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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と回想、I・アイランド編
  NO.101 回想《6》 信頼できる友

 
前書き
更新します。 

 


出久達が様々なパビリオンで遊んでいるときに、オールマイトとデヴィットは診察室にいた。
そこでは診察台に横になっているオールマイトの体を念入りに検査しているデヴィットがさながら信じられないような表情を浮かべていた。

「トシ……これはどういうことだ!? 個性数値が極端に下がっているじゃないか!?」

デヴィットはこうして表示されている機械が信じられないほどに狼狽えていた。
これは現在最高の叡智で作られた個性の数値を調べることができる装置である。
これで以前にオールマイトを検査した時には下がっていく一方で、それでもゆるやかではあったのだ。
だが、今回は一気にガクッと落ち込んでしまっていた。
これは異常だとデヴィットは感じた事だろう……。
それでデヴィットはオールマイトの左わき腹の傷を見ながら、

「オール・フォー・ワンとの戦いで負傷したとはいえ、この数値は異常だ。いったい君の体に何が起こったというんだね!?」
「…………」

それでオールマイトは咳込みをしながらも、

「(教える事は出来ないんだよ、デイヴ……。もし、教えてしまったら君とメリッサも危険に巻き込んでしまうかもしれない……だから、すまない)」

心の中でオールマイトは謝罪の言葉を言いながらも「長年ヒーローを続けていれば、ガタがくるもんさ……」と言い訳をした。
だが、デヴィットはなにか隠しているのを察したのか、

「トシ……君と私の間柄はそう短いわけじゃない、だから感じるんだ。なにかを隠しているんじゃないのか……? 思えば、君と一緒に来たミドリヤさん。彼女はなんで君と同伴で一緒に来たんだい……? ただの一生徒にしては優遇しすぎだとも思う。トシの体を治せる可能性を持っている彼女だからという理由ではないだろうしね」
「そ、それは……」

まさかそう切り返してくるなんて、と思わずにはいられなくなったオールマイトは逆に狼狽えてしまう。
額にいくつか汗が垂れだして目の挙動が揺れに揺れていた。

「トシ……君は隠しごとをするときはなにかとそういう仕草をしたよな。親友じゃないか。隠している事があるのなら教えてくれないか……? もちろん、初めに言っておくが、私はもしトシが隠しているその秘密を知ったとしても、言いふらさないし、そして力にもなることを約束するよ」
「デイヴ……」
「そして危険に巻き込まれるというのなら、私は昔のように君の隣でともに危険に飛び込むこともやぶさかじゃない。私にここまで言わせておいて、教えてくれないことはないだろう……?」

数少ない親友にここまで言い切られてしまい、オールマイトは葛藤に次ぐ葛藤をしていた。
果たして話していいのか……?
ここで話してしまったらデイヴはきっと必ず力になってくれるだろう、しかし、それでもいいとしてもメリッサはどうする……?
何も知らない彼女まで巻き込む危険性などを考えたら天秤に測れるものでもない。

「メリッサは……」
「そう来るか。それならメリッサにも私から説得をしよう。きっとあの聡明な子なら分かってくれるさ。いつもどこまででも一蓮托生しようじゃないか」
「ッ……」

もう、あと言い訳をできる材料がない。
いいのか、話していいのか?と葛藤の極みに陥るオールマイト。
ワン・フォー・オールの秘密を知っているのは、極わずかだが存在する。
グラントリノ、塚内、根津、リカバリーガール、相澤、ナイトアイ……そしてワン・フォー・オールを託した出久。
思えば、結構いるじゃないか……とこんな場面で変な事を考えてしまっているオールマイト。
そしてここが分岐点だと悟るオールマイト。

ここまで言われたのに強情にも今話さなければ、下手したらこの友情を壊してしまうかもしれない。
だが、話せばまた一人力強い仲間ができる。

「(私が決めるんだ……いつも、緑谷ガールに秘密は誰にも言うなって言っておいたのに、私は弱くなってしまったのかもしれんな……デイヴになら話してもいいかもしれないと思っているのだから……。そしてデイヴの口からここまで言われてしまったらもう引き返せないじゃないか……そして長い付き合いで信じられるという確信がある)」

昔からの悪友ともいう仲の自身とデヴィット。
そして娘のメリッサ。
もし、知ってしまったらオール・フォー・ワンに狙われる可能性は段違いに上がる。
それでも、I・アイランドというセキュリティ万全な場所で暮らしているのなら雄英にいるよりは安全かもしれない。
そこまでオールマイトは考えて、一回溜まっている息を吐きだしながらも、

