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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第3話 模擬戦

――side震離――

「了解」

 そう言って、私はすぐに反応のある方に向かって移動を開始する。今回の相手は六課のFW4人だから、一人一倒の割り当てだけど、あまり気にしなくてもいいかな?
 移動しながら、魔力の流れを感じてみるけど、今のところ違和感はないかな。うん。
 ただ、さっきの響の指示は正直よくわからない。だって、何時もなら適当にあしらっとこう、みたいな事しか言わないのに今日はどっちかっていうと消極的だ。
 いやまぁ、別に構わないよ。

「まぁ、それでも従うからいいんだけどねー」

「叶望一等空士、どうかされましたか?」

「あ、ううん、大丈夫だよ」

 私の隣を移動する流が声を掛けてきた。うん、正直さっきの事があるから正直かなり気まずい。やっぱり―――

「4つの反応が、3つに分裂したので、自分はその内の一つを追いますね」

「へ? あぁ、うん、一応気をつけてね?」

「了解」

 返事をしてからすぐに流は私とは違う方向に行っちゃった。やっぱり、嫌われちゃったかな? まぁ、地雷二つも踏んだから仕方ない……よね。
 やばい、そう思うと悲しくなってきた……はぁ、これからどうしよう?

(震離?)

 あれ? 奏だ。どうしたんだろう念話なんて。

(はい、どうかしたの?)

(そっちに一つ行った、それで私は遠距離から後ろにいる二人を、流も別の反応の場所に向かってる)

(了解、ありがと)

(うん、後でちゃんと謝ればいいと思うよ?)

(え!? な、何のことかな!?)

 奏の急な言葉に思わず焦る。だってねぇ? 幾ら何でもタイミングが良すぎるんだもん。

(流の事考えてたんでしょ? 後で謝ったら許してくれるんじゃない?)

(べ、別にそんな……)

(ほらほら、準備しないとそろそろ遭遇するよ? それじゃあまた後で)

 うー……見破られてた。なんか顔が熱くなってきて思わず顔を伏せてしまう。あ、いけない、もうすぐで遭遇するんだ、よそ見なんてしてらんない! 首を横になんでも振って邪念を飛ばして、よし!

「さて、と!」

 立ち止まって、耳を澄ます。なんかローラーのような、エンジンを吹かすような音が聞こえてくる。まだ音が少しだけ遠いし、後10秒くらいで遭遇しそうだ。……10秒もある、だったら。

「カートリッジ、フルロード!」

[YES,SIR!]

 自分の持つ杖からこれ以上無いくらい無機質な声が聞こえたと同時に、杖の先端が動いて薬莢が4つ飛び出る。同時に自分の中で魔力が増えたのを感じた、よし。

「ブレード、オープン!」

 杖を天に掲げて、杖を媒体に大きな魔力刃を展開する、同時に周囲に小さな魔力刃も展開しておく。
 さ・ら・に!

「プラズマランサーセット!」

 杖を――ううん、大きな剣の鋒を前に向けて、小さな剣達も少しずつ前にだして構える。
 正直自分でもやり過ぎかって位弾幕を貼っとく。もう一度しっかり耳を澄まして、タイミングを――
 そこまで考えてふと気づく。向こうは陸戦で、ローラーのような音も聞こえる。だったら何で。ローラーの音が安定(・・)しているのか。シミュレーションとは言え、ある程度地面も再現されてて、サスペンションも有るとは言え、多少のブレは有るはずなのに、まるで平地(・・)を走ってるような一定のローラー音。
 そこで気づく、慌てて周辺に視線を向けると、至る所に青い道のようなものが出来てて、私の上空にも道がひかれていた。

 気づくのが遅かった……でも!

「プラズマランサー・カラコールシフト!」

 そう叫んだと同時に、私の杖に展開していた魔力刃と、周囲に展開していた小さな魔力刃達を発射した。
 大きな魔力刃が螺旋を描きながら飛んで、その大きな魔力刃を中心に小さな魔力刃達も巻き込まれるて、どんどん大きくなってく、そして最終的には大きな砲撃みたいなって、ローラー音のする場所へと真っ直ぐ向っていったんだけど……。

(……小っっっさ!?)

 って本気で思った。うん、だって、何時もの半分有るか無いかくらいの大きさだよ!? 一応私の遠距離系じゃ一番威力あるんだよ!? 
 なんて、考えてるうちに音のする方に着弾し煙を上げた。
 一応音が聞こえなくなったけど……いったかな? そんなこと考えながら煙の上がる先を見てた瞬間、煙の中で大きな光が……って!

「一撃必倒! ディバインバスター!」

「危なっ!?」

 自分のいた場所から全力で飛び跳ねると、大きな魔力砲がさっきまで私の居た所に着弾した。空中で体勢を整えようとしているのと同時に、ローラー音とともに、青い道が私に向かってまっすぐ出来た。

「行くよ! 震離!」

「……来なくていいけど!」

 思わず本音が漏れる。けど、それでもスバルは止まらなくて、青い道の上を走って、まっすぐ私の元へと向かってくる。一瞬飛ぼうかとも思ったけど、それじゃ10秒以上飛ぶことになりそうだし、ルール違反で負けるのも癪だ。
 だけど、正直今の私にスバルの突撃を止められるかと聞かれると正直辛い。高機動……いや、突撃力と分厚い装甲魔法をもって思い一撃を与えるというスタイル。
 ぶっちゃけ相性が悪い。力押しされると本当に辛い。
 最初で大きいの撃つんじゃなかったかなぁ……なんて考えていたら。

(震離、そこから降りて!)

