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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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青春の憤り

<アリアハン近郊>

アルル一行はアリアハンより北に位置する『レーベ』を目指し進んで行く。
途中、スライム、大カラス、一角ウサギなどのモンスターに襲われ戦闘を余儀なくされる!
アルル、ハツキ、ウルフは傷付きながらも勝利を重ね、この新米パーティーの戦い方を実践を持って学んで行く。

そして日は傾き黄昏が空を覆う頃、パーティーリーダーの少女が言葉を発した。
「って言うかリュカさん!貴方も戦って下さい!」

そうなのだ!
4人パーティーにも拘わらず戦闘を行っているのは3人…
リュカは戦闘に加わる意志すら見せていない。

「え~!僕、争いごと嫌いなんだよねぇ~…」
「好き嫌いじゃないんだよ!俺達チームなんだからさぁ…リュカさんは強いんだろ…一緒に戦ってよ!」
最年少のウルフが疲れ切った口調でツッコミを入れる。

「僕、強くないよ!『勇者』とかそんな大層なもんじゃないし…でも逃げ足には自身があるから、ヤバくなったらみんなを担いで逃げ出すよ!」
右手の親指を立てて爽やかな笑顔で答えるリュカ…
二人の少女はリュカの笑顔に魅了され顔を赤く染め上げる。
夕日に照らされてなければ気付かれていたであろう…

「それよりさぁ…もう日が暮れるよ!一旦町へ戻ろうよ!」
「何言ってんだよ!早くバラモスを倒して平和な世界にしなきゃ!!」
「イヤイヤ!今日は冒険初日だしさ…そんなに慌てても失敗しちゃうよ」
「そうよウルフ!リュカさんの言う通りよ!今日は一旦アリアハンへ帰りましょ!」
「ハ…ハツキまで…」
世の中、女性の意見は採用されやすい。
そして少女の心を魅了したリュカの意見は採用される。
ウルフは少しふて腐れながらも、姉的存在のハツキに従ってしまうのである…
実のところアルル達は町からそれ程離れてはいない。
町を出たのが遅かった事もあるが、冒険初心者の為進行が遅いのである。



<アリアハン>

日も沈み殆どの商店が店じまいをした頃、アルル達はアリアハンの城下町へ帰り着いた。
「私の家はすぐそこなのよ。あんまり広くはないけれど、みんなが寝泊まりする事は出来るから…きっとお母さんも喜んでくれるわ!」
アルルが皆を自宅へ誘う中、リュカは足を止めアルルの提案を拒否する。
「あ~…僕は町の宿屋に泊まるよ!」
「何でよ!?そりゃ、大したお持てなしは出来ないけど…わざわざ宿代を払う事ないでしょ!?遠慮はしないでよ!私達仲間でしょ」
アルルは今までに出会った事のない、この魅力的な男性と少しでも一緒に居たく、必死に我が家への宿泊を薦める。

「分かった分かった…正直言うとね、町で女の子ナンパしてから宿屋へ泊まるつもりなんだ!」
「え…ちょ…な、何考えてんの!?」
ハツキもウルフも頷き呆れる。
「明日から本格的に旅立つのよ!今日はゆっくり休んで英気を養わなければならないのに!そんなの…ダメよ!!」
「うん。それは大丈夫!僕、戦闘しないから!」
言い切るリュカ。
「戦闘はしろよ!」
突っ込むウルフ。

「ともかくダメなものはダメ!」
「そうよ!ナンパなんてダメです!」
我が儘なアルルとハツキ。
「う~ん…困ったなぁ…」
リュカは悩み、そしてアルルに質問する。
「じゃぁさ、一つ聞くけど…アルルのお母さんて美人?」
「………宿屋へ泊まって下さい!!」
そしてリュカは夜の町へと消えて行く…



日も昇り、一人別行動の仲間を迎えに宿屋まで赴く3人の若者達。
昨晩この宿屋に泊まった客は一人だった為、迷うことなく目的の客室を見つける事が出来た3人。
しかしアルル達3人は、リュカが居るであろう客室の前で躊躇い戸惑っている。
理由は…聞こえるからである!
安普請の宿屋な為、客室内の音がだだ漏れなのだ!
そして、その客室内からはベットの軋む音と女性の喘ぐ声が聞こえてくる…

