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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第146話:Drop Dead

しばらくしてハンターベースにゼロとアイリスのチームはダメージはあったが帰ってきた。

「お帰りなさい!無事で良かったです。ゼロさん!アイリス先輩!!」

突然のことにゼロとアイリスは虚を突かれたような表情を浮かべたが、次の瞬間には笑みを浮かべて対応してくれた。

「ああ、ただいま戻った。パレット」

「ただいま、パレット」

「えへへ、それにしてもゼロさんも今ではちゃんと名前を覚えてくれてますよね。最初の間は何度も忘れられてたからちょっぴり安心しました。」

養成学校を好成績で卒業してイレギュラーハンターに正式にオペレーターとして配属された時、パレットは何度かゼロに名前を忘れられていたのでちゃんと覚えてもらっているのは素直に嬉しい。

「あ、ああ…その時はすまなかったな」

「でも何時、私のことを覚えてくれるようになったんですか?そのきっかけは?」

「きっかけか…お前の髪型が印象的だったからな。何と言うか…まるでホーネックの触角みたいだなと思ったのがきっかけだった」

「へ…?」

唖然となるパレットだったが、エックス達はどこか納得した表情であった。

「ああ、ホーネックの触角か!!道理でパレットの髪型に見覚えがあるなと思ったわけだよ」

「確かに良く見たらホーネックの触角にそっくりね…そう思わないアイリス?」

「はい。パレット…まさかあなたのそれも触角…」

「ち、違いますよおっ!!この頭のパーツは触角じゃありません!!アクセルの可変翼のようにバランサーの役目も果たしてますけど、れっきとした髪のパーツですよおっ!!」

このままでは自分の髪が触角扱いされかねないと危機感を抱いたパレットは慌てて説明するのであった。

再び時は戻ってアクセルとルインが向かったのはドロップ・デッド…プレート境界廃棄処理施設であった。

「暑っ!!」

「マグマがあるから暑いのは当然なんだけど…やっぱり暑いね…」

マグマを利用した処理施設は、ミッションを開始した直後からアクセルとルインは高温を肌で感じていた。

『ここは、再生出来ないパーツや不良品を廃棄する施設だそうです…別名、イレギュラー処理場…きゃー、きっと危なっかしい場所だと思うので、気合入れてナビらせて頂きまっす!!』