「え、あ、了解!」

 急に奏から念話で指示をもらって、慌ててスバルの青い道から飛び降りる。それを見越していたのか青い道が囲うように展開される。
 けど。

[Shining Moon]

「って、えぇ!?」

 瞬間、私が居た場所を、スバルの正面目掛けて、白い閃光が奔り、慌ててそれを回避する姿が見えた。
 割と不意をついた奏の砲撃を避ける辺り、スバルって反応速度が凄いな。
 直撃は無いと思ってたけど、シールド張って受けるくらいはすると踏んでたけど……。
 なら、それを見越した上で……

『震離撤退!』

「……え!? 何で!?」

 いきなり私の真ん前にモニタが展開して響の顔が映し出された。
 ……撤退って、私は別に。

『いいから、さっさと撤退だ。さっきの事もう忘れたか?』

「さっきって……うん、了解」

 そう言われてさっきの響の言葉を思い出す。それに今のままだと正攻法じゃスバル達に勝てそうにないし、何より自分にリミットがついてこんなに変わるなんて思っても見なかった。それに響のことだし、何かあるんだろうから従っとく。

「スバル、また、ね!」

「ちょっ!?」

 魔力刃を思いっきり地面に叩きつけたと同時に、土煙を巻き上げて、

「……参ったなぁ」

 小さく愚痴をこぼしながら、全力で後退。その勢いのまま響のいる場所へと向かう。
 これで追ってきたらなんて考えてたら。ローラー音が離れていったからスバルも退いた事を理解する。もしくは流の所へ行ったのか……。
 スバルの勢いから察するに、あのまま追撃するかと思ってたけど……下がるようにティアナが指示を出したのかな? きちんと見えてて上手いな。
 そんなこんなで木の上で待機する響を見つけてとりあえず、杖を振りかぶって―――

「リミット辛いよぉおおお!!!」

「はぁ!? 知ってるよ見てたんだし、てか、何だよ急に!?」

 思い切り振り下ろすけど、響の刀に受け止められた。
 うん、惜しい。そんなこと考えて、不意に目に入ったモニタを見るとちょうど流が戦闘を始めようとしてるところだった。



 時間を少しさかのぼり、そして―――


 ――side流――


「了解」

 そう言って直ぐ様移動を開始した。今回は機動六課のFWが相手だから、少し警戒しながら移動する。そして、その間私の持つデバイス二機に念話を飛ばす。

(調子はどう、アーク?)

(あ、マスター、私は問題なくて大丈夫で、何時でも行けますよー)

 念話内とはいえ、緊張感のない声で返事をしてくれて、思わず頬が緩みそうになる。相変わらず良い意味でデバイスらしくない。だけどそこがアークのいい所……だと思う。
 もうかれこれ長い付き合いになるけど、陽気でいい子なんだけど、欠点があるとしたら、私以外の人相手にはあまり話をしないで、メンテナンスも私以外の人からは受けようともしない。まぁ、私が出来るから問題ないし、私がお願いしたら嫌そうながらも受けてくれる。

(ギルは?)

(はっ、自分も問題ありません。ですがマスター?)

(何?)

(リミッターのせいで何時もの出力が大幅に落ちてるようです、そして今回は模擬戦ということもありますし、お気をつけて)

(そう、ありがとう)

 移動している間ずっとチェックしててくれたんだ。やっぱり何時もギルには助けられてるなぁ本当に。ただ、ギルもアークと同じで私以外の人とはあまり話そうともしない。二機ともデバイス間の交流には結構参加して話してるらしいけどね。
 とにかく、いつもよりも出力が落ちてるのならば、少し考えて動かないと……

「……いけないんだけどねー」

 気がつけば、いつの間にか隣に来ていた叶望一等空士が小さく呟いた。なんだろうか?

「叶望一等空士、どうかされましたか?」

「あ、ううん、大丈夫だよ」

 小さく苦笑いを浮かべながら返事をしてくれた。だけど、何かあっても私には関係ない。そんなことを考えてると。

(マスター、反応が3つに分かれました)

(うん、ありがとうねギル)

 念話を聞いて、方向を確認する。少し遠くのほうを相手してみるか。

「4つの反応が、3つに分裂したので、自分はその内の一つを追いますね」

「へ、あぁ、うん、一応気をつけてね?」

「了解」

 返事をしてから、すぐに方向転換して、少し離れた所に移動している反応の元へと向かう。そういえば……模擬戦前の作戦説明の時に緋凰空曹が言ってたな……。

「エンカウントして、逃がしたら深追い禁止、追撃してきたら撤退って……」

 正直よくわからない。自由にしていいなら最初から自由にしてくれたらこちらも動きやすいのに。だけど、命令だし従うから問題ない。

「アーク、チャージスタート」

[All right.]

 アークに魔力を送り込み、砲撃のチャージを開始しておく、この位置からだとエンカウントまで後40秒。その状態で移動していたら、背後から大きな魔力反応を感じて思わず足を止めてしまった。

「何?」

[……この魔力反応は不明ですが、位置的には叶望一等空士かと思われます]

「そう、ありがとう、ギル」

[ちなみにチャージは完了しましたので、何時でも打てます]

「了解」

 再び移動を開始して反応のある方へと向かう。ちょっとタイムラグがあったけど、あっちもこちらを補足して近づいてきてるし、問題ないかな。
 後20秒、どなたが来るのかわからないけど足を止めて。迎え撃つ!
 
「散らします」

[Yes,sir.ShotMode]

 そう言ってアークを構えて、その前に私くらいの大きさの魔法陣を展開させて、呼吸を一つ。コチラに向かってくる相手に集中をする。
 後10秒。
 向かってくる方向を見据えるけれど、茂みで見えにくい。
 アークが念話内でカウントをしてくれる。後5秒、4、3、2、1。

「ファイア!」

 アークから砲撃を撃ち出す、反動でちょっと後ろに下がる、同時に目の前の展開していた魔法陣に当たって、

[Avalanche・Canister!]

 赤黒い砲撃が魔法陣を通して散弾状に変換されると共に、茂みへと降り注ぐ。

「カートリッジ、ロード!」

[Road Cartridge!]

「ありがとアーク、いくよギル!」

[Yes, sir.]

 カートリッジで増大した魔力をギルに預けて、そのまま振りかぶって!

「撃って!」

[Blutiger Dolch!]

 赤黒い魔力が、魔力光と同じ短剣へと代わり、二段目の弾幕として煙の中に居る誰かに目がけて放つ。
 が、中に居た反応が一気に後退。加えて別の方向から誰かがやってくる反応に気づく。

(……ダメか、砲撃だけでもちゃんと確認してから撃つべきだったかな)

(えぇ、ですが不意打ちとしては十二分かと。それに向こうも分が悪いと思ったから下がったのかと思われますし)

(別のところから接近する反応がありますが、後退した人には追撃しないですか?)

