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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica45旗艦ネレイデス攻略戦~Tränen in der Tiefsee~

 
前書き
Tränen in der Tiefsee/トレーネン・イン・デア・ティーフゼー/深海の涙 

 
†††Sideなのは†††

「8隻目の撃沈を確認!」

13隻から構成されていた艦隊もかなり少なくなった。ひとえにすずかちゃん達が開発してくれた武装端末のおかげだ。でも逆を言えば、この端末が無かったら私たちは一方的に蹂躙されてたってことになる。

(ルシル君が送ってきてくれたデータを、攻撃中にサッと見たけど・・・)

大隊の艦隊・・・正式名称モルゲンデメリング征服艦隊は、13隻から成ってるんじゃないことが判った。旗艦がもう1隻、存在していたんだ。私たちの足元、遥か海の底に・・・。

(戦略級ミサイルプラットフォーム潜水艦ネレイデス・・・か)

ネレイデスっていう潜水艦を旗艦とするこの艦隊を手っ取り早く停止させるには、旗艦を制圧した方がいいって、データを見る限りだと判るんだけど・・・。海底への攻撃なんて出来ないし、艦載砲が邪魔してくるから、どの道艦隊の相手をしないといけない。

「残る5隻も、この調子でぶっ叩く!」

ヴィータちゃんが“ストライクカノン”の砲門を次のターゲットに向けて、「食らいやがれ!」トリガーを引いたけど、砲撃の代わりに機関部から黒煙と火が上がった。それを見てすずかちゃんが「ヴィータちゃん、破棄! 早く!」って声を上げた。

「っ・・・! わりぃ!」

ヴィータちゃんが“ストライクカノン”を捨てて、海面へと向かってくソレをすずかちゃんが「カノン!」砲撃で完全に破壊した。万が一に技術が盗まれちゃいけないから、現場で破棄した場合はその場で破壊するって聞いてたけど・・・。ここまで頑張ってくれた“ストライクカノン”には愛着も沸くわけで・・・。ヴィータちゃんもそうみたいで辛そうな顔をした。

「ヴィータちゃん、新しいストライクカノンを取りに戻って!」

「お、おう!」

「こちら月村! メンバー1人がベルリネッタに一度帰還しますので注意しておいてください!」

すずかちゃんが全体通信でそう伝えて、ヴィータちゃんが「すぐ戻る!」って私たちから離脱した。最後まで見送ることなく私たちは攻撃を再開。武装端末はバッテリー駆動だから、好き勝手は撃てないけど、十二分に艦隊へダメージを与えられてる。

「あ! バリアが・・・!」

「解除された!」

艦隊を覆っていた半球状の巨大バリア(ヘーラーっていう名前らしい)がとうとう消失した。武装端末の攻撃を防げない以上、展開し続けることの無駄って判断したのかも。でもこれで「接近できる!」わけだ。

「すずか!」

「うん、フェイトちゃん! 一気に決めに掛かろう! 旗艦については端末を交換してから考える!」

すずかちゃんの指示に「了解!」って応えて、私たちは艦隊への接近を試みる。バリア発生に回していたエネルギーか魔力を艦載砲に回した影響か、「弾幕が・・・!」厚くなった。

「なのはちゃん! ヴィータちゃんが戻ってきたら、シールドを壊しても良いって気概で突っ込もう!」

「すずかちゃん・・・。ん、了解だよ!」

「みんな、バッテリーの残量は?」

艦載砲を回避しながらバッテリー残量を確認。私の“ストライクカノン”と“フォートレス”はついさっき交換してきたから大丈夫。すずかちゃんとフェイトちゃんは私のちょっと前に交換済み。トーレさんとセッテさんの“ウォーハンマー”は、“ストライクカノン”に比べればバッテリーの消費は少ないし、機人である2人は自身の駆動器官からバッテリーにエネルギーを供給できるから、交換に行く頻度は少ない。

『こちらカローラ。月村主任。ストライクカノンの交換の許可を』

成層圏からレールガンを撃っていた兵器は、戦術級武装飛空艦カラドリウス。巨大な硬式飛行船らしく、大隊メンバーの運搬を主任務としているみたい。偽フィレスさんや雷騎士やその他大勢の大隊メンバーが空から現れたのはそういうわけだった。

