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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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何のために

 
前書き
帰って来たぞぉおおおおおッ!!! 

 
目を覚ました時、目の前には澄み渡る青空が広がっていた。随分と久し振りに空を見た気がした。

『ここは・・・?僕は、たしか・・・』

頭の中の靄を掻き分けるように、記憶を遡っていく。一番新しい記憶はアインクラッドでの白の剣士との会話、それ以降は呑まれるように意識が薄れていったのを覚えている。

『目が覚めたか?』

『ッ!』

『ここはアインクラッドの中でも穴場のフロアでな、よく来るんだ』

『白の、剣士・・・』

隣に座っていたのはつい数時間前まで殺し合いをしていた相手、白の剣士(シオン)がそこにいた。

『安心しろ。お前の中にいるヤツは大人しくしてるよ、今はな』

『お前、どうして・・・』

『なぁ、十番勝負やろうぜ』

『十番、勝負・・・?』

『勝ち越した方が負けた奴に好きに命令できる権利を得る。最初の一戦はさっきのだとして・・・あれは邪魔入ったって事で引き分けだな』

突然の提案にシュタイナーは困惑していた。
ついさっきまで殺し合いをしていた相手に十番勝負を申し込んでくる彼の真意が分からなかった。

『どういう、つもりだ?』

『どうもねーよ。ただその方が・・・』

シオンは草原に寝転び伸びをし、呟いた–––––。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

シウネーさんから連絡が入った。新アインクラッド27層のボスモンスターを倒してしばらくした後、始まりの街の石碑にてユウキが失踪したという話だった。
僕はユウキのいる病室へと足を運ぶと、そこには変わらずベッドで眠るユウキの姿があった。

「ALOにログインしてないらしいね」

「ッ・・・」

「何があった?」

「シュー兄、ボク・・・アスナのこと"ねえちゃん"って呼んじゃったんだ・・・」

その言葉に僕は「そっか・・・」という言葉が出なかった。
ユウキの姉、紺野藍子は木綿季と同じくAIDSに感染し先に命を落としてしまった。藍子と木綿季は正反対の性格で常に前を行く木綿季を藍子が後ろから優しく眺めている光景を僕は何度も見ては微笑ましく思っていた。
確かに藍子のアスナを比べてみると似ている点が多く見受けられる。

「木綿季は、どうしたい?」

「アスナと、話したい。アスナに言ったんだ、『ぶつからなきゃ伝わらないことだってあるよ』って・・・。自分で言っておいて、こんな状態じゃダメだよね」

スピーカーから聞こえてくる木綿季の声は心なしか張りがあり決意の現れが見られた。
彼女は、運命から逃げないことを決めたようだ。

「そっか・・・そうだよね」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「はぁ〜・・・」

「どうしたの?ため息なんて吐いて?」

エリーシャは大きなため息とともに領主の机に突っ伏して死んだ魚のような目をしたシオンに対し疑問の眼差しを向けていた。彼がため息を吐くことは珍しくはないものの、ここまでなっているのは極めて稀である。故に彼女はその異様な姿に目を引かれた。

「なぁ、エリー。てこでも動かないものを動かすにはどうすればいいと思う?」

「え?てこ?」

「そいつには曲げられない理由があって、道理も通ってて、どうしようもないもんを、どうすれば覆せる?」

シオンはこの手のものには弱かった。
人の感情に敏感な彼の観察眼故の悩み、今までは“力”で何とかしてきた。しかし、“言葉”による説得をあまり得意としていない。
見えていても、分かっていても、言葉にすることができないもどかしさが彼の心に居座っていた。
補佐官としてエリーシャを置いたのも彼女がシオンよりも話術に長けていたからであり、シオンが不在の時は彼女が領主代理として勤めていた。

「ねぇ、覚えてる?君が私を初めての狩りに連れて行ってくれた時のこと」

エリーシャは唐突に昔のことを話しだした。

「その時はレベルも全然で、今よりも弱くって、へっぴり腰でまともに戦えなかった私に言ったよね。『逃げたい時は逃げて構わない、次勝てばいい。戦闘は喧嘩と一緒、自分が負けたと思わなければそれは負けじゃない』って」

「そんなことも言ったかな・・・」

ずいぶん昔のことを思い出させられ、シオンは苦笑を浮かべた。それを見たエリーシャはただ一言だけ言った。

「今は負けてると思う?」

「・・・あの時お前が言った言葉もそうだったな。なら、その後も覚えてるだろ?」

シオンは腰を上げ、エリーシャに当時と同じ言葉をぶつけた。

「『俺、筋金入りの負けず嫌いだから負けたことないんだわ』」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

何のために戦うか–––––

その言葉がずっと引っかかっていた。

シオンと戦ったあの日以降、心にリミッターが掛かったように全力が出せなくなっていた。
理由は分かっていた、



燃え尽きたのだ・・・

あの死闘で本能のままに戦い、全てを出し切った。もう悔いはない、あとはこの身体が朽ちるのを待つのみ、そう思っていた。
なのに何故、まだ僕を縛る(生かす)

もう十分だろ?

