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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第34話:大地は続くよ、どこまでも!?

 
前書き
ちょっと書き方を変えて、アルバート君と家関係とを並行で書いてみました。
元に戻すかもしれませんが、しばらくお付き合いください。 

 
Part-1:アルバート

 今日、3週間ぶりの調査旅行でエルフの集落に来て、アルメリアさんの家にお邪魔しました。持ってきたお土産をアルメリアさんから皆さんに分けて貰える様にお願いしてから、今回やって来た訳を説明します。
 前回此方に来てからの事で、色々聞いて欲しいことがありましたから、ちょっと時間を貰ってじっくりと説明しましたが、やっぱり、4大上級精霊が揃い踏みした事では、驚くよりも面白がっていました。その場に居て見られなかったことを残念だと言っています。
 それから、今回の調査では今までよりも更に遠くまで調査に行くというと、アルメリアさんの目がキラリと光った様に感じました。やっぱり着いてくるのでしょうね。
 
 アルメリアさんに話を聞くと、やっぱりというか、3週間前に僕と一緒に調査に出てからこちら、全然集落から出ていないそうです。まあ、基本的にエルフの人たちは保守的な様で、積極的に外に出て新しいことを始めると言うことがないようですからね。
 その為、アルメリアさんの様に植物学の為の調査に出たりする様な、普段の生活行動と違う調査等には興味がない様で、アルメリアさんの護衛に付いて来てくれる人も全然居ないと言う訳です。これではアルメリアさんにしてみればストレスが溜まる一方でしょう。
 このままでは、「僕が来た時にしか調査に出られない」事になってしまい、そうなると「僕が来るのが待ち遠しい」といった変な状況にはまってしまいます。結局今の状況は、アルメリアさんにしてみれば待ってましたという所なのでしょう。目の光り具合が違う訳です。

 一通りの説明やお願いの内容を話し終えて、それならばと、すぐに代表の所に行って今回の調査の目的などを説明することになりました
 集落中央の集会所に行くと、既に代表が待っていました。何時も僕が来ると、相談に来ているので、予め気を利かせて待っていてくれたようです。
 そこで、アルメリアさんに話したことをもう一度代表にも話しをしたら、集落の方には絶対に干渉しないことを条件に、新しく作る果樹園に管理員を住まわせることを許可してくれました。
 また、これから先の交易についても、今まで持ってきたお土産を見て有益と判断してくれて、遠慮無くどんどん進める様にと積極的に賛成してくれるなど、逆にあ然とさせられる始末です。
 まあ、断られるよりも簡単に承認して貰った方が良いのは当然ですので、僕が文句を言う必要はないのですが、本当にこんなに簡単で良いのでしょうか?後でアルメリアさんにその辺の事情などを聞いてみましょう。

 一旦、アルメリアさんの家まで戻って出発の準備に入ります。もっとも、アルメリアさんもいつでも出かけられる様に荷物を纏めてありましたので、一応アルメリアさん用の食材を補給するだけで、すぐに済んでしまいましたし、僕には準備すらないので単に荷物を取りに来ただけの様な感じになりました。
 アルメリアさんの家の前まで持ってきたお土産は、代表の所に行っている間に、影も形もなくなっていました。既に分配も終わったのでしょうね。いつもながら素早い行動です。

 2人で集落外の草原まで来ると、『ヴァルファーレ』が大人しく待っていました。今日もエルフの子供達や戦士の皆さんが廻りに集まって賑やかになっています。ほんと人気者ですね。
 皆さんに挨拶をして『ヴァルファーレ』に乗り込みます。アルメリアさんもすっかり乗り慣れた様で、スムーズに座席に乗り込んでベルトを締めました。僕も続いて後席に乗り込んでベルトを締めます。準備が出来てすぐに離陸しました。

 まず向かった先は、いつものベースキャンプ。今日から3日間はこのベースキャンプを拠点として、「アガベ・アスール・テキラーナ」と「ケイアップル」の再調査に植え替え作業を行う予定です。