「はい、どうぞ! そちらはお1人で大丈夫ですか?」

『ええ。成層圏内で空戦が出来るのが私ひとりだから。けれど艦隊に比べて攻撃の厚さはさほど無いおかげで、単独で十分渡り合えるわ』

遥か空を見れば、フィレスさんの魔力光アイスグリーンと、幾条もの白い閃光が縦横無尽に翔け回ってるのが判る。ただ、カラドリウスの機影は視認できない。エアリアルとかっていうステルス機能を搭載してるからってデータにあった。そんなカラドリウスの撃墜を担当することになったフィレスさんは、艦隊と同じバリアと装甲を積んでることで武装端末を借りて交戦を開始した。

「ではそのままカラドリウスの攻略をお願いします!」

『了解。そちらもご武運を』

すずかちゃんとフィレスさんの通信が終わって、「わりぃ、待たせた!」ヴィータちゃんも新しい“ストライクかノン”を手に戻って来たんだけど、ヴィータちゃんが「なあ。攻撃の頻度が落ちてね?」って首を傾げた。さっきまでは足を止めると直撃ないし掠るような弾幕だったけど、今はゆっくり話せるほどに落ち着いてる。

「クアットロ、お前か?」

「いいえ、トーレ姉様。すでに私のシルバーカーテンは通用していないです。完全に解析されてしまったみたいで・・・」

「・・・とにかくチャンスなのは間違いないから、このまま押し切ろう!」

――炸裂魚雷(アイアタル)――

攻撃頻度の落ちた残りの戦艦を撃沈するべく突っ込もうとした時、「えっ、なに・・・!?」残り5隻の側面がいきなり爆発。黒煙を上げる艦体が徐々に傾斜していって、次々と海に沈み始めた。私たちは顔を見合わせて、「事故?」って首を傾げる。

『警告! 海中にて巨大質量の移動を確認! これは・・・浮上している!? おそらく旗艦ネレイデスです、ご注意を!』

リュッチェンスからの通信に遅れること数秒。大きな影が海面に現れて、沈没中の戦艦5隻にぶつかりながら船首が海面から飛び出してきた。データには全長400mってあったけど、実際に浮上して私たちに見せ付けるその姿(シロナガスクジラみたいな形だ)はもっと大きく見えた。

『こちらリュッチェンス。ネレイデスより通信が入っています。対艦班の皆さんにも繋げます』

『・・・こち・・・イデス・・・管制・・・ンマ・・・』

私たちにもネレイデスからの通信を繋げてもらい、ノイズ交じりの言葉に耳を傾けようとした。若い女性の声で、リュッチェンスからは『生命反応1! 有人です!』との報告が入る。ルシル君からのデータには無かった情報だ。

対空エネルギー砲(キリム)、1番から6番起動』

≪マスター! ロックオンされています!≫

待機モードの“レイジングハート”から警告が出る。甲板の下部(尾ヒレの付け根部分)辺りにある三連装砲台24基のうち6基の砲門が私たちに向いて、ノイズ交じりの通信相手とはまた別の女性の声で『発射』の指示が出た。

「おいおい、そっちから声かけといて攻撃かよ!」

「クアットロ! シルバーカーテンが通用しなくなった今、お前は下がれ!」

「っ!・・・口惜しいですがトーレ姉様の言うとおり・・・。すずか、私はベルリネッタに帰還します」

「うん! ありがとう、ゆっくり休んで!」

6基の三連装砲から放たれる何百発のエネルギー弾を躱しつつ、“ストライクカノン”をネレイデスの巨大な艦体へと向ける。潜水艦が浮上すればいい的だってことくらいは、管制も解かってるはず。それを証明するために攻撃あるのみ。そして制圧して、管制を確保する。

「シュート!」

トリガーを引いて砲撃を発射。私に続いてすずかちゃんとフェイトちゃんとヴィータちゃんも「シュート!」砲撃を放った。装甲に穴が開けば潜航は出来ないはずだから、砲台の破壊より艦体へのダメージを狙ったんだけど・・・。