(うん、このまま緋凰空曹の元へと戻るよ)

 そのまま下がる反応をほっといて、空に上がる。そして、索敵を開始し緋凰空曹の反応を探して、そっちに向かって移動する……叶望一等空士も退いたみたいだけど、この後の作戦はどうするんだろう?
 そんなことを考えながら、緋凰空曹を含めた三人と合流した。


――side響―― 

 なんか分からないけど、急に震離が斬りかかってきて、それを受け止めながら展開していたモニタを覗く。
 そして、流と、多分場所と反応的に多分エリオ……だと思う。その二人の戦闘を観察して思う。

「……ただの武装隊じゃねーな」

「え、何? 聞こえない」

「なんでもない、というかいい加減杖を下ろせよ!」

「ちぇー」

 納得いかないみたいな顔をしながら杖を下ろす震離。ていうか、俺のほうが納得いかないからな? 分かってんだろうけども。それよりも、今の問題は流だ。
 別に砲撃は構わない、人によって差があるんだし、それが得意なのかもしれない。剣に魔力を通して、短剣を飛ばすのも構わない。それが得意なのかもしれないし。ただ。

 今の戦い方は納得いかない。

 意思のあるデバイスを持っているからかもしれない、接近する敵に対する反応が少しだけ違うのは。
 たしかに流はかなりの戦闘経験があるんだろう。武装隊にいたみたいだし、何よりあの年で総合AAAなんだし。現に本局の武装隊にいた俺らも結構場数を踏んでるしね。

 ただ、今の戦いからは明らかに、一人で戦ってた奴の動きだ。普通の武装隊じゃ一人で戦うことは滅多にない、それこそ皆が全滅した時とか、模擬戦の時とかだけで、基本的には複数の人数と共に行動して、作戦を遂行させるんもんだ。だからこそ、頭に浮かぶ現状の結果は。

(……ただの武装局員じゃない。それに、スタンド・プレーを得意としている)

 認めたくないけどこうなってしまう、だからか? 煌や優夜が流の事を、いや、「風鈴流」の事を不安要素と言ったのは。
 それに……技の接続、連携が若干甘く感じた。あのまま、追撃で砲撃を打ち込んだほうが制圧……と言うより、ほぼ撃墜判定になってたと思うが、そうしなかったのは俺の指示のせいか?
 

 あぁ……だけど、いやだなぁ、これから仲間になる子を疑うのは。

 そんなことを考えながらモニタを消して、空を見上げる。ただただ空を見る。

「響」

 なにも考えないようにした直後に隣に奏が来ていて、その顔は微笑んでた。さっきまでは少し離れた所で、俺と震離の攻防を見ていたのに。だけど。

「ありがと、何でもないさ」

「うん」

 こういう時本当に助かるなぁ、本当。いっつも助けられてるんだよなぁ……。
 そんなことを考えているうちに、向こうから流が戻ってきた。うん、これはまた後で考えよう。今は。

「さて、皆揃ったところで、これからの事を言うからちゃんと聞けよ?」 


――side煌――

「作戦会議か……どう見る?」

「やっぱり辛そうだな。響はともかく他の三人……いや、二人がリミッターに戸惑ってるように見えるかな」

「奏は途中で気づいて、この後に備えてるみたいだけど」

 訓練スペースに向かいながらを缶コーヒーを片手に、今現在訓練場で行われてる模擬戦の様子を優夜と二人で見ている。
 まぁ、ぶっちゃけるとさっきの仕事結局優夜に手伝ってもらったし、余裕で見てても大丈夫なんだけど。

「……俺らFW組と話したこと無いしなぁ」

「まぁ、そうだな。話そうと思っても案外会わないし。まぁ仕方ない」

 実際そうなんだよな、俺らって案外こっちの仕事が忙しくて、FW組とあったこともなければ、食事も一緒になったこともない。そんぐらい時間が咬み合わない、咬み合わないはずなのに。

「何でロングアーチの面々は、FW組と仲いいんだ?」

「さぁ、やっぱり波長があってんじゃないの? その割には時雨も紗雪もあったことがないって言ってたけどな」

 まぁ、いいや。響達が来たんだし、これからは会う機会もあるだろう。さて、これをこうして、あれをこうすれば……

「良し終わった」

「何が?」

「ん、あぁ。明日の為に仕込みを少々。色々あんだよ」

「そっか」
 
 モニターを小さく開きながらある作業をしていたんだけど、あんまり優夜は興味を持たなかった……まぁ、良いんだけどな! それに……って。

「お? 作戦タイム終了か、さてさて、どう動くかね、あいつらは?」

「さぁ? ただ、響の事だ面白いことしそうだけどな」

「違いない。ってか、モニターで見るよりも生でみたいな。急ごうぜ」

「あいよ」

 模擬戦の様子を映しだしてるモニターを消して、少しというか、全力で走る。やっぱりこういう事って生で見たほうが良いしな!

「……しかし、疑いは強くなっちまった」

 ……おっと?
 先程の映像を思い出したのか、優夜の視線が鋭くなってる。
 おそらく疑いというのは、流の事を指しているんだろう。確かに、地上出身で、空戦も出来る総合AAA。普通に考えりゃ疑うよな。

「……見た感じ大丈夫そうだと思うけどなぁ」

「……そう思えるだけの確証が無い。砲撃を散弾に変えて打ち出すなんて。まるっきり対人想定で……対多数だろあれ。
 加えて後詰の追撃。普通のBランクの人ならあれで終わってたが……反応と機動力のモンディアル君だったから回避しきったんだぜアレ」

 ……そうだよなぁ。俺らから見える視点は、なのはさんらが見てるであろう奴と同じ。どちらの動きも見える視点。
 あの一瞬、回避行動と槍を用いて射撃を撃ち落としたのは流石というべきか、あの子の対応力が凄いのか……どちらにしても凄いけど。

 うーん、わかりやすい疑いの種だけど、ここまで解りやすくするもんかね?