「うん、ありがとうパレット。現在進行形で危険な場所にいるけどね」

地熱が金属管を通って各所に届き、捨てられた残骸を尽く焼き尽くしていき、一瞬で金属の塊を溶かす炎の禍々しさは、地獄の業火を彷彿とさせた。

恐らくこの世界に置いてレプリロイドの墓場にこの場所以上に相応しい場所はないだろう。

「イレギュラーには同情はしないけど。やっぱり、こう言うのを見るのは嫌な気分だなあ…」

「それはね…こうやってイレギュラー化したレプリロイドの末路を見せつけられてるようなものだし。」

深い穴を空中に浮かぶ足場にアクセルとHXアーマーに換装したルインはホバーを使って安全に確実に下へと降りていく。

途中のレーザーも何とか避けることに成功した。

『後もう少しで通路に繋がる足場にですから頑張って下さいアクセル、ルインさん』

「OK」

「分かったよ」

パレットのナビゲートを受けながらアクセルとルインは少しずつ確実に先へ進んでいき、溶鉱炉のある部屋に到着すると…。

「うわっ!?」

「アクセル!!大丈夫!?」

アクセルの足元に向かってエネルギー弾が放たれ、アクセルは間一髪で回避する。

「ほう、避けたか坊や」

「お前は確か、VAVA!?」

「何でここに!?ヤコブの管理官とルナをどこにやったの!?」

突如現れたVAVAにアクセルとルインは目を見開いて問い詰めるが、VAVAはただ嘲笑を浮かべる。

「ルミネとルナとか言う小娘のことなら気にするな。新世代型の最高傑作とプロトタイプとして丁重に預かっている。今…あの小娘は面白いことになっているがな…」

それを聞いたアクセルがバレットを構えた。

「ルナに何かしてみろ!!絶対に許さないからな!!」

「ククク…ナイト気取りか坊や?愛しの姫さんはこの世界と同じように壊れかけているがな」

「この世界…?」

「まあいい、先輩として後輩共の相手をしてやるのも悪くない。精々楽しませてくれよ!!」

そう言うとVAVAはバーニアを噴かしてこちらに突撃してくる。

「(速…っ!?)」

あまりの速度にアクセルの反応が遅れる。

「アクセル!!」

咄嗟にルインがアクセルを押し倒してVAVAの突進を回避させ、ダブルセイバーを抜くと即座にVAVAに振るうが、簡単に喰らうつもりはVAVAにはないので上昇してかわす。

「どうしたナイトさんよ?先輩に守られっぱなしか?そんなんじゃ、愛しの姫さんを救うなんて出来ないぜ?」

「この…っ!!」

VAVAの言葉にアクセルは歯軋りするとショットを連射するが、VAVAは動じることなく指でショットを受け止めてしまう。

「なっ!?」

何度も当てていると言うのにVAVAには全くダメージが蓄積されない。

「今度はこっちからだ。フライトショット!!」

キャノン砲からエネルギー弾を発射する。

アクセルとルインはダッシュで回避しようとするが、ホーミング性能を持っているのか、エネルギー弾は追尾してくる。

「バリア展開!!」

HXアーマーからPXアーマーに換装し、バリアを展開してエネルギー弾を防ぐとアクセルはギリギリまで引き付けてからローリングで回避した。

「相変わらずの臨機応変に戦うものだなルイン。」

「どうしてルミネを誘拐したの?ヤコブ計画を妨害するつもり?もしそうだとしたら、私は全力で君を潰すよ!!ヤコブ計画は人類とレプリロイドが協調していくための重要なプロジェクトだから!!」

「クククク…そうだルイン、全力で来い。本気のお前を潰してこそ意味があるんだからなあっ!!ファイアストリーム!!」

地面を高速で走る炎の竜巻にルインは咄嗟にHXアーマーに換装して上方向へのエアダッシュで回避する。

「サモンボルダー!!」

メカニロイド転送用の超小型転送機を投げると拘束用のメカニロイドであるバインドホルダーを召喚した。

「ふんっ!!確かに捕まったら厄介だけど、こんなのに捕まるわけないでしょ!?」

「だろうな、だがそれくらい俺が考えていないと思っているのか!?フライトショット!!」

今度のVAVAが放ったエネルギー弾はホーミング弾ではなく、3WAYのショットである。

攻撃範囲の広い攻撃の命中率を上げるためにバインドホルダーを召喚したのだ。

回避に集中しようにもバインドホルダーが邪魔になる。

それでも何とかシャドウダッシュでかわしきろうとするが、シャドウダッシュ発動条件であるオーバードライブが解ける。

「ヤバっ…!!」

「終わりだなルイン!!ヘキサイン…」

「ルイン!!」

とどめの一撃を繰り出そうと、全身にエネルギーを迸らせたVAVAとバインドホルダーにショットを連続で浴びせてVAVAの集中力を途切れさせるのと同時にバインドホルダーを破壊する。

「ありがとうアクセル!ダブルチャージショット!!」

Xアーマーに換装して至近距離でダブルチャージショットを叩き込んでVAVAを壁に叩き付けた。

「チッ…」

ダメージは大したことないらしいが、少しだけ苛立っているのが見えた。

「VAVA、ルミネとルナを何処にやったの!?」

バスターを構えてVAVAに再び問い詰めるルイン。
それに対してVAVAは笑みを浮かべる。

「さあな、お前達が暴動を起こした新世代型レプリロイド共を倒していけば分かるんじゃないのか?まあ、かつての先輩としての誼だ。少しのヒント位はやらんでもないぞ?ルナとルミネは一緒の場所にいる。あいつのいる場所にな」

