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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第135話:Wentos

ハンターベースに帰還したルインだが、今は絶好なまでに不機嫌であった。

何せ帰って早々、問答無用でエックス達にメンテナンスルームに連行されて強制的にメンテナンスを受けさせられているのだ。

「全くもう、納得出来ないよ。こんなの大したダメージじゃないのに」

「駄目よルイン。本来ならあなたが戻ってきた時点でメンテナンスルームでしばらくメンテナンスを受けてゆっくりと眠っていて欲しいくらいなのよ。」

「こんなの平気だよ!早く解放してよ!!まるで私が囚人みたいじゃない!!全身を特殊ワイヤーで縛られて身動き一つ取れないよ!!」

現在ルインの体は特殊ワイヤーでメンテナンスベッドごと縛られているために身動き出来ない。

「あなたのメンテナンス嫌いはみんな知ってるわ。拘束を解いた途端に逃げ出すつもりでしょう」

「うぐ…そ、それならルナはどうなの…?ルナもメンテナンス受けてないじゃない!!」

図星を突かれたルインは誤魔化すためにルナもメンテナンスを受けていないことを尋ねる。

「そうなのよねえ…今、エックス達が捜してるけど全然見つからないわ。」

そして現在エックスはゼロと共にハンターベースの格納庫を捜していた。

「…………いたか?」

「いや、見つからない…姿どころか全く気配が感じられん。0部隊が健在ならルナを部隊にスカウトしたかもしれんな」

「…何で彼女はメンテナンスをあそこまで嫌がるんだ………」

エックス達がルナにメンテナンスを勧めたのは一度や二度ではない。

メンテナンスを勧めようとする度に脱兎の如く逃げ出してメンテナンス時間終了まで逃げる始末。

「しかし、ルナは本当にただメンテナンスが嫌なだけか?」

前にエイリア達に頼まれて強引にでもメンテナンスルームに連れて行こうとした時、ルナの表情は一瞬恐怖に歪んだことがあった。

結局逃げられてしまったが、あの時の彼女の表情は今でも覚えている。

とにかくゼロは早くルナを見つけようと次は他の倉庫に向かうのであった。

「ルナー、どこに隠れてるのさ?」

周囲を見渡しながらアクセルが声を上げた。

無論こんなことをしてルナが出てくる訳がないのだが。

「姿どころか気配さえないなんて…ルナって本当に出来ること多いよね…」

しかし、部屋などを捜し回ったにも関わらず姿がないと言うことは…。

「通気口辺りが怪しいね」

アクセルはバウンティハンター時代の勘が働いたのか、通気口に入っていく。

通気口の中は思っていたよりも広かったのもあり、動くのは簡単だった。

「確かハンターベースの通気口は蜘蛛の巣のようになってるだっけ?隠れるとしたら絶好の場所だ…そしてハンターベースの通気口の分かれ道にいる可能性が……痛っ!?」

「痛え!?」

頭が何かにぶつかった。

そして聞こえてきた声にアクセルはすぐに意識を切り替えて取り敢えず掴んだ。

「ルナだね!?姿が見えないけどルナなんだよね!?」

「し、しまった!!」

集中力が切れたことでルナのコピー能力の応用であるステルスが解除されてしまう。

「コピー能力ってそんなことも出来るんだ…じゃなくて!!捕まえたよルナ!!みんな捜してたよ?早くメンテナンスを受けようよ?」

「あ、いや…その…俺はメンテナンスは…」

表情が引き攣っているルナだが、アクセルは気付かずにそのまま話を続ける。

「そりゃあ僕もメンテナンス嫌いだけどさ。エイリアが結構怒ってたよ。更に怒りを買わないうちに受けた方がいいよメンテナンス」

「お、俺は自分でメンテナンスしてるから…いいよ」

段々顔色が悪くなって震えていくルナだが…。

「いやいや、流石に自分だけで隅々までやるの無理があるでしょ?ほら行こう」

アクセルがルナの腕を掴んで通気口から出ようとした時である。

「……ひっ…」

ルナの脳裏に駆け巡る前世の死の記憶。

前世を持つ存在は前世の記憶を持たない者が大半だが、ルインのように朧気か、ルナのように極稀に前世の記憶の一部を鮮明に持っている者もいるのだ。

前世のルナは病弱で何度も手術をしなければならない体であったために何度も手術を受けていたのだが、手術中のミスで死んでしまったために本人にとってメンテナンスは手術と同じなのか、他人からのメンテナンスにトラウマを持ってしまったのだ。

