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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第5話:これから

ブイモンが炎と雷のデジメンタルの力を目覚めさせてから数日後。

時々現れる半透明のデジモンのことで大輔達は頭を悩ませていた。

成長期なら別行動のブイモンでもどうにでも出来るのだが、流石に成熟期デジモンの相手は出来ないために遭遇しないように気を配りながら動くしかなかった。

「はあ…炎と雷のデジメンタルが使えるようになっても大輔がいないと進化出来ないし」

「学校がない休みの日なら俺とヒカリちゃんも行けるんだけどな」

何故ブイモンのパートナーでないヒカリも数に入っているのか疑問に思うかもしれないが、本人が一緒にいたいと言うし、大輔とブイモンもいてくれれば安心出来ると言う理由でヒカリと共にいる。

どうやら半透明デジモン達は自分達を見える存在を攻撃対象にしているようで、出来るだけ一緒にいた方がいいと言う結論に達した2人と1匹。

「でもどうして私と大輔君にしか見えないのかな?」

「多分、大輔は俺のパートナーで…ヒカリはコロモンと触れ合っていたからじゃないかな?」

実際、ヒカリは太一以上にコロモンに触れていたためにデジモンを目視する力が身についても不思議ではない。

「うーん…」

「と言うよりまず家に帰ろうか。ヒカリちゃん、家に送っていくよ」

「え?大丈夫、1人で帰れるよ?」

「あの半透明なデジモンが出て来たらどうすんのさ。ヒカリちゃんに怪我なんかさせたくないし。」

大輔の本心であるし、秘密を共有した友人の存在は大切である。

「分かった、ありがとう」

ヒカリも大輔の気遣いが嬉しいのか笑顔で頷いた。

そして、ブイモンをリュックに入れた後、ヒカリを送るために八神家に向かう。

「にしても、このリュック狭いし暑苦しいよ」

「仕方ないじゃんか、チビモンならまだしもブイモンの状態じゃさ」

「ブイモンに進化して体が大きくなっちゃったもんね」

チビモンサイズでピッタリな感じだったのにブイモンサイズは流石にキツい模様(当たり前)だ。

話しているうちに八神家に到着。

「ただいまー」

「あら、お帰りなさいヒカリ…あら、大輔君。何時も悪いわね、ヒカリを家まで送ってくれて」

ヒカリの帰宅に気付いた裕子が出迎えるが、大輔の姿を認識すると目を見開いた後に笑みを浮かべた。

「ううん、別に大丈夫。ヒカリちゃんに何かあったらいけないし。」

「本当にありがとうね大輔君」

ヒカリのことを心配して毎日家まで送ってくれる大輔を裕子は気に入っていた。

「それじゃあヒカリちゃん。また明日」

「うん、また明日…」

「ちょっと待って…大輔君…夕飯食べていかない?」

帰ろうとした大輔を裕子は呼び止め、呼び止められた大輔は不思議そうに振り返る。

「え?」

「お母さん?」

疑問符を浮かべる2人に裕子は笑みを浮かべる。

「だって何時もヒカリを送ってくれるしお世話になってるし、何もしないなんて失礼じゃない」

「うーん…」

「食べていけばいいじゃないか大輔。大輔の母さんには俺が伝えといてやるからさ…」

ブイモンが裕子には聞こえないように声を落としながら言うと、大輔は頷いた。

「よーし、おばさん腕によりをかけて作るわよー!!」

「「…………?」」

ブイモンを気付かれないように家に帰しながら、大輔とヒカリは互いの顔を見合わせながら疑問符を浮かべた。

「今日はコロッケだからもう少し待っててね?」

「「はーい」」

「大輔君、一緒にお話しようよ」

「いいよ、ヒカリちゃんの兄ちゃんは?」

「どうせお兄ちゃんは晩御飯にならないとお家に帰らないもん。サッカークラブの人達とサッカーしてるよ」

「サッカーか……」

「?」

「そう言えば最近サッカーボールに触ってないな」

最近忙しいこともあり、サッカーボールに触れる機会が極端に減った気がする。

ブイモンと一緒に戦うのもお菓子作りをするのも自分がやりたいからするのだが。

