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戦国時代に転生したら春秋戦国時代だった件

作者:羽田京
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第2章 項羽と劉邦、あと田忠 ~虞兮虞兮、奈若何~
  第9話 それいけ!韓信

 
前書き
・予告を忠実に守りました。 

 
%月▼日
旧秦の領土を回復し籠城戦に勝ち、項羽を撃退したことでにわかに反撃ムードがただよっている。俺も出撃するのかと思ったら、待機と言われた。本拠地の守備を任されたといえば聞こえはいいが、これ以上俺に戦功をあげさせたくない張良の意向が働いていると見た。

代わりに出撃したのが、われらが韓信である。武功を譲ってもらったし、あとは彼に任せようと思う。
手柄が欲しい韓信と、俺に功績をあげさせたくない張良の思惑が合致したわけだ。

能力値的には戦術で負けることはないだろうが、項羽の怖さはその武勇にある。一騎打ちなんてすんなよ、と言ったら韓信は当然と言っていたので、まあ大丈夫だろう。
見た目は臆病な怠けものなんだけどね。お手並み拝見である。


@月&日
韓信マジ韓信


#月R日
蕭何は韓信を「国士無双」と評したがその通りだった。
劉邦軍本体(俺も)が項羽と対峙している隙に、魏国を制圧。次に、代国をあっという間に征服してしまった。まさに電撃戦。
その後、趙の大軍勢と戦ったのだが、わざと川に背をむけて迎え撃った。韓信軍2万に対して趙軍は30万である。
自ら死地に立つことで、兵士を限界まで戦わせる「背水の陣」である。その隙に、別働隊が趙の本拠地を落としてしまった。
これを見た燕国もあっさり降伏。やべえ、神ってる。


%月※日
なんで???????????


%月Q日
ふう、昨日は焦ったぜ。韓信から恋文(ラブレター)が届いた。――が、俺宛じゃあなかった。この手紙を相手に届けてほしいそうだが……。
その相手が問題だ。なんせ、項羽軍の将軍である。一目惚れらしい。
優柔不断で女と縁のなかった奴にやっと春が来たんだな。いや、まあ俺もつい最近まで魔法使いだったけれどさ。
いっちょ一肌脱いでやるか。


□月J日
劉邦は韓信に対して斉を討つように命令した。ところが、劉邦は儒者酈食其(れきいき)を派遣して斉との和平交渉を勝手に行っちまった。しかも、斉もこれに応じた。韓信は斉との国境付近まで来てこれを知ったそうな。
韓信からの私信には、やっぱ攻めるぜ。って書いてあった。韓信の軍師である蒯通(かいつう)曰く「弁士(参謀)の功績が将軍(韓信)の功績を上回ってしまうから」らしい。
で、功績をあげて例の女将軍との結婚を劉邦に認めて欲しいそうだ。


#月+日
ラブレターを女将軍に渡した。なんつうか線の細い女傑?って感じ。名目は、項羽軍との和睦交渉である。で、その後いきなり単身俺が現れたものだから滅茶苦茶警戒されたけれど、なんとか文を受け取ってもらった。さて、鑑定スキルによると韓信との相性はよさそうではあるが、どうなるかな?


V月¥日
ラブレター受け取って貰えたよ、と文を送ったら、韓信は斉をあっという間に征服してしまった。韓信ェ。
ただし、酈食其は釜茹でにされた。おこなの。


L月&日
逃れた斉の田広たちは楚に救援を求め、楚は将軍龍且を派遣する。が、勇気100倍の韓信は水攻めでこれも破った。これらの功績により韓信の名声は極まったと言っていいい。最近活躍していない俺よりも上だろう。
韓信は劉邦に自らを斉王にするように要請して、これを認められた。ここに至り、韓信は劉邦の将軍というよりも一つの独立勢力としての立場を築くことになった。

すべては、愛する人と結ばれるため。

いじましいやつだ。あれから、何度か韓信と女将軍の間で何度か文のやり取りをしているが、彼女も満更でもないらしい。けれども、項羽に忠誠を誓っているので苦しんでいるようだ。


★月K日
蒯通は韓信に対し、自立して天下を三分するべきだと説いたそうだ。でも、韓信はあっさりと断った。劉邦への恩義というよりは俺との敵対を避けるためだそうだ。友情もあるが戦って簡単に勝てるとは思えないからだと。それには、蒯通も納得するしかなかったそうな。
なんで、いちいち俺に報告するかね。まあ、それだけ信用している証だろうけどさ。


N月$日
俺は秦の時代から専用の軍楽隊(腰鼓)を率いている。真似した連中もいたが、うまくいかず無用の長物として廃れていった。
ところが、俺の逸話を聞いた韓信が羨ましがったので、奴の軍楽隊の創設に協力してやった。

それだけではなく、韓信は、ありきたりな軍歌ではなく自分専用の(テーマ)が欲しいという。
まあ、俺専用の軍歌があるからね。真似したいというから、前世の歌を教えてやった。
「天上界にて哀と勇気のみを友とした孤独な英雄の歌である」と言ったら、喜んでいたよ。
韓信もぼっちだから気に入ったのかも。……や、冗談のつもりだったんだけどな。




 今日も韓信の軍は破竹の勢いで進撃していく。
 
 すべては己の野望――思いを寄せる項羽軍の将軍と結ばれるため。

 もはや項羽にとって最大の敵は田忠ではなく韓信となりつつあった。
 一糸乱れぬ軍勢が高らかに歌いながら行軍していく姿は、敵の士気を挫き、味方の士気を高めたばかりではない。その雄姿に感化された民衆からの支持まで得られたのだ。
 韓信としては高笑いが止まらない。仙人の田忠から聞いた、天上界にいるという庵範男を称える歌を参考にしたものだが、彼は大いに気に入っている。
 韓信(自分)(テーマ)を聞いただけで敵軍は恐れおののき逃げ出していくのだから、さもありなんである。

 
 
『そうだ 嬉しいのだ 生きる喜びを感じて
 たとえ 胸の古傷が痛んでも
 なぜ生まれ 何をして生きればよいのか
 答えを返すことができぬ それはとても嫌なことである』


 勇壮な音楽に高らかに歌う。しかし、その内容はどこか物悲しい。生きることの切なさ。そして、生きる意味を兵士に問いかけている。

 
『夢を忘れるなかれ 涙を(こぼ)すことなし
 だから我らは征くのだ どこまでも』

 
 夢を忘れず。現実に涙せず。進み続ける。これぞ決意の表明だ。
  

『そうだ 恐れるな 民のために
 哀と 勇気だけが 友である
 嗚呼 嗚呼 韓信軍 優しき我らは
 征くのだ 民の夢を守るため』


 軍歌の主要部(サビ)に差し掛かると、大音声(だいおんじょう)が兵士たち自らを激励していく。「哀と勇気だけが友達さ」とは、当時韓信軍で流行った台詞である。死地へ向かう漢たちに相応しい名言といえよう。
 なお、故事となり後世へと伝わった結果、某天の御使いを大いに悩ませる結果となったのは蛇足だろうか。 
 

 
後書き
・数百年後の天の御使いさん「……幼児向けの歌をムキムキの野郎どもがシャウトしとる」 
・次回、申し訳程度の仏教要素だよ。ヒントは南無阿弥陀仏。 
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