「ま、もう少し様子見だな」

「……そだな」

 今は観戦したいし急ぎますかね。


――side響――

「響ー、幾ら何でもそれはざっくりしすぎじゃないのー」

「……ばかだな震離? 今日は俺らの顔見せみたいなもんなんだ、初めはこんなもんだ」

「えー、それにあたしいつもよりちょっと後ろじゃん」

「お前は……流や奏はすぐにリミットのかかってる状態に気づいてその上で動いてたのに対して、お前何時もの感覚で動いて魔力使いすぎたんだろうが」

「……うっ」

 実際そうだ、他の二人ってか流はリミットが掛かってる状態だけど、先程の攻撃で何時もと変わらない割合で魔力が減ったて報告してきたことに対して、震離は何時もと変わらない攻撃を……ってか、余裕ぶっこいて攻撃したら何時もの割合どころか、現在の魔力の半分以上も使ったんだ。だけど、まぁ。

「……お前を少し後ろにやるのは、リミットに慣れてもらうためだよ、慣れたら俺とポジション交代だ」

「マジで? 了ー解、それにちょうど遠距離で試したいと思ったのもあるし」

 くるくるとバトンみたいに杖を回す震離を見て、少し冷や汗が。こういう時の震離って、対策取った上での攻撃だからなー。

「危ないことはほどほどにね?」

「大丈夫、危なくないから」

 目の間で終始笑顔の震離に軽い注意を促す奏を見て、毎回思うんだが、本当双子みたいだよなぁ。実際この前も買い物に付き合わされたとき、ナンパで双子? とか聞かれてたしな。まぁ、それはさておき。

「さて、そろそろ動くが、一応確認な?」

「はい!」

 確認入れようとしたら、流も含めて三人が返事してきた。流は真面目だとして、他二人が笑ってるところ見ると、分かっててやってんな……こう言うのは苦手なんだけどなぁ、本当に。

「とりあえず、俺がフロントアタック、震離がセンターガード、流がガードウィング、奏がフルバックで、基本的には俺が前に出て、流が遊撃、震離は俺が取りこぼしたのを倒して、奏が援護。多分向こうも同じような配置というか同じポジションだろう。で……」

 ポジションと基本戦術を説明した後、軽く質問はと思って、皆の顔を見渡すとちょこっと手を挙げる奏を見つけて、目で合図。

「スバル達の配置ってどんなものなの?」

「あぁ、なるほど。いつかの任務中に見たけどアレ撤退戦だし、余り参考にならないと思うけど。多分予想としては、スバルがフロントアタック。エリオがガードで、ティアナがセンターガード、キャロがフルバックだろうな。現に、今の戦闘でもスバルはまっすぐ、エリオっぽいのは少しズレて来たろ」

「なるほど。了解、でも次は……」

 ま、あちらのシフトは2つ有るっぽいしな。平時はスバルとエリオのツートップと、ティアナのキャロの後方支援の王道シフト。
 変化球として、多分この前やりかけてたスバルとティアナのツートップ。この場合はエリオを遊撃寄りのキャロのガードに当てるんだろうが……。
 今回は無いと見て問題ないだろ。
 だとすれば。

「うん、多分向こうも少し固まってくるだろうし。震離と流が良い感じで動いてくれたから警戒してくれたろ。まぁ、突破力も何もない俺が一番前で申し訳ないが……皆。宜しくな」 

「了解っ!」

 そう言って、四人揃って、移動を開始した。時間掛かりすぎてる気がしない事もないが、まぁ、様子見だったし仕方がない。そうこうしてるうちに、前方から2つの気配に気づいて、とりあえずその場で一時停止して、とりあえず一言。

「さっき言ったとおりだ、とりあえず楽にして、落ち着いてやろう!」

「了解、じゃあ、私と震離で弾幕張る用意しとくよ? 震離、用意はいい?」

「何時でも!」

 そう言って奏も自身のデバイスである二丁のライフルを構える。ただ、流のライフルが槍みたいな突撃型に対して、奏のやつは、狙撃用ライフルみたいな細いタイプのものだ。こうしてみると同じ「ライフル」つっても、様々なやつがあるもんだ。

「さて、あの二人は目眩ましかもしれないという可能性も、考慮して。残りは……回りこんでくるかな、あっちも既に補足してるだろうしな……一応全員バックアタックされるかもだから気を付けろよ?」

「了解、そろそろ目視出来る距離に来るよ?」

 後ろで弾幕を張る用意をする奏の言葉を聞いて、少し構えて

「あぁ、じゃあ行くか流?」

「了解。援護します」

「そ、そっか。なら任せたよ、さて……」

 短い会話に思わずこけそうになる、もう少し愛想よくしてもいいと思うんだけどな。まぁ、かなり近くまで来てるし、こちらも身構える。実際なんかローラー音が凄いしね。林の中だし、茂みも多いから未だに目視できないし。さて。

「緋凰響、推して参る」

 刀を二本とも抜いたと同時に、足に魔力を送り込み、音のする方に向かって「跳んだ」。茂みを突き抜けたと同時に目の前に青い道の上を走るスバルと、槍を構えてスバルと並走するエリオがそこに居た。
 この時点で、スバルとティアナのツートップのプランは完全に消えた。
 俺が現れたと同時に、というか既に補足していたのか、既に二人共迎撃体制に入っている。エリオは槍を頭上に構え、スバルはナックルをつけた右腕を振りかぶっている。正直な所、既に俺も向こうもかなりの速度で接近してるから、もう方向を変更することは出来なかった。

「「うおぉおおお!」」

「……おー元気だな、おい」

 思わず口からそんな言葉が漏れるけど、そして、二人の攻撃が俺に向けられると同時に、両手の刀を逆手に持ち替えて、右手の刀でスバルのナックルの側面に当てて少し方向転換。同時に、左手の刀でエリオの槍を受け止めそのまま――

「えぇ!?」

「あっっっぶねぇ!」

 二人の攻撃を上手く受け流し、最初の勢いのまま背後を取ったと同時に、刀をちゃんと持ち替える。正直、少しでもずれたり、タイミングが間違えてたら多分やられてたんじゃなかって位やばかった。あの二人の反応ヤバ過ぎだろうが。最初の予定じゃ、会敵したと同時に、攻撃当てて気絶でもさせようと思ったけど、甘かったな。つーか甘すぎた。
 だけどな、背後を取られたら直ぐに振り向かないと――

「それじゃあ……!」

 未だに俺に背中を見せてる、二人に向かって。瞬間的に魔力を刀に送り込み、そのまま刀を振りあげて巨大な月型斬撃を二つ放つ。そして、もう一度足に魔力を送り込み、自分で放った斬撃に追いついて。

「不味いんじゃねーのっ!!」
 
 その斬撃目がけて刀を斬撃二つに叩きつけた瞬間、一気に後方へと下がって、斬撃が弾けた時の衝撃を回避して、その衝撃を二人に撃ち当てる。

 ここまでは良かった。ここまでは良かったんだ。ただね。ただ、当てた瞬間「やったか!」なんて思うんじゃなかったって今本気で思っています。だって――

「イタタ……びっくりした」

「すごいや、響!」

「……マジで?」

 結構本気でやった筈なのに、衝撃で軽く吹っ飛んだ二人が、何もないように起き上がってきましたよ。しかも。

(まーたヒビが入った……)

