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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第38話:明かされる正体

タケルはダークタワーデジモンのこと、そしてダークタワーデジモンを作り出せる謎の女のことを知る。

そして先程消えてしまったとは言え、サンダーボールモンを形作っていたダークタワーの欠片を見たため疑いようもない。

「成る程、だからダークタワーが何時の間にか消えていたのか…だったら早く…って、無理か…僕達はそれを教えられても信じることが出来なかっただろうし…」

実際、サンダーボールモンを形作っていた欠片と言う証拠が無ければいくら大輔とヒカリが言ったところで信じられなかったろう。

「京と伊織のことを頼めねえか?あんなんじゃ、俺達の話聞いてくれそうにねえもん」

「…いいの?このままじゃ大輔君とヒカリちゃん。悪者扱いだよ?」

「仕方ねえよ。伊織と京にそう思われんのは正直キツいけどさ…無理に理解させようとしても……頑固な奴は難しいんだ……お前もそうだろ?頑固者?」

「い、言い返せないな…」

苦笑するタケルだが、賢を見遣って表情を引き締めた。

「君のことは全て…かは分からないけど大輔君達から聞いた…僕はまだ君を許せないけど…1年間大輔君達を支え続けてくれたことや、さっき助けてくれたことには礼を言うよ。ありがとう」

「いえ…僕の罪はこんなことで贖えるとは思ってません。これからも自分の罪と向き合って償っていくつもりです。じゃあ、僕はこれで…」

「ああ、またな賢…。」

賢は大輔達に背を向けて去っていく。

「何か変わったね、一乗寺君」

「あれが本当のあいつなんだよ。今までは何か黒い何かに捕らわれていただけさ」

「黒い?」

「よく分からねえけど、デジクロスを繰り返す度にあいつのことが分かるようになっていくんだ。カイザーだった頃の賢は黒くて冷たい何かに捕らわれていたんだ…」

「その正体は分かるの?」

「分からねえ…賢の記憶はどういうわけかバラバラって感じなんだ。何つーか、記憶の所々が途切れてるみたいな」

「記憶障害の可能性があるってこと?」

「そうじゃねえと思う…ただ、賢は大事な物を…家族を失って悲しんでたのを誰かにつけ込まれちまったんだ。誰だか知らねえが許せねえ……」

自分達のデジクロスは特別なのか、心が混ざり合って、自分と他人との境界線が分からなくなる。

賢が兄を失って深く悲しんだこと、そしてその悲しみをつけ込まれたこと……。

「家族を…か…」

「タケル?どうしたの?」

遠い目をしたタケルが心配になったのかパタモンがタケルを見上げながら尋ねる。

「あ、いや…それを聞いたらちょっと他人事とは思えなくて…大事な物を失う気持ちは痛いほど分かるからさ…いて当たり前だと思っていた家族を失う気持ち…僕も分かるよ」

自分の家族は離婚して離れ離れになり、多分二度と1つになりはしないだろう。

そして大事な物を失うのはあの忌々しいデビモンの件で痛いほど分かる。

「そっか、多分俺よりお前の方が賢のこと分かってやれるんじゃないか?俺は…大事な物を失ったことがないから…あいつの本当の悲しみに気付いてやれてないんじゃないかって思うし」

「そうかな?大輔君みたいに何も言わないで傍にいて励まして引っ張ってくれる存在って結構嬉しいもんなんだよ?」

「だといいけどな。じゃあ、タケル…悪いけど…京と伊織のこと…頼むわ。ほとぼりが冷めたら説明するから」
「分かった。京さんと伊織君のことは僕に任せて、君達は君達で頑張って」

「おう、あんがとな」

「ごめんね、タケル君。私達がちゃんと説明しなかったからこんなことになっちゃって」

「いいよそんなの。それじゃあまた明日学校で」

大輔達もゲートを潜って帰ると、パソコン室には京と伊織はいなかった。

「帰るか、送るよヒカリちゃん」

「ありがとう。それじゃあ、また明日ね」

「うん…また明日…頑張って」

今の自分に出来ることはほとぼりが冷めるまで京と伊織を守ることだとタケルは空を見上げながらパタモンと共に帰路についた。

そして翌日、偶々京と伊織と出会した大輔達だが、京は気まずそうに伊織は大輔達を睨みながら去っていった。

「うーん、伊織と京には刺激が強すぎたかもな」

「笑い事じゃないよ大輔君、僕にこんな滅茶苦茶重い雰囲気の場所に放り込むつもり?」

「頑張れタケル。苦労人キングのヤマトさんの弟のお前なら出来る」

「酷いよ大輔君!!僕と一緒に無限大な夢に向かって飛び立とうって誓いは嘘だったのかい!!?」

「あれ?俺お前にそんな誓いしたっけ?」

「タケル君、意味分かんないこと言わないで」

微妙な表情を浮かべる大輔とヒカリ。

「はああ…いいな、ヒカリちゃん。僕も大輔君の愛情が欲しいよ…!!」

悲痛な表情で言うタケル。

「「「「っ…!?」」」」

ド・ン・引・き…!!!!!

