだ見せてない札があるんだ、まだあぁはならんよ」

「嬉しいのやら悲しいのやら」

 プシっといい音を聞きながら適当に話す。いやー、こういう気を使わなくていい会話っていいよねー。勿論あいつらと話すのも好きだけど、完全にオープンだからなんというか遠慮が無さ過ぎて偶にダレる時があるし。

「……今も思ってんの?」

「何が?」

 ふと空気が変わる。

「魔力量、レアスキル、それ等に恵まれなくとも弛まぬ努力でカバーできる。そんなのは口先だけのことだ……って話」

「ぅぇ」

 突然の言葉に飲んでたコーヒーが途端に不味くなった。そういや、まーだこの弁解してなかったっけなー。

「俺はって言ったけど、あん時の言葉なら第三者だよ……まぁ、正直思わなかったといえば嘘になるからぶっちゃけると、あくまでこの世界に来た時だけだなそう考えたのは」

「……」

「自分にないものを惜しんでも仕方ないし。それならある物を磨こうって考えたら自然と今みたいになったよ。強くなりたい……って言うより、あいつらと肩を並べて歩きたかった。それだけだ」

 グッと一気に残ったコーヒーを飲んで。空き缶をゴミ箱へ投げる。綺麗に入ったのを確認して。

「……強いね」

「……どっちがだよ」

 お前さんは俺なんかよりも遥か上に行けるんだから。あんな所で腐ってほしくなかっただけだよ。


――sideなのは――

「……え、あの。だからねヴィヴィオ?」

「やー!」

「にゃはは」

 目の前でヴィヴィオにせがまれる流を見てにっこりとしちゃう。あの一件以来、ヴィヴィオ以外にもちゃんと感情出すようになったのは本当にいいことだと思う。
 
「一緒に行こうよー」

「うーん。それは……流石に」

 ちらりとコチラに助けを求めるけれど。それをニッコリと笑って返す。意味は私はいいよっていう意味で。その意味に気づいてたじろいだのを確認して。

「スバルやティアナにも声を掛けたけど、向こうは3人で何処かに行くみたい。スバルがお土産をって泣きながら言ってたから、大事な用かも。あ、で、震離にも声を掛けたけど。結果はおっけーだったよ? 後は流だけ」

「……うぅ」

「うー」

 数秒ほどヴィヴィオとにらめっこして。小さくため息。

「……わかりました。お世話になります」

「はーい」

 ヴィヴィオが手放しで喜んでいるのを見ながら、予定表に流と震離の参加を書き込んでいく。明日からライトニングは一泊二日の故郷へ。とは言え、私達スターズはライトニングと入れ違いだけどね。だけで正直助かった。私もヴィヴィオを紹介しようと考えてたからちょうど休みを何処かで取ろうかと考えてたし。
 ヴィヴィオには私の故郷へ行くと伝えたら、流も一緒にって言ったけど。初めはどうかなと考えた。
 だけど、もう一緒に行くと決めているヴィヴィオに行かないみたいと言うのは正直心苦しくて。最初に震離に相談……もとい、誘ってみたら二つ返事で行くと言われて、スバル達に声を掛けたら今回は振られちゃった。
 そして、後は流だけだったけど。最終的に外堀は埋めたことを伝えたら直ぐに折れてくれて助かった。

 さて、流がヴィヴィオの相手をしてくれている間に、お母さんからのメッセージを確認して……。あ、お兄ちゃんと忍さん帰ってきてるんだー。私達も明々後日に帰りますと返事を出してっと。

 それにしても響の件はもったいなかったなー。まぁ、タイミングが悪かったと諦めよう。フェイトちゃんが凄く喜んでて微笑ましかったなー。ヴィータちゃん達はまた別の日に合わせるって今回は休まないみたいだし。
 たまには休めよワーカーエースって言われたなぁ……そう言えばちゃんと休んだというかオフなのって久しぶりだなぁ。

「たかま……えっと、なのはさん? 私なんかが行っても平気なのでしょうか?」

 ヴィヴィオをあやしながら、何処か怯えたような目で聞いてきた。これは……。

「そうだねー。なのはママ(・・)としては、その発言は頂けないなー。なんかじゃなくて。私やヴィヴィオが一緒に行こうって誘ってるんだから。もっと気軽でいいんだよ?」

 意図的に強調して言う。別にお仕事ってわけではないんだし。もう少し力を抜いて欲しいなって。だけど、流のこれは何処かで……。

「……そう、ですね。すいません。明々後日楽しみにします」

 うーん……やっぱり、少し強張ったような笑い方だ。なんとかしないとなーとは思うけど。やはり私では難しいかな? こういう時に立場や階級が煩わしく思ってしまう。ティアナの時には完全に失念してたけれど、ちゃんとお話をすれば解決するのも遠い昔になっちゃった。
 きっと今の私が本音で話し合おうって言っても、きっと……本当の意味では届かないかもしれない。

 やっぱり色々私も未熟だなぁって、改めて痛感したよ――


 
 

 
後書き
 長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。 
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