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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  第260話 食後は運動を

 
前書き
~一言~

何とか! 何とか一話出来ました――……。遅れてすみませんっっ!! 主にコミック本を参考にした食事風景ですw 
ただ……あのバーベキュー大会は沢山の人達がいますからね……。全員出せたら、と思ったんですが。流石に大変だったので、ここまでです…… 苦笑


 この小説を読んでくださってありがとうございますっ! これからもガンバリマスっ!!


                                じーくw 

 

 バーベキュー大会は本当に大盛況だった。

 何より皆が等しく笑顔だった。
 初顔合わせである スリーピング・ナイツの皆は ユウキ同様に『人見知り』と言う単語は其々の辞書には記載されていない様であっという間に馴染んでいった。
 クラインとノリの飲み比べも然り。酒は ある程度の量を摂取すれば、酔いと言う現象に見舞われてしまうのだが、流石は酒豪。全く物ともせず、現実世界同様に更にテンションを上げる結果だけが残っていた。
 
 そんな時だ。

「なぁ! キリト、それにリュウキも! 確か迷宮に格好良く登場した時さ、魔法を斬ったり、弾いたりしてたじゃん?」
「ん? あー、ああ。そうだったっけな。あの時は魔法使い(メイジ)隊が多かったし、あれ以上撃たれたら流石に危なかったかも。今更ながら考えてみると……」
「まぁ、確かに。(格好良く登場って言うのは余計な気がするが)相手は油断してた事と軌道がハッキリと見えた。いや、視るまでもない程ハッキリしてたから、と言うのもあったと思う」
「……そんな心眼みたいな真似できるのはリュウキだけだって」

 リュウキとキリト。2人どちらのスキルも他のプレイヤー達から見れば似たり寄ったりな所だが、その2人のやり取りを初めて見るジュンは 少しきょとん、としていたが、直ぐに歯を見せながら笑った。

「あーっはっはっは。何となくって言うか、いや違うな、何となくじゃないや。速攻で判ったよ。2人の事」
「オレ達の事?」
「ん? そうか??」
「あーそうだよ。すっげー仲良しってトコ!」

 ジュンに言われるまでもなく、それは 以前よく言われていた事だ。
 2人のその空気、見た感じ、最近よく考えてみればあまり言われていない客観的な主観だった。
 元々仲間内では付き合いの長さ故にやり取りが恒例化、日常化した事もあって それ(・・)が当たり前だと判っているから、口に出さなかったかもしれない。

「……何か正面切って言われると、むず痒い。嫌だ」
「確かに……。男同士と言うのもあるな、絶対。…………」

 こういう系統の話は、女性陣達からからかわれる様に言われた事が何度かある(主にリズ)。その度に苦虫をかみつぶした様な顔をするのも恒例だ。

「はははははっ! まぁまぁ、ここからが本題だって。アレだよアレ」
「……アレ?」
「なんの事だ?」

 ジュンのハイテンションぶりに四苦八苦なキリトとリュウキ。ハイテンションのままジュンはぴょんっと2人の前で飛び跳ねる。

「2人がやってたヤツ! ほら、魔法破壊(スペルブラスト)だよ! あれってどうやってるんだ?? 教えてくれよ。メッチャかっくいいし!」
「ああ、あれの事か」
「最初からそう言ってくれよ……」

 ため息を吐きながら 2人は魔法破壊(スペルブラスト)についてを説明した。

 最初は偶然だった。大型アップデートでソードスキルを実装された時、属性攻撃も同じく解放された。魔法に負けない程剣技にも多彩な属性。 
 魔法同士の打ち合いで相殺されるのは誰もが知る所で、なら魔法属性を持つソードスキルならどうなるのか? と考えに至って実戦を重ねて習得。リュウキに関しては、伝説級武器(レジェンダリーウェポン)ティル・ヴィング。扱い方こそ最も難しい武器の1つだが、使いこなす事が出来れば、魔法を防ぐ事も弾く事も出来るから。

