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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第35話 勢い余って愛を、一歩前進していく



 ――side震離――

 調子が絶不調な奏を支えながら、医務室を目指して歩く。けど、やっぱりさっきの言い合いのせいか、トイレに連れて行った後も、その間も、今も、ずっと無言だった。
 勿論奏の言いたいこともちゃんと分かってる。心配してたっていうのも伝わってくる。きっと、奏も私の気持ちを理解してるんだろうけど、お互い客観的な意見と言うか、相手が危ないということしか考えてないというか、なんというか……。

 ダメだ、もう! 謝ろう!

 と思ってんだけど、これが中々言い出せない。ちらりと奏の方を見るけど、本当に調子悪そう……と言うか死に掛けてる見たいに顔色が青を通り越して白い。まぁ、今日が初日で辛いのに、痛み止めとか飲んだ上に、リミット外して無理してたもんね……。
 私も人のこといえないけど、さ。今も気を抜けば、痛みが来る。ふと、あの人の言葉を思い出す。治す前に言ったあの事を。

 ――魂を元にアナタの体を治します。ただ、もう二度とこの方法は使えないですが、短期間で直せます。それこそ頭がクシャっとなっても!

 受けてからミスったかなぁと思ったけど、術式展開をちゃんと見れなかったのは惜しかった。それと、魂なんて不確定なものを使ってるからか、それとも魂から修復している関係なのか分からないけど、普通に痛覚切ってる程度じゃ痛みが引かないから、無理やり倍率引き上げて痛みを誤魔化してる。

 お陰様で体ぶつけても今痛くないよ!



 ……うん。


 なんて事してる場合じゃないんだよ、私ぃ!
 
 よし、決めた。言おう!

「「あの」」

 そう思って声を掛けたら、被ってしまった。驚いた顔のまま、思わず顔を見合わせて。

「「フフフ」」

 お互いに笑い合う。驚いた顔がおかしくて、お互い同じ考えだったみたいで。

「……ごめんね奏。熱くなった」

「私の方こそ、分かってたのに、それでもつい言っちゃった」

 もう一度お互い顔を見合わせて笑い合う。ふと、悲しそう俯いたのを見て、足を止める。

「どったの?」

「……あれだけの事が起きたけど、流はこの事を知ってるのかなって」

「……」

 奏の言う通り、アイツが流の意識を掌握していたのかわからないけれど、実は流の意識が起きていたら……。いや、まだ分からない。

 そんな事を考えているといつの間にか医務室の前まで来ていて、扉を開けた中へ入った。そして、奏をベッドまで送り届けた後、なんとなく流のベッドを覗いた。

 そして、目が合った瞬間、流の目から涙が零れ落ちた。そして、震える声でただ一言。

「……ごめ、ごめん……なさ……い」

 その一言を切掛にボロボロと涙を流しながら、ごめんなさいと何度も謝っていた。

 この反応を見るに、流はあれをずっと見ていたんだ。何時から覚醒していたのかわからないが、それでも私と戦ったことを。
 
 気にしないで、といいたいのに、上手く口が動かない。
 
 目の前が真っ暗になる。足元がおぼつかない。

「わた……し、は」

 何かを言いたそうにしている。けれど、ひくっとしゃくりあげて言葉になっていない。それでも、言いたいことははっきりと分かった。
 
 伝わってきた。

 すると、自然と目の前が明るくなり、いつかの時の様に、ベッドの上に座る流に抱きついて。

「大丈夫だよ」

 酷く体が震えている。胸の中で声を上げて泣いている。何かを伝えようとしてくれる。だけど言葉になっていない。
 
「ほら、私はこうして生きている。だから、大丈夫」

 自然と私の目からも涙が溢れた。どこかが痛いわけじゃないのに、自然と溢れた。思えば自爆同然の戦闘で、勝手に自滅していった。だけど、自分の事なのに、そんな無茶をした理由をずうっと考えてたけど、結局分からなかった。

 いや、違う、分からないフリをしてたんだ。

 分かってる。あの場の最善手は私の無茶なんかよりも皆の突入まで時間を稼げばよかった。
 分かってる。あの魔力量に、あの結界を張れる人相手に勝てる可能性は万に一つだけだったと。
 
 それなのに私は、こう考えた。

 疾く取り戻さなきゃって。

 なんで、私はこう思ったんだろう? あくまで私と流は一部隊の同僚。年下とは言え、今の私よりも階級は上で、ランクも上だ。

 そもそも、遺跡の時もそうだ。私がすることじゃないだろう? だけど、私はなんで……。たまたま同じ部隊に入れられたから? 一緒に組まされることが多いから?

