| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

デート・ア・ライブ〜崇宮暁夜の物語〜

作者:瑠璃色
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

一部:ゲームスタート
第0ルート:暁夜スタート
  プロローグ

 
前書き
感想くださると嬉しいです! 

 
空間震--発生原因不明、発生時期不安定、被害者規模不確定の爆発、振動、消失、その他諸々の広域振動現象の総称であり、空間の地震と称される突発性広域災害。地震や津波よりもタチの悪い災厄。何も分からないか、対策しようがなく、シェルターに避難するしかない。

これが、一般人に知られている情報だ。だが、空間震の本当の原因は『精霊』と呼ばれる特殊災害指定生命体。 謎多き存在。透明な訳ではなく、外見は『美しい少女』の姿をしている。パッと見は人間と変わらない。 但し、少女が持つ圧倒的な戦闘能力を除けばだ。

何故、圧倒的な戦闘能力を少女、『精霊』が持つという情報を知る事が出来たのか。それは簡単だ。実際に人が戦ったからだ。正しくは《対精霊部隊(Anti Spirit Team)》通称、《AST》と呼ばれる陸上自衛隊所属の特殊部隊がだ。幾度となく繰り広げられてきた精霊対人の戦いは圧倒的な差で人側の敗北ばかり。討滅すること以前に、傷もつけられない。ただ、『精霊』に痛くも痒くもない悪あがきをするので精一杯の現況。人がどれだけ頑張っても、精霊と人の力量差が覆ることはない。決して届かぬ領域に『精霊』は位置している。

それならば、と。 一人の男性がとある策を思いついた。それは、他の人からすれば、愚かで恐ろしくましてや、罪にもなりえる禁断の策。

『■■■■を対精霊兵器にする、というのはどうかな?』

その言葉に、誰もが驚愕し、反論を口にした。しかし、その言葉は予想通りだといいたそうな愉快な笑みを口元に刻み、男性が両手を開いた。

『皆さんが反対するのは分かります。ですが、安心してください。 ■■■■には既に許可はもらっていますので』

男性がそう告げたタイミングで、一人の青年が顕現した。まるでタイミングを見計らっていたかのように、唐突に突然に青年は現れた。

『お初にお目にかかります。DEMの皆様。私は--■■■■と申します。 以後、お見知り置きを』

光の差さない紅闇色の瞳に、色素が少し抜けた薄い青髪の童顔の青年、■■■■は、恭しく頭を下げた。

これは、精霊と■■■■の物語である。


4月10日、月曜日。大抵の学校が夏休みを終える時期になった。要するに、新学期の始まりだ。ただ、夏休みが終わったとはいえ、暑いのには変わりがない。外には、くたびれたスーツを着た人や、学生服を着た少年少女達が夏休みを惜しむように歩いている。そんないつもの日常の中で、一人の青年はとある学校の屋上で、仰向けに寝転がっていた。

瞼は閉じられており、色素の薄い青髪は陽の光で艶やかに輝いている。両耳にはイヤフォンが挿してあり、ポップ系の曲を口ずさんでいた。年齢はおよそ17歳。白のカッターシャツに学生ズボンを身につけ、室内シューズの後ろ側に『崇宮(たかみや)暁夜(さとや)』と青年の名前らしき文字が書かれていた。

ガチャ

と、屋上の扉を開く音がした。但し、青年の耳に届くことはない。別段、屋上に誰かが来るのが珍しいという訳では無いし、ましてや青年の所有する土地でもない。

カツカツ

と、今度は鉄格子を歩く音が響く。その音は徐々に、青年が眠る位置まで近づいてくる。やがて、その足音がすぐ近くで止まると、そのタイミングを見計らったように、青年は瞼を開いた。

「・・・白か」

開いた視界の先、そこに見えたのは陽の光ではなく、白。わかりやすく言えば、白色の下着。別に青年が見たくて見た訳では無い。見せられているのだ。被害者は青年。加害者は白パンを履いた目の前の人物だ。

「よく見つけられたねー、折紙ちゃん」

「当然。 あなたがいる所は、屋上と教室のどちらかに絞られる。そして、確率が高いのは屋上」

白パンを履いた人物、鳶一折紙。 容姿は綺麗な銀色の髪を肩まで伸ばしており、普通に可愛い分類に入る。ただ、かなりの肉食系だ。しかも、普通の肉食系よりもタチの悪い物静かな肉食系だ。 クラスメイトの殿町宏人の話によれば、『恋人にしたい女子ランキング』で三位に入る実力者らしい。 しかし、クラスではいつも一人で友達のいない孤高の少女。 のはずなのだが、崇宮暁夜がASTに所属した事で、何故か彼につきまとうようになったのだ。