 どっちもやり方も同じなのが等しく難易度が高いとの事だ。他のメンバー、十分歴戦の猛者と言って良い元攻略組のメンバーが直ぐに匙を投げた程だ。

「―――と、言う訳だ。大体判ったか?」
「補足すると、両手剣のソードスキルは 単発系が多いから、少々難しいと思うぞ」

 ジュンは両腕を組んで目を瞑っていた。イメージトレーニングでもしているのだろう。 

「ふむふむ、ほうほう。よっしゃ! ソードスキルで中心を、だな! なーに、リュウキ。両手剣は確かに連撃系が少ないけど、無いって訳じゃないからいけるって!」
「ま、確かに。ふふ、ジュンなら簡単にやってしまいそうだな」

 ジュンの実力はリュウキもよく知っている。
 いや、ジュンだけではない。スリーピングナイツの全員が一騎当千の猛者。その頂点がランやユウキである事には間違いはないが、他のメンバーも何ら遜色ない。各々の持ち味を活かしているのに加えて、連携も完璧で隙が無い。仮に、1パーティーのチームワークを競う大会の様なのがあれば、軒並み掻っ攫っていきそうだと思える程だから。

 だが―――それでも、流石にどうかと思うのは次だ。

「おーい! ノリ! 酒飲んでるとこ悪いけど、いっちょ頼むわ!」
「あん? あー、まほーね。OKOK」

 顔を赤くさせながら先程まで 同じく酒豪に分類されるサクヤと飲んでいたノリは、会話を聞いていた様で、意気揚々と立ち上がった。
 そして魔法の詠唱に入る……。

 その魔法は、炎の系譜の魔法《フレア・ボムズ》。

 完全追尾の強力な炎のホーミングだ。それに弾数も多く、こんな近接で撃ち放ったらどうなるのか…… 言うまでもない。

「お、おいっ! 流石にそれは無理だって! それに練習するならもっと弱い魔法でやらないt「もう無理だ、キリト」って、え?」

 リュウキがキリトの肩をぽんっ、と叩いた。

「……あのテンションのあいつらを説得するのは無理。特にノリ、飲んでたみたいだし、尚更無理」
「あ、あー……」

 想う所があるのだろう。キリトも早々に諦めた。



 そして その数秒後の事――――結果は勿論、ジュンは 綺麗な炎(リメインライト)になった。



「だらしねぇなー。おーい、シウネー! 蘇生頼むわー。あたしは、飲み直す!」
「もー、なにやってるのよーー」

 あははは、と仄々とした空気であるのがせめてもの救いと言うヤツだろう。
 色々とぶっ飛んでいるのはこの場にいる誰もが知っている事だから。


 更に、その直ぐ後ろでは 何やらユージーンがユウキに言っていた。

「《剣聖》、そして《絶剣》の噂は気になっていたが、立場上 辻デュエルには手を出す訳にもいかなくてな。いい機会だ。一手、手合わせ願えるか?」
「うんっ! もっちろんだよ! 姉ちゃん。ボクからいくね?」
「はいはい。ユウ。私は今日は見てるだけの方が良いから頑張って」

 何でも、先ほどのジュンに触発されて……、ではなく ユージーンも生粋の剣士。戦う事が大好きな戦闘狂の1人だから、元々《絶剣》《剣聖》の名は、このALO内では轟いている為、最初から戦いたかった、誘うつもりだったと言うのが本音のようだ。ランは 今日はこのバーベキュー大会を、皆との交流を第一に楽しみたいと思っているからか、あまり乗り気じゃない様子。と言うより、ユウキの事を横で見ている方が本当は性に合っていると言うものだった。あまり行き過ぎるようなら、暴走する様ならブレーキをかけてあげないといけないから。