 そもそも私が抱いてるこの感情は……?

 アグスタで守ってくれたから? 遺跡で身の上話を聞いたから? 砲撃から守ってくれたから? 
 どれも違う。それは答えじゃない。もっと根本的な……。いや、それも違う。

 私は、私は――。

 自然と抱きしめる腕に力が入る。自然と胸が、心が暖かくなる。そうか、私はこの子のことが好きなんだ……?

 いやでも待って。好き……か? いや、もっとこう……違う。好きじゃないけど、なんだろうか……これは、そうだ。ほっとけ無い様な。でも、元気がなかったら励ましてあげたいし、そもそも全面的に信頼もしてる。遺跡で初めて話を聞いた時凄く嬉しかったし。

 顔が赤くなる、熱を帯び始めてくる。それはつまり私の心はこの答えを既に出してる事になる。

 いやいや待って、違うんだ。違うの。違う違う。流を抱く手が汗で湿る。気がつけば流は安心したのか既に泣き止んでた。そして。不思議そうな顔で、

「……何故、貴女は私を気にかけるのですか?」

 だけど何処か悲しそうで、はっきりとその言葉の裏が分かった。

 こんな私を何故? そう言ってるのがはっきり伝わった。

「……確かに、初めは色々合った。初めて会った時流の地雷を踏んだことも合ったね」

「……ぅ」

 恥ずかしそうに目をそらした。

「その後、皆で服を買った時流とフレイと、そのお母さんに会った時さ。あぁ、この子はこんな表情するんだって思った」

「……」

「そして、地球では……うん」

「……ぅぅ」

 今度は耳まで赤くなった。顔は見えないけれど間違いなく顔は真っ赤なんだろうなぁ。

「アグスタの時、私は貴方に守られた。それから少し置いたあの日、楽しそうにご飯を作ってくれたね。そして、遺跡では貴方の話を聞いた」

 言葉を紡ぐ度に心が熱くなる。

「だけど、ヴィヴィオを保護したあの日。唯一私は許せなかったことがあるの」

「……?」

 ギュッと、手に力が入る。思い出したくない事だけど。

「あの時流は私と奏を守ってくれた。だけど、その時貴方はこういった。私には盾になるしか出来ないからって」

 流の体が強張ったのが分かる。だけど。

「……そんなこと無いんだよ。流が怪我すると私は悲しいんだ」

 時間がたった今ならばこう思える。最初の頃は確かに許せなかった。だけど今は大事無くてよかったと心から思える。

「……そして今日。私は貴方を取り返したくて無茶をしてしまった。だけど、気に病むことはないんだよ?」

 もう一度流を強く抱きしめる。あぁ、ダメだこれは私が抑えられない。

「流、私は貴方のことを好きだと思ってました」

 一瞬流が反応したけど、それを無視して。

「だけど、この感情は好きじゃなかった……だからね」

 大きく深呼吸をして。抱きしめてる腕から開放して、流の顔を見据える。涙でぐちゃぐちゃだけど、それはきっと私も同じだ。

「流。愛してます」

 振られても構わない。だけど、想いをしっかり伝えたくて、自然と口にした。
 驚いたように目を丸くして、

「……う、嘘ですっ」

 ……おっとぉ?

「……まさか、そんな。だって私は……」

 腕の中で分かりやすいほど狼狽えてる流を見る。顔は真っ赤だ。だが、なんで、どうして? と考えてると。

「……わた、しは……」

「……」

 様子を観察してわかった。これは……。いや、まだだ。

「……私の事嫌い?」

「そんな事無い、です」

 即答。ならなんで……?

「……なら、どうしてそんな事言うの?」 

 腕の中で、恥ずかしそうに俯いている。けど、何処か悲しそうで……ゆっくりと顔を上げて私の目を見て。  

「……だって……だって……震離さんが断った……じゃないです……か」

 



 ん?