「……あいつ?」

「お前も良く知っている奴だ。昔は俺から見ても化け物だと感じていた奴が今ではあんなみすぼらしい姿になっちまった。いずれ奴は俺が殺そうと思っていたが…その気も失せた。おい、ルイン。お前もエックス達も奴のように俺を失望させるなよ。精々力をつけることだな」

そう言うとVAVAは背中のバーニアを勢い良く噴かして飛び上がった。

それを見たアクセルが駆け寄る。

「待て!あんた、逃げるの!?ルナは何処にいるんだ!?教えろよ!!」

「教える義理はない。一応情報は与えたはずだ。ルナとルミネは一緒の場所にいる。新世代型レプリロイド共を倒していけばいずれ分かるだろうよ。何せ優秀なオペレーター様もいるようだからな。それから坊や、先輩として1つお前にアドバイスをしてやろう。実力が伴わないうちに無闇に牙を剥いても返り討ちに遭うのがオチだぞ?あの小娘のようにな」

それを聞いたアクセルの表情は憤怒に歪む。

自分を庇って傷付いて拐われてしまったルナへの侮蔑の言葉にアクセルは歯軋りしながらバレットを構えてショットを放った。

「お前の潜在能力…プロトタイプでありながら相当な物だ。もしかしたら完成型の新世代型を上回るかもしれん。」

再び放たれたショットを人差し指で簡単に受け止めながら、VAVAはアクセルを見つめながら言葉を続ける。

「もしお前がその潜在能力を引き出すことが出来れば俺の楽しみが増えるかもしれん。俺としても万々歳だ。強くなれ坊や、お前がその身に眠る潜在能力を余すことなく発揮出来たら…お前を強敵と認めて…」

後ろを向いてアクセルに対して親指を下にグッと向けると、VAVAは処理場から脱出した。

それを見届けたルインはバスターを下ろし、アクセルはバレットを床に落とした。

「くそ…ダメージさえ与えられなかった…」

「仕方ないよ。シグマがイレギュラーハンターとして活躍していた時代で、素行に問題はあっても実力は本当に超一流だったからね。」

「潜在能力…?僕にそんな力があるの…?あるなら…欲しい…ルナを助けるには弱いままじゃ駄目なんだ…」

「……………」

エックス達と比べてあまりにも非力な自分に苛立ちながらアクセルは立ち上がって、ルインと共に最下層に向かうのであった。

「それにしてもVAVA…ドップラー博士の事件の時とは比べ物にならないくらいにパワーアップしていた。私達も経験を積んで早くパワーアップしなきゃ」

「…それはそうだけどさ、パワーアップしようにも、そう簡単に行くかな?」

正直、多少パワーアップしたところで勝てるのか微妙なところだとアクセルは感じていた。

「うん、そうだね。でも簡単に諦めちゃ駄目だよアクセル!!敵を倒してメタルを稼いでチップでパワーアップ!!地道に頑張るのが強くなる近道だよ」

『その通りじゃな』

「「へ?」」

声がして周囲を見渡すが、誰もいない。

「誰も…いないね」

「うん、でも確かに聞こえた…ま、まさか…僕達ハンターに処分されたイレギュラーの亡霊…?」

「へ…?」

それを聞いたルインの表情がどんどん真っ青になっていく。

ルインはどのようなイレギュラーにも果敢に挑んでいく勇敢な女性だが、苦いものと幽霊が大の苦手なのだ。

「あ、アアアアアアアクセル君!?ば、馬鹿なこと言っちゃいけないなあっ!?お、お化けなんてこの世には存在しない!!」

「顔が真っ青だよルイン…でもここってイレギュラー処理場でしょ?だから有り得たりするんじゃないの…」

「だ、だから止めてよお…アクセル…わ、私はお化けは嫌いなの知って…」

『ルインよ…』

「~~~~~~っ!!!?い、嫌ああああああああああっ!!!!お、お化けーーーーーっ!!!!」

「ちょ、ルイン!!置いてかないでよーーーっ!!?」

恐怖に表情を歪めて100年前の高速移動を駆使して戦う戦闘ロボットも真っ青な超速で駆けていく。

あまりにも歴戦の戦士として情けない姿だ。

しかしルインは自分がある意味幽霊に近い存在だと気付いているのだろうか…?