「砲撃が・・・」

「「「弾かれた・・・!?」」」

戦艦や空母の装甲も撃ち抜けた“ストライクカノン”の一撃が、バリアなんて張っていないただの装甲に弾かれた。でも呆けていられない。再びエネルギー弾が私たちを襲う。威力はすごいだろうけど誘導操作弾じゃなく直射弾だから、恐れることなく難なく回避。

「もう1度! 今度は全員、同じ場所に攻撃を! トーレとセッテは少し待機で!」

すずかちゃんの指示に従って私たち砲台組は、第2波攻撃のために射線確保に動く。そんな中、またノイズ交じりの通信が入った。

『・・・現ざ・・・闘中の・・う空戦りょ・・・お願・・・ウチを・・・沈め・・・』

『発射管1番から4番開放。散弾ミサイル(ズラトロク)Type B・・・発射』

鼻孔に当たる箇所はミサイル発射管の集まりで、少なくとも100基くらいのハッチがある。そのうち4基からミサイルが発射されて、垂直に空へと上がっていった。弾道ミサイルだ。

「ネレイデスへの攻撃を中断して、弾道ミサイルの迎撃を最優先に! ウーノ、はやてちゃん、ハルトマン一佐! それに各航空隊へ! 警戒してください!」

「あのミサイル、プライソン戦役ん時と同じなら魔法で破壊できんじゃねぇか?」

「巡航ミサイルに比べて迎撃は難しいと思うけど、広域攻撃が出来るならたぶん・・・!」

広域攻撃が出来るのは、はやてちゃん、アインスさん、アギトとユニゾン中のシグナムさん、それにフィレスさんだけだ。でもはやてちゃん達は今、敵戦力と交戦中。頼るわけにはいかない。と思いながらもチラッとはやてちゃん達の方を見る。ここから500mくらい離れてるけど、魔力光のおかげで大体の状況は判る。

(あれ? あの桃色の魔力光って・・・)

開戦時には無かった色。そしてその持ち主も姿を見せてなかった。セラティナさんのものだ。

「ボサっとすんな、なのは!」

「あ、ごめん、ヴィータちゃん!」

エネルギー弾の弾幕も続く中、リュッチェンスから『全隊! 高度50m以下まで降下してください! 急いで!』切羽詰った通信が入った。

『騎士カローラはそのままの高度で結構です! ズラトロクは、高度50m~10km圏内の一定空間内を任意で爆撃するミサイルだそうです!』

『ハルトマンです! リュッチェンスとヴォルフラム2隻の艦載砲による迎撃を行います! 八神一佐、よろしいですか!?』

『もちろんです! そちらの指示はお願いします! こちらはロードスター一尉のおかげで、直掩戦力をもう少しで撃破できそうですので、雷騎士を逮捕した後にネレイデス攻略に参加します!』

弾幕の中を掻い潜って50m以下まで降下しないといけなくなった私たちは、この機会にネレイデスに再接近して、至近距離での砲撃を撃とうかと考えるわけだけど・・・。

『弾道ミサイルが降下してきました! 未だに指定高度内に居る隊員は、至急50m以下まで降下してください!』

攻撃中にミサイルの衝撃で体勢を崩されて、ネレイデスの弾幕を受ける危険は避けないと。みんなで顔を見合わせて、今は回避を最優先することに。

『申し訳ありません、1発の迎撃に失敗しました! 皆さん注意を!』

ハルトマン一佐からの通信の直後、空がカッと明るくなった。1発のミサイルが途中で複数の小型ミサイルへとバラけて、ソレらが一斉に爆発。ドォーン!と耳を貫くほどの大きな爆発音に続き、「くぅぅ・・・!」押し潰されそうな衝撃波が頭上から襲ってきた。

(あんなのが複数発、同時に爆発なんかしたら直撃じゃなくても墜とされそう・・・!)

