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ハイスコアガール 前世がゲームオタクの俺がラブコメを展開するのは間違っている件

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ハルオ(転生者)「とにかく俺はゲームをする」

俺は転生した。何言ってんの?頭おかしいじゃねえのと思うかも知れないが本当だ。俺には前世の記憶がある。前世の俺はこれといって世間様に自慢するような人生を歩んだわけではない。ガキの頃に4つほど上の兄貴がプレイしていたスーファミのマリオ〇ールドをプレイした事をきっかけに俺はゲームの世界にどっぷりとハマった。学校が終われば家に帰って直ぐにゲームをした。それこそ親から注意されるまで気が付かない程にプレイしまくった。

そこからはヘビーユーザーにあるように学生の本文に喧嘩を売る如くにゲームばかりをやった。親にはやりすぎに注意されても俺は無視してゲームをプレイして見かねたお袋からファミコンやスーファミのアダプターを隠される事もよくあった。小学5年くらいになった頃にはゲームセンターにも興味を持ち出して大人のプレイヤーと混じってゲーセンでプレイするようになった。学校の規則で勉強の妨げになるゲームセンターには行ってはいけませんと言われたが、俺は普通に無視してゲーセンでゲームをやった。俺のゲーセンに行ったときは360°全てがゲームに囲まれて、プレイヤー達のゲームに対する熱意も半端なく、こんな凄い世界があったんだなと感動すら覚えた。

そうやって規則を破ってゲーセンに行くわけだから、クソガキだった当時の俺は教師や親には怒られまくったな。当時の俺は好きなゲームを規制する親や教師を目の敵にしていた。今を考えれば勉学を疎かにして好き勝手にやってた俺は世間から見れば社会不適合で大人になり切れてなかったごみくず。

そんなことはおれ自身はわかりきっているし、今更ゲームをやめようと思わない。それでも前世の事を教訓にゲームばかりに集中する事はない。高校卒業までは最低限の勉強はやろうと思っている。

前世に未練はない。今の俺は矢口ハルオという名で新たな人生を歩んでいる前世の記憶をもったゲーマーだ。

ーーー。


ゲームセンター『マルミヤ』は俺の隣町にあるゲーセンだ。チャリで行くと少し遠いが、どうして隣町まできてゲーセンでゲームをやるのも俺が現在通っている小学校の教師達の目を盗んでプレイするためだ。当然のようにこの当時の前世の頃の俺の時代以上に学校の教師を含めた大人達がゲームセンターを目の敵にしている時代だからだ。そのため地元でゲーセンでプレイしていると教師に見つかって親も呼び出されて色々と面倒くさい事になる。

だから俺は隣町のゲーセンでプレイしている。それも理由の一つだけど、もう一つの理由としては、このゲーセンの魅力はオール50円でプレイできる事だ。所持金にすごく限りがる小学生の俺には、この50円が凄く魅力的で、隣町までチャリで苦労してまでくる価値がある。そして目の前にいる熱気をもったプレイヤー達がプレイしているゲームも俺の目的の一つだ。

「だあー!負けた!」

「ちきしょー!!」

(相変わらずスゲー熱気だな……この時代のスト2は)

ストリートファイター2。1991年3月に稼働した格闘ゲームというジャンルを確立した格闘ゲーム雛形となったゲームである。1970年代から1980年代まで、スペースインベーダーやスーパーマリオブラザーズを筆頭に、ゲームセンターや家庭用ゲームの主流となっていたのはシューティングゲームやアクションゲームだったが、1990年代は、このストリートファイター2の登場により、ゲーマー達が最も支持を集めたのが、格闘ゲームである。

特にストリートファイター2は、弱中強といったパンチキックボタンの六ボタン方式やキャラによって操作性が違うキャラを含めて格闘ゲームの基礎が、このストリートファイター2から生まれたといっても過言ではなかった。

無論、俺はスト2の直撃世代ではなく、知り合いの年上ゲーマーから当時の熱気を口コミだけで聞いていただけなので実感はなかったが、実際に体感すると凄いとしか言えず、上手く説明できる自信がなかった。

「しかし、この子は凄いよな」

「ああ、女の子で、しかもザンギで17連勝もしてるもんな」

女でザンギ使い?珍しいな……格ゲーで女性プレイヤーでも珍しのに、しかもよりにもよって上級者向けのザンギを選択するなんてな。

あ、ザンギとはザンギエフの略であり、ストリートファイター2に登場するオリジナル8キャラクターの一人だ。スト2でもトップクラスの体力と攻撃力が自慢のキャラだが、しかしその反面に巨体故に攻撃を受けやすく、移動速度も全キャラ中最低クラスでありジャンプ力も低く、波動拳やソニックブームといった弾技に対して回避が全キャラ中難しい為に上級者向けのキャラだ。