「ルナ…?ど、どうしたの…?」

動こうとせず、それどころか体を震わせるルナに疑問符を浮かべて振り返るとルナが恐怖心に満ちた表情で泣いていた。

「嫌…だ…っ…」

大粒の涙を零しながら首を横に振るルナにアクセルは困惑した。

自分が知るルナは強気で男勝りの女の子…多分エックス達の印象もそんな感じだろう。

それなのに今のルナは恐怖に体を震わせながら泣いている。

「え…あ、その…ご、ごめん!!な、何かメンテナンスで嫌な思い出でもあるの!?」

「分かん…な…い」

しゃくりあげながら答えるルナにアクセルはどうすればいいのか途方に暮れる。

女の子の扱いが分からないアクセルからすれば泣いている女の子の慰め方などさっぱり分からないが…。

「(そう言えば、ルナって…ルインと同じ人間素体型のレプリロイドなんだっけ…メンテナンスで何もないんだとしたら…)」

もしかしたら人間時代に何かあったのかもしれない。

ルイン(曰く多分)もシグマに仕える四天王も瀕死か死体の状態だったらしいし。

「あ、あのさ…もしかして…人間時代に…何かあったんじゃないかな…?話せる…?」

「わ、私…ずっと、病気で寝たきりで…手術で…ミスで…死んで…」

泣きながらも何とか説明してくれた。

不運にもルナが覚えている一部の記憶は死の記憶である。

どういうわけかは知らないが、恐らくレプリロイド化の影響なのか手術中のことも覚えているようだ。

「ああ、手術って人間のメンテナンスみたいなもんだもんね…それで死んじゃったらメンテナンスが嫌になるわけだよね…でもどうしてその理由を言わないの?エックス達ならきっと事情を話せば何か対応してくれるはずだよ?」

「だって…弱味を見せたら馬鹿にされる…」

「……ああー」

それを聞いたアクセルは納得してしまった。

ジャンク屋もバウンティハンター同様に何だかんだで力がものを言う仕事だ。

アクセルやルナは子供だからそれが顕著で…特にルナは女の子なので弱味を見せたら見下されることが多かったのだろう。

「でもさ、エックス達はそんな奴らみたいじゃないよ。誰だって苦手や嫌なことがあるんだし。事情さえ説明すれば絶対に馬鹿にしたり見下したりなんかしないよ!!僕だってルナを馬鹿にしてないじゃない。」

