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楽園の御業を使う者

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CAST28

質葉家の前の二台のコミューター。

「では後程」

水波が1台に乗り、白夜と真夜がもう1台に乗り込む。

「うふふ…二人っきりね」

「えぁ? そうですね」

白夜の隣に座った真夜が微笑んだ。

肉体の若さからくる可憐さと、実年齢がもたらす深い妖艶さの入り交じった微笑み。

白夜はなんとなく、顔をそらしてしまう。

そのまま真夜の方へはむかず、窓の外を眺めている。

「白夜君。九校戦は初めて?」

「そ、そうですね」

「競技内容は知っているかしら?」

「スピードシューティング。クラウドボール。
バトルボード。アイスピラーズブレイク。
ミラージバット。モノリスコード。
今年はこの6つですよね」

「ええ、そうよ」

他にも競技はあるが、今年はその六つだ。

「白夜君はどの競技に興味があるのかしら?」

白夜は観るよりも実際にやりたい人間だ。

「あえて言うならミラージバットと女子バトルボードですかね。
知り合い…というかウチの門下生が出るんですよ」

「だれかしら?」

「渡辺摩利。かの渡辺家の一人娘ですよ」

白夜は知り合いが出るから、程度にしか思っていなかったが、真夜は別だった。

水波から送られてきた情報。

その中でも最も重要度の高い物。

白夜に好意を寄せている者のリストだ。

リストの中で、真夜が警戒している相手。

それが渡辺摩利だ。

百家ではないとはいえ、その家柄もよく、白夜と釣り合いうる相手。

「渡辺摩利…ね…」

「青田買いですか?」

「ええ、そんな所よ。時間があれば会ってみたいわね」

「あとでメールしときますよ」

「……仲がいいの?」

「あの人家の兄が好きらしいんですよ。
その関係でよく恋愛相談されるんですよ」

「そう…恋愛相談…」

無論真夜はその『恋愛相談』についても、その本来の目的をきかされていた。

「白夜君には、好きな人はいないのかしら?」

真夜に問われた瞬間、白夜は顔が赤くなったのを自覚した。

赤髪に映える白い肌が赤くなっているのを真夜は見逃さなかった

「顔、赤くなってるわ」

「いいじゃないですか…好きな人くらいいても…」

「若さって羨ましいわ」

真夜がクスクスと口元を押さえて笑う。

「真夜さんだって十分若いですよ」

「ええ、体は若いわ。でもね、精神はそうもいかないのよ」

「くくっ…」

白夜の返答は笑いだった。

窓の外を見ていた目を、真夜に向ける。

「真夜さんって心も若い…いえ、子供っぽいですよ」

「そうかしら?」

「ええ、だって今、家出中でしょう?」

真夜はきょとんとしたあと、笑いだした。

「ふふ…家出…うふふ…そう、確かに今の私は『家出中』っていうことになるわね」

「でしょ?大丈夫!帰ったら一緒に怒られてあげますから」

ニコッと笑う白夜の顔はとても幼い。

小動物のような愛らしさがあった。

真夜が手をのばして、その赤髪を撫でる。

「うゆ…」

白夜は撫でられると子犬のような反応をみせた。

「その時は、お願いね、白夜君」

「はい!」

真夜は、そのまま白夜の髪を撫でていた。

「綺麗な赤毛ね…しっているかしら?
赤毛はいい魔法使いになれるらしいわ」

「西洋圏の言い伝えですね。たしか妖精達は赤毛や金髪を好むんですよね」

「その通りよ」

「それに日本でも髪には霊気が宿りますからね…」

「霊気…難しい言葉をしっているわね」

霊気とは日本古来からの生命エネルギーの呼び方であり、2093年現在では古式魔法の用語として扱われる。

「知り合いにそう言うのに詳しい『女』がいるんですよ」

「どなた?」

「吉田本家の『長女』です。
父同士が仲がいいんですよ」

「吉田家の神童…」

「そう、そいつです」

「貴方、色々な人脈があるのね…」

「家と、あと仕事ですね。先日のパーティーで北方潮氏と会いましたし」

白夜は暗に件のドレスの事を言ったが流された。

「北山家には一人娘がいたはずだけど」

「雫ですか? あ、そうだ…」

「?」

「雫も九校戦に行くと言っていたのでもしかするとあっちで会うかもしれません」

「ガールフレンド?」

「まさか」

白夜の中には、原作のカップリングの知識が強く残っている。

故に摩利や水波の好意にも気づけない。

そして白夜には雫とほのかは達也に好意を抱くという固定観念があった。

「雫は、たぶん、達也みたいなのが好みですよ」

「達也さんも大変ね」

「あんだけブラコンの妹に好かれちゃ、『普通は』結婚できそうにないよなぁ…」

だが、白夜は最終的に二人がくっつくと確信していた。

それこそがこの物語のエンディングだと信じている。

「『普通』でなければできるのかしら?」

「達也と深雪さんが結婚すればいい。
二人にとって、きっとそれが一番幸せでしょう」

「あらあら、過激ね。近親相姦になってしまうわ」

「やりようはいくらでも。一番手っ取り早いのは、達也を貴方の子供だったということにする方法」

それは白夜が知る、原作における方法。

「現行法では兄弟姉妹では出来なくても従兄弟同士なら結婚できますから」

第三次世界大戦中は婚姻可能年齢が男女共に15才まで引き下げられた事もあったが、2093年現在では男女共に18歳に戻されている。

だが、兄弟姉妹は結婚できないが従兄弟ならよいという部分は2016年から一切変わっていなかった。

それを聞いた真夜は白夜の髪を触るのをやめた。

「あら、そんな事をしてしまったら達也さんが貴方の息子になってしまうわ」

「なるほど…義父より大きいむす……………へ?」

白夜が真夜の顔を見つめる。

真夜のアメジストが、白夜のガーネットを射抜く。

「ま、真夜さん。そ、それってどういう…?」

「私、貴方の事を好きになってしまったの」

「まや…さん…?」

「答えを聞かせてちょうだい。私の王子様」
 
 

 
後書き
強引?急展開? 彼女居ない歴=年齢の童貞に無茶言わんといてください。 
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