「・・・よく知ってるね。 俺のこと」

「これだけじゃない。 年齢およそ17歳。血液型はA型。身長は174cm。体重62Kg。 座高91.2cm。 上腕31.4cm。 前腕24.9cm。 B83.2/W70.5/H88.5。 視力/右:0.8/左:0.8。 握力/右:45.6kg、左:43.5kg。 血圧128~74。 血糖値87mg/dl。 尿酸値4.1mg/dl。 風呂で最初に洗う部位は右胸。テストはいつも学年三位。小さい頃の夢はヒーロー。休日は、ジムに通っている。趣味はサッカー。 好きな食べ物は唐揚げ。苦手な食べ物は寿司。苦手なタイプはグイグイとくる女性。好きなタイプは、物静かで自分に合わせてくれる女性。要するに私」

「・・・うん、まぁ、途中から普通の方法では知ることの出来ない俺の個人情報があった訳なんだが、どういうルートでそれ知ったの?」

若干、と言うよりかなりドン引きした表情で、暁夜はイヤフォンを外した。その質問に対して、折紙は、

「一緒に住んでいるのに、あなたの事を知らないわけがない」

首を傾げ、そう答えた。

(首を傾げたいのは俺の方なんだけど!?)

「それより、そろそろ教室に戻った方がいい」

折紙はそう言うと、先にハシゴを降りていく。暁夜は短く返事をして、イヤフォンと携帯端末を懐に押し込み、大きな欠伸とともに少し遅れてハシゴを降り、一緒に教室へと向かった。

彼らが通うのは来禅高校。 意外と生徒数が多い学校だ。廊下を歩く度に、男共の嫉妬の視線と女子からの好意の視線に晒されながら、暁夜と折紙は自分達の教室へと向かう。やがて、『二年四組』の札が掛けられた教室に辿り着く。 どうやら、ここが自分達がこれからお世話になる教室の様だ。折紙が扉を開け、続けるように中に入る。と、ベランダ側の窓際で談笑する知り合いを視界に捉えた。

「よっす、殿町と士道」

「よっす、暁夜」

「あぁ、おはよう。 暁夜」

暁夜の声に、逆立てられた髪型をした青年と、青髪に童顔の青年は挨拶を返した。この二人は、暁夜の1年生の時からの親友だ。

「まぁた、お前は鳶一と仲良く登校してきやがったのか? このイケメン!」

と、何故か嫉妬の炎を瞳に灯らせる逆立てられた髪型をした青年の名は、殿町宏人。 ノリが良く、面白い。

「なぁ、鳶一って、誰なんだ?」

一人だけ話についてこれていない青髪に童顔の青年の名は、五河士道。 とにかくイケメンで、中二臭さが微かにある。

「お前知らないのか? 鳶一折紙といったら、うちの高校が誇る超天才で超優等生なんだぜ」

「それに、『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』では三位に入る美少女だ」

「因みに、『恋人にしたい男子ランキング・ベスト356』もあるぞ。暁夜はダントツで一位。士道、お前は真ん中ぐらいだな」

「そういうお前は何位だったんだ?」

殿町の言葉に、士道が尋ねる。それに対し、殿町は、フッ、と鼻で笑い、

「そんなに聞きたいか? 俺の順位を」

「あぁ、聞かせてくれ」

「いいだろう。 聞いて驚くなよ! 俺の順位は---三百五十六位だ!」

胸を張り、そう告げた。

「最下位かよ!? まさか、お前が主催したのか!?」

「まぁ、このランキングはマイナスポイントの少なさで勝負だったからな」

「どうやら、俺にはマイナスポイントが無かったんだ。寧ろ、プラスポイントが沢山だった」

肩を落として悲しげに答えた殿町に、士道が哀れみの目を向ける中、ダントツ一位の座を余裕で手に入れた暁夜は、自慢げというより普通の口調で答えた。

「おっかしいだろ!! 頭も良くて運動神経も抜群でモテモテとか、どこのギャルゲー主人公だよ! お前はァァァアアアッ!!」

最下位の殿町は、血涙を流さん勢いで飛びかかろうとしたタイミングで、教室の扉が開いた。入ってきたのは、線の細い眼鏡をかけた小柄の女性だ。

「あれ?タマちゃんだ」

「やったー、タマちゃんだ」

「ラッキー、タマちゃんだ」

生徒達からそんな声が聞こえた。この女性は、生徒達から相当人気のある先生だ。

「はい、皆さんおはよぉございます。 これから一年、皆さんの担任を務めさせていただきます、岡峰 珠恵です」

前の教壇に立ち、そう自己紹介するタマちゃんこと、岡峰珠恵。

「ほら、先生も来たし、そなへんにしろって殿町」

「あぁ、そうだな」

士道、殿町、暁夜の3人はそれぞれの席に腰を下ろした。暁夜の席の位置は、折紙の座る席の前だ。その後も、クラスメイトが順番に簡単な自己紹介をしていく流れとなり、今日も今日とて退屈で平和な当たり前の日常が始まったなぁ、と暁夜は胸中で呟いた。