「で、でも…」

「大丈夫!!」

不安そうにアクセルを見つめるルナにアクセルは安心させるように笑顔を見せた。

「もしルナを馬鹿にする奴がいるんだったら僕がそいつに問答無用でバーストランチャーをぶちかましてやるからさ!!」

「アクセル…」

「だからさ…行こう?事情を説明しないと。言いにくいなら僕が言うからさ」

そう言ってルナの手を引こうとするアクセルだが、その前にルナがアクセルに抱きついてきた。

「アクセル…」

「へ…?」

「…………ありがと…」

「へ?あ、その…うん…どういたしまして…」

女の子に抱きつかれると言うロボット生初の出来事にアクセルは赤面する。

「(お、女の子ってこんなに細くて柔らかいんだ…)」

それだけにこれだけ強くなるのにどれだけ苦労してきたのかが分かり、ルナの育ての親が目の前にいたらアクセルは罵倒したかもしれない。

何だかんだでアクセルを真っ直ぐな性格に育ててくれたレッドと比べれば女の子にこんな苦労をさせてどうするんだとアクセルは思った。

因みにルナの育ての親である女神は事情を知ったライト博士とワイリーに冷たい視線と蔑みの視線を受けていたりする。

「はは…ごめん…嬉しくて…」

少し恥ずかしくなったのか、ルナは目尻に涙を溜めながらも少し赤面しながらはにかんだ。

「(か、可愛い…)」

初めての感覚にアクセルは戸惑うが、取り敢えずルナの手を引いて通気口から出ると事情をエックス達に説明することに。

「トラウマか…」

「ルナって随分大変な人生送ってたんだね…少し自分が情けなくなった…」

ルナがメンテナンスを受けたがらない事情を聞いたエックス達は深刻な表情で受け止め、ルインに至っては自分の情けなさに今にも泣きそうである。

「しかしどうする?ルナは自分でのメンテナンスは平気らしいがやはり自分では隅々までのメンテナンスは出来んだろう?重傷を負った時など自分でメンテナンス出来ない場合はどうする?」

「問題はそこよね。どうしましょう…?」

アイリスの言葉にルナは俯くが、やはりここで打開策を出してくれるのはゲイトだ。

「簡単だよ。少し他のみんなより手間がかかるけど、治療カプセルでのナノマシン治療液の濃度を上げれば殆どのメンテナンスは出来る。残りのメンテナンスは自分でどうにかしてもらおう。少し時間が掛かるのが難点だが、そこは我慢してもらいたいね」

「なるほど、それなら大丈夫そうね。ルナもそれでいいわね?」

「そ、それでいい」

「ね?だから言ったでしょ?エックス達なら馬鹿にしたりなんかしないって」

「………うん、みんな…ありがと…」

泣きながら礼を言うルナの今まで見たことがない姿にエックス達が慌ててしまうと言う事態が発生したが、取り敢えずルナのメンテナンス問題は解消したのであった。

そしてルナはメンテナンス中のルインに代わってアクセルと共に最後の四天王であるウェントスの元に向かっていた。

2人がいるのはかつて元特A級ハンターのストーム・イーグリードが占拠したエアポート跡である。

向かった2人はバレットを構えてランナーボムやメカニロイドの群れに突撃した。

アクセルは様々な銃器による多彩な攻撃と、ルナは様々な変身を繰り返しながらメカニロイドを破壊していく。

この2人にとってはランナーボムやメカニロイドの群れは敵に値しない。

どれほどの数がいようとも、容易く薙ぎ払えるからだ。

エックス、ゼロ、ルイン、ルナ同様にアクセルも解析不能な部分が多い。

あのゲイトの頭脳を持ってしても解析出来ない部分が多いのだ。

ホバーを装備するために機動力を重視した軽量のアーマーに防御力はそれに比例して低い部類に入るが、高い機動力とルナにはない変身能力を応用した回復能力が低い防御力を補っている。

しかし、アクセルの顔の傷はアクセルの回復能力を持ってしても治癒出来ないらしく、恐らく、そこに彼の正体が関わっているのだろうが。

「てめえら…しつけえんだよ!!」

ホーミングショットのコネクションレーザーが数体のメカニロイドを破壊し、アクセルも水鉄砲型のガトリング砲であるアクアガトリングによるショットでランナーボムを撃破する。

「雑魚ばっかり出してないでとっとと出て来たら!?」

ダブルバレットによる乱れ撃ちが最後のメカニロイドを破壊した。

「そうか、ならば期待に応えなくてはな」

真上から聞こえてきた聞き覚えのある声にアクセルとルナは顔を上げた。

「…ウェントス!!」

「運命からは逃れられぬというわけか…やはり来たか。プロトタイプと同胞よ」

「プロトタイプ?」

ウェントスが放ったプロトタイプと言う単語にアクセルは疑問符を浮かべた。

「貴様のコピー能力は高い対ウィルス性能とあらゆる状況に対応出来る高い汎用性を備えた新世代の高性能レプリロイド故に与えられた物だ。貴様はその新世代型レプリロイドのプロトタイプだ。今頃、月面開発のために開発が秘密裏に進められているだろう」