「…………行っちゃった…仕方ないなもう」

溜め息を吐いてバレットを抜くと声のした方向に向かうとそこにはショックで放心しているライト博士の姿があった。

「(あの人ってエックスを造った人でルインのお養父さんなんだっけ…凄いショック受けてる…まあ、いきなり逃げられたらそうなるか…)お爺さん、お爺さーん。ルインが逃げたから代わりに来たけどルインを連れてこようか?」

『む…?あ、ああ…君は確かエックス達の後輩のアクセル…だったね…いや、今は大変な時だ。代わりに君がこれを受け取って欲しい。』

ライト博士はアクセルに“Z”のエンブレムが刻まれたファイルを差し出した。

「何これ?」

『わしがある人物と共同で作成したゼロ専用の潜在能力を引き出す強化チップのファイルじゃ、完成させて組み込めば防御力の低下と引き換えに攻撃力と機動力が格段に上がる。ゲイトに頼んで解析してもらって欲しい』

それを聞いたアクセルはエックスだけでなくゼロのパワーアップも出来るライト博士ならもしかしてと思い、口を開いた。

「(潜在能力…)あのさ、お爺さん…僕のパワーアップとか…無理…かな…?」

『パワーアップ?』

「うん…ルナが僕を庇って敵に…イレギュラーに拐われちゃったんだ…僕が弱かったから…」

『アクセル…自分をあまり責めない方がいい。あの子は君が苦しむことなど望んではおらんじゃろう…一応君の体の仕組みを調べさせて欲しい…まずはカプセルに入りなさい』

アクセルは言われた通りにカプセルに入ってライト博士の構造解析を受ける。

『………ふむ、君の体の仕組みは完全に理解は出来ないが、ゼロと同じく高い潜在能力を秘めておるな…潜在能力解放の強化チップは直ぐに造れるが、どうやら君の潜在能力解放はコピーチップが深く関わっておる、新世代型のプロトタイプ故…かのう?コピーチップがシグマウィルスに侵されても影響を全く受けることなくシグマウィルスの自己進化能力と君の潜在能力が上手い具合に結び付いておる…』

「シグマウィルスの影響?」

『うむ、こう言ってはなんじゃが、シグマウィルスはイレギュラー化と引き換えにレプリロイドの力を高める作用がある。君は新世代型レプリロイドのプロトタイプ故にシグマウィルスの力のみを利用出来るようになっておる』

「………きっかけを思うと全然喜べないよ」

『うむ、そうじゃろうな…少し待っていてくれ…君に合わせて作成するのに少し時間がかかる』

「分かったよ、ありがとうお爺さん。これははちゃんと渡しておくよ」

ライト博士に礼を言うとルインを捜す。

「おーい、ルイーン。何処にいるのさー?早く出て来てよ、お化けなんかじゃなかったからさー…あ、いた…」

スクラップに身を隠して震えているルインを発見。

無理矢理スクラップから引っ張り出してルインに事情を説明した。

「実はかくかくしかじかで…」

ルイン「え?ええ!?わ、私…お養父さんに酷いことしちゃった…どうしよう…」

「流石にショック受けたようだからさ…次に会ったら謝っといた方がいいよ」

「う、うん…」

養父であるライト博士に酷いことをしてしまって落ち込んでしまっているルインに苦笑しながらアクセルはルインと共に最下層を目指すのだった。

『えっと、このイレギュラー処理場のボスのバーン・コケコッカーは耐熱性能に優れていて、炎を操る能力に長けています。また、相手の攻撃から受けたダメージを利用して自分の能力をパワーアップ出来るようなんです。パワーアップはクラッキングで解除出来ますので…アクセルが援護に徹して、ルインさんが斬りかかる戦法が良いかもしれません。』