夏休みが終わった初日の学校ということもあり、始業式だけが本日の日程となるため、午前中で終わった。 それもあり、昼で終わった生徒達は騒いでいる。確かに、午前中で帰れるのはテスト期間ぐらいのものでめったにないからだ。

「五河〜。 どうせ暇だろ? 飯行かね〜?」

殿町がそんなことを言いながら、士道に声をかけてきた。

「悪い、先約があるんだ」

「マジか!」

士道に断られたことで残念がる殿町。

「もしかして琴里ちゃんとか? いいよなー、あんな可愛い妹と一緒に住めて」

「いや、そうでもないぞ。 あれは妹という名の生物だと俺は思う」

「そんなわけねえだろ〜。 でも、次は付き合えよ〜、五河」

「あぁ、今度は空けとくよ。 またな」

士道はそう言って、誰よりも早く教室を出ていこうとすると、

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーー

街中に危険を知らせるサイレンが鳴り響いた。

『これは訓練ではありません。 これは訓練ではありません。 前震が観測されました。空間震の発生が予想されます。近隣住民の皆さんは速やかに最寄りのシェルターに、避難してください』

と、遅すぎないほどの速さで聞き取りやすいような大きさでアナウンスが流れる。

「おいおい、マジかよ」

殿町がアナウンスに顔を青くする。ただ、誰一人、そのサイレンに慌てることもない。というのもこの日のために幾度となく訓練を行ってきた為、何をすればいいのか分かっているのだ。

「さーて、俺達も動きましょうか。 折紙ちゃん」

「ええ」

クラスメイト達がシェルターに向かう中、暁夜と折紙だけは気配を悟られないように逆の扉から出て、シェルターとは別の場所へと向かった。

数分後、教室からかなり離れた屋上にて。ワイヤリングスーツを着こみ、CRユニットと呼ばれる特別な対精霊装備を纏う一人の銀髪の少女と、片手に白塗りの片手剣を持ち、耳に通信機を付けた薄い青髪の青年が立っていた。

「あー、こちら、暁夜。 オペレーターちゃん、命令プリーズ♪」

『オペレーターちゃんはやめてください。暁夜さん。そこに折紙さんもいるようですので、手短に上からの命令を伝えます。 今回の討滅目標は、識別名『プリンセス』です』

「ふーん。 『プリンセス』かぁ。なら、意外と早く片付けそうだね」

暁夜は床にしゃがみこみ、足をブラブラとさせながら告げる。と、通信機から、オペレーターが溜息をつく音が聞こえた。

『ふざけるのも大概にしてくださいよ。暁夜さん。また、日下部隊長に叱られますよ?』

「おっと、告げ口される前にお仕事でもしますかねー。てなわけで、座標データおねがーい」

『分かりました。頑張ってくださいね、暁夜さん』

「ありがと。無事任務達成したら、デートしない? オペレーターちゃん」

腰に取り付けられている特殊な端末を手に、送られてきた座標データをチェックしながら、そう話しかける。

『私は構いませんが、折紙さんに怒られますよ?』

「別に付き合ってるわけじゃないし、だいじょ--ぐぇッ!?」

いきなり、首を後から絞められ、押しつぶされたカエルのような声を上げる。

「何するのさ? 折紙」

「あなたこそ、私の前で他の女性を口説くとはいい度胸をしてる」

「冗談だって。 そんなことよりも早く仕事始めよーぜー。 早くしないと『プリンセス』逃げちゃうよ?まぁ、俺的には、このまま折紙ちゃんのお胸を枕に寝ててもいいんだけど、お仕事しないと、上からドヤされちゃうからねー」

「確かにそれはいい案。仕事が終わり次第、家でこの続き」

折紙はそう言って、一度、暁夜から手を離す。開放された暁夜は、大きく伸びをした後、屋上から飛んだ。飛行する道具は一切使わず生身で。一瞬、暁夜の身体が屋上から見えなくなるが、直ぐに淡い青の光に包まれた暁夜が現れる。これは、DEMが開発した特殊な代物。現代の科学と、魔術が融合した白塗りの片手剣から発せられる光だ。この片手剣から発せられた光により、暁夜の身体は浮くことが出来る。

「お? あれって、士道?」

ふと、視界を下げた時に、学校の外に出ていく親友の姿を捉える。どこかへ向かうようだが、方向的に空間震が起こった方だと少し遅れて理解する。

「あいつ、どうする?」

白塗りの片手剣を肩に置き、CRユニットを纏う折紙に指示を仰ぐ。

「彼に危害がおよばないとは限らない。それに、バレるのもまずい。 だから、少し離れた位置から尾行する」

「りょ〜か〜い♪ んじゃ--」

暁夜は白塗りの片手剣を構えて、

討滅(デート)を始めようか♪」

不敵な笑みを口元に刻んでそう告げた。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