「大輔君もサッカーが好きだなんて意外かも」

「ヒカリちゃん、それ酷くないかな?」

大輔だって男の子で体を動かしたい年頃だから不思議ではないはずだ。

「ん~、大輔君って運動よりお菓子とか作ったり考えたりするイメージがあったから……」

「そう言えばヒカリちゃんの前でスポーツやった記憶全然ないなあ……」

ブイモンと一緒にいることもあって何時も家で遊んでたりするのが殆どだからそう思われても仕方ないかもしれない。

「まあ、ブイモンがいるから仕方ないか」

「ブイモンがいるから仕方ないね」

下手にブイモンを外に出して大パニックになるのだけは避けたい。

「ヒカリ~!!大輔君!!ご飯よ~!!」

「「はーい!!」」

裕子の呼び掛けに元気良く応えると大輔とヒカリはリビングに向かう。

「「頂きます!!」」

「はい、召し上がれ」

揚げ立てのコロッケを一口サイズに切り分けて口に運ぶと大輔は白いご飯を口に運ぶ。

「美味しい!!」

「良かったわ。お代わり沢山あるからね?」

「はい!!」

美味しそうに仲良く食事をする2人に裕子は笑みを浮かべている。

「あ…トマト…」

ヒカリはコロッケに添えられている千切りキャベツの隣のミニトマトに表情を曇らせた。

噛んだ時の食感と酸味がヒカリは少し苦手であった。

「ヒカリ、好き嫌いは駄目よ?」

「うう…っ」

苦々しい表情でミニトマトを見つめるヒカリ。

裕子が空っぽになった大輔の茶碗にご飯をよそいに行った時。

「あ…」

然り気無く大輔がミニトマトをヒカリの皿から取ると、ヒョイと口の中に放り込み、笑みを浮かべながら咀嚼した。

「(ありがとう…大輔君)」

こういうさり気ない優しさがヒカリの胸に暖かい物を灯すのだ。

裕子はヒカリの皿のミニトマトがないことに気付き、何となく理由に気付いたが、この良さそうな雰囲気を壊すのもどうかと思ったので黙っていた。

「ただいま~」

「あ、お兄ちゃんだ」

「んん?」

「お帰り太一。」

「ただいま、ん?誰か来てんのか?」

ヒカリの兄でゴーグルが特徴的な少年である太一が帰宅してきたので裕子が帰ってきた太一を出迎える。

「大輔君よ。何時もヒカリを家にまで送ってくれるあの子よ」

「ああ、あいつか…何であいつまで?」

「あのねえ…ヒカリを毎日送り届けてくれてるのよ。お礼しないと失礼でしょうが」

「ふうん…よし、大輔とか言う奴の顔を拝みに行くか」

太一はリビングに行き、ヒカリの隣で食事をしている大輔を発見。

「あ、お兄ちゃん。お帰りなさい」

「おう、ただいま…おい、お前」

「?」

「“お前”じゃなくて大輔君!!」

“お前”と言う呼び方が気に入らなかったのかヒカリは珍しく声を荒げた。

「い、いや…えっと…お前が大輔か?何時もヒカリを家にまで送ってくれてありがとな」

珍しく声を荒げた妹に冷や汗を流しながら太一は大輔に礼を言う。

「え?あ、ああ…別に俺が好きでしてることだし…」

大輔も滅多に怒鳴ることがないヒカリに驚きながら太一の言葉に答える。

「そ、そうか…これからもヒカリと仲良くしてやってくれよな」

「は、はい…」

ヒカリの怒りの視線にビクつきながら(大輔も隣で冷や汗を流している)、大輔にこれからもヒカリと仲良くして欲しいと告げて、大輔も顔を引き攣らせながら頷いた。

一方本宮家では…。

「うーん、モグモグモグ…やっぱり…ングングング…大輔達が休みの日に…一気にやるしかないのかな…アグアグアグ…」

大輔の部屋で晩御飯を食べながら呟くブイモン。

あまりにも行儀が悪いが、止める存在がいないのでどうしようもない。

「ブイモーン、お風呂に入ってしまいなさーい!!」

「ほーい」

取り敢えずは今まで通りにすることにして風呂に入ることにした。

風呂上がりにキンキンに冷やしたコーヒー牛乳を楽しみにしながら…もうすっかり現実世界に馴染んだデジタルモンスターである。 
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