「はぁー…………分かったよ、デイヴ」
「トシ……ここまで聞いておいて啖呵も切った身としては教えてもらえるのは正直に嬉しいが、敢えてここで聞くけど、いいのかい? 別に無理なのなら私もなにも無理強いはしない。
いつか話してくれるだろうと思いながら待つよ?」
「いや、いいんだデイヴ。思えば大切な親友に話していなかったことがなによりもいけないことだったのだから。
内緒にしてくれるという確信はある。
でも、私が恐れていた。君を巻き込むことを……。
だから、話す前に覚悟してくれ、デイヴ。
これを聞いてしまったらもう引き返せないからな?」

オールマイトの言う引き返せないという言葉。
それに若干の緊張を孕みながらも、それでもデヴィットは無言で頷いた。

「それでは話すとしよう。ちなみにここは防諜設備は大丈夫だよね?」
「また気弱な事を……。当然じゃないか。私の研究室だよ。誰にも聞かせないさ」
「ははは、すまないね。本当に数少ない人しか知らない事だからね」
「そこまでなんだね。わかった、覚悟して聞くとしよう」
「それじゃ、どこから話そうか……」

それでオールマイトはまずは自らの個性である『ワン・フォー・オール』の事を話していった。
そして後継者に出久を選んで個性を譲渡したことも。
デヴィットはそれで何度か驚きの顔をしながらも、何度も頷きながら聞いた内容を咀嚼して完全に理解できるまでその高性能な頭の中で反芻(はんすう)させて聞き終えた。

「以上が私と、そして緑谷ガールの秘密だよ……」
「なるほど……確かにトシが警戒するのも頷ける内容だった。そして、同時に私の計画も潰えたのを自覚したよ」
「計画……?」

オールマイトはそれでデヴィットに聞き返す。
計画とはなんだ?と……。

「トシ……どうかこんなバカな事をしようとしていた私の事を叱ってくれ。そしてできれば止めてほしい」
「なにを言っているんだ、デイヴ。なにを……!?」
「私の事も聞いてくれないかい?」

そしてデヴィットはオールマイトに本日のレセプションパーティでやらかそうとしている事を包み隠さずオールマイトに伝えた。
当然、オールマイトは「馬鹿なことを……」と表情を歪めたのは言うまでもない事であった。


…………こうして、本来起きたであろう悲劇な出来事は事前に聞く事ができたことによってオールマイトはデヴィットと二人でどうしたものかと考えをめぐらす事になる。
救いがあるとすれば協力する彼らも偽物だというところだろうか、と言う感じである。
しかし、もうすでに遅く……獣の爪は今か今かと振り下ろされようとしていることなどこの時の二人には知りようもなかった。
偽物がもし本物だったら、という考えは天才のデヴィットでさえも想定外で思いつかなかったのだ。







一方で、出久達は今日のバイトで疲れ果てていた上鳴と峰田を労う意味も込めてメリッサが用意していたレセプションパーティの招待券を与えていて、二人は「俺達の労働は報われた―――!!」と叫んでいた。
そして時間までに集合するという事を聞いて、それぞれ一旦分かれていった。
出久もドレスを着る心構えを密かに決めながらも部屋へと着替えに行こうとしたが、そこでメリッサに引き留められる。

「デクちゃん、ちょっと私に付き合ってもらえないかな……?」

こうして出久はメリッサに着いていくことになった。





ちなみに、別行動をしていた爆豪と切島の二人は部屋にいた。
そこでは切島が正装に着替えていて、

「おーい、爆豪。お前も着替えろよ。服、持ってきてあるんだぜ?」
「うっせー! 用意周到かよ!? 誰がそんなもんにいくかよ!」
「でもよー……緑谷も参加するって言うんだから、可愛い姿が見れるかもしんないぜ?」
「…………ッ!(ピク)」
「いいのか? 轟とか飯田にも見られるんだぜ?」
「…………ッ!(ピクピク)」

爆豪の耳は盛大に反応していた。
そしてどうしてか苛立ちを感じたのか、

「…………行くわ」
「そうでないとな!」

そんな感じで爆豪もいそいそと着替え始めていたのであった。


 
 

 
後書き
やっちまった。
オールマイト、ぶちまけるの回でした。 
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