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天体の観測者 - 凍結 -

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レーティングゲーム─終極─

 
前書き
12:12投稿
レーティングゲーム終極です
ではどうぞ 

 
 爆音が鳴り響く。
 それに伴う爆風と爆煙も周囲へと吹き荒れる。

 今や辺り一帯は両陣営の激しいぶつかり合いの影響で大きく崩壊していた。
 先程まで校舎であった建物は見事に壊れ、粉砕し、瓦礫の山と化している。

 大地はフェニックスの業火により燃え、焼け爛れる。
 周囲一帯を魔力の高まりが支配し、絶えず両者の姿を爆煙の中へとくらませる。 

 そして再び両者は激突した。



「雷光よ!」

 上空から降り落ちるは朱乃より放たれた堕天使の雷光。
 彼女は全力で、容赦することなくライザーに向けて放った。

「小賢しいわ!」

 だがライザーはフェニックスの炎を燃え上がらせ、腕を振るうだけで掻き消してしまう。
 朱乃が放った雷光はフェニックスの炎に圧し負け、彼女は吹き飛ばされてしまった。

「きゃあ!」
「朱乃さん!」

 神器に埋め込まれた宝玉を発光させ倍加効果を蓄積させている一誠が叫ぶ。
 だが今の彼に出来ることなど存在しない。
 自分はただ好機を待つのみ。

 現在、一誠とアーシア、王であるリアスを除く朱乃達は時間稼ぎをすべく、眷属全員にてライザーへと向かっていた。

 全ては敬愛する主であるリアスをこのレーティングゲームで勝たせるために。

魔剣創造(ソード・バース)!」

 己の主であるリアスを援護すべく、今度は木場が対処する。
 途端、数多の武器が宙へと顕現する。
 木場はそれら全てを即座にライザーへ向けて、勢い良く解き放った。

「ぐ…っ!」

 朱乃の攻撃に対処していたライザーは木場の攻撃を躱せない。
 身体の至る箇所に数多の武器が突き刺さり、ライザーは苦悶の声を上げる。

「まだだ!」

 木場はライザーに反撃の隙を与えない。
 即座に、神器で創造した武器に内包された魔力を暴発させ、爆発させる。

 その身に一身にその爆発を受けることになったライザーの身体は文字通り爆発四散した。
 だが…

「く…っ!フェニックスを…!フェニックスの力を舐めるなー!!」

 多勢に無勢。
 圧倒的に数で不利な状況であるにも関わらずライザーは臆さない。

 吹き飛んだ己の四肢を即座にフェニックスの力で再生させ、眼下の木場へと炎を振り下ろした。

「…!?」

 自身の渾身の一撃を容易く対処された木場は動揺の余りその場で硬直してしまう。
 だがそれも刹那の一瞬。

 即座に自身の眼前に神器で生み出した剣を出現させ、一種の盾を創り出すことでライザーの攻撃を防御する。

「…く!?」

 だがフェニックスの炎は瞬く間に木場が創り出した盾を融解させ、消失させた。
 木場は後退し、ライザーの炎を何とか回避する。
 無論、無傷とは言えないが。
 身体の至る箇所が燃え、怪我を負っている。