「やめといた方がいいかもヨー。だーって、この人。チート武器使うからサ。ま、リューキ君やキリト君は、それに勝っちゃってるから、彼らを除けば、って事で準チートかナ? それでも、じゅーぶん過ぎる程、ずっこい能力なんだヨー?」
「ぬかせ! 正々堂々の剣の勝負。腕試しだ」

 何か話のダシにされた気がするリュウキ。耳は良い方だからよく聞こえてきた。
 ユージーンも不敵に笑っているから、また勝負を挑まれるかもしれないな、とリュウキは苦笑いをしているのだった。



 そして、白熱のデュエル。


 
 火妖精族(サラマンダー)最強の剣士がユージーン。
 その剣の腕、剛腕は大地をも裂くと言われている。

 そして 今や時の人状態のユウキ。怒涛の80連勝は最早伝説クラス。そんな2人が激突するのだから、当然 どんちゃん騒ぎだったバーベキュー大会ででも一気に注目を集め、瞬く間に2人を中心に輪が広がった。

 デュエルの形式は《半減決着モード》。HPが半分を切った時点で勝敗が決まる。

 形式は3種であるのはSAO時代と変わりなく、一流のプレイヤー同士の相手が消滅するまで戦う《完全決着モード》は、時間が掛かりすぎるから、と言う理由だ。半減と完全の差は単純にHPの全損と半損、つまり2倍の時間……と言う程単純な話ではなく、HPが低くなれば成る程、相対する者達の戦術がそれぞれ変わったり、攻め側守り側の対応も変わったりと 更に濃密な戦いになる事が多い。
 故に、その戦闘時間が3~4倍は延びたりする事がざらだったりする。
 それがトップクラスの実力者たちであれば尚更だ。



 現に、ユウキとユージーンの決闘。観戦者たちにとってはあっという間だったかもしれないが、実際の時間に換算すれば、長かった。



 勝者はユウキ、ユージーンの敗北である。



「く……ッ。この強さは本物だな」

 僅差でユージーンは敗れた。やはり、少し震えている様に見える腕を見ればわかる。……悔しかったのだろう。 

「おじさんもすっごく強かったよ! ありがとうっ!!」
「お、おじっ……」

 そのユウキの無邪気な発言。ある意味、一番のダメージだったかもしれない。つまり、おじさんと呼ばれる歳じゃない、と言いたい。と言う訳だ。

「おお――……、ユージーンにも勝っちまうか。伝説武器(レジェンダリー)使ってないとは言え、やっぱすげぇな」
「……だな。流石の一言だ」
「おい、リュウの字よ。どーやって勝ったんだ? あの強さ まさにチートじゃねーか。スピードがやべぇってアレ」
 
 クラインはリュウキの肩に腕を回した。

「オレがやったのは、ランの方で ユウキではないのだが……。まぁオレとの強さ、実力に 殆ど差はなんかない。ただ、前回は培ってきた経験の差が出た、と言う訳だ。あの2人は確かに強い。70、80連勝する時点で脅威的。………だが」

 リュウキは、軽く笑う。

「オレが付き合ってきた連中の濃さを考えてみれば、判るだろクライン。お前らと一緒に戦い続けてきたからだ。その経験が活きた。それだけの差だ」
「………くぅー、なーんか泣けること言うじゃねぇか! リュウの字からそんな言葉が聞けんなんてよ! おら、飲め、飲め! 今日は飲み明かすぞ!!」
「……それは嫌だ」

 肩に手を回していたクライン。捕まえたも同然な状態だったのだが、いつの間にか するっと抜け出してリュウキは距離をとった。少々らしくない台詞な気もするが、今は意気揚々としているから出たんだろう、と自己解決。

