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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第18話:残された者達

 
前書き
これがゼロの運命を大きく変えていく 

 
スパイラルクラッシュバスターの一撃によって貫かれた壁を見つめていたエックスはゼロを装置から解放させると急いでルインの元に向かう。

まだ彼女の動力炉は動いていて、まだ生きていることを表しているが、それはもう時間の問題だとエックスとゼロも理解していた。

「ルイン!!」

「しっかりしろルイン!!」

エックスはルインを抱き寄せ、ゼロと共にルインに呼び掛ける。

ルインは弱々しい目でエックスとゼロを見遣ると笑みを浮かべた。

「やったね…エックス…VAVAを倒し…たん、だ…やっぱ、り…強いよエッ、クスは…」

「違う、俺は強くなんかない!!俺はいつも君に助けられてばかりだ…」

「…………」

涙を流す親友を見てゼロは涙を流せない自分に憤りを感じた。

涙を流す機能がついていないゼロはこの悲しい想いを表面に出すことが出来ない。

「泣か、ない…で…エックス…」

エックスの涙を拭おうとしたが両腕がないことを思い出してルインは自嘲する。

「何か…凄く眠、い…や……」

自身の動力炉が活動を停止しかけているのが分かる。

眠気に似た何かが自分を襲い始め、多分これが“死”なのだろうなと漠然と思う。

視界にノイズが走り、エックスとゼロの顔が分からなくなっていく。

「ルイン!!」

機能停止しかけている彼女を揺すり、少しでも機能停止を遅らせようと彼女を生き長らえさせようとしている。

それでも動力炉は確実に活動を停止していき、もう視界はノイズによってエックスとゼロの顔すら分からない。

それでも彼女は何とか口を開いて最期の言葉を伝えようとする。

「エッ、ク…ス…ゼ…ロ…」

「!?」

「…………」

「わ、た…しのさ…いごのおね、が…い…き、いて…くれ、る…?」

「最期って…」

「何だ?」

エックスの言葉を遮ってゼロが尋ねる。

その気遣いを嬉しく感じながらルインは必死に言葉を紡ぐ。

「つれ、てっ…て…エック…スとゼ、ロが…2人がつく、る…や、さし…い…平和な…せ、かい…に…」

そう言うと彼女の動力炉は活動を終え、彼女は機能停止した。

「ルイン!!ルイン!!目を、目を開けてくれ!!ルイン!!」

必死に彼女の名前を呼ぶが彼女の動力炉は活動を停止し、体の機能は完全に停止しているのだ。

どんなに名前を呼んでも彼女の目は開かない。

「ルイン………ぐっ…くぅう…うわあああああああ!!!」

動かない彼女を抱き締めながら泣き叫ぶエックスにゼロも沈痛そうな表情でルインを見つめる。

「……………」

しばらくして、少しだけ気持ちの整理がついたゼロは近くに落ちているボロボロとなった彼女のヘッドパーツを回収するとルインの元に向かう。

冷たい床に横たわる彼女の隣に置いて彼女の顔を見つめると彼女の顔には血が残っており、思わずゼロは彼女の頬に触れてみた。

触れると彼の掌に彼女の血が馴染んで落ち、思わず無心にその紅い汚れを綺麗になるまで拭い、血の移った手を見つめ、少し間を置いた後に顔にかかった髪を、几帳面にも掻き上げて整える。

「俺が…守るって…彼女は俺が守るって…誓ったのに…!!なのに、守れなかった…っ!!」

エックスの嗚咽が混じった声にゼロも悲しげにルインを見つめ、ヘッドパーツを彼女に被せるとエックスの肩に手を置く。

「エックス、まだ希望はある。ケインの爺だ。爺ならルインを救えるかもしれん」

「ケイン博士…?」

涙で濡れた顔をゼロに向けるエックス。

「確かに彼女は機能停止したが、両腕を失った以外、体は原形を留めている。レプリロイドの核でもある頭脳チップも無傷である可能性もある…可能性はゼロじゃない。諦めるなエックス。彼女の分まで俺達が戦うんだ。シグマを倒し、彼女が望んだ“優しい平和な世界”を創るためにもな」

「…うん、そして彼女を“優しい平和な世界”に連れていくためにも…シグマを倒さないと……」

エックスはルインの武器を回収する。

奇跡的に武器は何の損傷もない。

「これは、借りていくよルイン…一緒にシグマと戦おう」

彼女の武器を握り締めるエックス。

彼女の魂が宿った武器を手にしてエックスはシグマと戦う決意をし、ゼロは簡易転送装置でルインを転送する。

座標はケイン博士の研究所で簡単なメッセージをつけて彼女を転送した。

ゼロ自身ああは言ったものの、彼女が助かる可能性は限りなく低いと分かっている。

例え頭脳チップが無事だとしても助かったレプリロイドはいないのだ。

ゼロの常に明晰な理性は、ルインは助からないのではないかと呟く。

だが、ゼロは初めて……恐らく起動してから初めて、神に祈りたい気持ちになった。

もし彼女が助からなかったらケインや上から目線の気に入らない上層部に頭を下げてでも彼女の墓を作ってやりたいと思った。

ハッキリ言ってゼロは信心深くない。

エックスとは違い、死者の魂が天に還るなどという人間達の言葉など頭から否定していた方だ。

だからこそ墓標などと言うものに価値など見出す事など出来なかった。

深刻な人口増加により更なる居住の地を求めるようになった現在でも不足した土地を死人のために使う行為がゼロには理解出来なかった。

死者を弔い魂を鎮める…。

親しき者を失った人間達が繰り返してきた行為がゼロには無駄な行為にしか見えなかった。

自分が大切に思ってきた後輩を目の前で失うまでは…。

この時ゼロは初めて思い知らされた。

墓標とは死者のために建てられる物ではない。

大切な者を失い、その者の面影を求める者が傷ついた心を癒すための拠り所として存在する物が墓標と呼ばれる物なのだ。

もし、自分達がシグマを倒せて彼女が助かろうがなかろうが…自分は彼女の死顔を一生忘れることはないだろうとゼロは思った。 
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