戦国異伝供書
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第十六話 天下の大戦その九
「江戸ですか」
「わかるか」
「はい、あの地に城を築けば」
「東国全体に睨みを利かせられてな」
そしてというのだ。
「東国を治められその要となる街も築ける」
「江戸に」
「江戸は今は何もないというが」
一面見渡す限りの草原と言われている、西国どころか今関東に覇を唱える北条家の拠点小田原とも比べるべくもない。
「江戸城自体ほぼ廃城に近いというが」
「その江戸城を」
「一気に大きくしてな」
「街もですか」
「整える、東国一の何十万もの民が集まる街にしてじゃ」
そうしてというのだ。
「そこから東国も治めていく」
「そうされますか」
「これからはな、では本願寺が降れば」
「その後で」
「次じゃ」
次の戦に移るというのだ。
「そうするぞ」
「毛利攻めですな」
「まずは姫路城に入り」
播磨の要であるこの城にというのだ。
「それからじゃ」
「姫路城を拠点として」
「備前から西に向かう、して宇喜多家じゃが」
「はい、どうもです」
高山が言ってきた。
「宇喜多殿は自らです」
「当家にじゃな」
「降ろうとお考えの様です」
「ならよい」
信長はそれでよしとした。
「ならばな」
「では」
「うむ、あの者はこのままじゃ」
「降ればですか」
「備前一国を安堵し」
そのうえでというのだ。
「用いていく」
「そうされますか」
「無体にはせぬ、あの国だけでよいのだからな」
「これまでのことを咎にもですか」
「せぬ」
それもしないというのだ。
「断じてな」
「左様ですか」
「その子も用いてじゃ」
宇喜多の子もというのだ。
「資質があればな」
「重くですか」
「用いていく」
「左様ですか」
「何度も言うがあの者は必要だから謀を用いていたに過ぎぬ」
信長はこのことを看破していた、宇喜多直家が実はそうした者であるということを。
「家臣や民、親族には寛容で厚く遇しておる」
「だからこそ」
「よいのじゃ。若し家臣や民に悪辣なら」
それならばというのだ。
「成敗しておるがな」
「左様ですか」
「だから殿はあの者を降らせ」
「用いられる」
「そうされるのですな」
「そうじゃ」
家臣達にも答えた。
「本願寺も同じじゃ、では使者をやりな」
「そうしてですな」
「そしてですな」
「降る様に勧める」
「そうしますか」
「その様にしよう」
こう言って実際にだ、信長は本願寺に人をやり降らせた、そのうえで顕如とも話をしたがその話の後でだ。
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