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ロボスの娘で行ってみよう!

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第67話 第6次イゼルローン攻略戦 4


出勤前の投稿です。
階級上昇が早い方も多いですが、帝国軍の混乱による抜擢人事です。
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第67話 第6次イゼルローン攻略戦 4

帝国暦485年12月3日

■銀河帝国イゼルローン要塞

イゼルローン要塞へ帰投したミューゼル艦隊は当初の3,000隻から僅か600隻弱に撃ち減らされていた。その600隻も大中破艦が殆どで無傷の艦は全く居ないほどであった。その為ミューゼル艦隊は修理のために全艦ドック入りしている。

イゼルローン要塞では、メルカッツ提督により作戦会議が開かれていた。
総参謀長代理メックリンガー少将が作戦の説明を行う。

「敵艦隊は、総数34,000隻余、第7,第8,第9艦隊が主力です。行動パターンから推測して、敵の作戦は、第5次イゼルローン要塞攻略戦の焼き直しでしょう。そうなりますと我が軍の取るべき作戦は、前回の様に艦隊から数千隻を裂き隠匿しながらミサイル艦部隊を叩き、敵本隊を直撃するとなりますが」

歯切れの悪いメックリンガー少将の言葉に、ロイエンタールが挑発するような言いようで、質問を投げかける。
「そうは言うが、前回はそれで、可視不能地点から敵の奇襲を受けリュッチェンス、プルーンが殺《や》られてる。総参謀長代理閣下には、お考えがお有りか?」

「それに関しては、偵察衛星を多数配置済みでで有る事、又、前回と違い攻撃方向を銀河基準面を中心とした水平方向の攻撃から、垂直方向の攻撃へとシフトし、更に第2波を用意して敵の奇襲部隊を後方より攻撃する予定です」

「なるほど、それならば敵との距離は、充分にとれますな。そうなると作戦部隊の内訳はどの様になりますかな?」

「おいっ、ロイエンタール言い過ぎだぞ」
ミッターマイヤーが余りに斜に構えて話すロイエンタールに小声で注意をしている。

「奇襲作戦の参加兵数ですが、第一部隊には3,000隻、第二部隊には6,000隻を充てる予定です」

「その先鋒、是非小官に御命じ下さい!」
ビッテンフェルトが、椅子から立ち上がりながら大声で志願した。
それを聞きながら、メルカッツ提督が、話し始める。

「ビッテンフェルト准将、卿の志願誠に嬉しく思うが、ロイエンタール准将の言うように一つ間違えば、リュッチェンス提督の二の前となり得ない、此処は小官が行くべきだと思っている」

「閣下、宇宙艦隊副司令長官がその様な行動をお取りになって万が一の事がありましたら、後の者はどうすれば良いのですか、ご再考をお願いします」
レンネンカンプ少将が真摯な表情で止めに入る。

その様な中で、ラインハルト1人考え込んでいた。
俺の艦隊が健在だったら此ほどの武勲の立てようのある役目、是が非でももぎ取ったものを、今俺の手持ちは僅か600隻弱、しかも大半が行動不能だ、実際の戦力は100隻あれば良い方だ。100隻では数が少なすぎる。

そう思って会議室を見渡しながら、ロイエンタール、ミッターマイヤー、ビッテンフェルト達を眺めていて、良いアイデアが浮かんできた。

そうだ、彼等の艦隊を利用し、俺が統括指揮を取れば良いんだ、武勲も立てられ優秀な人材も間近で見る事が出来るのだからな。早速意見具申を行うとしようと。

「メルカッツ閣下」
喧々諤々の話し合いの中、ラインハルトが、メルカッツに呼びかけると、多くの将官が喋るのを止め注目してきた。

「ミューゼル少将、どうかしたかね?」
「はっ、その第1波の指揮、小官に御命じ下さい」
「しかし、ミューゼル少将の艦隊は100隻前後、とても3,000隻には足らないのですが」
メックリンガーが困ったように呟くが、ラインハルトは自信満々に宣言する。

「他の分艦隊から3,000隻を裂いて頂き、小官が統括指揮を行い、敵艦隊の意図を必ず挫いて見せます」

ラインハルトの言葉に再び騒然と成る会議室、多くの将官の意見は『寵姫の弟として普段からでかい面をしている癖に先の戦いでは大負したにもかかわらず、又ぞろしゃしゃりでてきた』であったが、メルカッツ提督はミューゼル少将の成長をさせるためには、やらせてみる事も必要と、考えでミューゼル少将に悪感情を抱いていないように見える、3人の准将を加えて作戦許可を行う事にした。

「判った、ミューゼル少将、卿の艦隊にケスラー准将、ルッツ准将、シュタインメッツ准将の艦隊を配属する。3人と確り話し合い作戦を完遂するように」
「はっ」

失敗したミューゼル少将に先鋒を任せる事に、ざわめきが起こるが下手をすれば全滅必須の先鋒であるから、ミューゼル少将のお手並み拝見と多くの提督が考えたのである。更に挙国一致しなければ成らない時ですら、寵姫の弟という立場を使い自らの武勲を得ようとして、メルカッツ提督に苦労をかける金髪の孺子めと悪感情を益々得る事に成った。

「続いて、第2波だが」
「それは小官に御命じ下さい」
レンネンカンプ少将が皇帝の寵姫の弟であるミューゼル少将の扱いに悩んでいるのであろう、メルカッツ提督の苦労考えて自ら志願する。それに続いて、単に突撃がしたいだけのビッテンフェルトが再度志願する。