「けーー、ツれねぇな。って、おいユージーン」

 リュウキに逃げられて(ある程度は予想済みだが)やれやれ、と頭を掻いていたクラインは ふとユージーンの方を見てみた。
 すると……、その手には《魔剣グラム》が握られていて……。
 確かに、あの武器を使えばユージーンがかなり有利だ。全ての攻撃を剣や盾等で防ぐ事が出来ず、対処法は攻撃そのものを避けるしかないのだから。大勢の魔法使い(メイジ)であれば、離れた所で魔法連射! と対応が可能だが、➀対➀のデュエルになればその優位性は揺らがない。
 つまり、何が言いたいかと言うと……。

「よせよ、大人気ねぇな」

 と、言う事だ。剣の腕で、と言っておいて悔しいから……ともなれば。それも相手は明らかにまだ子供だと言う事も踏まえて。

「く……、じょ、冗談、だ」
「うわぁー、嘘くせっ」

 とりあえず、ユージーンが本気だったのかどうかは判らないが、チート武器と名高い魔剣グラムを仕舞った後、改めてユウキに賛辞の言葉を贈った。

「しかし、見事な腕だ。ユウキ。それにランもなのだろうな。2人共遜色ない実力を保持していると言うのなら……、最早言葉も出ない程。どうだ。お前達。ウチの陣営に来ないか? グランドクエスト第2弾には強力な戦士が1人でも多く必要だ。お前達ならば、待遇も、報酬も弾むぞ」
「ぅえ……?」
「どうだ? ランの方も」
「え、えっと……、それは……」

 がしっ、とユウキの華奢な身体の肩を握るユージーン。更にそのままの体勢で、ランの方も見た。
 口説き文句としては少々強引な気がするが、多少強引の方が良かったりする。押しに弱い女性は多いから……と言うのは、何処か誰かの持論。

 勿論、そんな事を許さない者達もいる。ユウキらの実力を知っている者は多く、更にこの場には、各種族のトップが終結しているのだから、パワーバランスが乱れてしまうのは頂けない事だ。更に言えば ユウキやラン、スリーピングナイツの人柄もよく知ったから、単純に一緒にゲームをしたい、と言う気持ちが強いかもしれない。

「ちょっとまて、ユージーン。抜け駆けは許さんぞ。彼女達は我々が貰う。ここまで強く、更に美しさもある2人には、風妖精族(シルフ)が似合う。優雅に風に舞う所を見たいだろう?」

 ぱしっ、とユージーンの手を払うのはサクヤ。
 確かに、ユウキは女の子。ユージーンに勝った凄腕プレイヤーだが、だからと言って 男所帯……と言って良い程、女子比率の少な目な火妖精族(サラマンダー)の陣営に入れるのは絵的にもどうかと思ったりするのはこちらの話。

「ちょーーっとまったーー! ダヨ」

 勿論、この人も……、アリシャ・ルーも黙ってはいない。
 ひょい、っとサクヤの間から割って入ると、ランとユウキの2人の間に入り、2人を抱き寄せた。

「可愛い2人には、可愛い猫妖精族(ケットシ―)だって! それに、ウチは三食おやつにお昼寝つきだよ~~??」
「わ、っ わわっ」
「ちょ、ちょっと皆さん。落ち着いて……」

 三つ巴の戦いがここに勃発する。
 サクヤ、アリシャ、ユージーンの火花が散らされ、その間にいるランやユウキは完全に困ってしまった。 


「わーーー、アスナ~~ レーナ~~~ 助けて~~~!」


 流石の絶剣のユウキも成す術がなく。


「た、助けてくれたら、とても助かります……。皆さん……」


 同じく剣聖の称号? を持つランであっても、その強者の波を乗りこなすのは出来ず、ただただ 助けを待つしかなかった。

「あははは……」
「大人気だねー? あはははっ、最初からそーだったけどさ?」
「あの人らに囲まれたら……、確かにああするしかない、かな……」

 アスナもレイナも ただただ微笑ましく笑うだけだった。
 キリトはかつての記憶が蘇ったかの様に、引き攣った笑みを浮かべていた。

 例えBOSSモンスターであっても、例え大型ギルド丸ごとが相手だったとしても、決して怯まず、臆さずの2人……なのだが、流石に助け船を出した方が良いと思ったのはリュウキだ。