 ベースキャンプはこの前来た時と変わらず、誰かが(幻獣や獣などを含めて)来た様な形跡はありません。アルメリアさんは初めて会った時は歩いて来たのに、他の人は本当に来ない所なんですね。
 早速、何時も使っているキャンプ用の小屋作りを行って、荷物を整理してから、ゴムの木などの確認に行きます。アルメリアさんは別行動で、植物調査に行きました。

「『ヴァルファーレ』。何時も済みませんが、監視の方をよろしくお願いします。何か変わったことがあったら呼んで下さい。」

[任せておけ。安心して主の仕事をすることじゃ。]

 後に何時も『ヴァルファーレ』が居てくれるので、安心して動き回ることが出来ます。本当に有り難い事ですね。

 いつもの経路を小一時間掛けてざっと歩いて見て回りましたが、ゴムの木も廻りの椰子の木も変わりなく、元気なようです。今日はゴムの採集は行わないので見て回っただけですが、その内また採集に来ることになるのでしょうね。もしかしたら、ゴムの木も一ヶ所に纏めた方が良いのかもしれません。後で考えておきましょう。

 次に「アガベ・アスール・テキラーナ」の自生地を見に行きましたが、前回発見した9本の「アガベ・アスール・テキラーナ」も特に変わりが無く、少しですが元気に成長しているようです。
 発見場所を記した地図を見直し、まだ調査していないエリアを特定して、他にも「アガベ・アスール・テキラーナ」が無いか探してみました。その結果、昼食を挟んで夕食の時間までに、新たに6本の「アガベ・アスール・テキラーナ」を見つける事が出来ました。
 これからも継続的に調査が必要ですが、差し当たってこの15本の「アガベ・アスール・テキラーナ」を、高台に移植してしまいましょう。

 ベースキャンプに戻って、まず『ヴァルファーレ』に魚を捕ってきて貰いました。1回無造作に海にダイブしたと思ったら、口の中に大小合わせて10匹の魚が入っていました。
 見た目がサバやアジのような魚でしたので、すぐに内臓を取り出し、塩を振って天日干しにしました。明日一日ほおって置けば立派な干物になるでしょう。
 その後、夕食の準備をして、アルメリアさんが戻ってから一緒に夕食を取りました。
 夕食後には、今日の結果を報告し合い、明日の予定を確認します。
 僕の方は「アガベ・アスール・テキラーナ」の移植でどれだけの時間が掛かるか解りませんが、時間に余裕が有れば、「ケイアップル」の調査を行うつもりなので、一日がかりになるでしょう。
 アルメリアさんも成果があった様で、書き写してきた植物の絵を見ながら、気が付いたことなどをノートに書いています。書き込みを行いながらいくつかの植物について教えてくれましたが、絵を見ると蘭の様な花があったり、変な形の食虫植物のもあったりで、面白くて結構ためになりました。いったい、今までにどれくらいの新種を発見したのでしょう。今度ゆっくり聞いてみたいものです。

 翌日は朝から果樹園予定地の整地作業を行いました。
 『ヴァルファーレ』に乗せて貰って予定地まで行くと、上空を旋回しながら魔法でゴーレムを作って、予定地から20メールの範囲内に生えている植物を全て取り除き、更地にしました。
 取り除いた木の中から、大きめの木をより分けて、更地にした部分と廻りの森の境界線に等間隔で植えます。柵の代わりですが、どうしても間隔が開いてしまいますので、間に少し小さい木を植えることで隙間を無くし、簡単に獣が侵入しない様にしました。
 もっともこれ位では力の強い幻獣などは排除できないので、境界線から5メール内側に鉄柵を練金で作ります。高さも2メールで強度はかなりの物にしましたから、簡単には入ってこられないでしょう。電気が有れば電流柵にしたい物ですね。
 これで、外側の柵と内側の鉄柵の2重防壁となりました。この柵から内側15メールが果樹園と畑となります。