「…えい。」

 続けて真横から途轍もない速度で飛んでくる岩石。
 投石を行うは戦車である小猫だ。

「邪魔だ!リアスの戦車!」

 だがライザーはそれを一蹴。
 フェニックスの業火によりその岩石を即座に消失させ、燃え散らかせる。
 小猫にフェニックスの炎が迫った。

「…舐めないでください。」

 その小さな身に炎が迫りながらも小猫は焦らない。
 仙術を行使することで獣人化し、身体のあらゆる能力を飛躍的に上昇させる。

 ウィス直伝気功波を即座に掌に創り出し、ライザーの炎と激突させ、掻き消した。
 
「ち…!」

 想像以上にリアスの眷属達の能力が上昇していることにライザーは驚きを隠せない。
 想定外の事態だ。

「喰らいなさい!」

 光力と魔力を混ぜ合わせた極大の閃光がライザーの身に直撃する。
 休む暇も存在しない。

「グ…ッ!?グォォーー!?」

 全身隈なく焼き尽くされたライザーは思わず苦悶の表情を浮かべる。
 何という威力。

 これが自身の女王であるユーベルーナを一撃でリタイアさせた攻撃。
 成程、驚異的な威力だ。

「はぁはぁ、先ずはお前から始末してくれる、リアスの女王!!」

 息を絶え絶えにしながらもライザーはフェニックスの力を行使する。
 瀕死の状態とは思えない程の威力だ。
 
「きゃああー!?」

 同じく満身創痍の状態の朱乃もライザーの攻撃の直撃を受け、墜落してしまう。
 彼女も度重なる力の行使により息も絶え絶えの状態なのだ。

魔剣創造(ソード・バース)!」

 落ちる朱乃に止めを刺そうとするもまたしても邪魔が入る。
 眼下を見下ろせば復活した木場の姿が。

「はぁはぁ、いい加減しつこいぞ、貴様ら!ゾンビか、お前達は!?」

 不死の象徴である自分が相手をゾンビと述べるとはこれ如何に。
 リアス側には回復役である僧侶のアーシアがいる。

 彼女をリタイヤさせない限り現状が好転することはない。
 故に幾度も彼女を仕留めようとするも、その度に邪魔を受けてしまう。



 そんな中、アーシアと一誠の傍で佇むリアスの姿が映った。
 リアスは掌を胸の前で掲げ、一心不乱に滅びの魔力を一点に集中させている。

 圧縮、圧縮。
 限界にまで滅びの魔力を凝縮させ、圧縮に圧縮を重ねること幾度。

 紅き魔力の波動が周囲へと迸り、その存在感を周囲の空間へと波及させていく。

「く…くぅ…!?」

 それに伴う反発。
 やはり慣れないことはするものではない。

 明らかにリアスが無理をしているのは一目瞭然であった。
 幾らウィスに鍛えられたとはいえ、この技はこれまで一度たりとて彼女は遣ったことなどない。

 当然、リアスに強いられる負荷は相当なものだろう。
 だが、それでも…!





『いいですか、リアス。貴方の滅びの魔力はレーティングゲームにてライザーを倒す上で必ず必要となってくるはずです。しかし、現状のリアスにライザーを倒す力はありません。』