必殺技も波動拳や昇竜拳と違い、投げ技のスクリューパイルドライバーはレバー一回転と独特な必殺技の為に、稼働初期のザンギエフは格ゲープレイヤー達から敬遠されていた。

(しかし上手いな、このザンギ使い。大足で転ばせて打撃重ねのスクリュー。やってることはザンギが勝利する基本パターンに持ち込んでる。)

実際に相手のケン使いはなすすべもなくザンギにスクリューに捕まり負けてしまった。

『YOU LOSE』

「俺のケンがザンギに負けた!!」

(立ちスクリューを決める腕もそうだが、波動拳を先読みしてジャンプして攻撃するタイミングも上手い。このザンギ使いはかなり対戦に慣れてるな)

俺はこのザンギ使いが気になって気になって反対の筐体の方に向かうと、そこに居たのは俺と同い年の黒髪の美少女だった。

(おいおい。女子だとはギャラリーの話から聞いたけど、俺の学校のクラスメートの大野じゃねえか!)

大野昌。俺と同じ学校に通うクラスメートの女子。美少女で運動も勉強もクラス一のいや、六年一の生成績優秀な才色美女を体現したようなクラスの人気者。そして家は金持ちで、これでもかとあらゆるもの神から授かったような少女だ。

クラスは一緒でも俺とは全く違う人種の人間だと思ってたのに、そのお嬢様がまさか俺と同じように学校の規則を破ってゲーセンでスト2をプレイしているとは思わなかったな。


(あの大野がゲーセンでプレイしてることには驚いたな。だけど、俺にはお嬢様の都合は関係ない。強いプレイヤーと当たるなら戦う。俺はそれだけだ)

とは言ったものの……何で行くかな。立ちスクリューが出来る相手に待ちガイルでいっても機動力に欠けるし、初代ザンギはスクリューの間合いは広いし投げ終わった後の間合いも短いし、転ばされたら終わりだからな。

つうか初代スト2はキャラ性能が極端に尖がって相性も極端なんだよな。

(このバージョンだとたいして強くないけど、あれでいくか)

俺の番に回ってきた。俺は対戦台に座り50円を投入。スタートボタンを押してキャラはリュウを選択する。

「次はリュウだな」

「主人公って事で選んだよな」

リュウ。初代ストリートファイターから登場した長年に渡って発売されたストリートファイターシリーズの主人公キャラである。その特徴は三種の神器と呼ばれる波動拳、昇竜拳、竜巻旋風脚という必殺技コマンドは、後の格闘ゲームの主人公達のスタンダードとなるほど格闘ゲームの歴史に多大な影響を与えたキャラの一人である。


(ザンギとの戦いのセオリーは、いかにして近づかれないで、そして画面端を背負わない事だ。だからこそ俺の選択は)

『波動拳!波動拳!波動拳!』

大野ザンギはハルオのリュウの波動拳をガードする。必殺技の攻撃ガードしても少しだが、確実にダメージを与える。そして波動拳の弾幕に耐えきれずに安直に飛ぶと……。

『昇竜拳!』

対空技昇竜拳によって落とされる。

「波動昇竜だ」

「リュウの基本プレイだな」

波動昇竜。波動拳で相手を飛ばせて昇竜拳で落とすというリュウやケンといった道着キャラのストリートファイター2の基本戦術の一つである。ただし相手の飛ぶ予測を間違えると、相手のコンボ食らい大ダメージを食らう危険性もあるので、相手の飛ぶ予測を間違えない事が重要。

(下手に待つとザンギのスクリューの餌食になる。波動拳を中心に展開を作って先手をとる)


波動拳を中心に攻めてるのは先手を取るだけじゃない。波動拳でダブラリを誘発させる。ダブラリで弾除けをした主観にほんの僅かであるが訪れる下が無防備になる。その瞬間を中足を当てて、そこでキャンセルで波動拳につなげる

『ウワ~ア~ウワ~ア~』

「ここまでの試合で初めて女の子がラウンドを取られたぞ!」

「このリュウ使いの小僧もただもんじゃねえ!」

(確かにコイツは対戦慣れしてる。だけど、お前みたいな強いザンギ使いとは前世でも経験している。前世の頃から磨いてきた対戦の経験則で培った俺の腕を甘く見るなよ!)

さて、次はどうくる大野?