「閣下、今度こそ小官達に御命じください」
ビッテンフェルトがロイエンタールとミッターマイヤーまでひっくるめて、志願するので、2名は苦笑し始める。

「ロイエンタール准将、ミッターマイヤー准将、宜しいのですか?」
メックリンガーが確認を行う。
「閣下は、主力を率いて後方から全般指揮を行って頂きたいと思います」
「「閣下、小官も微力を尽くします」」

ロイエンタール、ミッターマイヤーも参加を表明した。
「判った、第2波はレンネンカンプ少将、ビッテンフェルト准将、ロイエンタール准将、ミッターマイヤー准将によって行って貰う」
「「「「御意」」」」

こうして会議が終わり、各艦隊司令官が準備のために会議室を退室していった。



宇宙暦794年12月3日

■イゼルローン要塞近隣宙域 自由惑星同盟宇宙艦隊総旗艦代艦ナバテア

ナバテアでの会議は最初から紛糾した、何故なら当初の計画では帝国の混乱により増援がないものと考えられていたにもかかわらず、増援があった事、しかも15,000隻という大軍であった事なので、士気の落ちている駐留艦隊を圧しまくる作戦の全体が崩れたからである。

特に作戦を立てたホーランド大佐の焦りは深刻であり、作戦の練り直しに頭を痛めていた、それだけでは無く、自らが参加していなかったミューゼル艦隊包囲殲滅が、コーネフ大将のせいで失敗したと聞いた時は、“何をしているんだ”と思わず書類を壁に投げつけた程であった。

ホーランドは次第にコーネフ大将の資質に疑問を持ち始めており、この作戦を提案した事を後悔し始めていたが最終的に何とか被害の少ない内に作戦を終わらせようと考え始めていたが、コーネフ自身は全く反省の色も見せずに大言雑言を吐いていた。

「イゼルローン要塞攻略が此より始まる。先人達がなし得なかった要塞攻略に遂に成功するのである!」
「閣下、当方の戦力は34,000隻余、敵は24,000余しかもイゼルローン要塞があります。今回の作戦自体が、帝国軍の混乱に生じて要塞を奪取する事にありましたが、既に前提条件が崩れています、此処はご再考をお願いします」

他の参加者が呆気に取られるほどに、ホーランド大佐がこのままの作戦遂行は無理だと言い出したの事で会議は紛糾し始めたのであった。

「ホーランド大佐の言う通りです、戦った結果ですが敵の士気も高くとても混乱しているとは思えません。このまま戦ってもズルズルとした消耗戦に落ちるだけと小官は愚考します」
ホーウッド中将の言葉に幾人もの参加者達が頷くが、コーネフ大将とアップルトン中将は未だに強気である。

「言っては悪いが、ホーウッド中将は臆病風に吹かれたようだ。わずか3,000隻の敵を包囲殲滅すら出来なかったのだから、第7艦隊の士気の無さには呆れますな」
自分のせいで包囲殲滅が出来なかった癖にホーウッド中将に全ての責任を押し付けるように話すコーネフに対して参加者から軽蔑の眼差しが突き刺さるが、勝利を求めているコーネフには全く感じられない。

「敵の士気が多少高かろうと、D線上のワルツとミサイル艦による攻撃さえ出来れば、イゼルローン要塞への陸戦隊の突入は可能だろう」
アップルトン中将の発言に賛同する者も居るが、アル・サレム中将でさえも疑問の顔をし始めている。

「しかしです、万が一敵を攻めあぐんだ際、陸戦隊の救出が困難となります」
ある参謀の言葉にコーネフがさらっと応えた事で会議は更に紛糾した。

「突入させる陸戦隊は懲罰連隊を第1波として使用する。奴等なら死のうが捕虜になろうが我が軍に損失は殆ど無いからな、本来であれば同盟の屑である、ローゼンリッター連隊を捨て石として使うつもりであったが、役立たず者達はヴァンフリートの損害で参加が不可能だからな、それならば軍法会議で死刑を宣告された連中で編成された懲罰連隊を恩赦を餌に使えば、死にものぐるいで戦うだろからな」

「お言葉ですが、彼等も同盟市民ですぞ。現にロボス閣下のお母上は帝国からの亡命者です。その様な偏見は閣下の為にもなりませんぞ」
流石に言いすぎだと、アル・サレムすら意見し始めた。

「中将、貴官も今回の作戦には賛成したではないか。今更の変節は貴官の経歴に傷が付くぞ」
「閣下、人命を軽視する発言は厳にお止めください、閣下の見識を疑われます」
遂にホーランド大佐までコーネフを戒めるしまつである。

「これは総司令官たる小官の命令である、当初の作戦書に基づき作戦を決行せよ!」
参加者に有無を言わさずに、コーネフは総司令官としての命令権を楯に強制的に作戦を行う様に命じ会議を強引に閉会して自室へと戻ってしまった。

それに続いて、復仇の念に燃えて未だ勝てると踏んでいるアップルトン中将も旗艦プロテシラオスへと帰って行ったが、ホーウッド中将、アル・サレム中将、ホーランド大佐達は未だに会議室へ残って、どの様な幕引きにするか相談し始めていた。

その頃、ロボス元帥の婿だと疎まれたアッテンボロー少佐は大破したアイアースを任されて、工作艦により応急修理を行うべく後方星域へと後退している最中であった。
「まあ、ホーウッド中将に委任状は渡したから、後は何とかして貰うしかないな」
 
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