「何…あの人!?本当に女ナンパして部屋に連れ込んだの?」
呆れる少女二人とは別に、リュカの行いに怒りを感じる少年。
真面目な旅であるにも拘わらず、常に不真面目な大人のリュカが腹立たしく思い、思わず客室の扉を勢い良く叩き開けるウルフ!
「アンタいい加減にしろ…よ…!?」

一言で言うと、竜頭蛇尾。
ウルフは威勢良く怒鳴ったのに尻つぼみで言葉をなくしていった。
室内にいたのはベットに仰向けで寝そべる裸のリュカ…
そしてリュカの上で裸で腰を振る一人の女性…
ウルフと女性は目が合い互いに硬直する。

「シ、シスター・ミカエル…」
絞り出す様にウルフが呟いた…
「きゃー!!!!」
室内に響き渡るシスター・ミカエルの叫び声!
慌てて扉を閉めるウルフ!



それから1時間…
ウルフは茫然自失で喋る事が出来ない。

アルルはシスター・ミカエルの事をハツキから聞く事に…
シスター・ミカエルはアリアハンの教会で勤めるシスター。
髪はキレイで長いブロンド。瞳は青く肌は褐色。小柄ながら胸が大きい。
教会が運営する孤児院で子供達に人気のシスターである。
そしてウルフの憧れの女性でもある…


やっと服を纏い客室から出てきたリュカ。
その後ろから躊躇いながら出てくるシスター・ミカエル。
シスター・ミカエルはハツキとウルフに誰にも言わぬ様懇願する。

リュカは若者3人に、先に外で待つ様促すとシスター・ミカエルにキスをして一時の別れを告げる。
「ミカエルさん。またアリアハンに来る事があったら貴方の元へ現れてもいいかな?」
「はい。リュカさんに会える日を楽しみにしてます」
そして二人は再度キスをして別れた。
このやり取りを物陰から覗く3人の若者。


「いや~…メンゴメンゴ!マジ僕の好みだったからさぁ~…ちょ~燃えちゃってさ!全然寝てないよ!」
シスター・ミカエルと別れたリュカはアルル達と合流し、ヘラヘラ状況を説明する。
「おい!!シスターとは何処で知り合ったんだよ!!」
憧れの女性の閨事を目撃してしまったウルフは、半ば八つ当たり気味にリュカへ言葉を叩きつける。

「何言ってんの!?シスターに出会うには教会に行くしかないでしょう?」
ウルフの怒気を含んだ言葉に、不思議そうな顔で答えるリュカ…
「リュカさんは教会でシスター・ミカエルの事をナンパしたんですか!?」
シスター・ミカエルの事を知っているハツキは信じる事が出来ず、思わずリュカに問いつめてしまう。
「あ…あり得ない…あの真面目なシスター・ミカエルが…」
「ふざけんなよ!!アンタ、シスター・ミカエルに何て事してんだよ!!シスターに謝れ!…謝れこのヤロー!!」
半分泣きながらリュカに詰め寄るウルフ…

「ふざけているのは君だ!ウルフ…」
ウルフの悲痛な叫びに穏やかに話しかけるリュカ。
「もし僕がミカエルさんを力任せにレイプしたのなら、ウルフの言い分は尤もだけど…僕は口説きはしたが、強制はしてない!今のウルフの言い分はミカエルさんの自由意志を軽視している事になる」
リュカはウルフの目を真っ直ぐ見つめ優しく語り続ける。
「ミカエルさんは自由なんだよ…自分で考え、自分で決めて行動する事が出来るんだよ。それを忘れちゃダメだよ!」
リュカに先程までのチャラさはない。
だからこそウルフの憤りは大きくなる。

「うるさい!黙れよ!!お前みたいなチャラい男が、シスター・ミカエルの事を偉そうに語るなよ!!」
そうリュカに吐き付けると、逃げ出す様に町の外へ出て行ってしまった…
「ちょっと!一人で町の外に出ては危険よ!!」
アルルの叫びも思春期の少年の心には届く事は無い…
まだ碌に冒険をしていない魔王討伐一行…
まともに冒険の旅は出来るのだろうか…?



 
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