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獣篇Ⅲ

作者:Gabriella
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29 石橋を叩いて渡ることを忘れること勿れ。

現場に戻って、トランシーバーのスイッチをオンにする。
平子(かのじょ)は、父親(じろちょう)とちゃんと出会えたようだ。


_「どうでしたぁ?惚れた女を斬った気分は。」

_「どうだったィ?爺婆どもを想う通りに転がした気分はァ?」

_「そんな非道いですよぉ。全ー部親父の為を思ってやったことですよぉ?」

_「お次は、西郷を使ってェ、お登勢の店ェ、潰すらしいなァ?随分と無駄なことをォ。女狐にでも焚き付けられたかァ?」

_「そぉんなことありませんよぉ?これも作戦の一つです。この町には、お登勢の息がかかった者がぁ、まだたくさんいます。これを期に、連中を炙り出すつもりです。西郷もその一人。」

_「そう上手く行くかねェ?それに、心配せずともあの婆ァの仲間なんざァ、この町にゃァ、居ねェ。番犬の鎖ァ、もう千切れたァ。」

_「他には手を出すな、というお登勢との約束を守りたいんですかぁ?無駄ですよぉ?鎖なんて(はな)からあの人には付いちゃいない。兄貴(あれ)が他人の鎖に繋がれるような忠犬に見えましたかぁ?兄貴は必ず来ますよ。」

_「オメェ…見てやがったのか…?」

_「見てましたよぉ?お登勢に止めを刺さなかったことも。戦争に巻き込まないために、あの婆ァさんを斬ったことも、全ー部。…心配いりませんよぉ?もうお登勢にこだわっても無駄なことは分かりましたぁ。親父をこの町に縛り付けていたものは、そんな単純なものではないでしょう?私、分かっちゃったんです。あなたとあの人は同じなんだ、って。
…あなたたちをこの町に縛り付けるものは同じ。たった一人の男と交わした、たった一つの約束。己が定めた鉄の誓い。男の鎖。あなたたちは同じ鎖に繋がれた獣なんですぅ。でもぉ…一人は何かを失い、それでも尚何かを抱えてのたうち回りながらも、この町を護ろうとしている。もう一人は何かを失い、抱えることを止めた。修羅となってもこの町を手に入れ、力で護ろうとしている。(たん)は同じであったのに、相容れない存在となった二匹の獣。果てさて。最後にかぶき町に立つのはどちらか。…心配いりませんよぉ?私もう、決めましたから。あなたと一緒に修羅の道を行く、と。私がきっと親父にこの町を手に入れさせてみせます。だから、全て終わったときは、きっと私の元へ…戻って来てくれますよね…?」

_「オメェ、…」


***


_「何だ、あの男らしいんだか女らしいんだか分かんねェ軍団はァ…!?次郎長一家と西郷ンとこだァッ!
チッ)戦争が起こるぞォッ!」



_「…西郷さんには西郷さんの、譲れない大切なものがある、ということですぅ。」

_「アンタがそれを言うかィ?人様から大切なもん奪ったアンタがァ。」

_「今さら謝るつもりもありません。私も、大切なもののためにここに来たんですから。他人の大切なものを奪ってでも…壊してでも…私はあの人を、…取り戻します。」

_「フン)アンタも哀れなヤツだねェ、次郎長の娘よォ。」


_「行くぜェェッ!お前らァァァァッ!」


戦いの火蓋が切られたのを確認すると、私は一番隊と四番隊の仮装を解除し、指定した場所に待機することを伝達した。三番隊は てる君を指定の場所に連れていった後、二番隊と合流するように指示を出した。ちなみに晋助は、指定した場所に待機するように指示してある。


気配を殺しながらお目当ての部屋に着くと、中から会話が聞こえてくる聞こえてきた。


_「人がいねェと存外、この町も汐らしい面してやがらァ。」

_「そちの娘が働きやすい様、歓楽街が子どもの遊び場に早変わりじゃ。」

_「フン)女狐の狩場、の間違いじゃねェかァ?」

_「ワシを見張りに来たか?」

_「この次郎長がそんなけってェ真似するために、相撲中継を放っぽいてェわざわざこんな所に来るかィ?…取りに来たのさァ。狐の首をォ。」


よし。あとは銀時たちが来るのを待てば大丈夫。トランシーバーから平子の様子を確認する。


_「…約束したもの。…必ず、帰ってくるって、約束したもの。…」

_「華蛇の援軍ッ…!?」

_「ここはお願い、アタシは親父の元に…」

_「お嬢ォォッ!?」

_「アタシらまとめて、あの女狐に嵌められたようだねェ。」

_「西郷ォォッ!?」

_「さ、西郷さん…!?」


部屋の会話にも耳を傾けていると、まだ続きがあった。


_「ガキを爆材とし、この町に転荘をする。そして四天王勢力互いを消耗させ、まとめて潰しこの町を独占する。雑な粗筋書きは大方そんなところだろォ。」

_「フン)だがもう遅い。哀れな猿どもは今頃一人残らず潰されていよぅ。貴様の娘もなぁ。」

_「ヤツらが大人しく餌になる(たま)たァ、思えねェがねェ。まァおかげで、こうして別嬪と二人っきりでランデブーできる訳だしなァ。」

_「フン)ランデブーは断るが、…パーティーの用意なら出来ている。」

_「辰羅かァ。夜兎と荼吉尼に並ぶ傭兵部族をここまで揃えるたァ、やっぱりただの博打好きの姉ちゃんじゃァねェなァ。」

_「永きに渡った貴様とワシの闘いも、これで終わりじゃ。この町はもう、ワシのもの。いいや、宇宙海賊春雨、第4師団団長 華蛇のもの、と言った方が良いのかぇ?」

_「ついに尻尾を出しやがったなァ?化け(ぶつ)者めェ。」

_「戯言(よわれごと)をォ。とうの昔に気づいておろぅ?貴様さえ居なければこんな町、吉原の鳳仙と同じく容易く手に入れられた。存じておるぞぉ?貴様が外道に身をやつしてまでこの町に深き根を張ろうとしていた訳をォ。我ら天人からこの町を護る為であろうをな。」
 
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