「まずい! 潜航されるぞ!」

耳鳴りがする中で聞こえたトーレさんの声で、ネレイデスの艦体が沈み始めてるのが判った。潜航寸前はエネルギー砲は撃てないのか、私たちへの攻撃が止んだ。

「照準!」

すずかちゃんが魔力でレーザーポインターを放って着弾点を指定。エネルギーをチャージして、私とすずかちゃんは“ストライクカノン”と“フォートレス”を、フェイトちゃんとヴィータちゃんは“ストライクカノン”を、スクリューがあるはずのネレイデスの尾びれへと向ける。

「「エクサランスカノン・ヴァリアブルレイド!」」

「「ストライクカノン!」」

「「「「シュート!!」」」」

潜航されるかギリギリのところで全弾直撃・・・したけど、着弾と同時にバチン!と音がして、すべての砲撃が弾かれて消滅した。そしてネレイデスは悠々と海中へと潜航した。

「バリアじゃない。装甲に何かしらの仕掛けがあるんだ。それが判らないと・・・。持久戦だと武装端末の分が悪い」

≪警告! ロックオンされましたわ!≫

すずかちゃんが悔しげに呟いてすぐ、“スノーホワイト”が警告を発して、遅れて“レイジングハート”と“バルディッシュ”と“グラーフアイゼン”からも、ロックオンされた、っていう警告が出た。

『発射管80番から92番開放。艦対空ミサイル(ウェンディゴ)・・・発射』

ネレイデスの管制と通信が繋がったままのおかげで、ミサイルが発射されることをすぐに察することが出来た。海面から飛び出してきたのは12発のミサイル。1人につき2発が私たちに向かってきた。

「散開して回避!」

ミサイルが最高速に届く前なら空戦魔導師でも回避できる。それに速度では負けても機動力なら空戦魔導師の方に分がある。一直線に向かってくるミサイルを急上昇して回避。すずかちゃん達も回避に成功してる。

「誘導弾、注意!」

セッテさんの言うとおり、ミサイルが弧を描いて戻って来そうだった。

――フレースヴェルグ――

そこに飛来するのは白い砲撃で、旋回中によって速度が落ちていたミサイルを狙い撃ちして撃破してくれた。今の砲撃は「はやてちゃん!」のものだ。見ればはやてちゃん達がこちらに向かって飛んできていた。

『これより雷騎士討伐隊は、艦隊旗艦ネレイデス攻略に参加します! 月村主任、指示を願います!』

『了解! ネレイデスはバリアを展開しなくても、その装甲の防御力で武装端末の砲撃も防ぐの! それでも攻撃を続ければきっと装甲は疲弊する! だからはやてちゃん、浮上したら好きなように攻撃してくれると助かる!』

『なるほど! そうゆうわけなら一丁暴れようか!』

『あ、ただ、ネレイデスは有人兵器で、管制官が居るみたいなの。とりあえず装甲に穴を開けて潜行出できないようにするのを最優先でお願い』

『了解や!』

はやてちゃん達と合流を果たして、お互いのこれまでの健闘を称えるように力強く頷き合った。

「アリシア!」

「フェイト! ただいま!」

「うん、うん、おかえり!」

フェイトちゃんとアリシアちゃんがハグして再会を喜び合うのを温かく見守ってると、リュッチェンスから『ネレイデスから流されていた通信のノイズ除去に成功しました』との連絡が入った。そしてこれまでに届いた通信を再生してくれた。

『こちら旗艦ネレイデスの管制機、ガンマ。現在戦闘中の航空戦力にお願いする。ウチを沈めてほしい』

「ガンマって・・・!」

「行方不明になってたスキュラの次女!」

拉致もしくは死亡扱いにされていた、プライソン・スカリエッティの生み出した兵器管制用サイボーグ・スキュラの内の1人、ガンマ。こんな形で彼女の安否を確認することになるなんて。

『フィレス・レプリカ、同志アインス(ランコ)の撃墜、敵戦力の増加を確認。全兵装システム立ち上げ・・・完了。システムオールグリーン』

ガンマとは違う女性の声が、管制機のガンマを差し置いてネレイデスのシステムを掌握をしているかのようなことを言う。

「とりあえず管制機(ガンマ)を確保しよう! 話はそれからや!」

遠隔無線操作飛行砲台(ピクシー)・・・ドライブ』

はやてちゃんの言葉に「了解!」と応えていたところに、海面からピクシーっていう名前らしき何かが複数飛び出してきた。ミサイルかと思ったけど違う。全部で10基のピクシー(形状は、成人大サイズのプラスドライバー)は宙で滞空して、先端を私たちに向けた。それだけでピクシーが攻撃用の兵装だってことが判って、私や他のみんなもその場から即離脱。直後に先端から砲撃が発射された。