 刀にヒビが入ってるのを見つけて軽いため息を吐く。考えられる原因は、スバルとエリオの攻撃を受けて弱ってたんだろうね。しかも、俺の攻撃で罅が入ったんだろう。

 まぁ、それは大して問題じゃない。よくあることだし、刀を再現しただけのバリジャケの延長線みたいなもんだしね。で、問題が。

「……フロントなんてするもんじゃないな」

 小さく呟いて、エリオとスバルを見据える。うん、突破力、防御力。何よりも瞬間火力は向こうのほうが上だし。うん。無理じゃね?
 いやぁ、うん。別にさぁ。俺がフロントアタッカーなんて柄じゃないのはよく分かってんよ。本職の人には勝てないんだろうなー。あいつらみたいに突破力無いしなーって自覚してるけどさ。これはちょっと辛いなー。

「ビックリしたけど、行くよストラーダ!」

「マッハキャリバー!」

 目の前で二人が武器を構えるのを見て、思わず舌打ちをしてしまう。理由は単純。多分俺じゃなく震離の場合ならアレでダウンをとって且つバインドで拘束まで入れていたかもしれないからだ。それに比べて俺はというと完全に背後をとって攻撃まで加えていたのにダウンは愚か、大したダメージを入れられていないからだ。
 正直な所、もうなんかお兄さん泣きそうなんだけど、もうこれだからA-はとかって言われるんのちょっと嫌なんだけど。まぁ、そんな事よりもさ!

 ホント、どうしましょう!
 


 ――なんて言うのは冗談で。

(響、援護居る?)
 
(奏がいてくれるだけで十分かな。流はこのまま後ろへ移動で炙りだして、震離はそこに攻撃を打ち込む。俺と奏はここで二人を足止めってか、スバルをそっちに行かせるからバインドかなんかして、俺はエリオを落とすから)

 武器を構えた二人が俺目掛けて突っ込んでくる前に、奏達三人に指示を飛ばす。正直返答とかにも答えてあげたいけど、それよりも先に。

「「おおおおお!」」

 スバルとエリオは俺との間合いを一気に詰めて、それぞれの攻撃を繰り出してきた。まず体を半歩右にずらして、スバルの拳を回避。同時に、エリオの槍の攻撃を罅が入った右の刀で受け止めて、そのまま受け流す。
 同時に刀が砕けると同時にわずかにエリオの体勢が崩れて、その隙をついて再び二人の背後を取る。
 正直このまま一撃を加えたい気持ちを抑えて、二人を見据えようと振り返ると、二人は直ぐ様追撃に移っていた。

(……反応が良いな)

 素直にそう思う。というか正直驚いた。
 まぁ、二回目だし仕方ないか。なんて考えながらその追撃も、二人の……正確には、エリオの槍が当たる寸前に真後ろに一気に下がって紙一重のタイミングでかわす。二人共一瞬驚いた表情を浮かべたけど、攻撃を出した勢いのまま再び踏み込んできた。それを見て、折れた刀と罅の入った刀を二人よりも上の方へ投げると同時に、今度はコチラからも二人の間合いへ踏み込み、一気に接近する。
 一瞬の出来事に、スバルは拳を振りかぶり、エリオは振り上げた状態だ。だが、既に間合いへ入っているから、二人のメインの攻撃は来ることはない。強いて言えば今度は少しだけ前に居るスバルと激突するくらいだ。だけどスバルも俺も、ここで選択をミスったら、即アウトだ。スバルもそれに気づいているのか、空いた左手を素早く自分の体の前で構えて、しっかりコチラを見据えてた。

(ま、このままぶつかったら、まず負ける。やっぱり力比べは苦手だわ)

 自己嫌悪に近い気持ちで、ため息が出てくる。そんな事考えてるうちに、スバルが既に眼前まで接近してきた。多分スバルもコチラがぶつかってくると考えていると思う。だけどな――

(ぶつかるだけが能じゃないし。その回答は半分正解で、半分はアウトだよ!)

 盾代わりに構えていたスバルの左手首の袖をまず左手でつかみ、同時に右手で、スバルの防護服の左襟を掴んむ。そのまま足を止めて、スバルに背を向けると同時にに、体勢を低くしてそのまま!

「投げる!」

「ふぇ?!」

 向かってくる勢いのままスバルを投げて、そのまま奏が居るであろう方向と投げ飛ばす。本来ならば地面に叩きつけるのがベストなんだけど。このまま地面に叩きつけたら、防護服は着ていても物理的なダメージが半端無いと思ったからだ。そして、背を向けたまま全力で真上に飛び上がり、先程投げた刀を、右で折れた刀を、左で罅が入った刀をキャッチし、その下をエリオが通り過ぎる。
 そのまま、エリオが行った方向へ飛んで、エリオが振り返るよりも先に刀の峰をエリオの後頭部へと軽く当てて気絶させてからの。

「辛!!!」

 心のそこからの言葉を叫ぶ。というか、叫んだと同時に倒れそうになるエリオを支えてゆっくりと木陰に連れて行って、木の幹を背にそこに寝かせる。
 正直というか、本音を言えばこんな勝ち方は正直嬉しくない。スバルを投げたのだって、一本背負いなんだけど正直アレは試合の中で言えば反則だ、同じ側の袖と襟を掴んで投げるのは柔道じゃ即反則を取られる。エリオにしたって正面からやりあわずに、ほとんど攻撃をかわすか受け流すかで、基本的に逃げてたしね。

「響~スバルがなんか飛んできたからバインドしてからキャッチしたけど。どうしたら良い?」

「うぁー、くーやーしーいー」

 なんか、茂みから奏が足をバタバタさせながら悔しがってるスバルを連れてきた。というか早いなおい。取り敢えず

「そしたらこっち連れてきて。エリオが気を失ってるから。あとバインド解除してくれ一応模擬戦上じゃ拘束扱いだし、で、スバルは申し訳ないがエリオを見ててくれ。軽く当てたから酷くはないかもしれないと思ってるけど、万が一があったら嫌だし」

 取り敢えず、スバルにエリオをお願いしておく。だってねぇ、文字通り万が一があったら……俺切腹モノよ?

