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楽園の御業を使う者

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CAST38

 
前書き
たしかこれを最初にあげたときサーバートラブル中だったんだよな(訳:投稿わすれてた)。 

 
新人戦三日目。

「あ、もしもし達也?」

ちょっと飲み物を買おうと一人で自販機に向かった時だった。

『どうした』

聞こえてきたのは女の声…。

九校戦の間達也は女のままだ。

戻そうと思ったが深雪さんにねだられて戻していない。

「今さぁ、目の前で誘拐事件起きたんだけど、解決してきていいか真夜さんに聞いてくんない?」

『誰が拐われたんだ』

「エクレール・アイリって知ってるか? その道では有名なんだが」

リーブル・エペー、つまりは西洋剣系の魔法剣で有名な選手だ。

『エクレール・アイリ……………一色家の御令嬢か?』

「あ、すまん最初からそう言えば良かったな。
うん。一色愛梨嬢であってるぞ」

『真夜様は、恩を売っておくのがいいとの事だが』

「わかった。じゃぁ一時間以内に戻る」

side out













一色愛梨が目を覚ますと猿轡を噛まされ、両手を後ろに縛られていた。

ついでに後頭部に鈍痛。

ガラリと車のドアが空く。

「なぁ、おいこの娘犯すのか? 殺すのか?」

誘拐犯の後ろに見えたのは鬱蒼とした森だ。

(嘘…ここ青木ヶ原じゃない…)

「気が早いんだよお前は。まだ遊歩道だぞここ。さっさと奥行くぞ」

犯人は二人組の男だ。

「おら、降りろよ一色愛梨。おっと魔法の腕輪は取り上げてあるぜぇ」

犯人に従って車から降りる。

男は片方は腰に銃を、片方は手にナイフを持っている。

「で、誰なんだこの女?」

「知らねぇのかよお前…」

「だってお前がいきなり拐うとか言い出したじゃん」

(コイツら…魔法師じゃない?)

「まぁ、魔法使いの名家の娘さぁ」

「へー」

「魔法使いは人造人間だからなァ。綺麗所ばっかりだ。下も名器だろうぜェ」

二人は愛梨に銃を突きつけながら樹海の奥へ奥へと進んでいく。

「ここら辺でいいか」

男が愛梨の首に後ろからロープをかける。

そして愛梨に繋がっていない方を上に投げ、ロープを木にかけた。

「へへ…死体をヤるのも乙だよなぁ?」

そして、そのロープをもう一人の男が掴む。

「なぁに安心しな。俺達もお前の体で遊んだら、あっちで続きしてやっからよぉ」

愛梨は首のロープを外そうとしたが、手が縛られており、動かせない。

(こんな所で死ぬの? 魔法師でもない奴に殺されるの?)

男がロープを引き、愛梨の首が締まる。

「いいねぇ、いいねぇその顔‼ ゾクゾクするねぇ!」

男が興奮した口調でわめく。

「はーい。そこまでにしようね」

愛梨とは別の女の声がした。

「なっ!? 誰だ!?」

「うん。テンプレ台詞乙」

男達が周囲を見回す。

そこで愛梨から視界をはずした。

その一瞬で、愛梨は消えた。

「こっちこっち」

声がした方には小さな女がいた。

就学しているかもあやしい小さな子供だ。

だがその小さな体で愛梨を横抱きにしている。

「じゃぁな、誘拐犯共」

子供が男達に背を向けて歩きだした。

「待ちやがれ!」

「逃がすか!」

男達が駆け出した瞬間。

ロープがシュルシュルと伸び、男達の首に巻き付いた。

男達がもがき苦しむ。

「概念拡張時空間集束魔法【クァチル・ウタウス】」

それだけ言って、愛梨を抱えた子供は去っていった。

そして、誘拐犯二人は青木ヶ原の白骨死体達の仲間入りを果たした。













遊歩道まで戻ってきた白夜が愛梨に尋ねた。

「なんで一人でいたの? 友達か親は?」

「飲み物を買いに行ってたのよ」

「ふーん。そっか。次からは気を付けなよ」

自分から聞いていて、あまり興味なさそうな白夜。

「ねえ、貴方、質葉白夜君?」

白夜は事実上最も有名な魔法師だ。

様々なバラエティー番組やドラマに出演しており、魔法師でなくともその名前を知る人は多い。

「そうだよ。本名は千葉白夜。百家千葉家の三男だよ」

「そう…百家の…」

「別に貸し借りとか考えなくていいからね。今回のは家は関係なく俺が勝手に動いただけだから」

「そう…。ならますます貸し借りを考えない訳にはいかないわね」

「そんな物?」

「ええ、そうよ」

白夜は基本的に政治には疎い。

「もう歩けるわ」

「えー。美少女助けたんだから最後までかっこつけさせてよー」

そう言いながらも、白夜は大人しく愛梨をおろした。

「ね、ねぇ、重くなかった?」

「んー…もう少し重くした方がリーブル・エペーでも有利になるとは思うよ。
一撃の重さはやっぱり大事だよ」

「ふーん……貴方ってタレント以前に剣士なのね」

「そりゃぁ千葉家だし」

愛梨が白夜の手を握った。

「ん? やっぱ怖かった?」

「そんなんじゃないわ。貴方を見てると転びそうで危なっかしいのよ」

「子供扱いしないでくれよ。これでも君と同い年なんだからさ」

「それでもよ」

等と誤魔化しているが愛梨は内心フィーバーしまくりである。

何の事はない。一目惚れだ。

愛梨は白夜に惚れたのだ。

「お、そろそろ樹海を抜けられそうだな」

白夜の言った通り、直ぐに樹海を抜けた。

「駐車場?」

「そうそう駐車場。ここで少し待ってようか」

白夜は近くのベンチに愛梨を座らせた。

端末を取りだし、水波に電話をかける。

「もしもし水波?」

『どうしました白夜様?』

「あー、うん。保護完了。穂波さんに頼んで来て貰えないか?」

『深夜様に代わります』

数秒の間があり、深夜に代わった。

「もしもし深夜さん? 穂波さんをかりたいんだけど…」

『高くつくわよ?』

「あー…俺ができる範囲で」

『そう。直ぐに向かわせるわ』

そこで通話が切れた。

「愛梨嬢。直ぐに迎えが来るよ」

「ありがとう」

白夜が愛梨の隣に座る。

そして無言で愛梨の頭を撫でた。

「なによ」

「んー。べつにー」

次第に愛梨のまぶたが重くなる。

「寝てていいよ」

「んぅー…」

愛梨が横になる。

「………寝ていいとは言ったけど膝枕してあげるとは言ってないんだが…。まぁかわいいからいいか」

白夜が愛梨の頭を撫でながら待っていると、穂波が車で駆けつけた。

「白夜君。犯人はどうしたんですか?」

「さぁ?」

「殺ったんですか?」

「探しても多分見つからないよ」

「そうですか」

穂波が愛梨を横抱きにして車に乗せる。

「帰りましょう白夜君。真夜様がお待ちですよ」

「はいはい」
 
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