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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と神野区異変編
  NO.093 出久の個性の真価

 
前書き
更新します。 

 

出久は走った。
オールマイト達のもとへと……。
今自分ができる事、それを今こそ全うするために。
ヴィラン連合に攫われてしまい、オールマイトだけではなく様々な人たちに大変な迷惑や苦労を掛けてしまった。
おそらく、自身が洗脳を掛けられている間にヒーロー社会はかなりの揺さぶりが掛けられてしまって混乱が続いているだろう。
挙句にオールマイトがあんな事になってしまい、実質で引退を余儀なくされてしまうだろう。
ならば、おこがましくても……恥の上塗りをする事になっても、自身の個性で出来ることをしないといけない。
そう考えた出久は必死に走った。
背後から追いかけてくる爆豪達も置き去りにしながらも。


そして到着した場所には今すぐにでも取材を開始しているリポーター達が現場の中継を開始していた。
そんな中のリポーターの一人が、出久の姿を気づく。

「おい、あの子って……」
「あぁ! 緑谷出久さん!」

記者たちはすぐさま出久の姿をカメラに映し出していく。
だが、出久はそんなものになど目に入れずに一直線に警察で一番偉い人のもとへと歩いていく。

「少し、よろしいでしょうか……?」
「君は……。誘拐されていたはずの緑谷さんだね?」
「はい。それでなんですけどこの場に現れたのは他でもありません。僕に『個性』の使用の許可を許してください」
「そ、それは……」

警察の方でも出久の個性については記者会見を見ていたために知っている。
出久がなんの個性を使いたいかもすぐに察することができた。

「だが、それでは法に触れてしまうが……」
「構いません。それに今この状況で僕の個性を使わなかったら、きっとたくさんの人に迷惑をかけてしまった僕自身が僕自身を許せなくなってしまいます!」
「だがね……」

それで考え込む警察の人。
できれば治癒系の個性の持ち主は今という現場でたくさんの負傷者がいるであろう場では活躍してもらいたい。
しかし、まだ出久は仮免すら会得していないのだ。
そんな出久と警察のやり取りもしっかりと撮影されているために固唾を呑んで見守られいる時だった。

「…………私からもお願いしてもいいかな」
「オールマイト!?」

そこに体を動かすことも億劫な状態のオールマイトが歩いてきた。

「責任は私が取る……。だから彼女の思うとおりにさせてやってほしい……」
「オールマイト……」

それでしばらく考えた警察の偉い人は、一度深く頷いた後に、

「分かりました。では不肖この私も後で上に掛け合ってみます。緑谷さん、君の癒しの個性で人々を救ってくれ……」
「はい! それじゃまずは、オールマイトから……」

それですぐさま出久はオールマイトへと近づいて与える個性を使用する。
オールマイトを中心に光が広がっていき、先ほどまでオール・フォー・ワンとの戦いで傷ついた身体が次第にどんどんと傷が治っていく。
そんな光景を見せられて黙っていられるほど取材班達も呆けていない。

「早く! 早く撮影して! すごい回復力を発揮しているわよ! オールマイトの傷が治っていく!」
「は、はい!」

オールマイトの傷を癒す出久の姿はすぐさまに全国放送に流される事になる。
その光景を見て、あるものは奇跡だ、またあるものはこれなら負傷者も存分に助かるかもしれない、またあるものは謝罪会見での情報も鑑みて、自身の命すら見境なく消費して癒す姿に神聖視のような感情を抱く。
様々な感情が渦巻く中で、今回の戦いでの負傷は完全に癒えていた。
オールマイトはそれで何回か腕を振るって、

「うん……。改めてすごい性能だね。緑谷ガール……」
「でも、もうワン・フォー・オールは……」
「うん。もう残っていない……でも、よかったんだよこれで……それより、まだ君の役目は終わっていないよ。頼む、救ってやってくれ」
「はい!」

それから出久は今現在も負傷者達の事を救出中のヒーロー達のもとへとすぐさまに足を運んでいき、

「ヒーローの皆さん! 僕のもとに負傷した人達を連れてきてください! 僕が治します!!」
「わかった!」
「もし、腕などが欠損している人とかはその部分も一緒に持ってきてください! 必ず繋げます! たとえ致命傷で虫の息だとしても、生きている限りは僕が生命力を送り続けます! みなさん、よろしくお願いします!!」
「「「「「わかった!!」」」」」

それから次々と瓦礫の中から発見されてきた負傷者達は出久のもとへと運ばれていく。
そのたびに出久は生命力を与えて傷を治して、そして消えそうな命を活性化させていく。
時には足や手が千切れている負傷者もいたが、欠損部分でさえも余計に生命力を注いで時間はかかったが繋いでみせた。
そのたびに「ありがとう……」と感謝の言葉を贈られていた。
出久はそれでも謙虚に「今の僕にはこれしかできませんから……」と繰り返しそう言っていた。


