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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第27話:課題消化!(その2:2体目の上級精霊登場!!)

 
前書き
とうとう、原作登場人物に関係のある人が登場します。
食生活の向上が見込まれるので、アルバート君も大いに期待しています。
上級精霊も2人目がやってきますが、いつも賑やかなお屋敷ですね。 

 
 お早うございます。アルバートです。
 昨日、待望のコックさんが見つかったのでようやく食堂が運営できると大喜びしました。
 しかも、コックさんが、あのトリステイン魔法学校のコック長マルトーさんの甥に当たり、料理の腕もマルトーさん仕込みだというのですから、願ったり叶ったりです。
 現在ガリアにいるらしく、此方に来るのに何日掛かるか解りませんが、待ち遠しい限りです。

 さて、昨日は一日かけて炉の調整をしていましたが、なんとかうまく行ったので、今日は活性炭作りに挑戦してみましょう。
 朝食後、『改革推進部』でのミーティングに参加して、今日一日の指示を出してから作業場に入ります。
 昨日900℃まで温度を上げて色々調整をしましたが、一晩たって炉内が冷えても特に破損している所もないようです。かなり頑丈に作って正解だったようですね。火石も昨日使った位ではそれほど小さくなったようには感じません。
 早速、炉内に昨日の調整で解った規定量の水を入れ予熱します。ある程度温度が上がってから椰子殻炭を入れ、しっかりと扉を閉めて外気を遮断して、閂をかけます。そして『ファイアリー』にお願いして、炉内の温度を上げてもらいました。
 炉内の温度は順調に上がり、温湿度計が900℃を指すと『ファイアリー』が温度の調節をしてくれます。頑張って何度も調整したので、『ファイアリー』もどれくらいの温度が良いか解ってくれましたから、ある程度自動で温度を調整してくれます。
 そのままの温度を維持し、1時間後加熱を止めました。このまま冷えるまで放置します。

 一休みしに外に出てみました。炉の壁をかなり厚くして耐熱煉瓦なんかも張り巡らせてありますが、それでも側にいるとかなり熱いのです。おかげで窓を開け放っていてもずっと室内に居るのは厳しい物があります。これは『シルフィード』に頼んで、部屋の中の空気を循環させて空調機のような役目をしてもらった方が良いかもしれません。
 それにしても外は気持ちが良いです。木陰に座り込んで周りを見回すと、『シルフィード』が僕の廻りをくるくると飛び回っています。この辺りでは『ファイラリー』より『シルフィード』の方が沢山見えますね。地面に座っているので『ノーム』もいますが、近くの水といえば井戸くらいしかないので『ウンディーネ』は見当たりません。仲間はずれは可哀想ですから、屋敷の前に池でも作ってあげましょうか。
 暑い室内から外に出てほっとしていると、『シルフィード』の様子がおかしくなって来ました。なにか落ち着かない感じで、飛び回るのも早くなっています。これはもしかしてと思ったら、すぐ側につむじ風が吹いたとたん、薄青い透き通った巨人が現れました。
 とうとう現れましたが、風の上級精霊でしょうね。『シルフィード』もその巨人の廻りを取り巻いて、いつも以上に元気がありそうです。上級精霊から力を貰っているのかな?

[お前が、我が眷属に名前を付けた人間か?]

 これは頭に響くような声ですね。たまたま屋敷から出てこようとしたメイドがビックリして中に引っ込んでしまいました。大騒ぎにはならないと思いますが、すぐに母上達に知られて絶対見に来るでしょうね。
 さて、まずは挨拶からしましょうか。

「初めてお目に掛かります。私はアルバート・クリス・フォン・ボンバードと申します。風の上級精霊とお見受けしますが、良くいらっしゃいました。」

[ほう?驚かないか。なかなか肝の据わった人間だな。我が眷属に名前を付けるだけのことはある。]

「たしかに風の精霊に『シルフィード』という名前を付けました。名前を付けるという意味は火の上級精霊よりお聞きしましたが、知らなかったとは言え、勝手なことをしてしまい申し訳ありません。」

[彼奴も来たか。その話しぶりからみると特に咎めはなかったという所か。我が眷属の言う所では自分の方から名を付けるように頼んだそうだな。だから儂もお前に文句を言うつもりはない。名を付けた責任についても解っているようだからな。今日はお前がどんな人間かを見に来ただけだ。まあ、合格としておこう。]

「有り難うございます。そう言って頂けると助かります。」

[ところで、火の奴は他にお前に何か言わなかったか?]