 ウィスは必死に耳を傾けるリアスに教授する。

『…ですが、力も遣い様です。リアスの滅びの魔力も極めれば強力な武器になるはずです。』

 空へと掲げた指先に発生させた球状のエネルギーを天に届かんと言わんばかりに巨大なものへと変化させるウィス。

 本人曰くこのエネルギーは惑星そのものさえ破壊する威力を秘めているらしいのだが、リアスは何も聞かなかったことにした。

 あの時にウィスが行使していた技を模倣する。
 本人からあの技のコツとノウハウは聞き及んでいる。修行の期間中にウィスから幾度か教授もしてもらった。

 今は何としてでもこの技を完成させ、ライザーをリタイアさせる。



「一誠、もっとよ!」
「はい、リアス部長!赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

 限界以上の滅びの魔力を放出させるリアスへと一誠は己の神器にて生成した魔力を彼女へと譲渡する。

 譲渡に続く譲渡。
 瞬く間にリアスが有する魔力は高まり、その存在を圧倒的なものにしていく。
 本来ならば彼女1人では辿り着かない境地へとリアスは至った。

 彼女特有の能力である滅びの力を帯びた魔力が圧縮され、紅みを帯びた魔力が彼女の掌から流れ出す。圧倒的なまでの魔力が凝縮された紅き球状の玉が創り出されていった。

 見れば電磁波とも呼ぶべき魔力の高まりが周囲に迸り、地面に亀裂を生み出し、周囲の空間を歪ませていく。

 リアスの顏は曇り、汗を垂れ流している。
 手は震え、魔力が今にも暴発し、爆発してしまいそうだ。
 だがそれでもリアスは物体の生成を止めることはしない。



「……!?」

 あれは拙い。

 朱乃達と交戦していたライザーはリアスが創り出しているものの脅威を即座に理解する。
 あれは自身にも届きうる刃だ。
 不死鳥である自分を滅びし得る力なのだと。

 ライザーは即座にリアスをリタイアさせるべき攻撃を放とうとするも…



「リアスの邪魔はさせませんわ!」
「手出しはさせない!」
「貴方の相手は私達です…。」

 だがまたしても朱乃に、木場に、そして小猫に邪魔されてしまう。
 己の主であるリアスを守るべく彼女達はライザーへと立ち向かう。
 見事なまでのコンビネーションだ。

「邪魔だ、貴様ら!」

 周囲一帯にフェニックスの炎をまき散らし、朱乃達を一掃しようとするも…



「く…!?何…!?」

 彼女達は自身の身が燃えるのも厭わずに突っ込んできた。

「……!?まさか貴様ら!?」

 自身の身体が燃えるのも厭わず、朱乃達はライザーを拘束している。
 ライザーの背後からは朱乃が。
 右腕には小猫、左腕には木場の姿が。

 全てはリアスの一撃をライザーへと届かせるため。

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

 またしても鳴り響く譲渡の声。
 それに比例してリアスの魔力が膨れ上がっていく。

「出来たわ…!」

 出来上がるは禍々しいまでの滅びの魔力の塊。
 あれはヤバい。ヤバすぎる。

「く…くそ!?離せ!貴様らァー!!」

 ライザーはフェニックスの炎を手加減なく放出し、彼女達を振りほどこうと暴れ回る。
 だが朱乃達は決して離さない。
 否、絶対に離してなるものか。

「リアス部長!今のうちに!」
「遠慮なく打ってください、リアス部長!」
「これで全てを決めなさい、リアス!」

 そう、彼女達は自身の身を代償にライザーを仕留める気なのだ。
 リアスは僅かばかりに躊躇した様子を見せる。
 何故ならサクリファイスは彼女が一番忌み嫌う行為なのだから。
 
 だが、それでも…





『挫けそうになるときもあるでしょう。挫折を味わい、自分1人ではどうしようもないことも経験することも。…ですがきっと至らない部分はリアスの仲間が埋めてくれるはずですよ。』

 回顧するはウィスの言葉。

 そうだ。
 自分は何の為にウィスに懇願し、あの過酷な修行を乗り越えたのだ?
 全てはこのレーティングゲームでライザーに勝ち、自身の夢を叶えることためではないのか!?





「皆……!ええ、皆の思い、確かに受け取ったわ!」

 自身の身を投げ打ってまで尽くしてくれた朱乃達の気持ちを無駄にはしない。

 リアスは眷属達の思いを受け取り、覚悟を決めた。
 そう、愛する眷属達を犠牲にする覚悟をだ。

「正気か、貴様ら…!?このままではお前達もあの直撃を受けることになるぞ!?」
「ああ、分かっているとも!」
「覚悟の上です…!」
「直撃を受けるのは貴方です!」



「喰らいなさい、ライザー!」

 ライザーの静止の声を振りほどき、リアスは掌を前方へと突き出した。
 禍々しいまでの魔力の本流が放出され、ライザーへと迫る。

「くそ くそ くそ くそー!?」

 そして、遂に滅びの魔力がライザーへと直撃した。
 
 リアスの眷属である朱乃達さえも巻き込み、校舎を粉微塵に吹き飛ばしていく。
 瞬く間に滅びの魔力が周囲一帯を消し炭にし、ライザーを滅却させた。

 全てが滅び、消滅していく。
 その威力は凄まじく、闘技場を即座に更地へと変えた。

 小さな球状であった紅き魔力の塊は瞬く間に数百メートルの規模にまで巨大化する。
 その魔力の塊は空に浮遊したライザーを容赦なく包み込み、フェニックスの翼をもぎ取り、大地を崩壊させていく。

 空間は大きく歪み、周囲を幻想的に紅く染め上げる。
 その余波はリアス達さえもその場から吹き飛ばした。

「一誠、アーシア!無事!?」
「は…はい!何とか無事です、リアス部長!」
「はぃぃ…、何とか、リアス部長…!」
 
 前方を見据えれば滅びの魔力が直撃したことにより悶え苦しむライザーの姿が。

 再生、破壊、再生、崩壊、再生、滅却、再生、焼却、再生、消滅。
 それを繰り返すこと幾度。
 フェニックスの再生能力が追い付かない。

「ぐ…ぐぅぅ…!?ガァァアー!?」

 瞬く間にライザーの身は満身創痍と化す。
 フェニックスの能力が無ければとっくにリタイアしているだろう。
 自身を拘束していた朱乃達は既にリタイアし、今のライザーを縛るものは何もないにも関わらず全く動けない。