「なのはのブラスタービットみたいだね!」

――スティンガーレイ――

狼形態のザフィーラに跨るアリシアちゃんがそう言いつつ、“ラッキーシューター”から魔力弾を連射。砲撃中のピクシーに着弾するけど、大きく揺さぶるだけで破壊には至らなかった。すると別のピクシーがフォローに入って来て、先端をアリシアちゃんに向けた。

「ああんもう! 私の魔法じゃ火力不足っぽい!?」

――ストームフレア――

「ならこれでどう!」

アリサちゃんが炎の竜巻を砲撃として発射して、砲撃発射前のピクシーに直撃させた。でも「うそ! あたしのもダメ!?」って、着弾時に発生した爆炎からピクシーが飛び出してきたことでアリサちゃんが驚きを見せた。

「すずかちゃん! 武装端末なら・・・!」

「う・・・ん。出来ればネレイデスだけに使いたいけど、そうも言ってられないよね・・・。判った。私とヴィータちゃんでピクシーを武装端末で攻撃。なのはちゃんとフェイトちゃんは魔法で攻撃を続行。トーレとセッテは引き続きネレイデスへの攻撃を最優先で、潜航中は待機!」

すずかちゃんの指示に頷き返して、私は誘導操作弾の「アクセルシューター! シュート!」を18発と一斉発射。ピクシーは回避行動に入ったけど、そこは阿吽の呼吸で「ファイア!」フェイトちゃんのプラズマランサーが回避直後のピクシーに着弾。

「まだ壊れない・・・!」

「ならば、これでどうだ!」

――紫電一閃――

シグナムさんの燃える“レヴァンティン”がピクシーを捉えた。ヒット時、炎の勢いが弱まったけど鋭い金属音の後、ピクシーが真っ二つに切断された。

「純粋物理攻撃だ! おそらくそれでなら破壊できる!」

実際に見ていたから、シグナムさんの言うとおりだと思う。でも物理攻撃が出来るのってこのメンバーだと限られてくる。アリサちゃんとヴィータちゃん、あとセッテさんの“ブーメランブレード”、そして“ウォーハンマー”の通常打撃だけ。

『機動六課の面々、聞こえる? 魔力パターンからして当時の六課メンバーと見るけど、合っているよね? まぁ合って無くてもいい』

『ガンマ。貴方は我ら大隊の庇護を受けていながら、裏切ると言うのか』

『はーっ! 笑い話にもならないことを言わないでくれる? 誘致するでなく勝手に拉致して、言うことを聞かないからってネレイデスの管制機として無理やり接続するためにウチの体を改造して、管制機(ウチ)のサブパーツと言いながらただのAIであるオメガ、お前の支配下に置かれているこの状況下で、庇護を受けている? ふざけるな!』

ガンマと、オメガって言う名前のAIの言い争いが始まると、ピクシーの攻撃がピタリと止んだ。シグナムさんが「好機!」って次々とピクシーに斬りかかって、アリサちゃんも熱することで切断力を高めた「フレアブレード!」でピクシーを斬り裂いた。

「スローターアームズ!」

セッテさんは空いてる右手に巨大ブーメラン・“スローターアームズ”4つを起動させ、ふわふわと滞空したままのピクシーに投擲して、ピクシー4基を破壊した。

『六課、見える?』

さらにノイズ交じりのモニターが展開されて、ガンマの姿が映し出された。その姿に私たちは「ひどい・・・!」思わず目を逸らしそうになった。衣類を一切身に付けず裸で、腰から下と両肩から先が無くて、いろんな色や太さのケーブルが何十本と繋がっていた。目は薄っすらと開いているけど焦点は合ってない。