「火の上級精霊に言われたことですか?名前を付けた事とその責任について、後は他の上級精霊も私に会いに来ると言うこと位でしょうか?」

[それだけか?何やら面白いことをしたと眷属より聞いたのだがな。ほれ、正直に言ってみろ。]

 嫌なことを思い出させてくれます。やっぱり火の上級精霊に名前を付けた事を言っているのでしょうね。あえて、外して話しをしていたのに、どうしてもそこに話しを持ってきたいようです。

「それは、もしかして火の上級精霊に『サラマンディア』という名前を付けさせて貰ったことでしょうか?」

[そうそう、それだ。眷属達に名前を付けたばかりか、火の奴に名前を付けるような根性のある人間には、ついぞ会ったことがない。これは面白そうだと思ったので、早速見に来てみたのだが、その根性気に入った。どうだ、こうしてわざわざ会いに来たのだし、儂にも名を付けてみんか?]

 なんか、もう「お約束?」って感じですね。その気満々で言われると、何を今更と思ってしまいますが、火の上級精霊に名前を付けている以上、断ることも出来ません。

「それでは、おそれながら風の上級精霊には『ジン』という名前を贈らせて頂きます。」

[『ジン』か。良かろう、貰っておく。おそらく他の奴らも来ると思うが、お前なら大丈夫だろう。ところで、あちらの方で覗いておる人間達は何者だ?]

 『ジン』の指さす方を見ると、屋敷の側に人が集まってこちらを窺っています。一番前にいるのは母上ですね。

「私の母上とこの屋敷で働く者達です。精霊を見ることなど生涯に一度と有ることではないので、珍しさに見に来たのでしょう。失礼しました。」

[なに、かまわんさ。それでは儂はそろそろ行こうか。何か用が有れば儂の名を呼ぶが良い。力になろう。]

「有り難うございます。よろしくお願いします。」

[さらばだ。]

 また、つむじ風が起きて『ジン』は風の中に消えていきました。
 これで上級精霊2体と対面したわけですが、あと2体居るんですよね。先が思いやられるな、何て考えていたら母上が側に来ていました。

「アルバート!!今のは何?あれってこの前言っていた上級精霊なの?」

 そんなに興奮しないで下さい。顔を赤くして、目をキラキラさせて詰め寄られると、逃げ出したくなります。

「そうですよ、母上。今のは風の上級精霊『ジン』です。私に会いに来たそうです。」

「やっぱりそうなの。凄いわ。初めて精霊を見てしまったわ。精霊ってあんなに大きくて、透き通った綺麗な青い色をしていたのね。それにしても、もう名前を付けたの?」

「ええ。『ジン』という名前を付けさせて頂きました。外見があのように見えたのは『ジン』が風の上級精霊だからです。火の上級精霊『サラマンディア』は全身炎の真っ赤な巨人ですよ。」

「そうなんだ。その人にも会ってみたいわ。他にも水と土の上級精霊も来るんでしょう?来たら呼んでね!」

「人間のお客様じゃないんですから、来たからって呼べるわけがないでしょう。さっきも見ていて解ったでしょうけど、相手するのも大変なんですよ。」

「あら。堂々としていて素敵だったわよ。あれなら大丈夫よ。」

「どこが大丈夫なんですか。それより、屋敷の前庭に池を作りたいのですが、良いですか?」

「池?魚でも飼うの?飼うなら鯉が良いかしら。」

「いいえ。魚を飼っても良いですけど、池を作る目的は水の上級精霊がいつ来ても良いようにするためです。屋敷の周りは風も通るし、土もありますから、『シルフィード』も『ノーム』もいます。『ファイアリー』も南方ほどではないですが少しは飛んでいますが、屋敷の側には井戸の他には川も湖もないので、『ウンディーネ』が居ません。これでは不公平ですから水場を作ろうと思ったんです。」