「分かったよパレット。ありがとう」

「コケコッカーの弱点とか分からない?」

『んー…そう、ですね…コケコッカーはマグマの熱にも耐えられる耐熱性を持っていますけど、逆に冷気に対する耐性が全く無いらしいですよ』

「なるほど、冷気ね。ありがとうパレット」

パレットのヒントに礼を言いながら、2人はボスのいる最下層に辿り着き、ボスは処理場最下層にて荒々しい姿を晒していた。

炎を纏い、こちらを睨み据える姿は通常の者なら恐怖を抱かせるが、アクセルとルインは毅然とした態度でコケコッカーを見つめる。

「イレギュラーハンター・ルインともう片方は我々新世代型のプロトタイプの小僧か…ここは子供の来るような場所じゃないぞ」

アクセルを見遣りながら言うと、アクセルはバレットを構えながら溜め息を吐いた。

「小僧じゃなくてアクセル…プロトタイプって言うのは止めてくんない?そう言う呼び方はあまり好きじゃないんだよね…どうして暴動を引き起こそうなんて考えたの…?誰に唆された?」

「ふん…お前の相手などする気はないわ」

鼻を鳴らした後にコケコッカーは演説するように両腕を広げた。

「…此処が何なのかは、お前には分からんだろう。ハンター共にイレギュラー呼ばわりされ、無念のうちに捨てられたレプリロイド達の墓さ!!お前達には聞こえないか?イレギュラー呼ばわりされてここに棄てられたレプリロイド達の恨みの声が…?」