「ふーん、良いことを聞いたよ。でもさ、そのプロトタイプって言い方は止めてくんない?僕は僕…そしてあんたは…イレギュラーさ」

不機嫌も隠さず、ウェントスを睨み据えるアクセルだが、ウェントスはそれに何の感情も抱かず2人を見据える。

「愚かな…イレギュラー?そんな単純な問題ではない。理解出来ぬからと恐れ、恐れるから排除する…愚かな人間とその子飼いである貴様らイレギュラーハンターがいるからこの世界に争いが絶えぬのだ」

「何だと?」

蔑むように言うウェントスに対してルナは苛立ちながらバレットを握り締め、ウェントスを睨み据える。

「そう……かつて、ある男が傭兵として所属していたその部隊は、他でもない、お前達イレギュラーハンターに、イレギュラーの烙印を押された。レプリフォース大戦……後の世の者はそう呼んだ。」

ウェントスがその言葉を口にした途端、ルナからは明らかな動揺が見て取れた。

「レプリフォース大戦…?」

過去の記憶が一切ないことを差し引いても、アクセルには知らないことが多すぎた。

そんなアクセルを置き去りに、ウェントスの話は静かに進んでいく。

「“勝てば官軍”……とでも言おうか…“正義”を名乗るのは思ったよりも簡単でな、勝てば良いだけだ。…貴様らにいいことを教えてやろう。かつてレプリフォースに所属していた傭兵…その名は、今はレッドアラートのリーダーであるレッド。」

「は…!?レッドがレプリフォースに所属してたって言うのか!?」

流石にルナもレッドがレプリフォースに所属していたことなど知らなかったらしく、思わず目を見開いた。

「そうだ。奴は貴様らイレギュラーハンターがイレギュラー認定したレプリフォースの虐殺から命からがら逃げ延びた後、小規模ながら自警団を結成した。貴様らイレギュラーハンターなどいなくても平和を守れるということを思い知らせるためにな」

ウェントスが言う衝撃の事実にアクセルとルナは目を見開いた。

「今までの戦争は愚者共がいたから起きたこと、愚者共の浅はかな選択が数々の争いの悲劇を起こしてきた。レプリフォース大戦などはその最もたる例だろう?ならば、その選択は愚者ではなく賢者に任せてみるべきだと思わないか?」