「ああ。そう言うことなら良いわよ。後でお父様にも私から言っておくわ。」

「有り難うございます。それでは様子を見て作っておきますね。」

 母上の許可も貰ったので、後で池作りをしましょう。屋敷の前のロータリー東側が良いでしょうね。少し木を切ってしまえば丁度良い広さが確保できます。地下水脈まで掘って、地下水を湧き出させれば『ウンディーネ』も動きやすくなるはずです。

 さて、そろそろ炉の方も冷えてきたでしょうから、見てみましょうか。
 母上たちと別れて仕事場に戻ってみると、熱気が窓から出て部屋の温度も大分下がったようです。厚いミトンを手にはめて炉の閂を外し、扉を開けてみました。炉の中に残っていた熱気が外に吹き出してきますが、火傷をするほどではありません。
 上段の中央に置いた椰子殻炭を慎重に外に出します。見た感じでは良く解りませんね。大分細かくなっていますから、そのままこの前作った吸収缶に入れて、零れないようにしっかりと蓋を閉めます。
 出来上がった吸収缶をマスクに取り付けて、顔に装着してみました。
吸気弁と排気弁の動きは問題無いようです。ちゃんと外気が吸収缶を通してマスク内に入ってきます。後はちゃんと空気中の臭気が取り除けるかどうかです。
 マスクを着けたまま、『改革推進部』北側に設置してある、公衆トイレの試作品の所に行きました。もう2週間以上使って貰っているので、屎尿も溜まっているでしょう。トイレの裏にある汲み取り口を開けて、中の臭いをかいでみました。ほとんど臭いが感じられません。どうやら成功のようですね。
 ほっとしてマスクを外したら、まだ汲み取り口を閉めていなかったので、思いっきり臭かったです。マスクの威力は凄かった。
 慌ててマスクをして汲み取り口の蓋を閉めました。そのまま仕事場まで戻りましたが、途中でアニーに見られて変な顔をされました。たしかにマスクをして歩き回っているのはおかしいでしょうけどね。

 それから、3日間に渡って保護具作りを集中して行いました。ゴム長靴とゴム手袋も3種類ずつのサイズで人数分渡るように作りましたし、ゴム前掛けも大丈夫です。防毒マスクも出来たので、いつでも作業を開始できます。
 先週から、『保健衛生局』は全員で公衆トイレの設置作業に入っています。報告によると、近い方から3つの村で設置が終わって、順次遠くに行くそうです。設置の終わった所から公衆トイレの使用方法と、公衆トイレ以外での用足しの禁止をお触れとして廻し、徹底していきます。
 公衆トイレの設置がスムーズに行くようなので、そろそろ『清掃課』の火メイジを決めて連れてきましょう。父上の方には以前から話を通してありますから、直接メイジの詰め所に行きます。
 詰め所に入ると、寮などを建てる時にお世話になった土メイジのヴィルムさんが居ました。丁度良いので、火メイジを紹介して貰いましょう。

「こんにちは、ヴィルムさん。」

「アルバート様。いらっしゃいませ。今日はどのようなご用ですか?」

「どうも。実は、私が今行っている事業に、火メイジの協力が必要なので、一人選抜しに来ました。父上の了解は貰っていますので、誰か推薦して貰えますか?」

「その仕事は主にどのような事をするのですか?」

「各村や町を廻って、放置されているゴミや動物などの死骸を一ヶ所に集めて、焼却処分することです。最初に1回、全ヶ所を廻り、その後は定期的に巡回して、環境の維持管理を行います。部署名は『清掃課』といって、来て頂く火メイジの方は課長として、4名の職員を統括してもらいます。」

「部下が4人ですね。そういった仕事なら彼が適任かな?」

 そう言うと、一緒に来るように言って、奥の部屋に入っていきました。
 奥の部屋も結構大きな部屋で、メイジが15、6人たむろしています。ヴィルムさんは真ん中辺りにいる真っ赤な髪の体格の良いメイジに近づいて話しかけます。