そして、発見されてこない行方不明者がまだ大勢いたが、そこで出久はとある者たちにだけ聞こえる叫びを上げる。
するとたちまちに野生の猫たちがたくさん出久のもとへと集まってくるではないか。
そう、『猫の言葉を理解できる』個性で猫たちを呼び寄せたのだ。

「お願い! みんな、まだ見つかっていない行方不明者の人たちを探して!!」
「「「「「にゃー!!」」」」」

すぐさまに出久のお願いで散っていく猫たち。
それで負傷者の発見の作業効率がさらに上がっていき、スネークヒーローのウワバミはその出久の猫の言葉が分かり、そして命令できる個性に思わず舌を巻いたそうな。

そんな、人命救助に適した個性の使用にずっと出久の光景を撮影していたリポーター達は、

『ご覧ください! 緑谷出久さんのもとへと次々と負傷者が運ばれてきて、まるで奇跡のような個性を駆使して死傷者になりえる人の傷すらもすぐさまに治していきます! 当初の絶望的な状況からもしかしたら被害者の数はかなり減るかもしれません!』

そこにシンリンカムイがオール・フォー・ワンとの戦いで負傷したベストジーニストやMt.レディ、インゲニウム、ギャングオルカなどを連れてきた。

「頼む……。彼らを癒してくれ」
「はい!」

そして出久はすぐさまに四人を癒していく。
四人の中で一番オール・フォー・ワンにやられた傷が深かったベストジーニストも傷が治ったのを自覚したのか目を覚まして、

「む……。私は確かあの元凶に腹を深く抉られたはずだが……」
「あれ? 傷が……」
「これは……暖かいな」
「ここは……。緑谷さん!? そうか、また君に助けられてしまったんだね……」

と、次々と目を覚ましていくヒーロー達。
そんな、驚愕の光景にオールマイトはある意味合格点を出しながらも、ふと指を撮影しているリポーターの方へと向ける。
それに気づいたのか撮影されるオールマイト。
オールマイトはただ一言。

「次は、君だ……」

と、もうワン・フォー・オールの力は残されていないからもう『平和の象徴』として活動はできないが、それでもいまだ見ない犯罪者への警鐘の言葉を言った。
それによって、さらに歓喜の声を上げる人々。
出久は負傷者の傷を癒しながらも、その光景を横目で見ていたために、

「(オールマイト……もう、出し切ってしまったんですね……)」

と、深い悲しみを感じていた。





…………そして、最後にそんな出久の活躍する姿を遠目で見ていた爆豪達は、

「もう、この場では我々は必要なさそうだな」
「そうだな。緑谷もこのまま個性の使用が終了したらそのまま直で警察に連れてかれると思うからな……」
「でも、デクちゃん……大丈夫かな」
「きっと大丈夫ですわ。次に会う時には私達も今までと変わらずに接しましょう」
「だな。それが一番緑谷にとっては嬉しいだろうしな」

と、もうこの場では自分達には何もできないと口々に言っている中で、

「(出久……できれば一言くらい言ってからいけや、クソが……)」

と、一種の疎外感を爆豪は味わっていた。
このままでは出久に置いてかれてしまうばかりだ。
俺も、もっと出久の事を背負えるように力を付けないといけない……と爆豪は奮起していた。


そしてそのまま爆豪達は解散するためにそれぞれの自宅へと戻っていったのであった。
出久はというと、しばらくして落ち着いた時にそのことに気づいて後でみんなには謝ろうと思っていた。
そんなそれぞれの思惑の中で、神野区の悪夢と後に騒がれる事件は、それでも出久の活躍によって死傷者は奇跡的にほぼゼロの状態で幕を下ろしたのであった……。


最後に、オール・フォー・ワンは翌日には刑の確定も待たずに特殊拘置所、奈落の意味を持つ『タルタロス』に収監されていったのだが、肝心のオール・フォー・ワンがもう自分自身の事でさえ分からない状態のために、そしていずれは生命力がすべて零れだしてしまうこともオールマイトから聞かされていたために、しかしそれでも放ってはおけない、という事でタルタロス内の施設で入院する形に落ち着いたのである。



…………こうして、ヴィラン連合による開闢行動隊の起こした事件から続いた一連の騒動は、一応は鎮まったのであった。
オールマイトの引退という報道が流れたが、それでも民衆は仕方がない……と思うしかなかった。
出久の個性で表面的な傷は治ったとしても、もうマッスルフォームにすらなるのが困難な状況でヒーローを続けることは非常に難しいのだから……。


 
 

 
後書き
こんな感じで神野区編は終わりですかね。結構長かった気がします。
次は『とある掲示板でのやり取り・その2』でもやろうかしら……。 
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