 
 お、落ち着け私! まて、え!? はぁ!!?? 断った!? え、いつ!? と言うか、そもそも告白したこと……。

 
 あ゛。


 合ったわー……。そう言えば一度口が滑ったこと合ったわー……。いや、待って、落ち着け震離。今なら取り返せる。大丈夫、私なら出来る。

「……違うよ流。あの時は順序をすっ飛ばして言ったからね……だから改めて言うよ。愛してます」

 あ、ダメだ。何か軽い人みたいに見える。やっぱ、駄目かなー。告白なんてしたことも、見たこともないしなー、なんて思いながら、流の顔を見ると。凄く真っ赤……と言うか茹でダコかな? って思う程赤くなってた。あわあわとしながら、上目遣いで私を見てから。

「……年下ですよ?」

「うん。知ってる」



 ――side奏――
 
「……年下ですよ?」

「うん。知ってる」

 その後小さなリップ音が聞こえてきて、勿論その意味が分からないほど子供ではないので……。





 キャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!


 

 あらあらあらあら、まぁまぁまぁまぁ!!! まさか、昔あんなにも、人に興味無いって言ってた震離が! 人付き合いの苦手そうな流が!
 まさか、そんな、キャー!!!

 いやーでもまさか。予想すらしてなかった。

 ……でも、具合悪い中でこんなテンション上げて……正直限界なんだよね……。今日久しぶりに制限外して、本気で撃ったのに壊れなくて悔しくて、撃ってる最中に壊れないのが分かって、涙出てきちゃったし。

 まぁ、無事? に助かったから良かったけどなぁ……。

 そう言えば、なんで流の髪の毛あんなに伸びてて、響のバリアジャケット羽織ってたんだろう……。結局……その辺……あんまり聞いて……無かった……。でも、めでたい……なぁ。



――side響――

 部隊長室行ったら誰も居なくて、司令室に居ないかな-と思って寄ったら誰も居なくて、もういい食堂へ行ってやると思ったら、皆居た上に、シャマル先生も食事を食べてる最中でした。

 まぁ、すれ違いはいいんだよ。それはいいんだ。広いしね。

 誰か連絡よこせよー。

 で。

「……何か変わった事はありました?」

 ついた頃には皆ある程度食べてたので、一人寂しく食事を取ってたら、3隊長がわざわざコチラに来て、更にティア達も近くの席に着いて、何か胃が痛いわ-とか思いながら、カレーをつつきながら、とりあえず聞いておく。勿論答えられる範囲で良いですって言ったけどね。

 で、話を纏めると今回の件。正式に訓練として話を誤魔化す方向に。実際に騒動が収まった後、他の地上部隊から問い合わせが入ったけど、訓練の手順を誤って、結界を張る順序を間違えたと伝えられた。
 勿論その為……本当は偶然だけど、シャマル先生と、はやてさんが前に出てきて結界を張った事も証明したし。今後のことを考えての訓練として、奏、流、震離の3人の制限を外したことにして、結界を張って引きこもった相手にどう対処するかの訓練をしたと報告された。
 これであの3人の制限は残り二回ずつとなったが、今回の件を表に持っていかれることに比べたら安いものだ。

 ロストロギアを持っていったシスターともう一人についても、聖王教会側が対処すると正式に連絡があったらしく、色んな人が動いてるらしい。勿論コチラも調査するから、共同調査ということになる。アーチェも、最後に接触した人として、直ぐに教会に戻っていったらしい。
 この件は、教会に居る人達に結構な衝撃を与えてるが、何処まで影響するか分からなーと。
 ちなみにヴィヴィオの件なんだけど、あの時ザフィーラさんが連れて行った時に、流石に泣いたかなとか思ってたら、振り回されるのが楽しかったと喜んでいたらしい。だからコチラ側にも実質被害は無い。

 後は……そうだ。目の前で疲れた様子でうどんを啜るはやてさんを見定めて。 
 
「……流に何か処罰とかってあります?」
 
「え、無い無い。一番の被害者やし。むしろ教会側が謝罪したいって言っとったよ」

 それを聞いてホッと一安心。無いとは思ってたけど万が一があったら嫌だったし。あれ流じゃなかったらしいしね。良かったよ。結局映像越しで見るまで分かってなかったけどねー。

