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人理を守れ、エミヤさん!

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ブラック脱却を目指す士郎くん!



 くえすちょん。マスター登用制度とは。

 説明しよう! 聖杯戦争が行われている特異点があれば、そこでマスターを勧誘してカルデアのマスターになって貰う制度の事である!
 これによりカルデアのマスター陣の充実、負担の軽減、多面的な状況への対応能力を高め、より確実な人理定礎の復元を目指すのである!

 求人情報は以下の通り。

『パート・アルバイト大募集!
 応募資格:18歳以上!(高校生不可、フリーター大歓迎!)
 資格:学歴不問。レイシフト適性とやる気のある人大歓迎!
 業務内容:マスター、人理救済、聖杯の回収等(暖かい同僚達が待ってます!)
 業務地:人理継続保障期間カルデア、特異点(出張あり)
 時間:0:00~23:59
 給与:月給500,000円(危険手当て有り)
 待遇:交通費支給、寮あり、制服貸与、従業員割引、週休二日制無し』

 なんということでしょう! こんな、ゆ、優良企業なんて見たことも聞いたこともありません! 皆の協力し合うお仕事で、如何にして負担を軽減するかが肝です! 死なないように気を付けましょう!



「あ、駄目だこの人。レイシフト適性がない」



 俺の目論見は、ロマニのその一言で粉砕された。

「ちっ。使えねぇ……」
「ヒドッ! 掌返すの早っ!?」

 君には失望したよ綺礼くん。そう呟いて、俺は冷たい眼差しで気絶したままの言峰綺礼を見下ろす。

 所はホテル。俺の名義で借りた其処に、俺とマシュとロマニはいた。言峰綺礼は完璧に拘束してある。魔術王による行動制限で、だ。
 この部屋から出られない、誰かに連絡を取ることもできない、ただここで聖杯戦争中は過ごして貰うだけだ。
 やれやれとこれ見よがしに嘆息し首を振る俺に、見事なツッコミを入れたロマニが、綺礼の適性を調べてくれたのである。結果は今しがた言われた通り、有望な戦士だっただけに残念でした。俺的に言峰は嫌いではないし。
 なんというか、本能的? な何かで、俺はこの男の事がどうしても憎めなかった。理由は考えるつもりはない。ただ、コイツが味方なら心強いと思っただけである。

「あーあ。切嗣とか弓宮とかと組ませてやりたかったな……相性抜群だったのにきっと」
「鬼だね士郎くん!? 君から聞いた関係性的にどう考えても悲惨な事にしかならないと思うんだけど!」
「それがいいんじゃないか……というのは冗談として。大丈夫、彼らはプロだ。仕事に私情は挟まないよ。まあレイシフト出来ないなら予定は白紙だけどな」
「流石です先輩……略してさすせん」
「マシュ!? マシュが虚ろな目を! 士郎くんのダーティーな一面に遠い目をしちゃってるよ!」

 ? 何がいけないのか……。マシュの前では特に酷い事をしていないのだが。
 俺は首を捻りつつマシュに言う事にした。

「なあマシュ。何に戸惑ってるのかは分からないが、俺だって無理矢理マスターにさせる気はなかったぞ」
「あ、そうだったんですか? 安心しました」

 ホッとしたように安堵するマシュに、俺は苦笑する。誤解させてしまったのなら申し訳がない。

「ちゃんと本人の意思ぐらい確認するさ。嫌だと言われたら諦めるし、どうしても人手が欲しいならカルデアで眠ってるマスター候補から選ぶよ」
「え? あ……」

 忘れていたという顔をするロマニ。おい医療部門トップ、と軽く小突いた。
 マシュも虚を突かれたように目を瞬く。言われてみればそうだ、聖杯もあるし不可能ではない、と悟ったらしい。

「今全員を蘇生しないのは、単純にあの人数分のサーヴァントを賄う余裕がないのと、実戦経験を積ませてやれるお手軽な戦いでもないからだ。それに彼らには悪いが、時計塔から選抜された頭でっかちにカルデアを掻き回される訳にはいかない。下手に発言力を持ってる奴を蘇生させてみろ、口喧しくして混乱を齎すに決まっている」

 A班の連中で見込みがあるのはカドックやオフェリアぐらいだ。後は人格破綻者や、ちょっと化け物じみてて逆に先行きが怪しくなる輩ばかり。
 カドックとオフェリアに関しては蘇生を考える必要がある。俺やネロが死んだ場合、彼らになら引き継がせても大丈夫かもしれないのだ。

「まあ……そう、かもしれないですね」
「そういう面倒さのない一般枠の連中にしたって、病み上がりともなれば体の機能も落ち込んでるだろう。リハビリさせてやる時間がない。こんな極限の状況下だ、下手にストレスを溜め込ませるわけにはいかないな。カルデアの職員にも、だ。暴発されたら堪らないだろう?」
「はい……」
「事が終わったら、だ。彼らを蘇生させるのはな」

 そこで言葉を切る。今考えることではない。

「言峰を説得する云々以前に、レイシフト適性がないなら話すだけ無駄だ。さっさと次に行こう」
「そうだね。……でも他のマスターに当たったりはしないのかい?」

 ああ、とロマニの質問に頷く。頭の中にはカルデア側の百貌から齎されたマスター達の情報が過った。

「遠坂時臣は典型的な魔術師だ。カルデアに入れる訳にはいかないし、そもそも俺達の時代で奴は死んでいるのが確定している。ネロのように別人として組み込んだとしても、何かを企むのが明らかな魔術師をカルデアに入れるのは危険だ。間桐雁夜は微妙。想い人の娘のために犠牲になる所は見上げた奴だが、肝心の戦う動機を本人が把握出来ていない点からして、極限の状況でどうなるのか未知数。積極的に声をかける必要性を感じる人材じゃない。快楽殺人鬼は論外。ウェイバー君はいいが、はっきり言って体力が無さすぎる。モヤシ君だ。せめて人並みの体力がほしいから論外。ケイネスは――うん、時臣と同じだ。言峰は知っての通りだろう。アイリスフィールだけだな。声をかけるのは」

 これが第五次聖杯戦争なら、遠坂とイリヤスフィール、桜に葛木と、誘いをかけられる面子が多いのだが。……え? 衛宮士郎? 知らない子ですね……。

 俺はマシュとロマニを促し部屋を出る。言峰綺礼を置き去りに。起きた後の彼の戸惑いは察して余りあるが、ルームサービスを呼んでるので餓死とかはしないだろう。
 さて……本命の一つを片付けよう。

 冬木で今も待つ桜のために。害虫駆除のために。ロマニがいれば不要だが、俺もロマニも無事で終わる保障はない。最悪どちらも倒れた時のために、用意した霊器の効果を確かめ、俺達が駄目だった場合に備えカルデアに預ける必要がある。託す相手は、遠坂しかいないだろう。

『マスター、こちらの作業は完了した。間桐邸に投影宝具を設置し、屋内にいた男一人と間桐桜を保護した。相手にも気づかれていないはずだ。――この娘に仕掛けさえなければ』

 切嗣からの通信が入る。
 流石に仕事が早い。俺は一つ頷き応答した。

『こっちも冬木のアサシンは消し、マスターも無力化した。保護した娘を連れてきてくれ。間桐鶴野は適当なところで放流しろ』
『了解した。間桐邸より離脱する』

 ホテルから出て、歩きながら目を閉じる。
 意識を集中し、遠くにある投影宝具を認識する。

 そして、呟いた。壊れた幻想と。

 ――大規模な爆発が、間桐邸を飲み込んだ。




 
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