タケルの爆弾発言に大輔とヒカリは顔が真っ青になった。

「冗談だよ♪」

笑顔で言い放つタケル。

「悲しげな表情で言うなよ…!!」

「僕も本気で驚いたよタケル」

ブイモンとパタモンがドン引きしながら言う。

「あはは♪まあ、京さんと伊織君のことは任せて君達は一乗寺君と一緒に行きなよ…今じゃ、僕達より彼と一緒の方が動きやすいんじゃない?大輔君もヒカリちゃんもさ」

「…本当に悪いな。今度家に泊まりに来ねえか?ご馳走すんぜ?」

「え?いいの?」

「だ、大輔君!!駄目よ!?タケル君は大輔君の愛情を狙ってるのよ!!?」

タケルを威嚇しながら言うヒカリ。

「冗談だってば…」

まさか冗談をここまで真に受けるとは思わず、タケルは引き攣り笑いを浮かべた。

まあ、自業自得だが。

「にしても、前は大輔君がヒカリちゃんに執着してたけど、今はヒカリちゃんが大輔君に執着してるって言うのは面白いね。残念だなあ、僕も一緒に冒険出来たら色々分かったのに」

「…っ、タケル君の意地悪…」

「僕だけ除け者にした仕返しだと思ってくれればいいよ」

「仕方ねえだろ、俺達だっていきなり向こうに飛ばされたんだからよ。誘いたくても無理に決まってるだろうがよ」

「分かってる。それじゃあまた明日ね」

「おう」

「…うん」

大輔とヒカリはタケルに別れを告げ、一度自宅に戻って田町に向かうことにした。

タケルはパソコン室に向かうと、重苦しい雰囲気がパソコン室を満たしていた。

「(うん、重苦しい。大輔君とヒカリちゃんには後で僕とパタモンにハンバーガーとか奢ってもらわないとね。)」

「(ねえ、タケル。滅茶苦茶重苦しい雰囲気だね)」

「(そうだね)さあ、京さんと伊織君もデジタルワールドに行こうか!!」

タケルが重苦しい雰囲気を振り払うように明るい声を出したのであった。

そして田町では、賢がワームモンを入れた鞄を持って帰路についていた。

「よっ!」

「賢君!!」

大輔とヒカリが此方に歩み寄り、賢も笑顔を浮かべて2人に向けて歩み寄った。

そして一乗寺家に到着し、母親に友達として紹介する。

「母さん、紹介するよ。僕の友達の本宮大輔君に八神ヒカリさん」

「「初めまして」」

会釈をしながら挨拶すると、賢の母は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「まあ!!賢ちゃんがお友達を連れてくるなんて…!!」

「へへ、賢には世話になってます!!」

「賢君にはいつも助けてもらっています。」

大輔もヒカリも笑みを浮かべてそう言うと賢も照れながら笑った。

「みんな、お腹空いてないかい?良かったら一緒におやつを食べようよ。母さん、悪いんだけど…」

「ええ、今用意するから少し待ってて頂戴ね」

嬉しそうにキッチンに向かって行く。

「いいお母さんだね」

「うん…悲しませてばかりだったから、今はどんな些細なことでも喜ばせてあげたいんだ。昔の僕には勇気が無かったから…父さんや母さんに真正面から話し合っていればきっと治兄さんも…」

「過去は変えられねえけど、未来をどうにかすることくらいは出来るって」

「そうよ賢君」

「…ありがとう、行こうか」

賢は大輔とヒカリを自室に案内し、母親が用意してくれたフルーツパウンドを味わう。

「美味しい!!」

優しい味にヒカリは笑みを浮かべる。

「美味いな、これ」

ブイモン達もフルーツパウンドを美味しそうに食べており、最後の一切れをブイモンが食べようとした時である。

D-ターミナルにタケルからメールが来ていた。

“ゴーレモンが水の街のダムを破壊しようとしてる。早くデジタルワールドに来て欲しい。”