 その後は、更地になった高台を綺麗に耕して、2メール間隔の線を浅く掘りました。「アガベ・アスール・テキラーナ」や「ケイアップル」を植える際の目安にします。
 ゴーレムを使ったり、魔法を使ったりして、ここまでを午前中に終わらせる事ができました。
 一旦昼食にベースキャンプまで戻り、昼食後は植え替え作業に係ります。



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Part-2:ボンバード伯爵領

 『改革推進部』では、今日もみんな揃って仕事に精を出しています。
 『改革推進部』の総指揮者であるアルバートが調査旅行に出て長期不在となっても、順調に動き出した領内改革の仕事は、一日も止まることなく粛々と進めなくてはなりません。

 『保健衛生局』・『管理課』:キスリングさんからの報告
 『管理課』は、毎日汲み取り作業に全力であたっています。
 何しろ人が居る限り、黙っていても自然に溜まる物ですから、汲み取りを休むと大変な事になります。
 その為、毎日朝から晩まで牛車を連れて村々を廻り、瓶が一杯になると近くの発酵所に運び込んで発酵タンク内に投入し、また次の村に向かうといった事を繰り返しています。
 ようやく2巡目に入りましたが、今のところ各村での評判は良好で、行く村々で歓迎を受けています。みんな、トイレがあることの良さを解ってくれた様なので、私達の仕事にも理解を示して労ってくれます。
 ただ、現状の2班体制でのスピードでは各村を廻るのに時間が掛かりすぎるので、この分では早い機会に局員を増やして、牛車を3台で運用しないと間に合わなくなるかもしれません。
 アルバート様が戻り次第、相談しようと考えています。

 『保健衛生局』・『清掃課』:ギュンターさんから報告
 『清掃課』は、各村等を定期的に巡回し、村内に放置されているゴミなどの回収・焼却を行うと共に、村内各部に消毒液を散布して病原体の発生を防いでいます。
 それから、『施設課』に頼んで作って貰ったゴミ箱を使って、ゴミの集積所を各村に設けました。こうすることで、ゴミを捨てる場所を認識させ、ポイ捨てを無くしていこうと考えました。
 この為、ここ最近はネズミも少なくなってきたということですし、ハエや蚊の発生が抑えられ、病気の発生率が低下し、死亡者の減少にも役立っているようです。
 また、消臭剤の効果で異臭がしなくなったおかげで、頭痛に悩む人が減り、食欲も増進して働く意欲も増したそうです。
 こうして貢献していることが認められ、あちらこちらで歓迎を受けようになりました。
 歓迎の場では少し時間を貰って、何度も村の皆さんに普段から清潔でいることの大切さを話し、村内にゴミを捨てる人が居なくなる様に、4Sを学んで貰っています。
 
 『保健衛生局』・『施設課』:ウイリアムさんからの報告
 『施設課』は公衆トイレの設置作業が終わった後、屎尿の発酵所を作りました。それからは、他の課から頼まれた物を作って、それと並行して領内の街道整備を進める為に、現状の調査と街道整備の方法の検討して、一応の方針を決める所まで来ていました。
 アルバート様が調査旅行に行く前の打ち合わせで、まず始めに整備を行う街道を隣のツェルプストー辺境伯との間の街道にすると言われました。途中に架かる橋も含めた全長150リーグを整備対象範囲となります。街道の痛みはそれほど酷い訳ではありませんが、この街道は交通量が多く、雨が降る度に泥濘と水溜まりが出来て通行にかなりの支障が出ていました。途中に3ヶ所有る橋も大分くたびれていて、すぐにどうこうといった訳ではありませんが、大規模な改修工事が必要と思われます。