六課(おまえたち)はウチを確保しようとしてるだろうから、今のうちに断っておく。ウチはもうネレイデスと一体化していて、離れることは出来ない。ケーブルを1本でも外すと死ぬ、そういう風に改造されたから。だからネレイデスもろとも沈めてほしい。お前たちが艦隊を削ってくれたおかげで、ウチの拘束力も解けてくれた。今はまだ、オメガに分があるけど、必ずネレイデスを掌握してみせる。それまで耐えて』

『愚かな事を。今の貴方は私を掌握できるほどのリソースを持っていない。大人しく私の管理下に留まれ』

『うるっさい、AIの分際で! ウチと一緒にお前も深海に沈め!』

モニターと通信がブツッと切れて、その僅か数秒後にガンマから『緊急浮上! 六課、注意!』との通信が入った。船影が海面にまで上がって、派手な水柱を上げながら船首が飛び出してきた。

汎用対衝撃装甲(スプリガン)レベル最大。発射管20番~24番開放。散弾ミサイル(ズラトロク)Type Bを――』

『させない! スプリガンを緊急解除! 六課! 装甲の色が鉄色になったら即攻撃!』

ネレイデスはこれまで水色だったけど、今は濃紺色で、さらにガンマの言う鉄色になった。だからすずかちゃんとはやてちゃんからの「総員、攻撃!」という指示に従って、対艦班の私たちは武装端末で、はやてちゃん達は魔法で、ネレイデスへと攻撃を放った。

「入った!」

「ネレイデスの装甲に損傷を確認!」

さっきまではどんな攻撃も弾いてた装甲が、色が変わっただけで脆くなった。炎と黒煙を上げるネレイデスだけど、『第2層装甲稼動。スプリガンを最大レベルで再起動。ダメージコントロール・・・クリア』オメガの言葉と共に開いていた穴が塞がって、色も濃紺に戻った。

『発射管60番~70番開放。炸裂ミサイル(ボナコン)Type B・・・発射』

「弾道ミサイル!」

『六課はネレイデス最優先! 落下軌道のデータを管理局艦に送信した! 迎撃は管理局艦(そっち)でやって! まったく!』

弾道ミサイルが発射管から発射されたから、私たちは自分の身を護るため最高速度に達するまでに撃墜しようってしたんだけど、ガンマはこちらの様子をモニターし始めたのか怒鳴り声を上げた。私たちは顔を見合わせて、リュッチェンスとヴォルフラムに迎撃をお願いする旨を伝えた。

『もう少し・・・あとちょっと・・・!』

『っ! 潜航を開始。全発射管を開ほ――』

『メインシステム掌握率52.1%! このまま完全に乗っ取ってやる! スプリガンへの電力供給を全カット! ミサイル発射システムに干渉! 発射シークエンスを一斉破棄!』

ネレイデスが再び鉄色になったのを見て、私たちはもう一度攻撃態勢に入る。それぞれ武装端末やデバイスを向けた時・・・

防衛用圧力波伝播弾(エアレー)・・・発射』

艦体後部のハッチ1基から成人大サイズの球体が4基射出された。それらはネレイデスの頭から尾――背骨に沿うように一直線に並んで、ふわっと浮遊した。

『まずい! 六課、急いで防御! 全力で!』

ガンマの切羽詰った声に、私は考えるより早く“フォートレス”3基を前面に逆三角形に配置して、さらにエネルギーシールドを展開しようとしたんだけど、オメガの『ドライブ』という一言の直後、4基の球体から強烈な衝撃波が発生して、「~~~~っ!」私たちは上空に吹き飛ばされた。

「ぅ・・・あ・・・?」

視界が点滅して、空と海がぐるぐると交互に映り込んでくる。錐もみ状態で宙を舞い、そして落下し始めてることを混濁する意識の中で理解した。

(あ・・・ストライクカノンとフォートレスが・・・)

今しがたまで装備してた武装端末が、見るも無残に粉々になってるのが見て取れた。

「・・・大丈・・・な・・・は・・・!」

落下していた体が止まる。首の後ろと膝の裏に腕が回されてるみたいで、誰かが私をお姫様抱っこして受け止めてくれたんだと判る。ありがとう、とお礼を口にしたんだけど巧く呂律が回らなかった。

(なんか・・・顔が熱い・・・?)