「…ケッ、天才様の考えることは分かんねえな、俺には邪魔する奴は死ねって言ってるようにしか聞こえねえがな」

「…そう、私が目指す世界に平和を乱す愚か者の居場所はない。邪魔をするのならば、例え同胞だろうと斬る」

「愚か者ね…僕にはあんたが狂っているようにしか見えないけど…自分が認められない奴を全て無くそうなんて狂ってるとしか思えないよ」

「狂った…?ではお前は自分が何をしようとしているのか分かっているというのか?」

「…多分ね。どっちが悪くてどっちがいいかぐらいは分かるよ。」

ダブルバレットを構え、臨戦体勢となるアクセルにウェントスもダブルセイバーを構えた。

「私にも分かるとも…狂っているのはこの世界だ。私はこの世界を変えてみせる!!行くぞ、イレギュラーハンター!愚者に…死を!!」

バーニアを吹かし、エアダッシュでアクセルに迫るウェントスはダブルセイバーを振るう。

セイバーの斬撃をアクセルは咄嗟にダブルバレットで受け止める。

「アクセル!!」

アクセルを援護するためにルナもバレットを構えてリフレクトレーザーを放つ。

「ふん」

リフレクトレーザーをウェントスはエアダッシュで一気に上昇することでかわす。

「くっ!!上方向へのエアダッシュってこんなに厄介なのかよ!!」

殆ど溜めがないためにエアダッシュ直前の硬直を突くことが出来ないのが、HXアーマーとウェントス共通の厄介な所だ。

おまけにエアダッシュ後にもホバーを使えるために機動力では自分達より上だ。

「逃がすもんか!!」

それでも何とか食らい付こうとホバーでウェントスを追い掛けるアクセルだが、やはり機動力ではウェントスには敵わない。

「愚かな、そのような雛鳥のような動きで私に盾突くか!!舞い散れ!!プラズマサイクロン!!」

電撃を纏う竜巻を前方と後方に放つプラズマサイクロンH。

同名でもルインとは全く違う性質の技にアクセルはまともに喰らってしまう。

「うわっ!!?」

プラズマサイクロンHの直撃を受けたアクセルが撃墜され、地面に叩き付けられた。

「アクセル!!てめえ!!」

「遅いな…」

怒るルナの射撃を尽く回避するウェントス。

バーニアを吹かし、エアダッシュとホバーを駆使して縦横無尽に飛び回るウェントスの機動力はルナとアクセルの動体視力を上回っていた。

それはオリジナルのルインを上回り、かつてエックスが使っていた空戦特化型の強化アーマーであるファルコンアーマーに匹敵する程だ。

凄まじい速度で動き回り、一撃離脱を繰り返すウェントスに対してこのままでは埒が明かないと判断したルナはコピー能力を使用する。

「トランスオン!!カラスティング!!」

レッドアラートのメンバーで空戦が得意なカラスティングに変身し、ナイフを構えてウェントスに突撃する。

「コピー能力か。しかしオリジナルよりも劣化している出来損ないの模造品が私に勝てると思うか!いでよ!!プラズマビット!!」

3本の電撃を発生させるビットをルナの周囲に複数召喚し、回転させてルナを迎撃し、ルナにビットの電撃を直撃させる。

「うっ!!?」

「本来ならすぐに終わるのだが、苦しみもがいて死ぬがいい!!」

「やばっ!!ディフュージョンレーザー!!」

ホーミング性能を持つレーザーを放ち、ウェントスに当てようとするがセイバーで掻き消される。

「受けろ!!ソニックブーム!!」

ルナ「うわっ!?」

セイバーによるオリジナルのルインよりも射程距離が長い衝撃波を放ってルナを吹き飛ばすと次はアクセルに狙いを定める。

「貴様にはもう1発こいつをくれてやる!!プラズマサイクロン!!」

再びプラズマサイクロンHでアクセルを吹き飛ばす。

「くっ…」

「遅い…そして弱いな…貴様らは本当に私の同胞と人類の希望として造られた新世代型レプリロイドのプロトタイプか?それとも私が強すぎたのか?」

「(こ、こいつ、とんでもなく強い…!!今のままじゃ勝てねえ…なら…)」

ウェントス「私からの慈悲だ。この一撃で楽にしてやろう。プラズマサイクロン!!」

とどめとばかりに放たれたプラズマサイクロンHが2人に迫る。

「…トランスオン!!」

ルナは一か八かで唯一、ウェントスを倒せる可能性を持つレプリロイドに変身し、手に持つ武器に冷気を纏わせて電磁竜巻を簡単に消し飛ばしてしまった。

「グラキエス…だと!!?」

同胞の中で唯一ウェントスの友人であったグラキエスへの変身が可能ということはグラキエスはハンターに敗れたということだろう。

「面白い、グラキエスとは一度本気で刃を交えてみたいと思っていた。劣化しているとはいえ、グラキエスの力を操る相手…面白くなってきたぞ!!」