 情けないな、全く。

 でも一番の問題が……。

「流に意識があったら不味いですよねー」

「そればかりはなんとも言えへん…‥。もしあったとしたら……震離が一番へこむやろうし」

 まぁ、アイツが一番傷つくだろうしな-。万が一拒絶された日にゃ。鬱になるんじゃないかと思える程度に。やけに気に入ってるからなー、珍しいんだよなー人見知りっ子だから。
 それ以上に。

「何か、大体の被害受けてるのって実は流じゃね? と思えてきた」

「響、それは言わん約束や」

 最近の流の現状を考えると、ホント涙出てきそうだよ。心なしかカレーも何かしょっぱいし。

 飯食べ終わったら流の所見に行くかねー。
 
 ――――

 食事を食べ終えて、とりあえず医務室に居る流と奏と、多分居るであろう震離の様子を見に行こうと席を立った……んだけど。

「人多すぎないですか?」

 ぞろぞろと大所帯で医務室に向かう集団。食堂に居た全員で向かってる。俺も……まぁ、微妙な立ち位置だけど、シャマル先生は自分の城だから戻るわけだし。
 ただ、それにしたって人多すぎて、ちょっとっていうのはある。まぁ、今回の件で今日は訓練を中止。隊長陣は流の様子を見た後はそれぞれ今回の件の収拾に当たる。
 なのはさんは適切な訓練だという証拠の資料作成。
 はやてさんは聖王教会に行って今回の件の細かい報告と情報収集。
 フェイトさんは、シスター……もとい、マリ・プマ-フの情報を集めるために本局へ。
 で、今日。もし、もう一度出撃とかになって、隊長陣の誰も戻ってきていない場合は、管制指揮をリインさんと、シャマル先生が、現場指揮官を俺とティアで執るとかいう、胃を持っていかれるんじゃないかっていうくらいの責任が伴う事を言われました。

 これを聞いて、俺とティアは、2人で本気で祈りました。今日はもうこれ以上何も起きませんように、と。実際、シャマル先生曰く、完全に今日の奏はアウトと言うか、もう駄目らしい。実際無理やり出張って来た時も強めの薬を打ってから出てきたらしいし。

 で、そんなこんなで医務室へ入ると。2つのベッドが使用中……というかカーテンで区切られて、片方は電気を切って、もう片方は電気がついているのが分かる。皆で適当に開いてる場所へ移動している間に、そろーりと、シャマル先生が片方を覗いて、安堵の表情を浮かべる。多分電気が切られている方は奏なんだろう。と言うか朝のままだしね。そして、シャマル先生が真ん中のカーテンを覗いて。

「あ、起きてる」

 そう言ってゆっくりとカーテンを開けると、申し訳なさそうにベッドの上に座る流がそこに居たんだけど……。なんで震離さんは流の膝の上で突っ伏して寝てるのさ? まぁ、それはさておいて。二人共目元が赤いのもこの際置いといて……。

「……えーと、流……本人やんな?」
 
 あ、はやてさんが言った。やっぱり偽物というか取って代わられてたからか、明らかに警戒してるなこりゃ。だけど、流のあの様子は……。

「……はい。叶望さんと戦闘している最中に意識が戻りました。そして、その結末は叶望さんと同じです。ですが……」

 ベッドの上で静かに頭を下げる。一瞬ホッとしたけれど、まだ安心出来ない……そう思って、キャロの方を見ると、安心したような表情を浮かべていた。
 いや、それよりもあそこで震離が安心しきった顔で寝ている時点で答えは出ていたのにな。

「なんて謝罪をすればいいか、その」

 頭を下げながら言葉を続ける。そのままはやてさんが側へと行って。

 何か、様子が違うような……? あの顔は……あ。

「謝罪はええ……ええから。流。これ着てくれへん?」

「……ぇ?」

 スッと、どこからか取り出した洋服……と言うかあれ、白い制服みたいなものを取り出したけど……、何か何処と無くなのはさんのバリアジャケットというか、エクシードモードに何かにてる気がするけど、あれって。

