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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と回想、I・アイランド編
  NO.108 回想《13》 制御プログラム正常化

 
前書き
更新します。 

 




「デクちゃん! デクちゃん!」

メリッサが鉄の塊に潰されてしまった出久を必死に救い出そうとしている中で、ウォルフラムはまるで出久の事をそこらへんの石でも見ているかのように興味を示さないでサムの方へと歩いていく。

「サム、例の装置は……?」
「ここに……」

ウォルフラムに寄って行くサムを見て、思わずデヴィットは叫びを上げる。

「サム! 君はそこまで根性が腐ってしまったのか!? 潰されてしまったミドリヤさんを見てなにも思わないのか!?」
「何を言うかと思えば……何も感じませんよ。……思えば私ももうとっくの昔にヴィラン寄りの考えになってしまったんでしょうね」

どこか達観していそうな顔になっているサム。
それでさらにデヴィットは悔しそうに表情を歪ませる。

「そうかそうか。それじゃ褒美を与えないとな……」
「えっ?」

そんな時にウォルフラムのそんなセリフが聞こえてきて咄嗟にサムはウォルフラムの方へと顔を向ける。
そこに待ち構えていたのは拳銃の銃口だった。
それに気づいた時には遅く、サムは肩口を撃たれてしまっていた。

「グ、ハッ!?」
「!?」

痛みで倒れこむサムと、それを見ていたデヴィットは思わず目を驚愕に染め上げる。メリッサも思わず出久を救出しようとしていた手を止めていた。
ウォルフラムはそんな視線にも気にせずにまるで挨拶でもしているかのように再度拳銃を構える。

「な、なぜ!? 約束が違う!」
「約束? そんなのとっくの昔に忘れたなぁ……」
「そ、そんな!」

それで一気にサムは絶望に叩き落される。
そんなことも気にせずにウォルフラムは「謝礼だ」と言って引き金を引いた。
次にはサムは撃ち殺されてしまうだろう現実が迫っていた。
だが、そこで何を思ったのかデヴィットがサムの前に咄嗟に飛び出していた。
飛び散る鮮血がサムの持っていたケースに付着する。

「ぐっ!」
「博士ッ!? どうして!?」
「パパッ!?」

そのまま転がるデヴィットにサムは一体どういうことか理解が及んでいなかった。
先ほどまであんなに罵っていたというのに、どこに自分を庇う要素があるというのかと……。

「ふふふ……なぜだろうな? もう、私達の関係は修復できないだろうけど、それでも……気づいたら足が動いていたんだ……ぐっ!!?」
「博士……」

サムはそれで先ほどまでデヴィットに対して抱いていた感情が薄れていくのを自覚する。
だが、そんな光景を見せられて、それでもウォルフラムはつまらない茶番劇を見せられているとしか感じられないでいたので、

「泣かせるねぇ……面白い茶番劇だったよ。しかしちょうどいい。どうせお前はもうヴィランとそう変わらないんだ。俺達の所でこの装置を作る未来しかないんだよ。着いてきてもらおう」
「パパ!!」
「うるせぇんだよ!!」
「ああっ!」

メリッサが思わずデヴィットのところに走ったが、ウォルフラムによって容赦なく頬を殴られてしまっていた。

「メリッサ!!」
「お前は寝ていろ」
「グッ!?」

そのまま気絶させられるデヴィット。
そして「連れていけ」と幹部に命令している中で、

「返して!」
「ん……?」
「パパを、返して……!!」

そこには必死に訴えているメリッサの姿があった。
それを見てウォルフラムは少し考えて、

「そうだなぁ……未練は、断ち切っておかないとなぁ……」
「ッ!?」

メリッサに向けて銃口を構えるウォルフラム。
万事休すかと思われたその瞬間に、

「やめろーーーーーーッ!!」

今の今まで鉄の塊の中で脱出しようともがいていた出久が鉄を破壊してウォルフラムへと拳を構えて突っ込んでいく。
だがすぐさまにウォルフラムは鉄の壁を展開して出久の拳を阻む。
しかし、出久もただでは終わらない。
メリッサに顔を向けて目で訴えた。