「アクセル、離れてろ」

「…分かったよ」

ウェントスとの実力差を痛感したアクセルは渋々とだがこの場から離脱した。

「…始めるぜ?」

「行くぞ!!」

エアダッシュで瞬く間にルナに肉薄し、セイバーを振るうがハルバードでセイバーを受け止める。

グラキエスに変身したルナはそのスピードについていくことが出来、見事に応戦してみせた。

「プラズマサイクロン!!」

「アイススティッカー!!」

氷塊を生み出し、それをハルバードで粉砕することで氷の刃を放った。

氷の刃は電磁竜巻を消し去り、そのままウェントスに直撃する。

「馬鹿な…!?」

氷の刃の冷気によって体が凍結したウェントスは地面に落ちるが、直ぐに氷を砕いて無事に着地する。

「成る程…流石はグラキエスと言ったところか…劣化した模造品がこの私と渡り合えるとはな。」

ウェントスとオリジナルのグラキエスの実力は単純な属性の相性を考えれば向こうの方が上かもしれないが、しかし現在の体に慣れるための鍛練ではウェントスが勝った。

それは地上での戦いだったからであり、水中戦に特化したグラキエスはどうしても地上では水中に比べて動きが鈍くなってしまう。

「水中であれば貴様の勝ちだったかもしれないがな!!ソニックブーム!!」

再び衝撃波を繰り出すウェントスに対してルナは咄嗟に氷塊を出して防御するが、衝撃波の威力に耐えられずに容易く砕かれてしまう。

「うわっ!?」

「ルナ!!…ん?」

体勢を崩したルナにアクセルは慌てるが、足元に落ちているDNAデータを発見し、アクセルは一か八かでそれを解析した。

「とどめだ!!」

体勢を崩したルナに再び衝撃波を放ち、放たれた衝撃波はそのまま真っすぐにルナに迫る。

「ガイアボム!!」

衝撃波とルナの間に入り、バズーカから超硬度岩石の爆弾を何度も放って相殺することで防ぐ。

「アクセル!!?」

「アクアガトリング!!」

高圧の水弾が凄まじい速度で連射されるが、ウェントスはそれを容易くかわしていく。

「貴様のようなプロトタイプが私の邪魔をするな!!プラズマビット!!」

ウェントスは再びビットを複数召喚し、アクセルに攻撃する。

「おっと!!これでも喰らえ!!」

アクセルはローリングで回避し、ディフュージョンレーザーで攻撃する。

「舐めるな!!」

セイバーでレーザーを掻き消し、ダッシュでアクセルとの距離を詰めてセイバーを振るうが、アクセルはバレットで受け流して、顎に蹴りを入れる。

「なっ!?(どういうことだ?先程と動きがまるで違う…)」

「不思議?使わせてもらったんだよ。ここに落ちていたDNAデータを…と言っても少ししか無かったけどね」

「何だと?たったそれだけでここまで性能を向上させたと言うのか?」

思わずウェントスは冷や汗をかく、アクセルの異常とも言える成長速度に。

「プロトタイプと言えど、新世代型レプリロイドであることに変わりはないということか…!!」

「俺を忘れるなよウェントス!!」

隙を見てルナがアイススティッカーを繰り出す。

ウェントスはプラズマサイクロンHで氷を吹き飛ばしながら、ルナに斬り掛かる。

「させるか!!喰らえ、レイガン!!」

レイガンの銃口から貫通力の高い光線が発射され、ウェントスの翼を容易く貫いた。

「なっ!!?」

「トランスオン!!イグニス!!」

グラキエスから雷属性を弱点とするはずのイグニスに変身するルナ。

「愚かな、私に炎は…」

「効かないんだろ?ルインが仲間なんだからそれくらい分かってるさ!!メガトンクラッシュ!!」

オリジナルのルインと違って完全にその属性で固定されているウェントス達は耐性のある属性への防御力は極めて高い。

ルナとてウェントス達のオリジナルであるルインがいるために敵の防御力は重々承知していた。

踏み込みと同時に螺旋回転させたメガトンクラッシュを捻じ込むと言う中国拳法さながらの絶技。

四天王随一の豪腕が鳩尾に突き刺さり、メガトンクラッシュの衝撃は内部まで容赦なく抉る。

「ぐっ…馬鹿な…!!?」

ウェントスは血反吐を吐きながら宙を舞うものの、何とか体勢を立て直して着地するが、ゆっくりと膝を着いた。

「この…私が、このようなプロトタイプ共に遅れを取るとは…!!人間共の子飼いの貴様らが正義を名乗るなど、私は認めない!!この世界は…私が変えてみせる!!」

そう言い残し、ウェントスは転送の光に包まれて消えた。

ウェントスのDNAスキャンも終了し、ルナとアクセルはハンターベースに帰還する。 
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