 何という威力。
 フェニックスの炎を歯牙にもかけない程の強大な魔力の本流だ。
 一体誰だ、こんな危険な技をリアスに教えた奴は。

 今なおリアスが放った滅びの魔力の威力は衰えることなく、ライザーを崩壊させていく。

 ライザーを強固な魔力の牢獄に閉じ込め、確実にリタイアへと誘っていく。





 次の瞬間、フェニックスの炎が消滅し、周囲の空間を巻き込み、ライザー諸共辺りを吹き飛ばした。
 爆発に次ぐ大爆発。
 文字通りリアスが放った極大の一撃は周囲のあらゆるもの全てを滅ぼした。

 モニターは赤く染め上がり、周囲は大きく破損し、粉微塵に崩壊する。

 全てが終結した後にはライザーの姿は何処にも存在しなかった。 
 リアス達の勝利が確定した瞬間である。

『ライザーフェニックス様、リタイア。よってこのレーティングゲーム、リアス・グレモリー様の勝利となります。』

 グレイフィアのレーティングゲームの終わりを告げるアナウンスが鳴り響く。








─此度のレーティングゲーム、リアス達の勝利である─












「やはりリアス達が勝ちましたね。全て、私の予想通りです。」

 宙に映し出した映像を見据え、ウィスはリアス達を祝福するように微笑む。
 此度のレーティングゲーム、やはりリアス達の勝利に終わった。

 おめでとうございます、リアス。

 ウィスは静かにリアスを祝福し、1人の少女の旅立ちを心から祝った。

「あら、ならばリアス様を勝利へと導いたウィスさんはリアス様の白馬の王子様ですわね。」

 ウィスの傍には紅茶を優雅に飲むレイヴェル・フェニックスの姿が。
 自らリタイアした彼女はすぐさまウィスの元へと赴いてきたのだ。
 ウィス本人も彼女を拒絶する理由は特になかったので、彼女を歓迎した次第である。

 レイヴェルは実に愉し気に、羨まし気にリアスを見詰めている。
 彼女はそういった勇者的存在に一種の憧れを抱いているのだろうか。

 だが一つだけ訂正させてもらおう。

「私はそんな殊勝な存在ではありませんよ。私はただ、リアスに選択肢を与えたに過ぎません。道を切り開き、自身の望む未来を掴むチャンスをね。」

 そう、道を切り開いたのは彼女自身だ。
 自分はただリアスの後押しをしたに過ぎない。

「まあ、ご謙遜がお上手ですのね!」
 
 決して謙遜などではないのだが。

「謙遜ではありませんよ。リアスは貴族のプライドを捨て、頭を下げてまで私に懇願してきました。全てはライザーに勝つために。ならば私は彼女の求めに応じるだけです。」

「やっぱり白馬の王子様ではないですか。」

 決して自分は王子などという殊勝な存在ではない。
 この世界感で言わせてもらうと自分は一応宇宙規模の神話体系の天使的存在だ。

 見ればリアス様が少し羨ましいと、レイヴェルはなお述べている。
 そんなにリアスが羨ましいのだろうか。
 乙女思考か否か。
 謎である。

「まあ、リアスに手をさし伸ばした本当の理由ですが、強いて言えば……」

「強いて言えば…?」

「リアスが私の知り合いに似ていたからです……かね。」

 そう、自分はリアスをどうしてもほっとけなかった。

「ウィスさんの知り合いにですか?」

「ええ。それに誰かを助けるのに理由など要りませんよ。」

 幸い自分には仮初めとは言えリアスを導き、きっかけを与える力があった。
 ならば躊躇する理由など存在しないだろう。

 周囲にウィスの応えに対するレイヴェルの歓喜の声が響いた。





─こうしてウィスとレイヴェルの2人は仲良さげに会話を続ける─










─リンク40%─
 
 

 
後書き
ウィス直伝リアス式滅殺デスボール

効果:相手は死ぬ
→相手が格上かフェニックスのような不死性を持たない相手以外の場合相手は死ぬ
現在のリアスの実力では赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)の補助が無ければ出来ない大技
加えてかなりの時間が必要なため、仲間の援護が不可欠

「リアスの能力ならできるんじゃね?」というウィスさんの謎の思考により生まれたとんでもない技である

『旧校舎のディアボロス+戦闘校舎のフェニックス』これにて終了です
次回は遂に『月光校庭のエクスカリバー』編です
今後も今作をよろしくお願いします。 
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