「あー! はやてちゃん、それ……なんで持ってきたの!? というかなんであるの!?」

「翠屋経由で新品卸しといたんや。ワンチャン皆着ないかな-と思うて」

「だからって、わ、男の子用もある」

 わー……あー。なるほど。エリオとキャロにも着せれば流も着るだろうと思って。取り寄せたのかー。流石にこっちの2人も嫌がるんじゃ……。

「「わぁ」」

 めっちゃ喜んでるー! えー、なんでまたこんな喜んでんのさ。エリオもキャロも。
 隊長達は向こうでワイワイしてるし、流も何か目を丸くして首かしげてるし。FW陣が隅に集まって、少し腰を下ろして2人に目線を合わせて。

「2人はあの制服……着たいの?」
 
「着たいって言うより、あの制服って……」

「うん、あれなのはさん達の小学校の制服ですよ?」

「「「「あー……」」」」

 俺とティアは単純にそうなんだといったリアクションで、スバルは目を輝かしてるし。ギンガは学校制服なんて着たこと無いもんねーと。
 あー、なるほど。エリオとキャロは、フェイトさんと同じ服を着てみたいっていうのがあるんだなー。まぁ、まだ10歳だもんなー。まだ小学生の筈だしね。
 あれ、そういや流って14歳とか言ってなー。その割に幼いというか物知らないというか、知識が偏りまくってるというか……。

 ふと、視線をあちらへ向けると。三隊長が言い争ってるけど怒気は全く感じられない。……多分、流に対して無言のアピールだろうなー。実際今回の流は完全な被害者だし。自分の手で震離を倒しそうになったとか、むしろ普通だったら発狂もんだけど……それは震離が解決したんだろうな。

 ただ、気になるのが完全に何だろうって顔というか、不思議そうな表情をしてる流なんだけど……。アイツあんなに表情読みやすかったっけ?

「せめて、せめてこれ着て写真を、もう一度写真をー」

「だからダメだってはやてちゃん!」

「? あの、その、自分男ですので……」

 まぁ、そらそう言うよね……。だけど何か違和感が。ふと隣に居るティアが首を傾げてる。スバル達は……あ、今のあいつらダメだ使えないわ。
 
「ティアよ……さっき流って、こう言ったよな。震離と戦闘中に意識戻ったって」

「……えぇ、そう言って……あ」

 そこまで聞いて把握した。

 つまり流はまだ自分の体が少し縮んだ事も、そもそも性別が変わったことも気づいていないと。しかも髪が長いのもベッドに座ってるから重みに気づいていないだろうし、前髪はヘアピンで止めてるから分かってなさそう。

 やべぇと思ってはやてさんに声を掛けるよりも先に。

「今女の子になってるんや! こんな機会一生に一度有るか無いかやし」

「……ぇ?」

「え?」

 ピシッとラップ音と共に時が止まったような感覚になる。ペタペタと自分の体を触ってる。下半身は震離が眠っているせいかあまり触ろうとせずに、上半身や顔、頭を触る。そして、自分の髪が伸びている事に気づいて。顔が青くなり、プルプルと震える手で、インナーの首元を少し引っ張って覗いて。

「……ぅ……そ」

 バタリと気絶した。

 何とも言えない空気が医務室を包んで……、うん。

「何やってんすか部隊長! もう早く聖王教会に行って下さいよ!」

「な、なんて事言うんや?!」

 思わず怒鳴ってしまった。けど。直ぐになのはさんとフェイトさんがはやてさんの腕を掴んで。

「ほら、はやてちゃん。行くよもう!」

「あ、待って、せめて今の流の写真を!」

「はーやーてー!」

 バタバタしながら隊長2人に連れて行かれる部隊長を見送りました。

――

 とりあえず、この件はこれで終わり。あの後、流と震離が一時的に相部屋。同じ部屋だった奏は具合が更に悪くなったらしく医務室で休むことに、何か態度が凄い不自然だったけどそれは置いておく。女性の事にあまり深入りしたくないし。