「あ、了解。ごめんねスバル。痛くなかった?」

「ううん、大丈夫だよ。というか響凄いね。正直三回目はぶつかると思ってたのに」

「ん、あぁ、別に凄くねぇよ。というか……って、一応模擬戦中なんだった。後でアドバイスとかするから待っててくれ。行くぞ奏」

「はい」

「うぅ……次は負けないからね!」

 後ろで、エリオを膝枕したスバルがそう叫ぶ。うん、次やったら俺負けると思うしねー……っと、それよりもだ。

「取り敢えず流と震離を追っかけるか」

「ん~、流はともかく震離は大丈夫かな?」

「さぁ、取り敢えず急ごう」

 そう思って、念話を飛ばそうとした瞬間。

『そこまで! 模擬戦はここまで。みんな、ちょっと休憩』

 目の前にモニターが展開して、なのはさんの顔が写り、声が聞こえた瞬間に念話を飛ばすのをやめた。そのまま、奏に目で合図を送って、木陰に居るスバル達の元へと向かう。

「お疲れ様。エリオ連れてくよ」

「うん、お疲れー。エリオ、結構鍛えてるから重いけど大丈夫?」

「ん、あぁ、大丈夫だろう」

 スバルに手伝って貰って、エリオを背中に乗っけて移動する。ちなみに、奏はスバルの服とか、頭についた埃とかを払ってる。取り敢えずまぁ、なのはさんの元まで行くか……。
 なんて、思ってたら。

「ねぇねぇ響! さっき、というか……って言いかけてたけど、あの後なんて言おうとしてたの?」

 ものすごく目を輝かせたスバルが俺の周りをウロウロと動く。正直説明してやりたいけれど……多分エリオが起きたら、同じ事聞いてくるだろうし、ここはだな。

「どうせ向こうついたら話すだろうし、それまであの時他に攻め方なかったかどうかって考えてみ?」

「……えっと、エリオとのコンビ以外でしょ?」

 キョトンとした顔で、首を傾げるスバルを見て苦笑いが出てくる。こいつ、主席って割にこういう布陣の事考えないのかな……?

「……ちょっと考えていい?」

「おぉ、ただ何が正解かはわからんし、あくまで選択肢って話だからそこまで深く考えなくてもいいよ」

「うん、分かった」 

 そう言って考え始めるスバルだけど……うん、所々クエスチョンマークみたいなのが浮かんでる所を見ると、よくわかってないんだろうなと考える。
 単純に、あの一瞬で出来たことって、いっぱいあったと思うんだがなぁ。けど、それよりもだ。

 このタイミングでなのはさんが、模擬戦を切り上げたのはなんでだろうって考えてしまう。あの一瞬の攻防で、判断したというのならまだティアナとキャロが残ってる。前衛が居なくなったとはいえど、やり方によるけど二人いた。特にブーストが出来て、竜を使役しているキャロと、遠距離から攻撃可能なティアナがいるんだし。まだ勝ち筋は残ってたはず。
 コチラも顔見せなんだしそこまで深く攻める気はなかったし、如何せんどういう戦術で来るかっていうのも見たかった。いつか見たのは、割とスバルとのセットプレーを中心にしてたし……そのスバルが落ちたから?
 だから、あのタイミングでやめた? 

「単純にあっちもこっちも最初だから何じゃないの? それに部隊も立ち上がってから日も立ってないんだしさ」

「……なるほど!」

 ぐるぐる思考が回り掛けてたのがバレたのか、苦笑しながら奏が話す。同時に深く考え過ぎなのは良くないよ? って付け加えられて、少し恥ずかしくなる。深く考えてたっていうのは認めるけど、なんだろう。なんか気恥ずかしいんだ。
 ……ただまぁ、こういう時は、奏に勝てる気しないからそのまま受け入れるけど、やはり恥ずかしいし、慣れないな。

 とりあえず、今日の模擬戦は終了だ。これが終わったら……部屋の整理か。めんどうだなぁ全く。

―――
 
「ひ、響さんすごい!」

「あはは、ありがと、思ってた以上に早いし、反応凄いしで焦ったけどなー」

 あの後、皆でなのはさんの元まで戻った時に意識が復活したエリオが、開口一番にどうしてあのタイミングで見きれたのとか色々聞いてきた。けど、それよりも先にこの子ら、本当にタフだよね……。まぁ、頑丈なのは良い事だ。

「もっと反応速度を磨きます!」

「それはおいおいなー、搦め手は次から気をつければ……あ?」

「? どうかしたんですか?」

「あ、あぁ、大丈夫だエリオ」

 エリオ達からタメ語で話されてるのを黒い服きた金髪の人からジト目で見られてるけど。多分、ってか絶対に気のせいだと思い込む。だって、あの人執務官だろう? 一応俺の上官だろう? 仕事ができる人って噂の名高い人。
 まぁ、やましいことは……あるが、まぁいいか。それよか。

「はーい、皆注目!」

「はいっ!」

 なのはさんの集合合図に皆の声が揃う。まぁ、とりあえず俺以外の三人の配属とポジションの説明、基本的なチーム構成を聞かないとね。

「今響達四人の模擬戦をやって、私とはやてちゃん、そしてフェイトちゃんの三人で話あった結果を発表します」

「はい!」

 奏達三人の声が揃う。まぁこれからどこに配属か決まるから少し楽しみなんだろうな。
 とは言っても前線組は俺らを含めて8人、隊長と副隊長が居るなら、それを含めても12人か。はやてさんも含めて13人……あれ、はやてさんって固有戦力持ちだから……まだいくな……考えるのが面倒になってきたから、なのはさんの話をきく。

「まずスターズには、震離と流、コールサインは流が5で、震離が6ね? ここまでで質問は?」

「問題ありません」

「私も大丈夫です!」

 まぁ、妥当だな、普通に奏がこっちか。それでこの金髪の方が……

「挨拶が遅れてごめんね? 私がライトニングの隊長のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンで、執務官をやっています、皆よろしくね?」