「……はぁ、少し落ち着け。サクヤ、アリシャ。それにユージーンも。それ位にしたらどうだ? 今日はそもそもそう言う趣旨の集まりじゃないだろう?」

 間を取り持つ様に入っていくリュウキ。
 それを見た、サクヤは目を キランっ! と光らせたかと思えば、颯爽とリュウキを捕らえる。

「むぐっ!?」

 否、抱き寄せた。そのある意味凶器とも取れる、全プレイヤーでも1,2を争う程の豊満な胸に。

「っっ!?」
「ええっっ!?」
「………ちょっ!!」

 それに激しく反応する女性達。
 勿論、それは女性たちだけでなく……。

「さ、サクヤさんの……!?? なーーんでアイツばっかり!!! 羨ましくなんかねーーーからなぁぁぁぁ!!」

 だぁぁぁ、と血涙を鳴らす男が約1名。

「もう諦めろって。アレは持って生まれた天賦の才ってヤツだ。ハーレム属性ってヤツだ。いや、スキルか」
「天は二物を与えずっていうじゃねぇかぁぁぁぁ!!」
「与えちまってんだから仕方ねぇって。なぁ?」

 今度は、うぉぉぉぉん、と大きな大きな男。この中では一番大きな男の力強い腕の中? で泣く。ホント騒がしさが倍増しになったとはこの事である。その上絵面的には……あまりみたいものではない。


 その起爆剤となってしまったサクヤはと言うと、策士。計画通り……と言わんばかりのキメ顔を作っていた。


「勿論。私はリュウキ君をまだまだ諦めた訳ではないのだぞ……? 2人もリュウキ君も、私が貰う。この後 じっくりと飲み明かさないか……?」

 艶やかな表情のままに、リュウキを強く抱き、更にランやユウキも同じく抱き寄せる。
 酔った勢いでは? と思えなくもないが、勿論 それを黙ってみている程甘くはない。

「ダメだヨ! それはサクヤちゃん!! リュウキ君まで取っちゃうの禁止~! だーってウチも狙ってるんだからネ!」

 ひょいひょい、と猫の様に素早く寄り添うアリシャ。いつぞやのパターン。2人に挟まれてしまうのは初めての経験ではないのだが、流石に胸の中に抱かれるのは初めての経験だ。

「うぷ……、く、くる、や、やめ……」

 流石に、強引に力任せと言うのが難しいようで、リュウキはどうにか顔を埋められていた場所から撤退する事が出来た。

 ふと、顔を上げてみると、頬を思いっきり膨らませた人、そして クールな……、クール過ぎる鋭い目つきをしている人。2人とばっちり目が合う。

 その表情の真意を読みとる事は出来なかった様だが、とりあえず、目が合ったのを僥倖と考えた様で。


『た・す・け・て・く・れ』


 と、口パクで合図をおくった。

 顔を赤らめてるリュウキを見るのは珍しい事。所謂ありきたりな反応。男の子の反応。鼻の下を伸ばして、デレデレ……とさせてない所は、本当に好感が持てるものだが、胸中穏やかでいられる程大人ではない。
 そんな時だ。

「それにさ。シノンちゃんだってきっと大歓迎だヨ? ネー?」

 まさかのアリシャからのシノンへのキラーパスだった。
 でも、キラーパス……と思ったのは一瞬。これで一切の躊躇などせずとも奪還? する手筈は整えてくれたも同然だったから。
 
「はははは。すっごい迫力でしょ? 猫妖精族(ケットシ―)自慢の女の子だヨ。可愛いし、強いし、最高だヨ」
「……あまり関心はしないわよ。公衆の面前でのそれ。アンタたちは領主なんでしょ……? 示しがつかないじゃない」