“ストライクカノン”も“フォートレス”も失って空いた両手で顔を触って、霞む視界の中で手の平を見ると真っ赤に濡れていた。それで頭から出血してるんだって判った。あと、私を抱き止めてくれたのは、シグナムさんっぽい。

――パワーブースト・スペルフォース――

――癒しの風――

そんな中で私を包むのは温かな青磁色の魔力。シャマル先生の治癒魔法だ。その強力な魔法のおかげで負っていたダメージがほぼ完治して、消費していた魔力も回復した。視界もバッチリ晴れて、シグナムさんの顔がはっきり見えるようになった。

「すまない、なのは。お前とフォートレスのおかげで、私とアギト、ヴィータは重傷を負わずに済んだ」

『ありがとう、なのは! 助かったよ!』

「わりぃ、なのは。平気か?」

「うん、大丈夫だよ、ヴィータちゃん。シグナムさんとアギトも無事に何より」

「なのはちゃん!」

「すずかちゃん! みんな!」

名前を呼ばれて振り向けば、シャマル先生と一緒に居るすずかちゃん、アリサちゃん達も無事そう。ただ、すずかちゃんとフェイトちゃんとトーレさんとセッテさんの手には、私と同じように武装端末の姿は無かった。

「あー死ぬかと思った~。ザフィーラが咄嗟に護ってくれなかったら絶対死んでたね私」

「やめてよ、アリシア。そんな縁起でもないこと・・・」

「だけど実際、あたしもやばかったわ。あたしとフェイトは、すずかのフォートレスのおかげもあって撃墜には至らなかったけど、意識飛ばされてたし」

「うん。ありがとう、すずか」

「ううん。フォートレスをきちんと使えれば良かったんだけど・・・」

そう言ってボロボロなメインユニットを撫でたすずかちゃん。武装端末は全滅みたい。ベルリネッタには予備の端末があるし、現在進行形で艦内の開発室にて開発用オートマタが別機を製造中だ。それでもここまで運用できた端末の破壊は気落ちを生む。

「みんな無事で何よりや。ううん、すずかちゃんのブースト魔法と、合流してくれたシャマルの治癒魔法のおかげで、私たちはこうしてまた言葉を交わすことが出来てる。ホンマにおおきにな、シャマル、すずかちゃん」

「はい」「うん」

「そやけどここで終わりやない」

はやてちゃんの視線が海面へと向く。ネレイデスは潜航中のようだけど、ガンマとオメガのシステム掌握戦が拮抗してるのか、一切攻撃を行ってこない。

「レイジングハート、セットアップ!」

武装端末を失った私は、“レイジングハート”をエクセリオンモードで起動させる。同じようにすずかちゃんとフェイトちゃんとヴィータちゃんも「セットアップ!」デバイスを起動させた。

『無事に体勢を立て直したようね。それぞれ自分が持つ最強の魔法を用意しておいて。ちゃちな射砲撃じゃ、装甲を撃ち抜けても撃沈までは至らない。ネレイデスはそれほどまでに頑強に造られた』

『無駄なことを言う。この僅かな拮抗に勝利するのは私だ。ガンマ、貴方の脳を焼き切ります』

『やってみなよ、脳無し。返り討ちだ。あぁでも、ちょっと拮抗を崩すキッカケが欲しいかも』

ブツっと通信が切れた後、『こちらフィレス。対艦チーム、射線データを送信するから、至急その場から離れて』って、フィレスさんから通信が入った。遅れて射線データってものがモニター越しに送られてきた。

「え、待って。射線って成層圏から伸びてきてる・・・!」

「まさか・・・!」

一応データに従って射線上より退避しつつ、遥か空の上を仰ぎ見る。そんな中でモニターから『発射5秒前・・・』ってカウントダウンが始まった。

『4、3、2、1、フォイア!』

――空対地レールガン(アンピプテラ)――

遥か空から海中のネレイデスへと向けて放たれて来たのは、目にも止まらない速さの4発の閃光。ソレらが派手に水柱を上げて海面に突入した。

『馬鹿な。バラストタンクに破損だと? このままでは・・・』

『カラドリウスの艦載砲(レールガン)、徹甲榴弾を使って撃ったのか。いいアイディアよ、どこかの誰か。さぁ、緊急浮上する。もう潜航は出来ない。スプリガン・・・装甲の方もウチが何とかする。ほら、最強の魔法の準備は出来た?』