「宜しくお願いします!」

ここでもまた四人揃って挨拶しておく、とりあえず。

「自分は」

「うん、響だよね? 宜しくね」

「え、あぁ、はいこちらこそ」

 普通に挨拶しようと思って、階級とか名前とか言おうとしたら、先に言われた。正直先に言われるなんて思ってもなかったから、なんか、少し……

「あー、珍しいー照れてる」

「……ぅ」

 震離うるさい。と口には出せずそのまま飲み込む。
 と、とにかくだ。

「えと、ハラオウン隊長? 一つ質問があるんですが……」

「何かな? あと私のことは「フェイト」でいいよ?」

 ……隊長陣がここまでフレンドリーだとは正直思わなかった。なんだろう、ここまで来ると逆に怖くなってくるな。まぁ、そんなことより。

「えと、自分と奏のコールサインはなんでしょうか?」

「あぁ、それはね、響が5で、奏でが6になるんだけど。響には私やシグナムが居ないときの指揮をやって欲しいの」

 ……ほら来た。予想通り過ぎて俺の心は泣いてるよ、せっかく異動したから指揮とかしなくて済むかなーなんて思ってたんだけどな、まぁ。

「構いませんが、それはライトニングで動く時ですよね?」

「うん、基本的にはそうなるかな」

 やっぱり、まぁ妥当だろう。基本的にはスバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人でずっとチーム組んできたんだ。いきなり俺らが入ったら多分ってか確実に合わなくなるしな。まぁ、エリオ達にはティアナっていう優秀な指揮官と、それと肩を並べてるスバルが居るんだ。基本的には大丈夫だろう。

「そうですか、ありがとうございます」

「ううん、気にしないで」

 なんて言ってるけど、とにかく頭を下げとく。これ以上目をつけられないように。理由は一つ。さっき、なんか俺のことジト目で睨んでたし、なんか睨まれるような事した覚えが無いからとにかく俺の評価をあげとく。既にマイナスにいってそうだけどね!

 あ、そうだ。

「はやてさん、俺らの部屋割りってどうなってます?」

「うん、あぁ、寮に言ったら名前を書いた紙を貼ってるからそれを見てな? そこに荷物も置いてるから」

「了解です」

 あぁ、荷崩しかー、めんどくせー、たまには家に戻って部屋の換気しないと……それは大丈夫か。
 まぁ、なんとかなるし、いい加減雑念捨ててなのはさんの話に集中しないと。なんか、フェイトさんの視線がどんどん強くなってきてるし……俺本当になんかしたかな!? 覚えがないから困るんだけど!?
 因縁……というか、縁が有るのはフェイトさんじゃないんだけどなー。

「っと、話は以上ね、それじゃあ午前の訓練はこれまで。明日は出張任務だから、今日の午後の訓練はお休みね。しっかりクールダウンして、明日のために疲れを残さないように」

「はい! ありがとうございました!」

 皆の声が揃って、頭をさげる。……前半部分聞いてねぇ。まぁ、大丈夫だろう多分きっと!

「さて、エリオとキャロ、クールダウンにいくか?」

「はい」

 うん、素直に返事してくれてありがとう、何時もだと震離が適当にふざけるから、スゲェ楽だ!
 それで足を進めてる間に、その震離はというと。
 
「それじゃあ、クールダウンして昼食にしよっか」

「わは~震離~? これからよろしくねー」

「こちらこそ宜しくー」

「ちょっと、スバルに震離。そんなこと言ってないでクールダウンに行くわよ?  もう皆行ってるんだから」

「ふぇ!? ちょ、ちょっとティア! キャロにエリオも私をおいてかないで~!」

 ……まぁ、いいか。最初のうちはそんなもんだろ。ていうか、さっきからエリオとキャロと話ししてるだけで、フェイトさんの視線が殺気にランク上がったんだけど、どういう事!?

「……ホの字?」

「え、あの、奏さん? どうし……た?」

「冗談冗談、冗談に決まってるじゃない、ねぇ……響?」

 ……殺気の視線が二つに増えました。
 ……よし、決めた!

「さて、と、飯食う前に俺は先に部屋の片付けしてきますねー」

「あ、僕も手伝うよ」

「はは、サンキュ、けどいいよ、前の部隊の資料とかいろいろあるだろうからそれの整理もしないといけないしね」

 せっかくのエリオの申し出を断る。正直申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 だって、こうやって話をしてるだけでも、どんどん殺気のレベルが上がってるんだもん。
 隣と後ろの視線がもう、見ただけで人殺せるだろう? その割には会話してる時には戻して普通にしてるし。
 というか、そのギャップが死にたくなるほど怖いんだよ!?

「それでは、飯食うまでには合流するので、先に失礼しますねー……ん?」

 軽い駆け足で、皆の前に出て適当に挨拶して気づく。
 流はどこに? 視線を動かして周りを見ても、どこにも居ない。まあ、先に帰ったってことでいいのか?
 それよりも。

「それじゃあ」

 振り返って寮のある方向に向かい、途中の角を曲がった瞬間。

「よしっ!」

 全力疾走。それこそ短距離でも走るのかお前は? と言われても仕方ないくらい本気で足を腕を上げて走る。
 なぜなら。振り切ったと思った殺気まがいの視線をまだ感じるから。
まぁ、基本として、いきなり立ち止まって、振り返る。
 既にここは室内。隠れる場所はあまりないが……さっきまで閉まっていた窓が開いている。
 ……まぁ仕方ない。とにかくゆっくり歩いて角を曲がると、後ろからパンプスのカツカツした音で付いてきているのを確認。正直怖い。もう一つ角を曲がった瞬間、もう一度全力で走る。そして相変わらずパンプスの音が頻度を上げて近づいてくる。曲がり角を曲がると急停止。待つこと少し、走りこんできた金髪の隊長。

「あ、あれ、響? 偶然だね?」

「……マジですか」

 まさか、こんなに律儀に引っかかるとは……正直すごくびっくりしてる。

―――――――――

 とりあえず、屋上に行く途中、自販機に立ち寄って飲み物二つ買っておく。
 途中で緑茶とか入ってるのを見て思わず買いそうになったけど、とりあえず二本コーヒーを買って、フェイトさんに渡しとく。
 で、屋上について誰もいないのをかくにんしたあと、フェイト隊長をベンチに座らせて、俺は立ったままコーヒーを一口含む。うん、喉乾いてたから正直落ち着く、さて。

「……俺なんか失礼なことでもしましたか?」

「えと、その前にいつから気が付いていたの?」

 …………え?

 えーーーーーーー。

 と顔にも声にも出さないで心のなかで絶叫する。うん、今の俺頑張ったと思うよ多分きっと。
 おかしいな、俺が記憶してる限りじゃ執務官試験てスゲェ難しいと記憶してんだけど?
 それで、この隊長二つ名まであるほど優秀な方だよね? 何なのかめんどくさくて調べてないけども!