「そんなものが聞こえるのは狂っている何よりの証拠だよイレギュラー君」

「無念だから、反乱を起こしていいなんて考えたの?それってイレギュラーだよ」

「それがお前らの正義、か!?下らん!そんな物こそ必要ないのだ…来るべき世界にはなあ!!」

マグマが身をもたげた。

イレギュラー達の無念の叫び声が、地獄の業火に変わったかのような灼熱。

「君は今までイレギュラーハンターに処分されてきたイレギュラーの復讐をするつもりなのかな?」

「そうだとも!!」

ルインの言葉にコケコッカーが怒りで目を見開きながら叫んだ。

「イレギュラー呼ばわりされ、無念のうちに死んでいった者達!俺はそいつらの仇を討つために立ち上がったのだ!!」

叫んだ直後にコケコッカーは空を駆けた。

「来るよ!!」

「分かってるよ!!」

「炎降刃!!」

炎を纏った飛び蹴りを繰り出してコケコッカーはルインの動力部を狙うが、ルインはギリギリではあるが、脇腹に熱を浴びながらも回避した。

「熱っ!?よくもやってくれたね!!」

反応がコンマ1秒遅かったら、ルインは蹴りで胴体を貫かれていただろう。

それくらいコケコッカーの蹴りは鋭い一撃であったが、踏み込みの速さなどはルインも負けてはいない。

ZXセイバーを構えて、コケコッカーに連続斬りを叩き込むと、コケコッカーの体が炎に包まれていく。

「これが、ダメージを自分の戦闘力強化に回す技か…」

「ルイン、離れて!!」

ファイアエンチャント

自身の戦闘力を底上げする技。

アクセルが即座にショットを連射してコケコッカーに当てると、クラッキングによってコケコッカーのファイアエンチャントによるパワーアップを食い止める。

「己…プロトタイプの小僧が……メルトクリーパー!!」

コケコッカーは片足を上げると勢いよく振り下ろして足場となっているピストン機構に叩き付けると、炎が地面を這って、アクセルに迫る。

「甘いよ!!」

アクセルは高く跳躍して壁を蹴り上げるとホバーの長い滞空能力を持って、雨のような銃弾を放った。

「アクセルばかりに気を取られないように!!LXアーマー!!」

氷属性のLXアーマーを纏うと、ルインはオーバードライブを発動させてハルバードに属性を付加させて斬りつけた。

「己…小娘が…」

「…小娘ね…若く見られるのは嬉しいけど、こう見えて人妻で一児の母親だよ!!」

「喰らって消し飛べ!クレストシュート!!」

燃え盛る鶏冠が、ルインを追尾するように飛ぶ。

ルインはHXアーマーに換装して、エアダッシュとホバーを駆使してかわすが、コケコッカーはルインが回避に徹している間にアクセルに火炎放射のフレイムバーナーを放つ。

「うわああああ!!?」

高温の炎が上空のアクセルに直撃し、撃墜されてしまい、コケコッカーが追撃の蹴りを喰らわせて吹き飛ばす。

その蹴りはかつてのイレギュラーハンターにして、レプリフォース大戦で裏切った第14番特殊部隊の隊長、マグマード・ドラグーンに匹敵する程の威力である。

「痛…っ」

体は火傷の痛みで震え、全身から火花が走って立つことさえままならない有様だが、アクセルの戦意は衰えていない。

寧ろ、高まっていく。

敵に拐われたルナを救いたいという想いがアクセルの身体を突き動かす。

「アクセル、大丈夫?」

「大丈夫だよ、これくらい…僕にはこれくらいのダメージで立ち止まっている暇なんて無いんだから…僕はルナを必ず助ける…こんな奴に負けられない!!」

アクセルはバレットを握り締めてコケコッカーにショットを連射してクラッキングしてコケコッカーのパワーアップを防ぎながらダメージを蓄積させていく。

ルナが敵の手の内にあり、酷いことをされているのではないかという不安が、そして敵への怒りがアクセルに戦う力をくれた。

「この程度か!!お前の力はこの程度なのか!!」

しかし、アクセルの攻撃は他の仲間達に比べて一撃一撃の威力は低いためにコケコッカーには少しのダメージしか与えられない。

コケコッカーはショットの嵐を受けながらも地殻変動を起こして足場のピストン機構を動かし始めた。

「この程度なわけないだろ…!!この程度なわけ…」

「はああああ!!フリージングドラゴン!!」

「ぬあっ!?」

再びLXアーマーに換装して、ルインはコケコッカーに必殺技の氷龍を召喚して、それを喰らわせる。

氷属性の必殺技を喰らったコケコッカーが凍り付き、それを見たアクセルが追撃でショットを連射。

バレットから放たれたショットは、コケコッカーの急所に当たった。

アクセルバレットの一撃の威力は低いが、その分連射に優れ、弱点属性を受けて怯んだコケコッカーを一層追い込んだ。

勿論、コケコッカーも簡単にやられたりはせずに反撃を試みるが、メルトクリーパーはアクセルの一歩手前で止まった。

圧倒的な弾数が、コケコッカーを撃ち破ったのだ。

例えるなら、幕末の剣豪が西洋式の銃撃部隊に突撃するようなものだ。

彼は直立したまま、炎を上げて絶命した。

「はあ…はあ…」

「お疲れ、アクセル」

アクセルはルインが歩み寄ってアクセルを労うと、アクセルはコケコッカーが倒れているのを見て、やっと勝利に気付いた。

「ふう…動いたら更に暑くなったよ…こういうとこでの任務はやっぱり嫌だね…」

アクセルが暑さにぼやいた次の瞬間、地響きが発生、パレットから緊急の通信が入った。

『緊急連絡です。ただいま、この施設のコントロールが失われました!転送可能な火口の入り口まで急いで下さい!!燃えちゃいますようっ!!』

パレットの叫びを聞き、アクセルとHXアーマーに換装したルインはホバーで火口を目指して上昇して、何とか火口の入り口にまで戻り、ハンターベースに帰投した。 
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