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大人になる為に

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第六章

「そのことを勧めに来た」
「本人は戦士になるつもりですね」
「代々戦士の家やしな」
「アフード家はそうですね」
「そうや、しかしあの家は戦士以外の職業のモンも出してるやろ」
「射手やバイキング、マーシナリーと」
「そやったらな」
 他の職業の者も輩出しているならというのだ。
「是非な」
「彼はですね」
「軍師にすべきや」
「本人の為にですね」
「そして軍の為にもな」
 彼の優れた軍師の才能を活かすべきだとだ、ハリムは校長に話した。そして校長も彼の言葉に頷いてだった。
 彼の入学試験の時にその武芸を自分の目でも見てそのうえで軍師としての合格通知を送らせた。少年も家の者達も最初これはどうかと思ったが彼は入学してから軍師の課程で抜群の成績を収め。
 軍に入隊してからも優れた軍師として活躍した、それはハリム達が見てのことだ。
 だがそれは後の話でハリムは士官学校で校長に話をした後でアミンと共にブルネイを後にしようとした。その前にだった。
 ブルネイのレストランのうちの一軒に入ってルンダンやナルシマッといった羊料理、それにアンプヤットといったブルネイ料理を食べつつだった。
 酒もアッラーに謝罪したうえで秘かに飲んでいたがここでだった。
 ハリムの手にあるものが宿った、それはというと。
「盾やけどな」
「随分と逸品みたいやな」
 アミンは装飾も見事なその楯を見て言った。
「真ん中にルビーやサファイアもあってな」
「ああ、これはアリーの盾や」
「ああ、イスラムの英雄の一人やな」
「ムハンマドの娘婿のな」
「あの人の盾か」
「それがおいらの新たな神具や」
 ハリムはアミンに心の中に言ってくる言葉を話した。
「自分の身体を護ってくれるな」
「立派な防具やな」
「あらゆる攻撃を防いでくれるな」
「凄い防具やな」
「そや、それにな」
 ハリムはアミンにさらに話した。
「神託を乗り越えてな」
「あの子との冒険とやな」
「あの子の資質の見極めがな」
「それが神託やったな」
「その神託を乗り越えて」
 ハリムはさらに話した。
「おいらは強くなったわ」
「自分自身もやな」
「全体的に一皮剥けた」
「そんな感じになったわ」
「ああ」
 羊の肉を食いつつだ、ハリムはアミンに話した。
「そうなったわ」
「それは何よりやな」
「ほなな」
 ハリムは明るく笑いつつアミンにこうも話した。
「この料理食べてお酒飲んで」
「それからやな」
「おいら達はこれで終わりやないやろ」
「これからや」
 まさにとだ、アミンも笑顔で応えた。
「この世界を救おう思ったらな」
「そやからな」
「この店を出たら」
「次の場所に行くんや」
 笑顔で言ってだ、そうしてだった。
 ハリムはその目を次の場所に向けていた、自分達の目的この世界でせねばならないことがわかっているが為に。


大人になる為に   完


                    2019・3・24 
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