 風妖精族(シルフ)のトップに物怖じせず、堂々たる姿勢。その原動力は、どう考えてもただ1つ。さしのサクヤも迫力には面を喰らった様だ。渋々ではあるものの、腕の力を緩めた。

「……………はぁ、止めてくれよ」
「ふふ。君には少々刺激が強過ぎたかな?」
「っ……、た、ただただサクヤが強引過ぎるだけだ」

 突然の拘束。それもどんな魔法の防壁でも、はたまたどれ程強力な呪いの類でも、突破が困難な拘束から解放された事に安堵するリュウキ。
 リュウキとて、男の子。なんにも知らなかった時代は遠の昔に卒業。
 ……色んな意味で卒業出来ている。だから やはり相応の反応は見せてしまうし、何よりこの手のやり方を軽く回避、なんてこともなかなか難しい様子だ。
 それを判った上で、サクヤは実行に移している。色々と楽しむ為に。つまり、彼女もそれなりのSだと言う事だ。そんなSなサクヤはと言うと。

「そうかい? ……さて、レイナ。彼の事、しっかり捕まえておかないと、誰かが攫ってしまうかもしれないぞ? 例えば私たちの様に」

 標的?の変更である。
 勿論選ばれてしまったのは、自他ともに認めるMな女の子レイナだ。

「むーー……。誰かって誰の事よっっ! 私達って言ってるし! もうっ、サクヤさんっ!!」
「はははは。怒るな怒るな。ちょっとした冗談だ。ユウキやラン、それにリュウキ君が他へ行くなどとは思っても無いよ」
「う~ん、ウチは強ち冗談って訳じゃないんだけど、まぁ良いヨ。楽しめたしネ。ねー、シノンちゃん?」
「っ………」

 いつの間にかさらっと混ざってるアリシャ。アリシャも意味深な笑みを浮かべてシノンに視線を送っていた。勿論ながら、シノンの好意くらいお見通しと言う訳だ。普段、上手く隠してはいても 見る者が見ればバレバレだから。

「うぅ~……みーんなみんな、リューキさんなんですね……」
「あ、はははは………。ま、そんな感じ、かな?(キリト君じゃなくてちょっと良かったかも……)」
「何処言っても人間磁石って中々上手い言い方よねぇ。リタ」
「ふん。……その上鈍感朴念仁だし。見る目ない、と言うより男運無いんじゃない? 全員」

 シリカとリーファ、そしてリズとリタはちびちびと飲み明かしていた。それが酒であったとしても、何ら不自然ではない程に自然に。




 色々な話で盛り上がった後。

 ある程度腹も満たされ、バトルも無くなり、談笑が中心になった所でクラインの提案が周囲に注目される。

「なんならよー! 今からみんなで次の回想のボスも倒しに行っちまおうぜ! あん時みたいな邪魔は流石にこの速さならねーだろーしよ!」
「おっ、それいーねーー!! のった!!」

 クラインと一緒に飲んでたジュンも意気投合。2人で肩を組みあって盛り上がっていた。

「ええ……!? このメンバーでですか!? 確かに皆さん凄く強いですが…… 人数が少し足りないと思うんですけど」
「なーに言ってんのよ、シリカ。これ以上に少ない面子でやっつけちゃってるのに、楽勝でしょ? こっちには沢山の勇者様がいて下さるんだから。何なら守ってもらえるかもしれないわよ? お姫様抱っこ~~って感じでさ? スカート捲れなくて良いかもねー」
「わ、わーー、もうっ! リズさん言わないでくださいよっ!!」

 シリカは一瞬だけ懸念があった様だが、リズの言う事も最もなので、その心配は一瞬で吹き飛んでいた。ここにいるメンバーは超が何個つくか判らない程の一流ばかり。魔法のエキスパート、剣のエキスパートと、中々バランスも良い。
 寧ろこのパーティで倒せないBOSSがいたら、それはそれで大変だと思う程だ。