「あー、なんかエリオやキャロと話ししてる途中からですね」

「さっ最初からなんだ……」

 ……管理局ぅううう!? 誰だよこの人合格させたの!? 明らかにミスだろう!? まぁ、優秀だから合格させてんだろうけども。

「その、エリオとキャロの事なんだけど」

「……はぁ」

―――数分後。

「えーと、要約すると、自分よりも俺のほうが二人が懐いてる様で何でなのか聞きたかったと、そういうわけですね?」

「そっそうなんだよ!!」

 ……何でこんな短いこと聞き出すために数分掛けたんだ俺? 一応数分つってもコーヒーがぬるくなるまで掛かるってどういうこっちゃ?だけど、頑張った俺、超頑張った俺! 俺の中の全米が拍手喝采してるよきっと!
……まぁ、そんなことよりも。

「というか、何でさっさと聞かないんですか? 聞いてくれたらすぐにでも答えましたのに?」

「その、どう聞いたらいいか分からなかったし響とはあんまり話した事無かったから」

「……そりゃ初日で、いきなり睨んでくる人間と積極的に話したいですか?」

「はぅっ!!」

 うわぁ、なんか俯いて暗い影まで出来だ。
 なんか頭ん中に煌が出てきて、「そういう時は優しく抱きしめるんだぜ?」って言ってるけど徹底的に無視だ。
 なんか、慌ててるけど無視だ、絶対実行しないからな!?

「んー……俺もあまり話してないのでなんとも言えないですけど、あの二人普通にフェイトさんになついてるように見えるんですけどね。フェイトさんが何か告げる度にどことなーく二人共嬉しそうでしたし。
 大体、俺の方なんて初日だから気を使われてる可能性のが高いんですから」

 普通にフェイトさんの姿見かけりゃ終始ニコニコ笑顔だし、多分天地がひっくり返ってもあの反応だと絶対に悪く言いそうにない……って、なるほど。だからか。

「エリオもキャロもいい子だよ、だけどこんな所に来ても弱音も言ってくれないし……でも、何だか固い所があるから」

 わーい、震離の親父さん見たいな反応じゃん。というか子離れしない親との会話になってきた。
 まぁ、多分褒められたいってか、立派になったね?とか言ってもらいたい二人と甘えて欲しい親みたいな感じか? 
 というか、曲がりなりにもここってば、はやてさんが建てた部隊なのに、こんな所って……案外エグいな。

「……やっぱり、私じゃ……」

「……ぅぉ」

 なんか、うつむきながら泣いてんじゃないかって思うくらい肩が震えてる。不味いこのタイプ一回ショック受けると、落ちるとこまでショック受けるタイプだ。じゃなきゃほぼ初対面の俺相手にこんなとこまで言わないだろう。ていうか、なんか小さくて聞こえないけど、自分で自分を追い込んじゃ不味いだろう。それ以前にこんなトコロ誰かに見られたら……はっ!? 屋上の扉がパタンってしまった……終わった……えぇい、こうなりゃヤケだ!

「フェイト隊長は今年で何年目でしょうか?」

「……やっぱり……うん? 入った時? 確か9歳だったかな」

 ……マジ? 十年てかなりの先輩じゃないですか。それで今更悩むんかい、なんか子育てし始めた人みたいだな……父親側の。

「その時の隊長はやたらと頑張ろうとしませんでした?」

「……うん、した……」

「多分今のエリオ達はそんな感じなんですよ、フェイト隊長の力に少しでもなりたいって、少しでも支えてあげたいって、きっと、だから隊長の前では少しでも一人前に見て欲しくて背伸びするんだと思いますけどねー。
 エリオは年の割には早い反応速度に、キャロなんて封印処理出来るなんて同世代に比べると十分凄いですよ」

「私はもっと自分好きなことして欲しいんだけど……」

「それがエリオとキャロのやりたいことなんですよ、フェイト隊長だって、大好きな人の役に立ちたいってすごく頑張ったことはありませんか?
 ちなみに俺はあります。頑張って出来ないことが出来るようになったら喜んでくれた人がいましたし」

「……」

 コクンって無言で傾くけど、なんかさっきに比べて一気に影がこゆくなったぞ!? どういうこっちゃ!? やっべぇ、PT事件は概要でしか知らんのよなぁ……と、とにかくだ!

「つまり、今はあの二人をゆっくりと見守るべきですよ、いざとなればフェイト隊長がフォローすればいいんですし。
 なのはさんや、はやてさんっていう親友もいらっしゃるんですし、ね?」

 ……おぉ、我ながら結構綺麗にまとまった。だいたい子供の頃ってある程度好きにさせるもんだ。やめなさいっつってもやめないのが大概だし。何より心当たりどころか、隠れてしてたし。

「うん、そうか、そうかも、ありがとうね響?」

「はぁ……」

 わー、初めて悪意ゼロの笑顔見た気がする。どういうわけか俺の周りって何か変なの多いし。なんか変なのって考えた瞬間、頭ん中に涙目の奏が写ったのは気のせいだ、絶対そうだ! だから、頭ん中で、ヨヨヨって泣くなよ!?

「どうしたの響?」

「……いえ、なんか変な電波が……」

「え?」

「……なんでもないです」

 とにかく、これでもう睨まれる心配はない。多分もう無い筈だ!
 ……まぁ、このために時間割いたし、飯でも食いに行こう。噂が広まってなければいいなぁ……だけど。

「……無いんだろうなぁ、やっぱり」

「どうしたの?」

「いえ、こっちの話です」

 奏と震離の目が変わらなかったらいいけどな……はぁ、面倒だ。そんなこと考えながら、残ったコーヒーを飲み干す。うん、ぬるくてまずかった。

 しかし……てっきり疑われてるかなと思ったが、それは流の方なのか。単純に泳がされてるのか……まだわからんな。

 PT事件、闇の書事件を解決させたハラオウン家の一人で、次世代のトライアングルの一角。
 ハラオウン家の人達はあまり接点の無い俺たちですら名前を知ってる。俺の事情で調べてた件には必ず艦長か執務官のどちらかの名前が出てたし。
 
 ……この一連のやり取りが、俺を推し測る事とすれば、あえて道化を演じた可能性も無きにしもあらず。
 
 何より、夜天の書の主(はやてさん)が俺に対して無反応だったということは、知らないからか、俺の考え過ぎか、はたまたコチラも泳がせてるのか。
 あー……めんどくさい。分かってた立ち位置だけど、しばらくこれが続くのか……めんどくさいな本当に。

  
 

 
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら、幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。 
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