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小ネタ箱

作者:羽田京
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恋姫無双
  戦国時代に転生するはずが春秋戦国時代だった件(プロローグ)

 
前書き
あらすじ
「戦国時代に転生してくれ!」そう願った主人公は、恋姫世界の「春秋戦国時代」に転生した。
中国史も恋姫無双も全く知らない主人公は、中華風ファンタジー世界だと、勘違いする。
転生チートを駆使して、やがて歴史をひっかき回す主人公が送る、ちょっと変わった三国志のお話。
 

 
「あの政が、まさか皇帝になるとはな。いわゆる始皇帝ってやつかな」

「おお、わが友、田忠いや、心よ。始皇帝とはよい呼び名だな。余は、これより始皇帝と名乗ると致そう」

「せっかく中華を統一したんだ。これからが大変だぞ、始皇帝さん」

「うむ、責任は重いが任せておけ。無論、お主にも手伝ってもらうぞ」

「もちろんだ。お前さんだけに重責を押し付けないさ」


 咸陽の巨大な宮殿の豪華な部屋で酒を飲みかわす。それも二人だけで。目の前には偉大な王がいた。
 中華を統一した政、始皇帝とため口をたたく自分が、いまでも不思議で、現実感がない。


(うーん、始皇帝って歴史の授業で習ったような気がするんだよね)


 普通なら、タイムスリップを疑うところだろう。だが、俺は違うと断定できる。


「ははは、余を口説くつもりかな」


 上機嫌に笑う、妙齢の女性。そう、始皇帝こと政は女性なのだ。
 だから、中華風ファンタジー世界に俺は生まれたのだろう。


 これまで色々あったよな。親友である政と出会ってからも激動の人生だったが、それまでにもいろいろあった。
 政には、孤児の自分を拾った僧侶によって、育てられたとしか言っていない。
 俺の最大の秘密は、たとえ政にでも打ち明けることはできない。


 俺、転生者なんだよね。




「オギャア、オギャア」


 赤ん坊の泣き声が響く。土で固められた道の上に、無造作に置かれていた。周囲に人影はない。

 
(どうしてこうなったんだ……)


 さきほどからずっと考えている。思考はぐるぐる回るが、どうしようもない。
 なぜなら、俺は生まれたての赤ん坊なのだから。
 耳障りな泣き声も、俺のものだ。


(あのクソ神、ぜってえぶっ殺してやる!)


 俺の名前は、田中心。つい先ほどまで、高校生だったが車にひかれて死亡した。
 その後、神さまっぽい存在に会って、転生しろと言われた。
 チートを3つまで貰えると言われたら、喜んで転生するだろ。


 で、生まれたあと、すぐに捨てられた。
 理由は、俺が銀髪オッドアイだったから。両親のどちらにも似ていない。
 不義を疑われることを恐れた母によって、俺は捨てられた。


(神の罠か、それとも自業自得なのか)


 生後数時間で、転生生活が終わるなんて、あり得ないだろ!
 そりゃ、チートで容姿を指定したのは俺だし、生まれる年代を選べるというから、好きに選んだのだけれども。
 今は戦国時代のはずだから、迷信が蔓延っているし、命の値段が現代よりも価格崩壊している。
 正直、俺が助かる見込みがないだろう。


 グッバイ、俺の二度目の人生。


「―――――?」


 あれ、なにか声が聞こえる。
 うお、巨人だ! 巨人がいるぞ! って、俺が小さいだけか。
 巨人の男が、俺に近づいて、抱きかかえた。
 何か、よくわからない言葉をいっているが、とりあえず、俺は助かるのかな?
 そう思ったら、急に眠くなってきた。ずっと泣きっぱなしだったからね。