「(博士達は助けます! だから僕が足止めをしている間に、みんなを!!)」

と。
その出久の意思を感じ取ったのかメリッサは頷きをして制御ルームへと走っていく。
させまいと幹部が走ろうとするが、出久が何度も壁を跳ねて入口へと立ち塞がって通せんぼをする。

「いかせない!!」
「ちっ……ガキで、しかも女のくせに度胸だけはあるじゃねーか……それじゃもう一回潰れていろ」

ウォルフラムがまた鉄を操って出久へと向けて射出していく。
鉄柱に潰されそうになるのを必死に怪力で抑えている出久。
ただ思う事は一つ。
メリッサのもとへは行かせない。
オールマイトを、みんなを、助けるんだ!
その思いが出久を振るい立たせていた。

そして制御ルームへと必死に走るメリッサ。
デヴィットの事はもちろん、出久のことも、裏切ったサムでさえも心配しながらも、泣きそうになるのを必死に我慢しながらも、めげずに走る。
その姿は決してかっこいいものではなかった。
しかし、それでもみんなのために必死になれる人の姿がありありと映されていた。

「(デクちゃん! それにみんな! 必ず、必ず助けるから!!)」

その思いとともについにメリッサは制御ルームへとたどり着いて、即座にキーボードに再変更プログラムを高速の速さで打ち込んでいく。
次々と書き換えられていくプログラム。
それは数分もかからずに修復していき、次々と異常を示していたモニターが正常な機能を取り戻していく。
そして完全に制御を奪い返したメリッサ。
それを最後まで見届けたメリッサは顔を上げて、

「デクちゃん! みんな!」

いの一番にそう叫んだ。








メリッサの勇気ある行動によってI・アイランド中の警備マシンたちは機能を取り戻していく。
それはタワー内部で戦っていたお茶子達も例外ではない。
警備マシンの赤いランプが次々と緑色に戻っていき、持ち場へと戻っていくその光景を見せられて、

「緑谷くん! メリッサさん! やってくれたか!!」

飯田がそう叫んだ。
そして風力発電のエリアで戦っていたお茶子達もそれに気づいたのか、

「こうしちゃいられへんね! 早く私達もデクちゃん達のところへと向かおう!!」
「そうだな……いくぞ、爆豪」
「あぁ!? 俺に命令すんじゃねー! それに俺も早くデクんとこに助けに行きてぇんだよ!!」

轟にそう言われて思わず本音が漏れる爆豪。
それを聞いていた切島は呆れた顔をしながらも、

「爆豪、爆豪……本音が駄々洩れだぞ?」
「うっせぇ!! とにかく行くぞてめぇら!!」
「そうだな!!」

飯田は爆豪を追及するより状況を読んで出久達の救援にすぐに向かう選択肢をした。
誰だって頑張っている女の子の事を助けに行きたいものである。
特にここにいる爆豪に轟、お茶子の三名は出久関連に関してはなにかあったら暴走をするかもしれないな、と普段の様子を客観的に見ていた冷静な切島がそう思うのであった。







そして、I・アイランドの警備システムが正常に戻ったことによって恩恵を受けるのはなにも出久達だけではない。
レセプションパーティー会場で拘束されていたヒーロー達も次々と拘束を解かれていき、慌てる幹部達。
だが、そんな考えも許されるわけもなく解放されたヒーロー達によって瞬く間に拘束されていくヴィランの幹部達。

さらには、ついに耐えて耐えて耐えまくっていた現ヒーロー最強の人物であるこの人、オールマイトも拘束を解かれる事になり、

「(やってくれたみたいだな、緑谷ガール!!)」

トゥルーフォームに戻らないように必死に頑張って踏ん張っていたオールマイトが咳込みをしながらも、

「ゴホッ……まだ大丈夫だ。今向かうぞ!!」

最強のヒーローが解き放たれた瞬間であった。
こうして場面は最終局面へと移っていくことになる。
オールマイトは、そして出久は果たしてデヴィットを助け出すことができるのか……?


 
 

 
後書き
そういえば、映画を見て思ったのがサムは連れてかれずにあのまま置き去りにされていたんですかね……?
あのあと一回も映りませんでしたが。 
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