「水の街のダムをゴーレモンが怖そうとしてるらしい。行こうぜ」

「ああ!!」

「じゃあ、ヒカリちゃんが代わりに何時もの頼む」

「分かったわ、デジタルゲート・オープン!選ばれし子供達、出動!!」

「…何それ?」

「京…眼鏡の奴が決めた掛け声だよ。あれがないと締まらなくなったって言うか…」

「へえ…」

ヒカリの掛け声に賢は不思議そうに大輔に尋ねると、大輔も苦笑しながら説明したのであった。

一方、ミミのSOSを聞いて水の街のダムに来ていたタケル達。

イービルリングやイービルスパイラルがないため、シュリモンやディグモンの動きが鈍い。

唯一まともに動けているペガスモンもゴーレモンのパワーに圧倒されてしまっている。

「駄目だ、やっぱり僕達だけじゃ止めることさえ出来ない!!さっき大輔君達にメールを送っておいて正解だった…。」

「タケルさん!?あの人達に連絡したんですか!?」

「そうだよ?いけない?」

「だってあの人達はサンダーボールモンを殺したんですよ!?」

「あれには理由があったからだよ…」

「理由があったら、デジモンを殺していいとでも言うのですか!?」

「伊織君…今は君の意地よりも街を守ることを優先すべきじゃないかな?君の意地と…街と街に暮らすデジモンの命…どっちが大切なんだい?」

「っ…」

伊織が俯いて唇を噛み締めた時であった。

「メテオギャロップ!!」

聞き覚えのある声が響き渡り、前を見るとサジタリモンがゴーレモンを蹴り飛ばし。

「ロゼッタストーン!!」

「スパイクバスター!!」

巨大な石版と拳から繰り出された衝撃波がゴーレモンを大きく吹き飛ばす。

「待たせたな」

「遅いよ君達!!」

「助けに来てくれた…」

「丁度良い機会だ。ここでゴーレモンのガワを剥いでやるぜ!!」

「うん!!」

「「サジタリモン!!ネフェルティモン!!ダブルクロス!!」」

「サジタリモンSM!!!」

サジタリモンとネフェルティモンがデジクロスし、ゴーレモンに一気に肉薄する。

「メテオネイルクラッシャー!!」

ネフェルティモンの爪がゴーレモンのガワを吹き飛ばした。ガワが吹き飛んだことで、内部のダークタワーが露出した。

「な、何あれ!?」

「あれはダークタワーだよ。あのゴーレモンはダークタワーが変化した物だったんだ」

「知っていたの!?」

「…はい、京さん達が帰っちゃった後に大輔君達から聞きました。伊織君…分かっただろ?君にも。大輔君達は無闇に命を奪うような人達じゃないことを。僕も一乗寺君と少し話して…少なくてももう、デジモンカイザーじゃないんだって分かりました…見ているだけじゃ気付かない物ってあるんですね…」

「……………」

「謝らなきゃ…私、大輔とヒカリちゃんや…一乗寺君に…!!」

黙り込む伊織、そして今まで大輔達を疑っていたことを恥じた京。

その京の想いにD-3が応えるかのようにホークモンに力を与えた。

「ホークモン進化、アクィラモン!!」

ホークモンは鷹のような巨大な鳥へと姿を変えた。頭部に強靭な角が生えている。

「アクィラモン、あいつの正体はダークタワーよ!デジモンじゃないの!!」

「そうだったのか!そうと分かれば、遠慮はしないぞ!!」

「京!!」

「大輔!!ヒカリちゃん!!…賢君も…ごめんなさい!!話も聞かないで疑ったりして、ごめん!!」

大輔達に向かって叫ぶ京のその言葉に大輔達は笑みを浮かべる。

「京さん…!!」

「私達、仲間よね!!一緒に…戦う仲間!!」

「当たり前だろ!!さあ、小さな喧嘩はお終いだ!!京、とどめはくれてやるぜ!!」

「メテオネイルクラッシャー!!」

強烈な一撃がダークタワーの塊に炸裂してアクィラモンの元に吹き飛ぶ。

「アクィラモン!!今だ!!」

「グライドホーン!!」

アクィラモンの角が鋭く伸び、そのまま勢い良くダークタワーの塊に突っ込んで行く。

ダークタワーの塊はアクィラモンの一撃で粉砕された。

そして全員のデジモンが退化し、一カ所に集まる。

「本っ当に、ごめん!!」

頭を下げて謝罪してきた京に大輔は戸惑う。

幼なじみがこんな風に謝罪した時などあっただろうか?

「いや、別にいいって。ちゃんと説明しなかった俺達も悪いしよ」

「そうですよ京さん。頭を上げて下さい。」

大輔とヒカリが言うと、京は頭を上げて賢に歩み寄る。

「賢君…助けてくれてありがとう…疑ってごめんね。今度は私が助けてあげるから!!」

「え?あ、ありがとうございます」

「テンパって逆に助けられるんじゃねえぞ」

「何ですって!?」

「2人共、落ち着いて下さい。井ノ上さん、あなたの気持ち。受け取りました。ありがとうございます」

穏やかな笑みを浮かべる賢に京は思わず赤面した。

「っ…(う…わあ…賢君って、こんな綺麗に微笑うんだ…)」

デジモンカイザー時代の雑誌などで見た作り笑いとは全然違う。賢の素の笑顔に京は見惚れてしまった。

「(なあ、タケル、ヒカリちゃん…これって…)」

「(うん…可能性はあるね…)」

「(可能性どころかビンゴじゃないかしら?)」

チラリと見ると、笑顔を浮かべながら疑問符を浮かべている賢と赤面しながら賢を見つめる京の姿があった。

「「「(…応援してあげよう)」」」

幼い故か疑問符を浮かべまくっている伊織に苦笑しながら京の恋を応援することにした。

子供達はミミや賢、それぞれ帰路につくのであった。 
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