「――――!」


 男の声を聞きながら、俺の意識は闇に落ちた。




「父さん、いままでありがとうございました。御仏の教えに従い見聞を広めるために、外の世界へと旅立ちます。どうか、天から見守っていてください」


 父の墓の前で、宣言する。
 ああ、生まれたあの日からもう30年も経つのか。


 おぎゃあと生まれて捨てられた日、拾ってくれたのは、修行僧の父だった。
 彼は、俺を寺に連れて帰ると、養子にしてくれた。
 銀髪オッドアイの不気味な俺を差別せず、ときに厳しく、それでも愛情を持って育ててくれた。


 すくすく育った俺は、修行を積み、精神が鍛えられ、見違えるほど立派になったと父が絶賛してくれた。でも、父に比べれば俺なんかまだまだ未熟。
 教えてもらいたいことが、まだいっぱいあったのに。
 いかん、涙を流すんじゃない。父がいたら、修行が足りぬと言われるだろう。


 御仏は信じるが、神は全く信じていない。や、存在は信じるけれど、敬えない。
 だってさ、転生のときの話と全然違うんだもん。


「なんで、中華風ファンタジー世界なんだよ」


 俺は確かに「戦国時代に行きたい」っていったのに、どうも言葉も風習も古代中国っぽいんだよね。


 けれども、髪が青かったり赤かったりする人間が平然と存在していて、権力者に女性が多いと言われたら、俺のいた世界でタイムスリップしたわけではあるまい。
 したがって、中華風ファンタジー世界と結論づけた。


 ただ、転生チートだけは、問題なかった。むしろ、強力すぎてびびってる。


 まず、鑑定スキル。ファンタジーでは定番だよな。人物鑑定から物品鑑定まで幅広く使える。使いまくって熟練度を上げたら、すげえ便利に化けた。


 次に、チートな身体。戦国時代で槍働きをしたかったから頼んだ。驚いたことに、武力だけではなく、知力も上昇していた。これは神に感謝してやらんでもない。

  
 最後に、銀髪オッドアイ。捨てられたトラウマから、あまり好きではない。でも、類まれなるイケメンらしい。あまりうれしくない。髪の色は、中華風ファンタジー世界らしく色とりどりなので、俺の銀髪でも目立たない。両親が銀髪だったら、きっと捨てられなかったのかな、と思うと悲しくなる。


「でもまあ、素晴らしい父に出会えたのだから、帳消しにしてやろう」


 転生前の俺の親父は碌なもんじゃなかった。酒浸り、ギャンブル、借金。母は親父のいいなりで、俺が親父に暴力を振るわれても、見て見ぬふりをしていた。
 だから、幸せな家庭というのにあこがれていたのかもしれない。今世の父は、俺にとって命の恩人を超えて、尊敬すべき目標だ。


 いきなり親に捨てられたことで、すっかり人間不信になっていた俺を、父は優しく見守ってくれていた。少しでも父の役に立ちたくて、武芸と勉学に励んだ。前世では、どちらも大嫌いだったのに。
 もちろん、チートな身体を持っていて、上達が早かったのも理由だと思う。


 そして、気づいた30年経ち、一昨日父を看取った。
 寺と麓の村だけが俺の世界である。父の役に立ちたい一心で、補佐をし続けた。一切の後悔はない。


「にしても、俺は不老なのかな。身体チートのせいなのか、神のいたずらなのか」


 父に感謝している理由は、もう一つある。それは、俺の身体が全然成長しないことを気にも留めなかったからだ。
 13歳までは普通に育ったのだが、それを境に、全く身長が伸びなくなった。
 だから、俺の見た目は少年にしか見えない。


 普通なら気味悪がれて、排斥されるだろう。でも、父は違った。今まで通り、俺を育ててくれた。
 名も、前世の田中心にあやかって、田忠と名付けてくれた。前世の自分とのつながりも大切だろう、だとさ。
 本当に感謝してもしきれない。


 あと、真名は心と名付けてくれた。この世界には、真名という風習があって、うっかり呼ぶと斬られるらしい。なんて恐ろしい風習なんだ。
 真名を預けられるような人に出会えるといいな。


「よし、出立するか」


 袈裟と三度笠と錫杖を手に歩き出す。一度だけ墓を振り返ると、麓の村へと向かった。 
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