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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。

作者:エギナ
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第一部
  第43話 再会

……ごめん、シン。マジで助けて。

「ちくしょうめぇぇぇええええええええ‼︎ どぉぉうりゃゃぁぁぁぁぁあああああああああああ‼︎‼︎」

なんでこんな役貰っちゃったんだよぉぉおおお‼︎
マフィアビルの屋上に降りて、白雪さんの死体を持って飛び降りて、適当な所で窓を割って中に侵入する役⁉︎ シンのくせに、ふざけんなぁぁあああああ‼︎‼︎


———ガシャン‼︎


「‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

いてぇ‼︎
割れた窓硝子で色々な所を切ったらしく、体中がヒリヒリする。畜生め。

まぁ取り敢えず侵入成功。って言うか、もうこんだけ大きい音を出して居るあたり、周りには気付かれてるだろ。
もう叫んでよくね? ってか叫びてぇ。ふざけんな‼︎ つって。

ってか此処どこだよ‼︎

「……はぁ、何ですか? 窓硝子を修復するのは大変なのですけど……」
「琴葉様、僕が見に行きますって……」

「「「は」」」

部屋のある二つの扉の内の一つが開いて、そこから見覚えのある人が出て来る。

それは———

「琴葉ッ⁉︎」
「はい……? 貴方、誰ですか……?」
「ハァッ⁉︎ 俺だよ、レンだ‼︎ あ、オレオレ詐偽じゃないからな⁉︎」
「如何考えたってオレオレ詐偽何ですけど」
「違いまぁす‼︎ オレオレ詐偽じゃありませんんんん‼︎」
「じゃあ何が目的ですか」
「琴葉を助けてグレースをぶん殴る‼︎」
「へぇ。と言うか、本当に貴方誰ですか?」
「囚人番号……は多分決まってないけど、取り敢えず一〇〇番‼︎ 昔はマフィアで被験体やってました、レンです‼︎」
「そうですか。御丁寧に有難う御座います」

琴葉が俺の事を覚えていないようだ。
記憶を改変されたのかな。

だったら思い出させる又はまた一緒に思い出を作る以外の選択肢は無い‼︎
くよくよしてられない。昨日マフィアビルに乗り込んで、今どんな目に遭っているか分からないシン様の為にも。


「……って、貴方怪我してるじゃ無いですか! “レン”と言う名前に聞き覚えがあると言うのと、面白い目的を持って来たと言う事で、速攻で排除するのは止めてあげましょう。首領にも伝えて上げますので、此方へ来て下さい。昔ながらの方法で治療しながらお話しません?」


◆ ◇ ◆


琴葉に招かれた入った部屋は、黒と白と赤の三色で整えられた、綺麗な部屋だった。天蓋付きのベッドや、黒い薔薇が飾られた花瓶が置いてあり、かなりお洒落。だがここを自分の部屋にしようとは思わない。

俺はベッドに座らされ、琴葉に治療をして貰っていた。

———先程の格好は仕事着なのか、着ていたジャケットと、つけていたコルセット、はめていた手袋を外して、白いワンピースだけを纏う琴葉に……‼︎‼︎

「……ん、如何したんですか? 顔が赤いですよ?」
「いや、なんでもない‼︎」
「嗚呼、若しかして。緊張してます? こんな、無防備な格好の女とベッドの上で二人きり。……する事なんて、一つしか無いですもんね」

琴葉の雰囲気に呑まれる。
……いやいや、耐えるんだ俺。ハニートラップの可能性だってあるんだぞ。

シンだって頑張ってる筈だ。俺だって……

「誘ってるんだとしたら、俺は断るけど?」
「そうですか。残念です」

やっぱり、ハニートラップだったんだ。よし、回避したぞ———

「結構好みの方だったのですが」
「はぁっ⁉︎ 嘘だろ⁉︎」
「さぁ、何方でしょう?」

いや、やっぱりこれはハニートラップじゃないかもしれない。仕事とか関係無しに、琴葉自身の気持ちで……
って、そう考えても無駄だ。取り敢えず、話題を逸らさないと。

「……綺麗な指ですね。羨ましいです」
「あ、ありがと……って、琴葉だって!」
「私の手は傷と血だらけですから。どれだけ傷が付いていても、魔法で全て消す事は出来ますが……私は此の手で人を沢山殺しました。だから、私の手が綺麗な訳が無いんです」

窓硝子で切ってしまった部分に、琴葉は丁寧に包帯を巻いていく。氷のように冷たい指が触れて、段々と体の芯までが冷やされていく様な、奇妙な感覚を覚える。

「これから、きっと貴方を殺す事になります」
「……そっか。まぁ、琴葉が生きていれば良いんだ。勿論、俺だって生きて居たいけどさ……マフィアに逆らったら殺されちゃうんだろ? だからさ、琴葉が生きるために俺を殺してくれよ」

そこで、不意に包帯を巻いていた手が止まる。
「どうした?」そう問う前に、琴葉は顔を上げて、言った。


「教えて下さい。私は過去に、貴方に会った事があるんですか? 何で、貴方と居ると何故か懐かしい感じがするのですか? 胸がぎゅって締まってる感じがして、とても苦しいのです。何か、教えては下さいませんか?」


ひゅっと息を飲む音が聞こえた。
それが俺のモノだったのか、琴葉のモノなのかは分からなかった。

———だけど、糸が切れた操り人形の様に、琴葉がベッドに倒れ込んだ事は、はっきりと理解した。

「———琴葉ッ⁉︎」
「あ、ぁ……痛い……ぃ、あ……や……たすけ、ぇ……‼︎」

痛みを逃そうとしているのか、頭を押さえ、身を捩らせる琴葉。琴葉でも耐えられない程の激痛らしく、見ているこっちも頭が痛くなってくる。

「くす、り……くすりをくださ、い……!」
「薬ってどこに入ってる⁉︎ ジャケットのポケットの中⁉︎」
「は、い……そうで、すから……お願い、とって!」

椅子に掛けてあるジャケットのポケットを漁って、白い錠剤が入ったケースを見付ける。恐らくそれを欲しがっているのだろうと思って、一錠ケースから取り出す。そして、丁度良く机の上に置いてあった水が入ったペットボトルと共に、琴葉に差し出す。
だが、琴葉はそれに気付かない程に、頭を抱えながら激痛と戦っている様だった。薬とペットボトルを取ることはおろか、俺の方を見ることすら出来ていない。

こんな場合、どうすればいいんだよ……!

って、こんな時グレースだったら絶対に……


「……ごめん」

ペットボトルの蓋を開け、自分の口の中に水を含ませる。錠剤も一緒に入れて、琴葉に口移しで薬を飲ませる。

「んんっ……!」

琴葉はそんな色っぽい声を上げるが……そんなに変な事はしてない。
親の前で読んでも良いくらいこの小説はまだ健全なハズです。


「……その……マジで許して」
「……はぁ、っ……はぁ……有難う御座いました。接吻については気にしてませんので、貴方も気にしないで下さい」

ああああああああああこの人おかしいよおおおおおおおお。
感覚がおかしいよおおおおおおおお。
気にしてるのは俺だけか。

もう知らん。

「……って、あれ。その水、私が既に口を付けてあったやつじゃないですか」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!‼︎‼︎!」
「ふふ、可愛らしい反応ですね」

…………もう知らん。


って、目的‼︎‼︎

……は次回でいいですよね。

 
 

 
後書き
……次回でいいですよね。 
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