 そこで、まず街道補修に必要不可欠な土メイジを集めることにしました。アルバート様から既に話を通してあると言われましたので、メイジの集まっているいつもの屋敷に行って、メイジのまとめ役でもあるヴィルムさんに状況を説明しました。
 ヴィルムさんは、すぐに土メイジを集めてくれました。やはり、アルバート様から、今後の作業で必要なメイジを借りにくることを前もってお願いされていたので、いつでも動ける様に、予め選抜をしてくれていたそうです。
 今回の街道整備に応援に来てくれる土メイジは、トライアングルクラスを中心に、ラインクラスを入れて7人となり、土メイジの指揮はスクエアクラスのヴィルムさんが取ってくれることになりました。

 早速、ヴィルムさんを含めた8人の土メイジに『改革推進部』の建物に移動して貰い、開いている部屋で『施設課』の局員と一緒にミーティングを行います。
 ミーティングの内容は、今回行う街道整備について、範囲や整備の方法について調整し、必要な資材、作業員などの準備状況や、工事の期間などを話し合います。
 この会議で、ツェルプストー辺境伯との間の街道を整備する為のラフプランから、詳細な工事計画が出来上がりました。
 この工事計画書を持ってボンバード伯爵に面会し、説明と調整を行った後、無事に承認して貰うことが出来ました。いよいよ工事開始です。

 まず、領民から作業員を募集します。村長等には予めアルバート様が話を通してありましたので、早速領内の村等に募集の張り紙をして行きます。
 採用人数は10人。工事作業員が男性8人と炊き出しに女性2人を募集しました。基本的に工事が終わるまでは住み込みとなりますから、その間村等に不在となっても問題無い人が募集対象になります。
 工事作業員は今回力仕事が多くなるので、健康であることの他に、それなりに力があることも条件としました。炊き出しの方は20人位の食事を作り続けるので、体力のある人で、美味い食事を作れる人が条件です。
 おそらく、募集した作業員が集まるのは1週間程度は掛かると思いますから、その間整地作業の準備を進めておくことにしました。
 ゴーレムを使って街道脇から土砂を運ばせ、大雑把な整地を行います。他のゴーレムで適当な岩を集めて来て、それを二つに割って、割った面を平らになる様に削ります。後は作業員が来てから、細かい調整をして岩を敷き詰めていくことになります。
  ゴーレムの運用はトライアングルクラスのメイジが行い、岩を集めて加工する作業はラインクラスのメイジが行うように、分担作業を行って効率化を図っています。 

 『事務局』:ゾフィーさんからの報告
アルバート様が3回目の調査旅行に出てからも、村々からの嘆願書が後を絶たずに届きます。
 一番多いのは街道の整備関係ですが、その他にも公衆トイレの修理や増設の依頼等の、『改革推進部』が担当する業務に関係するものが沢山来ます。
 困るのは時々混じってくる『改革推進部』の管轄外の物で、幻獣による被害の救済や、田畑の開梱に関する嘆願、村民の病気に関する嘆願などが有ります。
 こういった書類は、見つける度にお屋敷の伯爵様に渡して貰える様に、執事さんなどにお願いします。
 今のところ『事務局』の業務は、5人の局員で分担してこなしていますが、だんだん書類の量が増える傾向があるので、その内局員を増やすことも考えないといけなくなりそうです。
 
 今回のアルバート様の調査旅行は、今までよりも長い期間になると言うことが出発前のミーティングで説明されました。
 この前の5日間も長く感じられましたが、更に長く2週間以上と言われた時は、気が遠くなりそうでした。
 アルバート様が2週間も以内なんて、考えたこともありません。
 休憩時間にお茶を飲みながら、みんなで話しをしますが、他の人たちもとても寂しいと言っています。
 時々、居ないことを忘れて書類を部長室に持って行ってしまい、誰も居ない部長室の椅子を見て思わず泣きそうになってしまいました。
 チーフの私がこんな事では、他の局員に示しが付きませんから、お腹の底にぐっと力を入れて我慢しましたが、慣れることは出来ないだろうなとも感じています。
 本当に、早く無事で帰ってきて欲しいものです。 
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