早く僕を

楽にしてくれ

その時一通のメールが届いた。

『あの時の決着をつけよう。今度は誰にも邪魔させない。これが、最後だ』

宛名には《高嶺雪羅》とあり、僕はすぐに理解した。

彼が待っている

彼が終わらせてくれる

ならば行こう、今の僕は





己が死のために戦う(・・・・・・・・)

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

覇王は孤独だった。
誰よりも先陣を切り、誰よりも敵を倒し、誰よりも仲間を失った。
一人人目を避け涙を流し、叫び、心を擦り減らした。

そんな中、彼は一人の男に出会った。

男は問う。

『君は何の為に戦う?』

覇王は答える。

『世界を統べる為だ』と–––––

すると男は小さく笑い、覇王に言った。

『世界を統べるのなら、それは無理だ』

覇王はやや怒気を交えて言った。

『何故だ?』

男は覇王にこう言った。

『一人で統べるには、この世界は大きすぎる』

『統べるなら誰かが一緒じゃないと・・・』

『そんな者はいない・・・』

下を向く覇王に男は

『ならこうしよう』

ただ一言言った。

『孤独な覇王よ、僕と友人になってくれないかい?』

『何を、言っている?』

キョトンとしている覇王に対し、男はさらに続けた。

『手伝ってくれる人間がいないなら僕が手伝ってあげよう。先は長いんだ、大いに迷おう』

『何故、そこまでする?貴様に何の得がある?』

『得とか損とか、そういうことじゃないんだ。ただ–––––』








–––––その方が幾分か最高だろ?

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

新アインクラッド第24層主街区から北に外れた小島–––––
そこには朝靄の中、一人のプレイヤーが立っていた。
リュミエールの・・・いや、"彼"特有の"白銀の髪"。そしてSAOからやや変化した白の装い、腰に刺した白銀の柄、そこから伸びる白にやや青みがかったグラデーションの鞘。
その青い瞳には静かな闘志が宿り、来るべき者を待っていた。

「・・・来たか」

振り返った先にいたのはかつて友であり、相棒であり、そして今は敵として相対しているシュタイナーがいた。

「・・・・・」

「時間きっかり、相変わらずだな」

「・・・・・」

静かに佇むシュタイナーに対して、シオンはいつも通りの口調で話しかけた。

「お前との対戦は何度かあったが、覚えてるか?十番勝負」

「あぁ・・・」

「いろんな勝負をやってきたが、結局SAOでは決着はつかずに終わった。なら・・・」

シオンは剣を抜き、切っ先をシュタイナーに向けた。

「ここでつけようぜ。十本勝負の決着をよ」

提案に対してシュタイナーは二つ返事で了承した。

「いいよ、こっちもいい加減ケリをつけたかったところだ。それで?勝負形式は?」

「俺がこうしてお前に剣を向けてるんだ。やる事はひとつだろ?」

シオンは切っ先を振らすことなくシュタイナーの瞳を真っ直ぐに正視した。

「全損決着のガチバトル。最後の戦いには相応しいだろ?」

「・・・君、本気で言ってるの?僕との戦績知ってる?」

「ああ、お前に勝ったことがあるのは片手で数える程度だ。でも、だからって挑まない理由にはならねーだろ?」

シオンの顔は本気だった。
初めて相対した時と変わらないその表情にシュタイナーはやや苛立ちを覚える。
シオンからのデュエル申し込みのウインドウが現れるとシュタイナーはやや乱暴気味にOKボタンを押し、拳を構えた。
シュタイナーの身体からは、それまで感じたことのないほどの殺気を放っていた。

「くだらないな。さっさと始めよう、そして・・・」

「あぁ、終わらせようぜ。この長い戦いを・・・」

「ところで、あそこにいるのは?」

シュタイナーは少し離れたところにいるギャラリーに目を向けた。
シオンはそれに対して軽口で答える。

「気にするな。ただの観客だ、手は出させねぇよ」

カウントダウンが進む中、2人の間には独特の空気が流れていた。
そして、その空間の外には複数の人影が2人を見守っていた。
エリーシャをはじめ、キリトやアスナ、リーファ、シノンなどシオンやシュタイナーと共に戦った者たちが集まっていた。

「シオン・・・」

「キリトくん、シオンくんは勝てそうなの?」

「正直なところ、分からない。少なくともスリュム戦の時よりは、力が増していることは明確だ。それにアイツがシュタイナーにデュエルで勝てたことは数回程度、勝てる方法があるとすれば・・・」

「セブンスタードライヴ・・・」

「でもあれって」

アスナはシオンのセブンスタードライヴについてある懸念をするが、それは皆理解していた。
それを代弁するようにエリーシャが答えた。

「まだ、7個中ひとつしか開放していない」

「今のアイツがどれだけ開放しているかによって展開は変わってくる。勿論、その能力がシュタイナーに対して有効であるならな」

「もし、有効じゃなかったら・・・」

「負けはほぼ確実だろうな。この勝負、全てはシオン次第だな・・・」

キリトの言葉にその場にいた者の視線は再びシオンに向けられた。
様々な感情が入り乱れる中、戦闘開始のカウントダウンが刻一刻と迫る。

「いくぞ、アルモニー!!」

「来い、雷電!!」

『オン、バサラ、ベイシラマンダヤ、ウン、ソワカ!』

『覇王の眷族、鋼の賢者が願い奉る。豪雷の拳、神楽の 雷龍。我、疾風迅雷の魂を纏まといて百鬼を祓い、覇道を統べよ!』

それぞれが紅と蒼銀を見に纏い、戦闘態勢に入る。

「そういやぁコイツの名前、行ってなかったな」

「興味ないな。そんなものに意味はない」

「いいや、あるね。名前は大事だ、固有名称はあった方が楽だからな」

そう言ってシオンは高らかに声を上げた。

「謳うは金剛、綴るは毘沙門!炎炎纏うは真紅の鎧!燃ゆる魂をとくとご照覧あれ!!」

カウントは残りわずか、戦闘開始の合図はシオンの言葉とほぼ同時だった。




「これが俺の『金剛毘沙(こんごうびしゃ)』だッ!!」

十番勝負最終戦、開始

互いの意地がぶつかり合う––––– 
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