 そして、その日からちょうど2日経った朝に。流の性別は無事戻った……んだけど。それはあくまで昨日の話。

 戻って再検査をして問題が無いから今日から……いや、朝練から復帰したんだけど。

「あの、やっぱり切った方が」

「駄目、せっかくいい感じなのに……ってか、朝バッチリと、ヴィヴィちゃんに見られてたし切ったら悲しむよ?」

「……ぅぅ」

 皆でストレッチをする中で、流が恥ずかしそうに呟くけど、即座に震離に止められた上に、ヴィヴィオが悲しむとそれを阻止。どういうわけか流の体の大きさや性別は戻ったものの、髪の長さ……と言うより伸びてた髪もある程度戻ったのに対して、襟足を中心に、後ろ髪だけが肩甲骨の頭辺りまで伸びたままだった。
 とりあえず今は震離が結ったらしく、紅い紐で、纏めて縛っていた。ただ、唯一気になったのが、縛った紐を二重叶結びにして、バランス良く仕上げてる。何処と無くリボンのようにも見えなくもないけど、不思議と似合ってて少しほっこりした。

 そして、もう一つ変わったことと言えば。

「とは言っても……やはり慣れないですよ震離(・・)さん」

 そう、2日の間で震離が何かしたらしく、少しずつ皆の事を名前で呼ぶようになった。ティアも最初は驚いてたけど、直ぐに返事をしてくれたし、スバルなんか大いに喜んだ。
 特に……。

「あ、流さーん。シャーリーさんから連絡です。時間が出来たら来てねって」

「あ、ありがとうございます、エリオ」

 と言ったようにエリオとキャロは呼び捨てになった。初めはさん付けで呼んでいたけど、2人がそれは恥ずかしいから辞めてと言ったみたい。そして、ここでも震離が後押ししたみたいで、2人を呼び捨てにした。
 勿論隊長陣も下の名前とさん付けで呼ぶようになった。初めの方こそ隊長陣は流石にと遠慮してたけど、そこはヴィヴィオが無茶言った関係で、なのはさんとフェイトさんは直ぐに終わった。
 だけど、ギリギリまで、はやてさんの事は部隊長と呼んでたけど、最終的にはやてさんの嘘泣きで突破してた。見えない所で、すっげぇ悪い顔してたけどなー。

 しっかし、ここ2日の間観察してて思ったんだけど、こいつら距離近いよなー。まぁ、いいんだけど、さ。

 ちなみに今日は流の復帰もあって、朝練の間、俺と震離とかち合ってる。ようやく流のスタイルにも介入しようというなのはさんの考えだ。実際流もいろんなことを見て、その中から選びたいって言ってたしね。

 遠くでブザーが鳴り響き、急いでなのはさんの元へ。そして。

「はーい、全員集合。じゃあ、朝練はここまで。今日は目立ったミスもなく、いい感じでした。今後も、この調子でね」

「ありがとうございました!」

 今朝はこれで終わり、後片付けをしながら寮へと帰る用意をして、その中での話題は。最近になって解禁されたセカンドモードについての話。
 ふと視線を後ろに向けると、震離と流が何やら魔法陣を展開してるのが見える。それにつられてなのはさんも2人の元へ。

「変化の少ない私やキャロはともかく、ティアとエリオは大変そうだよね」

「形から変わっちゃいますし」

「あたしは別に。ダガーモードはあくまで補助だしね」

『Yes』

 フフンとちょっと嬉しそういうティアとクロスミラージュ。なのはさんと話をしているせいか最近のティアは捌くのが面倒くさくなってきた。徐々に近づけない戦闘を取れるようになったし、近づいても決めきれないしねー。
 ふと、前を歩くエリオの頭を撫でながら。

「複雑なのはエリオの方でしょ」
 
「ストラーダのセカンド、過激だもんね」

『Wirklich?(そうでしょうか?)』

「わたしは格好いいと思うよ。ストラーダ。」

『Danke schön, mein Fräulein.(ありがとうございます、レディ)』

「ストラーダと一緒に鍛えていきます。頑張ります!」 

 グッとガッツポーズを取るエリオの頭をワシャワシャとティアが撫でてる。いやはや、いいよなぁ。俺なんて花霞貰ってもあんまり使ってないしねー。いや、使うんだけどなんというかまだ慣れないんだよね。
 