『RIUND2 FIGHT!』

『波動拳!波動拳!』

「また波動拳だ。」

「つうかさっきから滅茶苦茶じゃねえかこの小僧」

「確かにそこ撃つのかよって結構あぶないプレイしてるもんな」

自分でも理解してるよ。完ぺきなプレイなんてない。大野のザンギと戦って分かった事は安全だけを重視してリスクを背負わないプレイしても勝てない。確かにいい勝負はするかもしれないけど、それだけだ。それだけじゃ勝てない。弾幕中心で攻めたら飛ばれてスクリューを食らえばそれで俺の負けはほぼ確定。

この対戦はいかに俺が転ばされないか、大野はいかに転ばせてスクリューを出すか、立ちスクリューを成功させるかだ。上級者同士の戦いともなれば、ちょっとのミスが例え大幅に体力差があろうとも即負けだ。大野は明らかに上級者の立ち回りのそれだ。

(うれしいぜ大野。お前みたいなプレイヤーとこんなに早く勝負する事が出来るとは思わなかったぜ!)


ちょっとしたミスで命取りになる対戦。俺はそれがやりたくて対戦が好きなんだ。


大野とハルオの対戦の攻防はレベルが高かった。2ラウンドは大野がハルオの攻撃のタイミングを盗んで辛勝。3ラウンドはお互いに一歩も譲らない激しい攻防もあれば、駆け引きも高度なものであった。

互いの体力で必殺技の一撃でKOされるまで縺れた。そこでお互いにけん制を繰り返して、直ぐに飛び込まなくなった。

「うう~スゲー緊張感」

「女の子のザンギも小僧のリュウもあと一撃で勝負が決まるぜ」

「だから互いに下手に動けねえ……」

ギャラリーもどっちが先に動くとハルオと大野の試合に夢中になっていた。

その決着は同時に動いたと思われたが、僅かに早く動いたハルオのリュウの竜巻旋風脚がザンギにヒットして勝負がついた。

『RYU WIN』

たった3ラウンドだが、それでも高レベルの戦いを制したのはハルオだった。ハルオは何とか勝利する事が出来てホッとした。

(危なかった……まさか大野がここまでやるとは思わなかった。大野が対戦経験をもっと積んでたら俺が負けてたかも知れねえ)

そう思った時に大野が俺の所にやってきた。

「……大野?」

「……(ぷく~)」

喋りはしないが何か悔しそうな表情で俺を見ていた。たぶん負けた事が悔しんだろうと思った。

「まさか驚いたぜ。お嬢様の大野が俺と同じようにゲーセンにいるとは……」

「……」

大野は何も喋らない。俺を無表情でじっと見つめているだけだ。

「何か喋ってくれよ」

「……(プイ)」

そして大野はゲーセンを後にした。そういえばアイツが喋って所は見た事ねえな。クラスで基本的に無口で女子の話題も基本的に無反応だったからな。ひょっとしてアイツ、ひとりぼっちなのか?

「まさかな」

だってクラスの人気者で金持ちで成績優秀のアイツがボッチなんて想像がつかねえな。


だけど、この対戦をきっかけに俺と大野がゲームを中心に一緒に遊ぶ事になるとは予想もしなかった。


 
 

 
後書き
簡素なゲーム用語

スト2 ストリートファイター2の略

ザンギ スト2オリジナル8キャラクターのザンギエフの略。格闘ゲームの投げキャラの元祖であり、数多くリリースされた格闘ゲームにおいて投げキャラの基礎を築いたキャラクター

スクリュー ザンギエフを代表する必殺技の投げ技スクリューパイルドライバーの略

ダブラリ スクリュードライバーを同様にザンギエフを代表する必殺技のダブルラリアットの略。パンチボダン三つ同時押しで使用可能で使用中は弾除けと対空が可能。ただし、使用中は下段が無防備になる。

道着 ストリートファイターシリーズにおいてリュウやケンは微妙に性能が違った同系統のキャラであった為に、このためリュウやケンを使うプレイヤーは道着プレイヤー、または道着使いとも言われていた。

キャンセル 通常技をヒットさせた瞬間に必殺技を入力すると連続して必殺技の攻撃が連続で入る。格闘ゲームにおいて基本的なコンボの一つ。当初は開発陣からはバクとされていたが、最終的に修復はされずにキャンセルは仕様という事になった。

ガイル スト2のオリジナル8キャラクターの一人。初代スト2においては弾なしのキャラにとって鬼門とされたキャラクターであり、初代スト2プレイヤーにおいて多くのトラウマを量産したことで有名なキャラ。待ちガイルという単語も、このキャラクターより生まれた。

待ちガイル 斜め下にレバーを貯めて弾のソニックブームと対空のサマーソルトキックの二つ同時に貯める事ができ、通常技の中キックと弾技のソニックブーム、飛んだ相手にサマーソルトキックで対空というシンプルながら、弾がないキャラにおいては余程の実力差はないかぎりは凶悪な戦法であり、スト2稼働初期のゲーセンにおいては、待ちガイル禁止という独自の規制もするほどに恐れられた戦法の一つ。 
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