| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ

作者:エギナ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

06.そうだ、刑務所に逝こう。
  第23話

 
前書き
in 黑猫
side 黒華琴葉 

 
 嗚呼、また死んだ。

 また、殺された。



「………ぁ」



 だけど、躰の感覚がある。
 風が当たっている感覚がある。
 花の香りがする。

 私は未だ死ねない。


 躰を起こすと、其処は見慣れた部屋。私が良く訪れていた、前の医務室だ。
 如何やら、涙を庇って撃たれた後、此処に連れ戻され、治療を受けていたっぽいな。

「琴葉さん………」
 レンの声。あの時で聞くのは最後の筈だった、男にしては少し高めの、何処か可愛らしい声。
 前は此の声が好きだった。其の純粋な心も、透き通った瞳も、ほんの数週間前までは大好きだった。

 なのに―――




「如何為て……如何為て!! 如何為て毎回上手く行かないんだよ!! 如何為てこんなにお前等が好きで、好きで堪らないのに……毎回、毎回毎回毎回!! 何度も何度も何度も殺さなきゃいけない!! 如何為て私を死なせてくれない、願いを叶えてくれない!! 如何為て私を分かってくれないんだよ!!!」




 頭を抱え、只叫ぶ。



「皆………皆分かっているフリを為ているだけなんだ!! 誰も、私が何者で、何がしたくて、何をして欲しくて、如何為て欲しいのか、誰も分からない!! 何で、お前等は誰かに理解して貰えるんだ………如何為て私は誰にも理解して貰えない、本当に気付いて貰えない!!」



 全て、全て言ってしまいたい。



「何で私だけ理解して貰えないの!? 私が何かしたって言うの!? ねぇ、教えてよ!!」



 嗚呼、死にたい。



「死んで、全てを終わりにしたい」































「其れが、君の願いだね?」































 凜とした、良く響く声。

「フラン……さん?」


 何時の間にか涙が溢れていて、フランさんの顔が歪んで見える。

「嗚呼、そうだ。君に酷い事をして、突き放された男だよ」
「で、琴葉。お前は其れを望んでいるのか? ……俺が叶えてやるから、さっさと肯定しろ」

「………葉月?」


 嗚呼、もう最悪だ。如何為て此奴が。


「ぁははは……そうだよ。私は、誰かに理解して貰うって言う願いを叶えて、そして死ぬ運命だからね」


 もういっその事、此の世界に居られる全ての時間、此の人達との思い出を、全て消す事に遣うんじゃ無くて―――



 全て此の人達に預けてみようかな。



  ◇ ◆ ◇



「で、首領を殺してやるってお願いされたので、取り敢えず其のままに為てあげましたけど?」
「良かったね、主。漸く願いが叶いそうだね」
「……そしたら、ラルとグレースの願いも叶えないとじゃん」

 私は、ラルとグレースと共に、フランさん達が色々考えている横で話を為ていた。

「別に大丈夫ですよ。僕の願いが叶う事なんて、絶対に有り得ませんからね」
「僕の願いだって、叶う訳無いから。だから、主が幸せになってくれれば、僕は如何でも良いんだ」
「でも、さ………」

 ラルは、本当は吸血鬼。だけど、ラルは吸血鬼の力が無かった。当然の様に、忌み子として扱われ、人間の街で逃げていたところで出会った。其れが私とラルの始まり。
 彼の願いは、吸血鬼として認められること。だが、其れは私が其れを認めたとしても意味は無い。同じ吸血鬼で、更に身分の高い吸血鬼に認められなければ彼の願いは叶わないのだ。

 グレースは、人間。だけど、他人の能力を奪う悪魔と言われ、そして嫌われた。捨てられた。そして、逃げていたところで出会い、私とグレースの始まりとなった。
 彼の願いは、能力を捨てること。だが、其れは私が能力を消そうとしても、彼の能力は消え無かった。彼の能力を具体化することも出来なかった。


 だけど、願いが叶わない限り、私達は死ぬことは出来ない。
 願いが叶うまで、無限の時間と、世界を只管彷徨い、壊し続ける。
 其れが時の旅人。


「あ、そうだ。僕達は仕事ではクールで、格好良くて、憧れの的だけど、普段はお巫山戯が大好きで、何処か馬鹿な首領ではなく、本当は仕事でも普段でも、僕達が大好きで、甘えん坊で、寂しがり屋で、泣き虫な首領を知っていますからね」
「そそ。僕達が大好きで、甘えん坊で、寂しがり屋で、泣き虫で、可愛くて、頭が良くて、体型は僕のタイプド直球で、優しい主、僕大好きだよ」
「僕もです」

「告白みたいなことをされているはずなのに、その前に言ってることが気になりすぎてそっちまで気が回らないんだけど? 甘えん坊? 寂しがり屋? 泣き虫? そんな訳ないでしょ………う…………」

 急にグレースが腕を伸ばしてきたと思ったら、私の頭の上に手を乗せて、優しく撫でてくる。



「ほら、矢っ張り。主は甘えん坊で、寂しがり屋で、泣き虫だ」



 頬に温かいものが垂れてくる。
 あれ、泣いてる?


「あれ……如何為て……?」
「僕達は、首領を理解する事が出来る、此の世にたった二人しか居ない人ですから。首領の事なんて、全て分かりますよ」

「………恋愛とか、キョーミ無いし」
「ほほう? 僕達は恋愛の対象外ですかぁ」
「当たり前でしょ! ………どっちかなんて、選べないし」

「「二股ですか」」

「違う! ………って、如何為て二人とも笑ってるの。そんなに可笑しいこと言った? 私」



「首領………琴葉さんって、矢っ張り馬鹿ですね」
「今だけ主改め琴葉は、馬鹿で、そんなところも可愛いよ」

「……っまた頭撫でて! 子供扱いは嫌だって言ってるでしょ」

「沢山撫でてあげますよ」
「琴葉の髪、ふわふわしてて気持ちいいし」


 うぅぅうううあああああああああ………
 少し気持ちが良いのが悔しかった。


  ◇ ◆ ◇


「あの、幻を見せる能力者を呼んで下さいお願いします!! 大っ至急っ!!」

 ………レンは何を叫んでいるのだ?
 って、私は何故機械の中に………しかも頭だけ。ヘルメットを被っているみたいな感じ。

「嗚呼、やっと来た………じゃあ、此のデータを僕達に見せて下さい、お願いします」


 ………何を始める気だよ。


「始めます」




 ………何を?




 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