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戦国異伝供書

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第十八話 道を走りその五

「治めるからにはな」
「その地の全てを知らねば出来ぬからですか」
「調べる、あの地にはかつて蝦夷と呼ばれた者がおったな」
「はい、あの地の名になった」
「今はアイヌといったな」
 信長もこの名は知っていた、それで自ら言うのだった。
「そうであったな」
「はい、あの者達が住んでいますな」
「そしてあの者達もじゃ」
「治めますか」
「天下の民としてな」
 そうすると言うのだった。
「治める」
「そうされますか」
「どうも松前家はあの者達を粗末に扱っておるが」
「それはされませぬか」
「決してな」
 信長は民ならば粗末にしない、大事に扱う考えだ。
 それでだ、アイヌに対してもというのだ。
「あの者達も蝦夷の地も豊かにするぞ」
「そうですか、蝦夷も」
「そして琉球とも貿易を行ってじゃ」
 この国についても言うのだった。
「利を得る、薩摩の島津家にも頑張ってもらうか」
「島津家ですか」
 ここで鋭い目になったのは黒田長政だった、彼は信長にそのうえで述べた。
「あの家は」
「用心すべきじゃな」
「はい、どうも」
「それでじゃな」
「あの家は用心して治めるべきかと」
「わかっておる、あの家は九州の覇を争っておるが」
 それでもと言うのだった。
「しかしな」
「それは許しませんか」
「一つの家に大きな家は持たせられぬ」
 到底と言うのだった。
「だからな」
「島津家にはですな」
「薩摩と大隅は認める、そして様々な利も与えて豊かにさせるが」
 それでもと言うのだった。
「大きな力は持たせぬ」
「そうされますか」
「あの家もな。そして島津家は四人おるが」
「島津家の四兄弟ですか」
「そうじゃ、あの者達はな」
 まさにと言うのだった。
「欲しい」
「家臣としてですか」
「うむ」
 信長は黒田長政に対して答えた。
「そしてな」
「そのうえで」
「天下の政に役立ってもらう」
「四兄弟全てが」
「そうも考えておる、しかし九州はな」
「関東まで手中に収め」
「そしてじゃ」
 そのうえでと言うのだった。
「この度の戦で手に入れた国を治めてな」
「それが整ってからですか」
「九州じゃ」
 この場所を手に入れるというのだ。
「そうする」
「そうされますか」
「うむ、やがてはな」
 こう言ってだ、そしてだった。
 信長はこれからの政について考えていた、しかし戦のことは忘れず毛利家を攻めていた。そうしてだった。
 備中を攻めている時に高松城を攻めつつだ、こう言ったのだった。
「ふむ。今水攻めにしているが」
「この城で、ですな」
「毛利家は降るな」
「そうなるかと」
 羽柴が言ってきた、この度の城攻めを考えた彼がだ。 
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