 でも、いいなぁ。こんなにもメキメキと実力が上がってて。羨ましい。だけど、俺は俺の出来ることを最大限にすればいいんだしね。

 まぁ、無いものねだっても仕方ないし。しゃーないしゃーない。
 
「私はギン姉といい勝負出来るようにならないとなー」

「ふふ、まだまだ負けません」

 ナカジマ姉妹は、相変わらずというか、同じ道なのに全然違うことしてるのが見ていて面白い。ギンガとのマッチアップはまだしてないけど、そろそろやらないといけないんだろうなーと。
 一応一発目だから、色々出来るだろうけど。投げはもうバレてるし、他のカードを切るか、ある手札を工夫するか……ま、来てから考えるかな。

 それに強くなってくのを見て、喜ばない理由は無いしな。

「後は俺を完封したら完璧だろ?」

「「「「無理」」」」

「まだやったこと無いからわからないなー」

 ……揃えて言わなくたっていいじゃんか。


 ――sideはやて――

 あっかーんわー。最近書類仕事が多すぎて、どんどん目が悪くなってく気がするんよねー。
 せやけど、そろそろ……。

「ティアナ・ランスター、入ります」

「よう来てくれたね。仕事しながらでごめんやけど、とりあえずこっち来てや」

 ちらりと扉の方を見ると、敬礼をしてるティアナが見えた。本当に仕事しながらなのが申し訳ない。せやけど、ホンマに終わらなくてなぁ……。

「いやぁ~実はな。今日これから本局に行くんやけど、よかったらティアナも一緒に来とくか? っていう相談や」

「あ、はい……それはいいんですが、何故?」

 不思議そうな顔をするティアナをみて、流石に説明不足すぎるやんねと、少し反省をして。

「今日会う人はフェイトちゃんのお兄さん、クロノ・ハラウオン提督なんよ。執務官資格持ちの艦船艦長さん、将来の為にそういう偉い人の前に出る経験とかしといたほうがええかなって思ったんやけど……どうや?」

「あ、ありがとうございます!」

 私の考えが伝わったみたいで、嬉しそうな表情になった。ええことやね。

「それじゃあ私の今やっている事が終わり次第出発するから、出かける準備をしてきてや。突然でごめんなー?」

「いえ、感謝しております! それでは後ほど」

 ピシッとしてから頭を下げてそのまま退出。経験って積ませられる時にしないとアカンし、今回の相手はクロノ君やし、大分楽だろうし。

 さて、この書類ももう終わる……っと。よし、終わったー!

 なんて、両手を上げて喜べないんよね。カリムからの連絡で、三日前私達の前に現れたシスター、マリ・プマ-フ。最後に去る時の容姿を伝えてそれに該当する人物を見て絶句してもうた。いや、そんなはずはない。その容姿が完全に一致した人物の名は。

 キュオン・ドナーシャッテン。

 古代ベルカに置ける最強と呼ばれた人物の一人。もう何百年も前の人物。そんな人物が目の前に現れたなんて信じられへん。せやけど、響からの証言と震離の情報で彼女が使った魔法3つ、どれも該当する情報があった。
 
 トールハンマー、ヤルングレイプ、メギンギョルド。この3つも古代ベルカ式の魔法らしいと記述はあった。それぞれの効果は不明……だとしても、ここまで情報が一致するのもおかしい話や。

 せやけど、彼女の場合……仮に本人やとしたら、彼女は、彼女の二つ名は。生命無き血の女王(ノー・ライフ・ブラッド・クイーン)。カリムの予言に現れた本人となってしまう。
 そして、過去に彼女が犯した罪は。聖王への反逆に手を貸したという事。今、教会がその部分の歴史を調べ直してる、けど、正直膨大な量の歴史からそれを探り出すなんてかなり時間が掛かる事や。

 事実彼女の名前はしっかりと後世に伝えられている。主に聖王に成敗された悪魔として。せやけど、それだけなんや。絵本や昔話には、聖王に牙を向いた最強の悪魔。歴史には反逆者とともに聖王に挑み負けたと。たったそれだけしか情報はない。

 まぁ、カリムもこれには疑問しかないって言っとった。そんな伝説……空想なんてそうそうあらへんし。

 ふと、時計に目をやると、ちょうどよい時間になっとった。ぐぐぐっと、背伸びをしてから、ため息を吐いて。

 よし、行こか!

 ……ロッサも来るって聞いたけど、なんて誤魔化そう……。

 
 

 
後書き
 長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。 
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