「おい、ギュンター。ちょっと良いか?」

「どうしたヴィルム。何か用か?」

「ああ。こちらのアルバート様の要件に、お前が一番合っていると思ってな。アルバート様。彼はギュンターと言って、火のラインメイジです。」

「アルバート様?これは気が付かず、失礼いたしました。何か私にご用ですか?」

 僕は、先ほどヴィルムさんに話したことを、もう一度話して、協力をお願いしました。

「なるほど。その仕事を手伝えば良いんですね。了解しました。それで、何時頃から行きましょうか?」

「そうですね。仕事は来週からになると思いますから、週明けに『改革推進部』の方に来て貰えますか?詳しい話しは『改革推進部』の『保健衛生局』の方でします。」

「解りました。それでは来週初めに伺います。」

「よろしくお願いします。ヴィルムさんも有り難うございました。」

 二人に挨拶してから『部長室』に帰りました。これで『清掃課』も体制が整えられます。来週から実働状態に出来そうですね。

 『部長室』で机の上に溜まっていた『事務局』から回ってきた書類を決裁していたら、コック長が飛び込んできました。

「アルバート様。コックのモーリスが、今ガリアから着きました!!」

「え?モーリスさん、もう着いたんですか?今どこに?」

「ちょっと待って下さい。」

 そう言うと、急いで扉の外に出て、外にいた人を中に押し込んできました。恰幅の良い、少し赤ら顔の人で、想像したとおりという感じです。

「こいつがモーリスです。モーリス、このお方がアルバート様だ。」

「初めまして。モーリスと申します。この度は此方でコックを探していると聞き、ガリアから来ました。よろしくお願いします。」

「初めまして、モーリスさん。私がアルバート・クリス・フォン・ボンバードです。早速来て頂き有り難うございます。長旅でお疲れでしょう。それにしても早かったですね。」

「いや~、先週、こいつから手紙を貰って此方のことを聞いたんですが、そうしたら何が何でも此方の仕事をしたくなったので、すぐに乗合馬車に飛び乗って来てしまいました。」

「それは助かりました。実は2~3日中に皇帝閣下が行幸され、4日ほどこの屋敷にお泊まりになられますので、忙しくなる所だったんですよ。」

「え?ゲルマニアの皇帝閣下が此方に来られるのですか?それはまたいきなりですね。いったい何をしにいらっしゃるんです?」

「これは、余り大きな声で言えないし、他言無用でお願いしますが、私が新しく作った公衆浴場に入りに来るんです。一緒に姫様達も来られるのですが、此方は母上とお話がしたいという理由です。特に公務という訳ではありませんから、堅く考えないで下さい。」

「一国の皇帝閣下が、そんな理由で来られるのですか?それはまた、何と言っていいか解りませんな………。」

 来たばかりの人にも呆れられています。まあ、誰が聞いても呆れるよね?

「食堂も利用すると思いますから、そのつもりで居て下さい。ああ。だからといって、特別なメニューは考えなくて良いですからね。ここの食堂は、主に職員が利用することを考えて作っています。職員の家族も来るでしょうが、皇帝閣下が来て食事することを前提に作った訳ではないので、普通の食事を考えて下さい。条件は聞いて貰っていると思いますが、1食5スーで朝昼晩の3食お願いします。予算の範囲内で質は勿論ですが量もたっぷりした物を出せるようにお願いします。」

「良いでしょう。色々考えていることもありますから、腕によりをかけてやりますよ。期待して下さい。しかし、本当に特別な料理にしなくて宜しいのですか?」

「良いんですと。珍しいもの見たさに遊びに来るのですから。それよりも、此処の食堂で普段出される食事を体験してもらった方が、皇帝閣下も楽しんでくれると思います。よろしくお願いします。私の方からも珍しい食材を提供できると思いますから、メニューはお任せしますので使ってみて下さい。」

 待望のコックさんが到着しましたから、これで食堂の運用も始められます。職員の皆さんも待っていたことでしょう。なにしろマルトーさん仕込みですから、味は保証されているような物です。
 これで、いよいよ『改革推進部』も体制が出来上がって、本格始動です。
 後は、水と土の上級精霊に早く来て貰って、皇帝にも報告等ができれば、溜まったイベントも完了となり、改革の方に集中できるでしょう。 
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