ガンマの優しい声が私たちの間に流れる。ネレイデスの撃沈は即ちガンマの死を意味する。局員としてそれだけは出来ない。けれどガンマはネレイデスと一体化していて、離れることでも死ぬって言ってた・・・。

『はっはー! オメガ、バラストタンクの修復にリソースを割いた所為で、ウチへの干渉を僅かに解いた! ほらほら! 掌握率で70%越え! ウチはガンマ! スキュラ最高の管制機を舐めるなよ!』

『~~~~~っ!! ガンマぁぁぁぁぁーーーーーっ!』

『スプリガンを解除。各兵装システムを完全デリート。・・・管制AIガンマ・・・消滅。勝った』

『ガン・・・マ・・・ガ・・・マ・・・』

ネレイデスの装甲が鉄色になる。この状態でなら魔法でも十分に損傷を与えることが出来る。でもやっぱり・・・。私たちが迷いを見せていると、『対艦チーム。あなた達は下がっていて。ネレイデスは、レールガンで沈める』フィレスさんがそう言った。

「フィレスさん!?」

『あなた達に人殺しはさせられない。そういうのは大人の仕事よ。さぁ、射線上から退避を』

『それはいい考え! それじゃあ・・・六課、迷惑をかけた。でももう大丈夫。ありがとう』

フィレスさんとガンマだけで話を進めてしまった。でもガンマを救う方法は無い。シグナムさんが「なのは、下がろう」って私の肩に手を置いた。

「主はやて。それに皆も。近くに居ては巻き込まれるかもしれません、下がりましょう」

アインスさんもそう言って、殿を務めるためかネレイデスに一番近い私のところに来た。私は一度ネレイデスを一瞥して、「ごめんなさい」そう謝って、シグナムさんやヴィータちゃんと一緒にその場から離れる。

『5、4、3、2、1、フォイア!』

――空対地レールガン(アンピプテラ)――

空から飛来する閃光4発がネレイデスに着弾、そして貫通して空いた穴から爆炎が噴き上がる。炎と黒煙を上げながら艦体が3つに割れて、それぞれがゆっくりと海中へと沈み始めた。

・―・―・―・―・―・

(あー、これでようやく休むことが出来る・・・)

ネレイデスの管制室に海水が流れ込む中、ポッド内に収められているガンマの瞳が閉じられる。まぶたに裏に浮かぶのは、父として慕っていたプライソンや、他の姉妹と過ごした日々。

(一度は海に行って、泳ごうかって話してたけど、こんな形で海に入るなんて思わなかったな・・・)

管制室内が海水に満ちる。すでに肺呼吸も必要ないガンマにとっては、全身が海水に浸かってもどうということはない。それに温度すらも感じず、ただ何かに包まれたという感覚しか判らない。

(海の中ってこんなに静かなんだ・・・。だからかな、オメガももう居ないしちょっと・・・寂しい)

管制室の明かりも消失し、そこはもう真っ暗な世界。さらに無音でもあるため、ガンマは久しく感じなかった孤独を思い出した。しかし、まぶたの裏に浮かぶプライソンやスキュラの笑顔、それに・・・

――ガンマ――

という、自身の名前を呼ぶ幻聴にガンマは口端を僅かに吊り上げて笑みを作る。

(うん、父さん、アルファ、ベータ、デルタ、イプシロン、ゼータ。今行くよ・・・ただいま)

ガンマの閉じられた瞳から涙が溢れる。死への恐怖ではなく、父や姉妹と再会できるという感動のその涙は、暗く深い海の中に溶けていく。
こうしてスキュラ三女ガンマは、安らかな眠りにつくように父と姉妹たちの待つ天へと旅立って逝った。
 
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