 そして、更に言うと、各種族の領主たちも望む所な構えだった。

「ほほう……。それは面白いな。初戦で全力戦闘か……。腕が鳴るぞ」
「足を引っ張るなよ? ユージーン」
「ふん。ぬかせ お前達こそ、領主が落ちたら種族の名折れだぞ?」
「それこそ心配は無用だ」
「そーそー。こ―見えても、日ごろから頑張ってるしネ」

 ユージーンにサクヤ、アリシャもやる気満々。

 最後には誰が言ったのか、『そうと決まれば、部隊(レイド)の編成だ!』と早速向かう事になった。

 それを傍で見ていたユウキとラン。

「なんだかすっごいやる気満々だねー、領主さんたち。あっという間に皆集まってきたよー?」
「そうね。でも、戦うのであれば私達も負けてはいられないよ。ユウ」
「もっちろんだよ! スリーピングナイツの力見せるよー!」

 こちら側もやる気は十分。気力十分だ。回復アイテムも先の戦いで消耗はしていて 少々心許ない……が、これだけのメンバーがいればそこも心配なしだと言える。

 その横で苦笑いを浮かべるのはレイナ。そしてアスナも隣にいた。

「あ、あははは……。お姉ちゃん。きっとサクヤさん達ってさ……?」
「……うん。皆、立場もあるから最前線で攻略~なんて中々できないと思うし」

 日頃の鬱憤を晴らす、と言った様子だ。

「つまりあれか。ストレス発散させる為に、と言った面が大きいと言う事だな」
「……ははは、リュウキ。ストレートだな」
「うん? 悪い事ではないだろう? オレもデスクワークが多いからか、身体を動かしたい時は動かしたい、と思う時だってある。気持ちはわかる」

 リュウキのストレートな言葉に苦笑いするキリト。

 領主たちの気持ちは、まさにその通り、的中であり ユージーンも部隊を纏めなければならない為、後先考えずに突っ込む! 何てことが出来ない。故に思う存分戦える事が嬉しくて仕方がないと言う事だ。



 そしてあっという間に部隊(レイド)を編成し、怒涛の勢いで28層の迷宮区を突破。



 そこで見た衝撃は、思いのほか大きい。
 
 それは、短期間で突破出来た事、それに高難易度の筈なのに、殆どダメージを受けていない事、そして何より大きかったのが……。


『きゃあっ! くっ……!!』
『サクヤちゃん!?』
『オレが時間を稼ぐ! いったん下がれ!!』
『すまない、任せた!』
『二人とも、回復するよ!!』

『よし、大丈夫だ。スイッチだ、ユージーン!!』
『応ッッ!!』



 まさに阿吽の呼吸。
 長らく共に戦ってきた仲間達……、スリーピングナイツの皆のソレと全く引けを取らないどころか、注目を集める程の見事なチームワークを魅せるのが、各種族のトップたち。

『うっひゃーー、すっごいなぁ』
『うん。凄い連携……。私達も負けてられないよ、ユウ』
『もっちろんだよ! それに仲の良さなら負けないもんねーー!』


 俄然やる気が上がる面々の中で―――ただ、驚きを隠せられないのが、領主たち(みんな)を知る者達だ。


『え、えーーと……うん?』
『確か、敵同士……だったと思うんだけど………。サクヤさんとアリシャさんは兎も角……』
『息が合い過ぎ』
『色々と通じる所があるって事かしらね………。あ、今のスイッチも絶妙なタイミング……』


 ただただ驚かされる。それだけだ。

『敵の敵は……と言うヤツだろうか』
『かもな。昨日の敵は今日の、っとも言うんじゃないか?』

 リュウキやキリトも目を丸くさせていた。 



 そして、怒涛の勢いで28層のフロアBOSS。巨大な蟹の姿をしたBOSSを瞬く間に屠り、このバーベキュー大会の〆にしたのだった。 
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